朝の光はまだ低く、森の中に斑の光を落としていた。
冷たい空気が胸を刺し、踏みしめる落葉が静寂を際立たせる。
父は趣味の鹿狩りに没頭し、この時ばかりは孤独を好み、誰にも邪魔されたくないことを知っていた。
――そこを狙う。
鹿の警戒心に満ちた鳴き声が遠くで響き、森全体が息を潜めたように静まる。
隼比古は弓を握り、父の背を追った。
矢筒から取り出した矢は、微かに黒ずみ、毒が塗られている。
狗奴国のものに見せかけるための細工も施した。
指先が弦に触れるたび、冷たい汗が流れる。
胸の奥で、恐怖と高揚が綱を引いていた。
小さな吐息が漏れるが、声は森のざわめきにかき消される。
父の姿を確認すると、隼比古は矢をそっと構える。
鹿が跳ねる音が遠くで響き、心臓の鼓動は弦を引く力と呼応する。
指が弦を放つ瞬間、風向きが変わり、葉がざわめく。
矢は静かに飛び、父の背に突き刺さった。
微かな抵抗とともに父の肩が震え、両膝が地面に折れ、体を支えきれなくなった。
しかし毒はすぐには彼を奪わなかった。
体内でじわりと浸透し、血液と筋肉を蝕む。
父は必死に立ち上がろうとする。
しかし手足の力は徐々に抜け、体は震えを止められない。
吐息は荒く、声にならないうめきが漏れ、胸の奥で熱と冷たさが入り混じる。
呼吸は乱れ、意識は朦朧とし、痛みによって筋肉が痙攣する。
隼比古はその様子を見つめながら、心の奥に冷たい満足感を覚えた。
同時に、ゆっくりと苦しむ父の姿に、得体の知れない恐怖を覚えた。
生きながら毒に蝕まれ、もがき苦しむ父――
その残酷さは、計画の成功よりも鋭く胸を突いた。
長く、苦悶に満ちた時間が森に落ちる。
父の肩は大きく震え、腕を伸ばして地面にしがみつく。
呼吸は不規則になり、うめき声は波のように漏れ、森全体に冷たい緊張を残す。
やがて、全身が力尽き、肩が崩れ落ちる。
口元から泡を吹き、苦悶の痕跡を残したまま、父は静かに地面に倒れた。
森に漂う冷たい朝の光が、父の亡骸を照らす。
その姿は、まるで運命に屈した王の象徴のようであり、森は静かに
――しかし確実に、暗い影に包まれていた。