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アマガタリ  作者: ひよりの
第二章
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想いの、その先 (※ミナギ視点)




 夜風よかぜが、はだでる。


 視界しかいさきに、アサのがある。


 ほそかた


 れるかみ


 その背中せなかが――ひどくたよりなくえた。



 すなおとが、やけにおおきくひびく。


 一歩いっぽ


 また一歩いっぽ


 距離きょりめるたびに、むねおくがざわつく。


 いつもならおさめるはずのそれが、今日きょうはうまくいかない。



「――アサ」


 んだこえは、おもったよりひくちた。


 かない。


 あえて、だとすぐにかる。


 ――げている。


 それでも、げきれないこともかっている。


 そんな中途半端ちゅうとはんぱ背中せなかだった。



 つぎ瞬間しゅんかん、わずかにれた身体からだ


 くずれるようにうしろへかたむく。


 かんがえるよりさきに、ていた。


 れる。


 その直後ちょくごづく。


 ちいさくふるえるかた


 れたほお


 呼吸こきゅう


 いている。


 その事実じじつが、みょうむねさった。


「……くくらいなら、最初さいしょからこっちをけ」


 づいたように、彼女かのじょいきむ。


 さがすような気配けはい


 だが、はなさない。




なにいやなんだ」


 いはみじかく。


 がさないように。


 かなければならない。


 いてしまえば、かえせないとかっていても。


 そして。


 せきったようにあふれる言葉ことば



 ――いやなの。


 ――はなれるのが、いやなの。



 その言葉ことばが、まっすぐむねさる。


 予想よそうしていた。


 覚悟かくごもしていた。


 それでも――


本当ほんとうは、きたくない……」


 その一言ひとことで、すべてがんだ。


 理屈りくつも。


 立場たちばも。


 責務せきむも。


 ただひとつの事実じじつだけがのこる。



 ――かせたくない。



「ミナギの、そばに……!」



 ばれたが、こんなにもおもく、ねつってひびくとはおもわなかった。



「……き……」



 理性りせいが、おともなくくずれる。


 ずっと、おさえていた。


 せんいていた。


 えてはならないと、何度なんど自分じぶんかせてきた。


 だが――



「どうしようもないくらい……!」



 限界げんかいだった。


 うでく。


 つよく。


 かんがえるまえに、せていた。


 む。


 がさないように。


 そのほそ身体からだうでなかおさまる感触かんしょくに、ぎゃく自分じぶん理性りせいけずれていく。



「――っ、ミナ――」



 ばれるまえに、くちびるふさいだ。


 うばうように。


 みつくように。


 おさんできたものが、そのままかたちになってあふれる。


 はなせない。


 はなしたくない。


 ――はなせるわけがない。



 わずかにはなれたとき、いきれているのは自分じぶんおなじだった。


 こんな自分じぶんせることはない。


 せるべきでもない。


 それでも、もうつくろ余地よちはない。



「……かっているなら、そんなことをうな」



 かせているのは、半分はんぶん自分じぶんだった。



おれが――」



 言葉ことばまる。


 ってしまえば、もどれない。


 だが、もうおそい。



「……はなせるとおもうか」



 こたえはまっている。


 最初さいしょからずっと。



 ――その


 ふるえるこえわれた言葉ことば


 結婚けっこんするな、と。


 おさないほどぐなねがい。


 だが、それをわら余裕よゆうはなかった。


 むしろ――


 それをわせている状況じょうきょうに、苛立いらだちすらおぼえる。


 沈黙ちんもくのあと、くちひらく。



「……三年さんねんだ」



 せんく。


 時間じかんさだめる。


三年さんねんかえってい」


 命令めいれいかたちりた、ねがい。


きさきは……けておく」



 これは約束やくそくだ。


 かる言葉ことばではない。


 だからこそ、るがせない。



 不安ふあんこぼこえ


 かえれるかどうか。


 そんなもの、こたえはひとつしかない。


 あたまく。


 でる。


 かせるためか。


 自分じぶんたもつためか。


 もう、からない。



かえってい」



 それだけでいい。


 ――そして。



志摩様しまさまより……すごい美人びじんあらわれたら……どうしよう……」



 一瞬いっしゅん


 思考しこうまる。


 つぎいで、いきれる。


 こんな状況じょうきょうで、そこをにするのか。


 あきれと――


 それ以上いじょうに、どうしようもないいとしさ。


 そのまま、げた。


 かるい。


 おどろくほどに。


 視線しせんわせる。



「いいか、よくけ」


 ひとつずつ、きざむように。


「これほどおれみだし、これほどおれに『おう』であることをわすれさせるのは……あとにもさきにも、おまえ一人ひとりだ」


 事実じじつだ。


 くちびるが、わずかにゆがむ。


 自嘲じちょうちかい。


ほかけるひまはない」


 本音ほんねだった。


 三年さんねんという時間じかん


 ながいはずなのに――


 つことしか、かんがえられない。


 かえるとこえ


 ようやく、すこしだけちからける。


「そうしろ」


 それでいい。


 それだけでいい。


 もしちがえば――


むかえにく」


 半分はんぶん事実じじつだ。


 半分はんぶんは――それ以上いじょうだ。


 彼女かのじょわらう。


 その表情ひょうじょう瞬間しゅんかんむねおくしずかにたされる。


 ふたたび、くちびるかさねる。


 今度こんどは、さきほどとはちがう。


 たしかめるように。


 きざむように。


 この温度おんどを。


 この距離きょりを。




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