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必要だった存在

第4話です。


もう、戻れない。

「ここまで来れば大丈夫そうですね」


 森を抜け、街道に出たところでミリアがほっと息をついた。


「ああ。もう魔物も出ないだろ」


 レイは周囲を軽く見渡す。


 確かに、さっきまでの緊張感はない。


「本当に助かりました」


 ミリアは改めて頭を下げた。


「何回言うんだよ」


 レイは苦笑する。


「それだけ感謝してるんです」


 そう言って、ミリアは少しだけ笑った。


 その表情を見て、レイは一瞬だけ言葉を失う。


(……なんか、いいな)


 そんなことを思ってしまった自分に、少し驚く。


「レイさんって、普段はどこで活動してるんですか?」


「んー……特に決まってないな」


「え?」


「昨日までパーティにいたんだけど、追放されてさ」


 あっさりと言う。


「……そう、なんですか」


 ミリアの表情が曇る。


「まぁ気にすんな。むしろ気楽になった」


「でも……」


「一人でもやっていけるしな」


 軽く肩をすくめる。


 実際、今の自分なら問題ない。


 それどころか――


(前より、ずっと強い)


 そう確信できる。


「……レイさんは、強いですからね」


 ミリアはぽつりと呟いた。


「そう思うか?」


「はい。さっきの戦いを見て、そう思いました」


 真っ直ぐな目だった。


 嘘やお世辞じゃないと、すぐにわかる。


「……そっか」


 その言葉が、少しだけ嬉しかった。



 一方その頃――


「くそっ! なんでこんなにキツいんだよ!」


 ガルドは荒々しく叫んだ。


 剣を振るうたびに、体力が削られていく。


「回復、まだか!?」


「やってる! でも追いつかない!」


 ミリア――ではない、別の回復役が必死に魔法を使う。


 だが、明らかに間に合っていない。


「前はこんなんじゃなかっただろ……!」


 誰かが吐き捨てる。


 その言葉に、全員が一瞬だけ黙る。


「……あいつが、いたからか」


 小さく呟かれた一言。


 今度は、誰も否定しなかった。


「バカ言うな……!」


 ガルドは叫ぶが、その声には力がない。


「あいつは無能だ。いなくなって困るわけねぇ」


 ――本当に?


 誰もが心のどこかで思っていた。


 だが、それを口にする者はいない。


「……くそっ!」


 苛立ちをぶつけるように剣を振るう。


 だがその動きは、どこか雑になっていた。


 歯車は、確実に狂い始めている。



「ここが街です」


 ミリアが指差す。


 石造りの門。その先には、賑やかな街並みが広がっていた。


「へぇ……」


 レイは少しだけ目を細める。


 久しぶりに見る、人の多い場所。


「この後、どうするんですか?」


「とりあえずギルド行くかな」


「でしたら、ご案内します」


「いいのか?」


「はい。そのくらいはさせてください」


 ミリアは微笑む。


「じゃあ、頼む」


 レイも軽く笑い返した。


 並んで街へと入る。


 その時――


 すれ違いざま、数人の冒険者がひそひそと話す声が聞こえた。


「聞いたか? ガルドたち、かなり苦戦してるらしいぞ」


「マジで? あのパーティが?」


「ああ。なんか調子崩してるとかで――」


 レイは、足を止めなかった。


 ただ、少しだけ口元が緩む。


「……そうか」


 小さく呟く。


「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない」


 首を振る。


 振り返ることはない。


 もう、自分の道は決まっている。


「行こう」


「はい」


 二人はギルドへと歩き出す。


 ――その頃、崩れ始めたパーティは、まだ気づいていなかった。


 自分たちが、取り返しのつかない選択をしたことに。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


物語は、静かに結末へ向かっています。

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