崩れ始めた歯車
第2話です。
違和感は、もう始まっている。
「ちっ……なんだよ今日は、やけに数が多いな」
森の奥。
ガルドたちのパーティは、苛立ちを隠せずにいた。
「前はこんな苦戦しなかったよね……?」
弓を構えたメンバーが、不安そうに呟く。
「気のせいだろ。さっさと片付けるぞ」
ガルドは吐き捨てるように言い、剣を振るった。
だが――
「ぐっ……!」
思ったよりも動きが鈍い。
ウルフの一撃を受け、体勢を崩す。
「ガルド!」
「回復!」
慌ててミリアが回復魔法を放つ。
淡い光がガルドを包む――が。
「……あれ?」
回復量が、明らかに足りない。
「おいミリア、ちゃんとやってんのか!?」
「や、やってるよ! でも……!」
ミリアの声が揺れる。
今までなら、もっと安定していた。
こんなギリギリの戦いにはならなかったはずだ。
「くそっ……なんでだ」
ガルドは舌打ちしながら、なんとかウルフを斬り伏せる。
戦闘が終わる頃には、全員が息を切らしていた。
「……こんなの、初めてだ」
誰かがぽつりと呟く。
その場に、重い沈黙が落ちた。
「……あいつのせいか?」
ぽつりと、誰かが言った。
「は?」
「レイだよ。あいつ抜けてから、おかしくなってる気がする」
「バカ言え」
ガルドは即座に否定する。
「あんな無能がいなくなったくらいで変わるわけねぇだろ」
だが、その声にはわずかな迷いが混じっていた。
「でも……」
誰も強く否定できない。
それが答えだった。
一方その頃。
「……いいな、このスキル」
レイは、森の中で新たな魔物と対峙していた。
目の前にいるのは、ウルフよりも一回り大きい魔物――グレイウルフ。
『対象:グレイウルフ
スキル:強化牙』
「へぇ……攻撃特化か」
レイは軽く肩を回す。
「コピー」
『コピー完了』
瞬間、力が腕に集まる感覚。
「……わかる」
どう動けばいいか。
どう振れば最大の威力が出るか。
全部、自然と理解できる。
「行くぞ」
踏み込む。
グレイウルフの突進を紙一重で避け、その懐へ。
「はあっ!」
剣を振る。
バキッ――
硬い骨ごと、斬り裂いた。
「……強っ」
思わず笑いがこぼれる。
息もほとんど乱れていない。
「前の俺じゃ、考えられないな」
地面に倒れた魔物を見下ろす。
「これが……俺の本当の力」
ふと、ガルドたちの顔が浮かんだ。
「今ごろ、どうしてるかな」
少し考えて――やめた。
「……まぁ、どうでもいいか」
くるりと背を向ける。
「俺は俺で、やることがある」
もっと強くなる。
もっとスキルを集める。
その先に何があるのか――
「試してみたくなるよな」
レイは笑い、再び森の奥へと歩き出した。
その頃、ガルドたちは――
「くそっ……! こんなはずじゃ……!」
さらに数を増した魔物に囲まれ、追い詰められていた。
かつての余裕は、もうどこにもない。
そして誰も、口には出さない。
――本当は、気づいていた。
“何かが足りない”ことに。
それが何かを、認めたくないだけで。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
元パーティにも、少しずつ“違和感”が出てきました。
この先どうなるのか、ぜひ見届けてください。
「続きが気になる」と思っていただけたら、
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