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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
到着、ダンジョンの町ミルドワ
92/99

91話 強敵の予感

誤字脱字は追々修正します。

と言っても最近投稿が遅くなるくらいに忙しいのでおかしな部分があったら教えてもらえる助かります。

 地の底から湧き上がる地響きと共にダンジョン周辺は局地的な揺れに見舞われるが、地鳴りに比べて揺れ自体はそこまで強いものではなく、それもすぐに収まる。

 だが、その揺れは居合わせた者達に動揺を与え、それは行動へと現れる。

 早朝のこの時間は、まだ経験の浅い駆け出しの冒険者達が多く集まっており、彼等は大急ぎで今さっき通った後方の扉へと走り始める。


「地震にしては変だったけど・・・」


 エミリアも訝しげな表情でダンジョンの内部へと続く洞窟を注視し、いつの間にかその手には一本の杖を握っている。

 それはこの場に残っている少数の冒険者達も同様で、ダンジョンの入り口から現れるかもしれない何かを警戒しているかの如く、各々の手には武器が握られている。


「リエルさん、念の為、すぐに行動できる心構えとギルドカードを取り出せる用意をしておいて」


「え?わ、分かりました」


 この不可解な現象に直面して、彼等が真っ先に留意したのは魔物の集団暴走(スタンピード)の可能性。

 もし今、後ろの扉が開いているこのタイミングで魔物の群れが大挙して押し寄せてくるような事があれば、それはいとも簡単に壁の外まで広がってしまうだろう。

 それは戦う備えを持っていない一般市民に危険が及ぶ事を意味している。


 で、あるならば、せめて扉が閉じ切るまでは魔物の進行を食い止めようという決意で彼等はここに残ったのである。


 別にその行動には冒険者としての義務なんてものは存在しない。

 例えこの場から避難したとしても、余程のことがない限りは誰もその責任を追及する事はできやしないのだ。

 では、どうして彼等はわざわざそんな危険な役回りを演じているのか?

 そうさせたのは彼等自身、冒険者として生きてきた中で、各々が見い出した矜持に従ったからに過ぎなかった。

 それに、この巨大な防壁は扉が閉ざされてしまっても、ちゃんと壁の外へ出る事可能な作りになっているので、扉が開くまで出られないという訳ではないのだ。


 壁には地上から六メートルほどの高さ場所に幾つかの扉が設けられており、ダンジョンから戻る際にはここを通って外へと抜ける方式をとっている。

 では、どうやってその高さまでたどり着くのかと言うと、その答えは内側の壁面に書き込まれた法陣にある。

 その法陣にギルドカードをかざすと、法陣に込められた術式が発動し、魔力で形成された足場が壁面に沿って階段状に展開されるようになっている。

 その為、入る時とは違って出る時は自由に出る事が可能な作りになっているのだ。




 ダンジョンから現れるかもしれない魔物の大群に、壁の内側に残った冒険者達が神経を尖らせているなか、魔法陣の事を知らないリエルはエミリアの言葉に従い、ギルドカードがいつもの位置にあるかの確認している。

 一方でミヤビはと言うと、先ほどの現象とほぼ同時にクエレが見せた慌てぶりを気にしているらしく、リエルの耳元にいるクエレを見ながら、ミヤビはリエルへと念話を送る。


 〖してリエル。クエレが慌ててた理由はなんだったんじゃ?その様子では結構重要な情報みたいじゃが〗


 〖あ、うん・・・それなんだけど、どうやらこのダンジョンのどこかに神法具があるかもしれないんだって〗


 〖ほう・・・〗


 リエルの言葉を受けたミヤビはスッと目を細め、先ほどの揺れとの関連性を考える。


 〖これは先ほどの揺れは偶然の出来事では無さそうじゃな。余りにもタイミングが良すぎる〗


 〖それについて聞きたいんだけど、ダンジョンの中にクエレの探し物がある可能性って本当に在り得るの?〗


 〖質問の意味がわからん。クエレはそう言っておるんじゃろ?〗


 〖あー、えっと、あたしが言ってるのはそういうことじゃなくて、故意にダンジョン中に運ぶ以外でそんな事有り得るのかなって。だって、落としたものがダンジョンの中に入り込むなんて変じゃない?〗


 〖あー、そういう事か〗


 〖どういう事ですか?私にはリエル様が仰っている意味が分からないのですが〗


 〖あの、すいません。私も話が全然見えて来ないのですが・・・そもそも神法具って何ですか?〗


 〖あー、ブランにはちゃんと説明してあげるから後でね。それでミヤビ、どうなの?〗


 〖順を追って説明す――〗


 ガシャァァァン――・・・


 ミヤビの説明をしようとしたら時、背後の扉が完全に閉じる音が聞こえてくる。すると、警戒していた冒険者達から武器を収め始める音が聞こえ、続けて話し声が上がる。


「これで後ろは問題ないな。ダンジョンの方も変わった事が起きる様子はなさそうだし、一安心といった所か」


「大事にならなくて神に感謝ですね」


「おう。まっ、俺は神なんて信じてないがね!」


「貴方にも何れ分かる時がきますよ」


「ガハハッ!俺はそういう機会には恵まれないままこんな歳になっちまったがな!」


 その場に残った冒険者のうち、ベテランの年季を感じさせる二人組の男女は軽い会話を交わしながら、まるでさっきまでの緊張を解すかのように笑ってみせる。

 その姿を見て、まだ武器を握ったまま警戒していた他の冒険者も、安堵の息をついて武器を収めるとそれぞれ口を開き始める。


「はぁ~大事ならなくてよかった」


「ほんとに!」


「いや~ほんとよかったよ。正直なところ魔物の集団に打ち勝てる自信はなかったからさ」


「は?何それ?逃げなかったあんたをみて頼りになるなーって思った私が馬鹿みたい」


 どうやらこちらの三人は揃って一組の様で、彼等は如何にも駆け出しといった雰囲気を見せている。

 それと、話の様子からすればいつも一緒に行動しているという訳でもないらしい。

 これは俗に言う野良パーティというやつで、普段はチームや固定のパーティに属さない単独の冒険者でも、一時的に仲間を募って行動を共にすることがある。

 そうする事で危険が伴う場での活動を集まった者同士で足りない部分を互いに補い合い、安全性と効率化を図るという訳だ。

 そしてこの三人組のリーダーは槍と盾を背負った男、少し気弱な発言をしていた彼らしい。


「だ、だってよ・・・」


「あんたがしっかりしないとこっちだって困るんだからね。こんな所で死ぬなんて私は嫌だからね」


「リーダーの指示が大事なのは一理あるかな。死んじゃってたら治療魔法できないし。まぁ僕は自分の役目は全うするつもりだからちゃんとしてね」


「お、おう!任せておけ!」


 頼りになるのかならないのかよく分からない男性と勝気な女性、最後にさばさばした性格の男性というデコボコパーティーを、さっきの二人組も笑って見ている。


「お前さん達は初めて見るが、その様子だとまだ冒険者を初めてそう長くないんじゃないか?」


 二人組の一人に声を掛けられると、三人組パーティの勝気な女性がキツイ目つきでその男を睨み返す。


「何よ!おじさんには関係ないんじゃない!?」


「ちょっと、やめなよ。失礼じゃん」


「ガハハッ!!そんな事はないぞ!冒険者同士の繋がりってのは大事にした方がいいと忠告しておこう。まぁそれはさて置き、提案があるんだが聞いてもらえるか?別に突っかかるつもりはないからな!」


 女性の攻撃的な態度を簡単にいなすと男はそのまま言葉を続ける。


「残ったのは俺達とお前さん達、それとそっちの従魔連れの嬢ちゃんと魔術師殿の7人だけ。残りはさっきの地震にビビッて扉の外だ」


「それがどうかしましたか?」


「何、簡単な話さ。さっきの揺れの原因が分からない以上どんな異変が起こってるか予想ができない。そこでどうだ?途中まで一緒に潜る気はないか?」


 男の言葉に怪訝そうな顔をする女性だが、残り二人の表情からは悪い感情は見られない。


「なんで駆け出しだと分かる私達にそんな提案するのよ。そっちにメリットがあるとは思えないわ」


「俺は別に、駆け出しだから使えないなんて考え方をしてないだけだぞ。誰だって最初は駆け出しから始まるもんだろ。そういう奴等の手本になるのも先の者の役目だと俺は考えてる。この提案も年寄りのお節介くらいに考えてくれ」


「素直じゃないですね。心配だから付いて行くって言えばいいじゃないですか」


 男の言い回しがまどろっこしく感じたのか、もう一人の男が簡単に連れの心情を露わにする。


「ガハハッ!まぁそういう事だ坊主達!それでどうだ?あんた達もこの話は悪くないと思うんだが?」


「確かに、いつもとダンジョンの様子が違う以上、その方が安全なのは事実ね・・・リエルさん、どうする?」


「え?私に聞きますか?」


「そりゃそうよ。私一人で決められることじゃないわ」


「うーん・・・そうですね・・・」


 〖やめておけ。妾達の事を知る者が増えるのは好ましくない。不可抗力とはいえ、今日はナシタとブランが盛大にやらかしてくれたんじゃ。この提案は断る方が無難じゃろう〗


 〖ぐっ!〗


 〖むぅ~〗


 〖う~ん・・・〗


 ミヤビの言葉にナシタとブランは悔しそうな反応をしているが、リエルの方はその助言を受けて、どうしようかと考える素振りを見せている。


「すいません。いい話だとは思いますけど、私は断らせて下さい」


「どうしてだい?さっきの様子だと、貴方もダンジョンは初めてのように見えたけど、何か理由でも?」


 リエルの答えが意外だったのか、二人組の方の女性は理由を尋ねてくる。

 だが、リエルには別に不満がある訳ではないので、その問いへの答えは難しかった。


「まぁいいじゃねーか!人には事情があるもんだろ。無理に誘うのは野暮ってもんだ。連れが踏み込んだ真似して悪かったな嬢ちゃん!」


「いえ、こちらこそすいません」


「そうなると一緒に行動してる私もパスって事になるわね」


「そうか・・・それなら仕方ないな」


 エミリアも提案を辞退する事を告げると、男性は引き留めることもなくそれを受け入れる。


「それで坊主達はどうする?」


「俺達は参加させてもらおうかと。正直ダンジョンのノウハウは聞いただけの知識しか持ち合わせていないので、参考にさせて貰えれば助かります」


「言っておくけど、収穫は均等配分よ」


「・・・少しは遠慮した方が良いと思うけど」


「なんでよ!」


「ガハハハっ!構わん構わん!」


 三人組の方はどうやら一緒に行く提案を受け入れるらしい。

 経験の浅い彼等にとってこの提案を蹴る理由は無く、ベテランの冒険者も彼等のことを案じての提案という部分が強かった事もあり、快諾してくれたことに安堵の笑みを見せている。


「さて、一緒にダンジョンに潜るんだ。自己紹介はしておかないとな!俺はグラーグ!こっちは連れのソレイユ。言っておくが夫婦ではないぞ!」


「よろしくね」


「その夫婦のくだりって何か意味があるの?」


「おう!言っただけだ!」


「言う必要無いじゃない!何なのその情報!?」


 軽く頭を下げて礼儀を示すソレイユだが、三人組の方の女性は何かと突っかかって行くタイプのようで、ただの自己紹介のはずなのになかなか話が進まない。


「僕はノア。あっちが一応リーダーのアルベールで、五月蝿いのはイザベラ」


「五月蝿くないわよ!」


「自覚した方が良いと思うよ」


「てゆーか、そういうのはリーダーである俺がするもんじゃないのか?」


「待ってたら話が進まなそうだったから」


「ガッハッハ!中々仲睦まじい感じで良いじゃないか!お前さん達、結構相性が良いみたいだぞ?ガハハハ!」


「はぁ?貴方どこに目付けてるのよ。意味わかんない」


「イザベラに同意かな」


「大丈夫なんだろうか俺達・・・不安だ・・・」


 アルベール達は口々に否定の言葉を並べているが、実はこのグラーグという男、知っている者からは”お節介焼きのグラーグ”と呼ばれている人物で、古参の冒険者にはもちろん、駆け出しの冒険者達の間でも結構名前が知れている程の有名人なのだ。

 そのお節介焼きなところも特徴の一つだが、この男の最も優れた才能は人を見抜く力にある。

 パーティ戦において人間同士の相性はとても重要で、相性が悪い者同士では連携も上手くいく筈もなく、本来の力を十分に発揮するのは難しくなってしまう。

 グラーグは長年の経験で人間同士の相性、その良し悪しを推し量る力が非常に優れていた。

 その為、彼の元にはパーティについて悩みを持つ者が相談に来るなんてことも少なくない。


 だが、そんな有名人であるにも関わらず、稀なことにこの場に居合わせた者の中に彼の事をしる者は、今回誰もいなかった。


「賑やかな事で・・・っと、人のこと気にしてる場合じゃなかったわ。リエルさん、ダンジョンに潜る前に少し教えておかないといけない事があるから付いてきて」


「あ、はい。分かりました。それじゃ私達は失礼します」


「おう!そっちも気をつけるんだぞ!こんな事が起きたのは俺の知る限りじゃ数十年前に一度あったきりだからな」


「はい、有り難うございます。そちらもお気を付けて」


「じゃ、お互い頑張りましょう」


 エミリアは軽く手を上げ、リエルはグラーグにお辞儀をし、集団から離れて壁の方へと歩いて行く。


「さて、先にこの壁の魔法陣についてだけど、さっき私がギルドカードをすぐ出せるようにって言ったわよね」


「ええ。あの事とこの魔法陣に何か関係あるんですか?」


「もちろん。まぁみてて」


 そう言うと、エミリアは魔法陣についての詳しく説明してくれた。

 この機能にはミヤビも驚いたようで、しきりに魔法陣を調べさせろと言い出すほどだ。

 他にもダンジョン内の転移法陣の事、罠の存在や特殊なギミックなど、ダンジョンに挑む上で注意すべき点をエミリアは丁寧に教えてくれた。


「まぁ最初注意するのはこのくらいかな。最後にもう一つ。これは絶対に注意しないといけない事。それはボス級(レイド)魔獣(モンスター)の存在」


「ボス級魔獣・・・かなり強い魔獣って事ですか?」


「簡単に言えばそうね。階層の節目なんかで稀に現れる事があるらしいんだけど、その個体は個人で相手にできるようなレベルじゃないって話よ」


「ん?と言う事はエミリアさんも見た事はないと?」


「そうね。ただ、このダンジョンでも過去に出現した事があるそうだから、楽観視しちゃダメよ」


 〖ミヤビ、知ってた?〗


 〖ん、恐らく守護者の事じゃろう。ダンジョン核が溜め込んだ魔力で取る大きな行動は二つ。一つは自身――つまりダンジョンの成長行動。もう一つが、自身を守る為の強力な魔物の生成、後者で生み出されるのが守護者に当たるかのぉ〗


 〖やっぱり強いの?〗


 〖ピンキリじゃな。そのダンジョンの成長具合にもよるから何とも言えん〗


 〖腕が鳴ります!ぜひ遭遇してみたいです!〗


 〖物騒なこと言わないでよ。ナシタが言うと本当に出そうでなんかやだ〗


「どうかした?」


 ナシタの発言にげんなりした表情をしてしまったリエルにエミリアは不思議そうな様子で声を掛ける。


「あ、いえ!何でもないです!ボス級魔獣には要注意って事ですね」


「?・・・まぁそう言うことね。さて・・・説明はこの辺にしておいて・・・あっちはもうダンジョンに入ったみたいね」


 腑に落ちない思いのエミリアだが、余り此処に長居してもという考えもあった為、すぐに気持ちを切り替えてダンジョンの入り口に目を向ける。


「リエルさんが良ければ、私達もダンジョンに入ろうと思うけど、大丈夫かしら?」


「えぇ。問題ないです」


「そう言うと思った。なら早速行くとしますか」


 リエルの意思を確認したエミリアは、ダンジョン入口へと向かって歩き始めると、リエル達もその後をしっかりとした足取りでついて行く。

 その姿に恐怖や不安といった感情は微塵も感じられない。


(ギルドでの騒ぎといい・・・やっぱりこの子、只者じゃないのはほぼ間違いなさそうね。ほんと、何者なのかしら)


 エミリアの心の中ではリエルへの興味が順調に膨れ上がっていく。


 入口まで来たエミリアはポーチから杖を取り出すと、それをしっかりと手に握りしめる。


「そういえば、リエルさん。腰の矢筒からみて貴方が使うのは弓だと思うけど、本体はポーチかどこかにしまってるあるの?」


「はい。ここに――」


 その時――


 ――グルゥウゥオオオオオオオオオオォォォォ!!!


 ダンジョン内部から轟いた巨大な咆哮にエミリア、リエル達も思わず動きを止めてしまう。

 その大気をも震わせる程の雄叫びを聞いて、ミヤビとブランは瞬時にその声の主人の種族を口にする。


 〖これはドラゴンの咆哮じゃ!〗


 〖ド、ドラゴンの声です!〗



お疲れさまでした。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


職場の火災報知器が雨漏りで誤作動した!

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