81話 東の街道にて
誤字脱字は時間があるときに修正します。
呪いの掛かった武器は大抵の場合使う者に過剰とも言えるような代償を要求してくるのが普通なのだが、中には強力な呪いの力を宿しているのにも関わらず、使用者に悪影響を及ぼさない物も稀に存在する。
何故そんな現象が起きるのか理由は明らかになっていない。
そしてこの武器屋に静かに佇んでいるこの大鎌も数少ない例外の一つであり、強力な呪いの力と自我を持ち合わせた特異な物であった。
(あの者達は非常に興味深い。特にあのハーフエルフの娘からは隠された強い魔力の片鱗が垣間見れる。連れていた魔獣も私の知識から外れた能力を有していたようだし、先日感じた膨大な魔力と関係あるのだろうか?)
暗い店内のガラスケースの中で大鎌はカタカタと魔法金属で出来たその刀身を震わせている。
(不便な事だ。自由に動く事がままならない体というのは・・・余り騒ぎは起こしたくないんだがね。どうしたものか)
大鎌は誰かに語るわけでも無く、ただ静かに機会を待つ。
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一夜明け、いつもの様に朝早くからミヤビに起こされたリエルは早々に身支度を整えて部屋を後にする。
リエルは受付にいるエイダにお世話になった事への御礼と次の町に向かう事を伝えてチェックアウトをお願いする。
突然の話に驚いたエイダだが、引き止めるような野暮な真似はせず、代わりに急いで家族のみんなを呼びにいく。
最初に飛んで来たのはシエラだった。シエラはミヤビに飛びつくと、“行かないで”と駄々をこね始める。
続いて現れたカレンがそれを見かねてミヤビにしがみ付いているシエラを引っぺがすのだが、ミヤビと離れ離れになってしまう事実に堪らずシエラは泣き出してしまう。
そんなシエラにリエルはまた来るから泣かないでといい頭を撫でて見せると、ミヤビもシエラを名残惜しむかの様に体を擦り付けている。
そのおかげか泣き叫んでいたシエラは大きく一度鼻をすする音を立てていた静かに頷いて見せる。
シエラが泣き止んだ所でリカルドとアンナ、少し遅れてメルヴィンがやってくるとリエルは手短に別れを伝え、また泊まりに来る事を約束した後、リエル達は宿を後にする。
次に向かったのは冒険者ギルドだ。
建物に入るや否やキャスに声を掛けられるリエル。まずは昨晩書き上げた手紙のポーチから取り出すと、それの配達をキャスにお願いする。
快く引き受けてくれたキャスは手紙を受け取ると他に要件が無いか問いかけてくる。
そこでリエルは次の目的地であるミルドワへとこれから出発する事を伝えるのだが、それを聞いたキャスの表情は芳しく無い。
何かまずい事でもあるのかとリエルは聞いてみるが、キャスから返ってきた答えは先日ベルセフォネから聞かされたミルドワという町の治安の悪さ、そこを納める領主の良くない話であった。
十分に気をつける様に念を押してくるキャスにリエルは素直に頷いてみせると、ある程度リエル達の事情を知っているキャスは“お父さんにお会い出来る事をお祈りしています。何か困った事があったら連絡して下さい”と協力の意思を示し、リエルは感謝の言葉を返しギルドを後にする。
東門へと向かう途中にいつものサンドイッチの屋台に足を運び、いつもより多めにサンドイッチを購入し、リエル達はミルドワの町を目指してバランディアに別れを告げるのだった。
のんびりと街道を歩いているリエル達。クエレはいつもの胸ポケットではなく、ナシタの背中に乗って屋台で買ったサンドイッチを頬張っている。
それについて文句を言わないあたりナシタもクエレと仲良くやれているのだろうとリエルは安心し、ポーチから初級の魔法教本を取り出すと歩きながらそれに目を通していく。
「折角朝早くに起きて町を出たのに、のんびり歩いておって良いのか?」
「ミルドワまでどれくらい距離があるのか分からないけど、まーまずはのんびり行きましょ。もちろん時間は有効に使いながらね」
リエルは教本を読み進めながら魔力を操作してみたり、よく分からない教本の表現をミヤビに質問してみたりと、魔法習得に意欲的な姿勢を見せている。
まずは幅広い用途が見込める炎の魔法に重点を置いた訓練を行っているのだがこれがなかなか難しい。
リエルは風属性に高い適正を持っている為、風の魔法を習得するのは比較的早い。だからこそなのか適正の無い、そして未経験の火属性の魔法となるとコントロールの勝手が分からないのだ。
ミヤビが天眼を使いながらリエルの魔力の流れを逐一観察しつつの訓練が功を制して、ようやくリエルは掌に小さな火球を安定して生み出せる程までに成長する。
「たかが【ファイアーボール】如きが【ウィンドウォーク】の時より手間が掛かるとはな。適正能力は重要という事じゃな」
「時間は掛かったけど、お陰で炎の魔法が使える様になったわ」
「おめでとうございます!リエル様!」
「うん、ありがとねナシタ」
「でも、そんなしょぼい魔法、リエルは使う事ないんじゃ無い?」
「しょぼいって・・・別に戦闘だけに使うわけじゃ無いし、火を起こす時にだって使えるでしょ?」
「うーん・・・まぁ無駄ではないって程度?」
「そう言うなクエレよ。しょぼかろうがリエルにとってはこれが初めての火属性魔法なんじゃ。微妙な魔法じゃろうが褒めてやるべきじゃろうが」
「・・・素直にお褒めてくれるのはナシタだけみたいね」
「私がリエル様の成長を喜ばないはずが御座いません!」
「ナシタは良い子ねー。お昼ご飯楽しみにしててね」
ナシタを撫でているリエルの口から出た一言を聞いて、直ぐに下手を打ったとを理解した二人は慌ててリエルのフォローを始めるが時既に遅し、出て来る言葉はリエルの機嫌を取るには至らなかった。
リエルに撫でられてルンルン気分のナシタとは対照的なミヤビとクエレ。だがミヤビの方は直ぐに気を取り直してナシタに問い掛ける。
「ところでナシタよ。妾達が眠りについた後も何やらやっておったが、クエレから教わった事は結局身についたのか?」
「中々難しいです。小さなコップ程度でもかなりの集中力が必要だと痛感した次第です。ですが、収穫はあったと思います」
「私が魔力のコントロールを教えたんだからできて当たり前よ」
「ほう?それはどういう意味じゃ?」
「これです!」「見せてやりなさい!」
リエルとミヤビは足を止めてナシタ達を見る。クエレがナシタから離れると、ナシタは微量な光を放ちながらその姿を人へと変える。なんの変哲も無い人化の術だが、今までと決定的に違う部分がある。
「ほほう。上半身は変わらんが真っ裸では無くなったか」
「そうです!これで私も人の姿で戦闘に加わる事が出来るという訳です!」
人型のナシタは上半身こそ何も纏っていないが、下半身には魔力で生み出した、簡素ではあるが丈夫そうなズボンがしっかりと纏われていた。
(どれ、良い機会じゃ。久々に確認してみるか)
ミヤビは天眼を使いナシタの能力を確認し始める。
結果、ナシタの能力は以前見た時と変わった所は特に無いが、人化の術が実用レベルになった事は非常にでかい。
(さて、問題はこっちか)
続けてミヤビはリエルへと視線を移して状態の変化を確認する。
【魔王の血族】
【天弓の魔王】
【風魔弓ストームブリンガー】
【魔力解放】
【天撃の魔眼】
【鑑定阻害:強】
【魔力転換:再生】
【????】
【従魔の契約:ミヤビ】
【従魔の契約:ナシタ】
【風耐性:強】
【地耐性:中】
【龍燐耐性:中】
【精霊の加護・風:中】
【魔力隠蔽:強】
【風魔適正:極】
【複合魔術適正:強】
【身体能力向上:中】
【弓術レベル:6】
【薬草学:3】
【料理術:1】
【バーストマジック】
ミヤビは天眼で得られたリエルの情報の中に、以前見られなかった能力がいくつか並んでいるのを確認する。【龍燐耐性】は仮面の男との交戦から丸一日眠り続けた際に獲得した物だと推測し、【魔力転換】は異常な再生能力の正体だという事も判断できたミヤビ。
だが、中でも一際ミヤビの関心を引いたのはリエルの魔眼、【天撃の魔眼】である。
(ふむふむ。眠っていた能力の覚醒と言ったところか。しょうもない能力も身に付いておるが・・・この魔眼は一体なんじゃろうな?聞いた事ないが)
「ナシタは兎も角、リエルよ。天眼で確認したところいくつか新しい能力を獲得しておるぞ」
ポーチから取り出した布でナシタの上半身をうまい具合に包み、ナシタの身だしなみを整えていたリエルはミヤビの言葉に反応して顔を向ける。
「どんな能力?」
「龍燐耐性と料理術、そして魔眼じゃな。名を天撃の魔眼というらしいが、正直効果の程は全く分からん。妾も聞いた事がない」
「私も初耳ね。何となく天弓の魔王の名前と関係ありそうな感じはあるけど、それ以外はさっぱりね」
「分からないならそこまで深く考えなくても良いんじゃない?」
「ん?そうか?父親に繋がる重要な手がかりになると思うんじゃがな」
ミヤビとクエレ、二人が揃って聞いた事がない物となれば当然ナシタも答えは持ち合わせていないし、リエルも同様である。ただ、どんな能力なのか分からないのなら無理して使うつもりも無いみたいで、リエルにはそこまで気にしている感じは無い。
「まだあたし達の旅は始まったばかりじゃない。コツコツやっていきましょ」
そう言ってリエルはナシタの服装をしっかりと整え終えると、次の町に向けて移動を再開する。
人型で行動する事に慣れるためにナシタはそのままの状態を維持し、座る場所が無くなってしまったクエレはリエルの頭の上に鎮座する。ミヤビも人化の術で姿を変化させて、リエルにサンドイッチを要求したりといったやり取りを交えながら一行はのんびりと先を目指す。
特に問題が起きる事なくリエル達は街道を歩いていくが、救出の依頼で訪れた森付近まで来た時、ミヤビの索敵能力が強い魔力の急速な接近を感知する。
それは上空から飛来しリエル達の前に立ちふさがる。
白いローブに身を包み、女性的な顔立ちをフードの下から覗かせているが、その背中には隠しようのない立派な翼が備わっていた。
お疲れさまでした。ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。
結構駆け足で話を進めたような感じが・・・雑だったと反省。




