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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ、ダンジョンのある町へ
81/99

80話 バランディアでの最後の夜

今回短いです。

誤字脱字は時間があるときに修正します。

 リエル達がガラスケースの中にある大鎌を見つけてから暫くすると、奥から店内に響いていた金属音が止む。


 〖・・・静かになったわね〗


 リエルは音が聴こえていた方に注意を向ける。


 〖人間が一人、こちらに向かってきてるようです〗


 〖うむ。タイミングから見て店の人間じゃろうな〗


 ミヤビ達はこちらに近付いてくる足音を優れた聴覚で捉え、リエル同様、現れるだろう方向に視線を向ける。


「おう、いらっしゃい。ちょいと手が離せなくてな。待たせて悪かった」


 現れたのはしっかりとした筋肉で包まれた太い腕、体格もがっしりとした屈強な中年男性で、仕事の途中だった為か至る所が煤汚れている。

 男は首からかけていた布で顔に付いた煤と汗を拭いながらリエル達の側まで来ると、興味深そうな様子で観察し始める。


「従魔のバンドを付けてるという事は、この二匹はもしかして嬢ちゃんの?」


「そうですけど、不味かったですか?」


「いや、珍しいもんだから聞いてみただけさ。うちの店に来る客にしては小さい子だと思ったが、お前さんもしかして冒険者なのかい?」


「まぁ一応」


 リエルが簡単に質問に答えると、男は持っていた布を首に掛け、リエルを見ながら申し訳無さそうに喋り始める。


「んー・・・そうなると、悪いがうちにはそのサイズに合う装備は置いてないぞ?武器の方も嬢ちゃんの細腕では短剣位しか無いが・・・」


「使うのはあたしじゃ無いのでお構いなく。訳あって纏まった数の武器が必要だった為、市場の人に聞いてこちらに来た次第です」


「成程、お使いみたいなもんか。それなら必要な武器種と数、予算を教えてもらえれば適切な物を用意させて貰うがそれで良いか?」


「折角なので色々見させて欲しいです」


「ん、そうかい?なら、そっちの棚に並んでるのが手頃な価格で手が出しやすいと思うぞ」


 男が指を指した場所には標準的な長剣や槍、手斧や盾が並べられていた。


「有難うございます。早速見せてもらおうと思います」


「おう。値段の割には良いものだと自負しているつもりだ。ゆっくり見てってくれ」


 男はそう言うとカウンターの中へ入り、置いてあった剣を磨き始める。


 〖あたし達も必要な物を探しましょ〗


 〖そうですね。ところで、如何程の数を購入する予定何ですか?〗


 〖この値段なら・・・各種の武器を1個ずつ買っても問題なさそうね〗


 〖では、その様に選ぼうと思います〗


 リエルとナシタは二人で武器を品定めしている中で、ミヤビは先程と変わらずガラスケースの大鎌を興味深そうに観察している。


 〖うーむ・・・〗


 〖ちょっと。ミヤビも良さそうなの探すの手伝ってよ〗


 〖んん?それくらい二人でできるじゃろうが全く。手の掛かる奴等じゃのぉ〗


 ミヤビはガラスケースの前から離れるとリエルの元へと近付いていく。


 並んでいる武器を見比べているナシタはとても上機嫌らしく、忙しなく尻尾をパタパタさせ、リエルの方も剣や槍を手に取ってみたりと普段使わない武器種を興味津々で眺めている。

 そんな二人を他所にミヤビは少し離れた所の棚に並んでいる商品に目を付ける。


(ふーむ。こっちの棚のヤツもいい品々じゃな。あくまで値段の割にじゃが。じゃが・・・)


 ミヤビは呪いの掛かったあの大鎌が気になって仕方がないのか、武器を探してる最中でもそっちに意識が引かれてしまう。


 〖リエル、あの大鎌についてどんな経緯があってそこに飾ってあるのか聞いてみてくれんか?〗


 〖何?まだ気になるの?〗


 〖見たところ呪い自体はかなり強力な物みたいじゃし、少し興味がある〗


 〖私には邪悪な気配しか感じられませんが、ミヤビ様がそこまで気にする様な物でもない気もしますが〗


 三人の視線が大鎌へと集中するのにカウンターにいた男も気付き、武器を磨いていた手を止める。


「悪いがそいつは売れねーぞ」


「これ、普通の武器じゃ無いですよね?」


 リエルの言葉に驚いた表情を見せた男はカウンターから出てくると、大鎌の前まで来てガラスケースに手を付くとその武器について語り始める。


「こいつは俺の爺さんがどこぞの冒険者から引き取った物らしいんだが、何でも呪いが掛かってる曰く付きの品だって事らしい。俺がそんな物騒な物処分しちまった方がいいって言ったんだが、頑なにそれを良しとしなくて、こうしてここに飾ってあるんだよ」


「そ、それは物騒な話ですね。でも、そんな物をこんな所に置いておいて平気なんですか?」


「今のところは特に異変は起きた事無いしな。この展示ケースに使われている素材には魔法金属【ディスペリウム】の上物が使われてる為かもしれん」


 ディスペリウムとは魔力を吸収して無力化する性質を持った金属で、魔剣などの武器が持つ強い魔力の影響を抑える目的で使われるのが一般的な金属である。

 自然界でも魔素が濃い場所なら比較的容易に採掘可能なポピュラーな金属ではあるが、その能力故に高純度の物は貴重で、取引される際の金額も非常に高い。一般的な武器屋などで扱っている物は大抵純度の低い、徐々に魔力を吸収していく程度の力しか持っていない物がほとんどである。


「この武器が呪いの武器だといっても、力の源である魔力を抑えられている状態では大した影響を周りに及ぼす事は出来ないんだろうな」


「成程」


 大鎌に余り興味のないリエルは適当に相槌をうって男の話を聞いているが、隣にいたミヤビはどうも納得がいかない様子。


 〖この程度の処置で何とかなるレベルの呪いではない筈なんじゃがな〗


 〖いいじゃない。あたし達には関係ないんだし。早く用事を済ませて明日の出発の準備を済ませちゃいましょうよ〗


 〖むぅ、残念じゃが仕方あるまい〗


 ミヤビは大鎌を調べる事を諦めガラスケースの側を離れて再びリエルの側へとやって来ると、なんともやる気のない表情で商品を見つめている。

 そんなミヤビをナシタは気にする様子はなく、それぞれ種類の違う武器を選び出してリエルに報告する。


 〖リエル様!決まりました!〗


 ナシタはリエルに伝わる様に欲しい武器を前足で指し示すと、それをリエルは一振りづつ丁寧に棚から取り上げてカウンターへと持って行く。


 カウンターにいた男はリエル達のやり取りを不思議そうに見ていたが、好奇心に耐えられずにリエルに問いかけて来る。


「もしかしてお前さん、魔獣言語が分かるのか?」


「ま、まぁ少しだけですけど」


「その年でテイマーなのも驚いたが、まさか魔獣言語まで理解できるとは大したもんだ。多分武器を選んでいたのもそっちのフォレストウルフみたいだけど、まさかその子が使うんじゃないよな?」


「そ、そんなまさか。この子じゃこの武器は扱えませんよ?た、ただこの子は優れた感覚を持っているので良さそうなのを選んでもらっただけですよー」


「ふーん。変わった能力をもってるもんだな」


 側から見ればリエル達の行動は普通とは言えない物だった為、疑問に思うのは当然と言えば当然である。

 納得したのかどうかはわからないが、男はそれ以上の質問をしてくる事はなく、武器の金額をリエルから受け取った後、商品の卸先について尋ねてくる。


「武器はどうやって運ぶつもりだ?手が足りなければ後日指定の場所に運ばせてもらうが?」


「持ち運びに関してはアイテムポーチが有るので大丈夫です。どうぞお構いなく」


「そうかい?そう言うなら構わんが・・・」


 リエルは購入した武器をポーチへしまい終えると、他に必要な物も思い付かないのでそのまま店を出ようと出口に向かい、ノブへと手を置く。

 去り際に何気無くガラスケースの方へリエルの意識が向けられるが特に変わった事が起きることも無く、リエル達は店を後にする。




 何事も無く買い物を終えた後は、日が落ちて暗くなって来ている市場を通り抜け宿への帰路を急ぐ。

 日持ちしない食材の売り尽くしを兼ねた値下げを行なっている店が目に付くが、リエルは購買意欲をグッと堪えて先を急ぐ。

 宿へと到着したリエル達の目に飛び込んで来たのはコロッケ騒ぎの時と同様の騒がしい行列であった。


 〖予想はしてたけど・・・〗


 〖あれは美味かったからな。早速妾達も食いに行くぞ!〗


 〖食いに行くって言っても、あんなに並んでるんだから直ぐには無理よ。ご飯は部屋に持って来てもらうように頼んで、明日の準備でもしながら待ちましょ。お婆ちゃん達に手紙も書かなきゃいけないしね〗


 〖そうですね。私もどうせ待つなら有効に時間は使うべきだと思います〗


 〖やむを得んな。なら急ぎ飯の用意を頼みに行くぞ!〗


 〖はいはい〗


 宿に帰って来た後は受付のカレンに食事を頼み、リエル達は早々に部屋へと戻る。


 リエルはポケットの中のクエレを部屋に放つとジャケットを脱いで椅子へと掛けて腰を下ろすと、ポーチから紙を取り出しペンを走らせ始める。


 人の姿で隣に座ったミヤビの方は、リエルのポーチに手を突っ込むとカップを二つ取り出し、時空魔法で保存しておいた球状の紅茶をカップへと注ぎ、一つをリエルの前に差し出す。


「ありがとミヤビ」


「うむ。どういたしましてなのじゃ。ナシタとクエレはどうする?飲むか?」


「いえ、私は大丈夫です」


「あ、私は頂くわ!」


 ミヤビがポーチからもう一つカップを取り出してテーブルの上に置いて紅茶を注ごうと指を動かすが、クエレがそれを制止する。


「ちょっと待った。そのカップだと私の大きさだと不便だから――」


 クエレは魔力を手に集めると、すぐさま丁度いいサイズのカップを魔力で形成してみせる。


「こっちにお願い」


「ふむ。流石に良くできておるな」


「あったりまえでしょ!」


「それも魔法で錬成した道具という訳ですか・・・」


 ナシタはクエレの手際に少々不満げな様子を見せるが、意外にもクエレはそれを鼻にかけるような事はせずにナシタに言葉を返す。


「そうよ?リエルの従魔であるあんたならこれくらいすぐに出来る様になるだけの潜在能力はあると思うわよ?」


「何?それは本当か?」


 クエレは紅茶を飲みながらナシタに魔力による武具錬成のコツを解説し始める。

 ナシタはクエレの説明を素直に受けながら魔力を操作して魔力の結晶化訓練に勤しみ始める。


 そんな二人のやり取りを見てリエルの心には驚きもあったがそれ以上に湧き上がる物があった。


(ふふふ、ちゃんと仲良くできるじゃない)


 リエルはミヤビが淹れてくれた紅茶を飲みながらクエレ達のやり取りを楽しみつつ、食事が来るまでの間のんびりと手紙にペンを走らせるのだった。



お疲れさまでした。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。



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