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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ、ダンジョンのある町へ
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78話 次の行先はダンジョンの町

誤字脱字は時間があるときに修正します。

 実り過ぎた畑の野菜を両手いっぱいに抱えてるリエルとカレン。


「こんなに持っていってどうするんですか?」


「流石にあの量はうちだけでは消費しきれませんからね。お父さんと相談して、ダメになってしまうくらいなら店に来て頂いたお客さんに食べてもらった方がいいという話になりまして、食事して頂いた方にはサラダの食べ放題サービスをする事にしたんですよ」


「確かにあれは・・・あれはちょっと食べきれる量ではないですね・・・」


「はい。リエルさんには申し訳ないですけど、捨ててしまうよりはずっといいと思います」


「元はと言えばあたしのせいですから、それをどう使ってもらおうと不満なんてありませんので気にしないでください」


 今朝の気まずい雰囲気が解消された事で、カレンとの会話にも淀みはなく、普段と変わらないリエルの姿がそこにはあった。

 カレンの後に続いてリエル達が宿の中に入ると、宿泊受付の方は兎も角、食堂の方はお昼時から少し外れてはいても半分以上の席が埋まっているのが見て取れる。

 カレンは少し急ぐ様に食堂の方へと向かうと、野菜を運ぶのを手伝っているリエルもそれに追従する。


「ちょっと待っててくださいね」


 カレンはそう言うと奥へと消え、リエルはそのまま食堂のカウンター付近でカレンが戻ってくるのを待っていると、直ぐに戻ってきたカレンはリエルが抱えている野菜を、持ってきたカゴへと移していく。


「手伝ってくれて有難うございます。昼食、召し上がっていきますか?」


 〖食べるぞ!〗


 〖私も!〗


 リエルが反応する前にミヤビとナシタが勢い良く反応する。


「じゃーお願いします」


「いつも通りお勧めセットで良いですか?」


「はい、大丈夫です。それと何か飲み物をお願いします。喉が渇いちゃって」


「では、食前茶をお持ちしますね。料理の方もお作りしてお持ちしますので空いてる席にお掛けになってお待ち下さい」


 カレンが再びカウンターの奥へと入っていったのを確認したリエル達は、結構な混雑ぶりを見せている食堂内で空いている席を探し始める。


「おや?リエルさん。こんな所で会うなんて奇遇だね」


「あ!ベルセフォネさん!これは意外な場所で会いましたね」


 声をかけて来たのはテーブルについて何かを飲んでいるベルセフォネだった。


「私は来たばかりで食事はこれからなんだけど、良ければ一緒にどう?」


「んーそうですね・・・では、折角なので御一緒させて貰います」


 ベルセフォネの誘いに断る理由はないと思ったリエルは二つ返事で答えると席へと腰を下ろす。

 ベルセフォネはリエルが座った事を確認すると軽く微笑み、手元の紅茶の様な色をした液体が注がれたカップを持ち上げて口へと運ぶ。

 リエルはこのまま待っているのも気詰まりしそうなので、料理を待つ間に以前聞きそびれた母親の話を聞いてみようと話を振る。


「ベルセフォネさんが良ければ、以前聞けなかったお母さんの話を聞かせてくれませんか?」


「ん?ああ、構わないよ」


 ベルセフォネも快く了承すると、カップをおいて何から話そうか考え始める。そこへ丁度良く食前茶を持って来てくれたカレン。

 リエルは御礼を言ってカレンからカップを受け取ると、カレンは二人を見ながら可笑しな物を見るような感じで声をかけて来る。


「ベルセフォネさんが誰かと一緒にいるなん珍しいですね。そしてその相手がリエルさんと言うのもの不思議な光景です」


「私だって好きでいつも一人でいる訳じゃないんだけどね」


「カレンさん、ベルセフォネさんとお知り合いだったんですか」


「そうですね。良くうちで料理を召し上がって頂いてる常連さんって感じですね」


「この宿の食事は美味しいからね。依頼で遠くに行ってる時は無理だけど、近くにいる時はよく足を運ばせてもらってるのよ」


「そういう訳です」


「へぇー」


 話を聞きながら、リエルは今受け取ったカップを口元へと運ぶ。

 紅茶の様な色をしているが味は全くの別物で、ほんの少しの苦味と香ばしい味わいを感じさせる未体験の飲み物に興味を示す。


「初めての味ですけど美味しいですね。何なんですかこれ?」


「そちらは焙じ茶と言って、特別高価な物では無いのですがこの辺りでは珍しいお茶でしすね。香ばしい味わいと飲み易すさが特徴なのでお出ししてみました。お口に合いましたか?」


「はい、とっても」


「それは良かったです。私は紅茶の方が好きなんですけど、お父さんがその味を気に入ったみたいで、わざわざお世話になってる商人の方に頼んで仕入れて来てもらってるんですよ」


「今では私もここに来た時は欠かさず焙じ茶を頼む様になってね。茶葉の方も自前で調達するようになったほどだよ」


「珍しい物って言ってましたけど、この辺で作られている訳じゃ無いんですか?」


「そうですね。私も詳しい事は知りませんが、サンゼル共和国から東、海を隔てた先の大陸にある国で作られている物だと聞いてますね」


「そんな遠くから・・・」


「なのでサンゼル共和国の方では手に入れ易い物ですが、こっちでは結構珍しいって感じらしいです。勿論商会によってはそういった物も取り扱っているので、こうしてうちでも提供出来る訳です」


「商人さんの行動力って凄いですね・・・」


「ふふふ、そうですね。さて、あんまり油を売ってるとお父さんに怒られちゃうので、この辺で。食事の方ももう少し待ってて下さいね」


 そう言うとカレンはテーブルを離れ、カウンターの方へと戻っていく。


 〖ふむふむ、東の大陸か。これは良いことを聞いたな。国の名前でも分かればなお良かったんじゃが〗


 〖何がですか?〗


 〖妾はこの辺りの地理をほとんど知らん。文化形態の違いから笑が地上にいた時とは異なる土地に落とされたのは分かる。じゃが、妾が暮らしていた土地がカレンの言っていた東の大陸だったのであれば、国の名前でも分かれば確信が持てるかと思ってな〗


 〖ですが、ミヤビ様は神の一人となってからは地上を監視するお仕事をしていらしたはず。どの様な仕事なのか正確には分かりませんが、監視と言うくらいなら地上の国の場所くらい簡単に知り得る事ができるのでは?〗


 リエルの視線はミヤビ達に向いており、焙じ茶を啜りながら二人のやり取りに耳を傾けている。


「その様子だとエマリエさんの話は少し待った方がいいみたいね」


「あ、すいません。どうやらミヤビがカレンさんが言っていた東の大陸の事で思うところがあるみたいなんです」


 ベルセフォネは軽く頭を左右に振るとお茶の入ったカップを手に取り言葉を返す。


「いや、謝る事でも無いわよ。食事をしながらでも話は出来るし、リエルさんも時間はあるんでしょ?」


 そう言うとベルセフォネはお茶を口にしながらリエル達の話が終わるのを待つ事にする。


 〖で、どうなのよ?〗


 〖ナシタの考え方は間違いじゃな。地上の監視には任される範囲があるんじゃよ。基本的に土地勘がある場所を割り当てられる故、妾が知っているのはあくまで世界の一部であり、全てを知る事は出来んのじゃ〗


 〖ミヤビの事だからサボってたのかと思ったけど、ちゃんと理由がある訳ね。ところで土地勘が必要な理由って何なの?〗


 〖異変を見つけた際それに対処する必要があるじゃろ。その時迅速に対応出来るようにする為じゃな〗


 〖あー、なるほどね〗


「お待たせしましたー。こっちがベルセフォネさんご注文のコロッケにカボチャスープ、サービスのサラダにライスです。そしてこっちがリエルさんが注文した分ですね。今日のお勧めメニューはロックベアステーキになります」


 給仕用のワゴンに料理を乗せてやってきたカレンが、非常に手慣れた素早い動きでテーブルの上に料理を移していく。


「では、ごゆっくりどうぞ」


 カレンは料理を並べ終えると、直ぐに別のテーブルへと料理を運ぶためにその場から離れていく。

 リエルは並べられた料理の皿からミヤビとナシタの分を手に取ると、それぞれの前へと並べなおす。

 厚切りのステーキが二枚乗せられた皿をみた二匹は、揃って尻尾をパタパタさせて見せる。


 〖取り敢えず先にご飯にしましょ〗


 〖異議なしじゃ!これも実に食欲をそそる匂いじゃのー!〗


 〖リエル様、お先に失礼します!〗


 〖はい、召し上がれ〗


 二匹が料理に齧り付くのを確認したリエルは椅子に座ると、ベルセフォネが面白いものを見るような目で自分を見ていることに気付く。


「ど、どうかしましたか?」


「ふふっ、いや何。リエルさん達がちょっと羨ましく思えてね」


「そうですか?ベルセフォネさんも知ってる通り、うるさいだけですよ?特にミヤビなんてすっごい我儘だし」


「それだけいい関係を築けているという意味だと私は思うよ?お互い言いたい事を言える関係っていうのは結構難しい事だからね。さて、料理もきた事だし、話は食後にしましょうか。せっかくの料理が冷めちゃうからね」


「はい、あたしもお腹すいちゃいました。ところで・・・」


 リエルは視線を落としてベルセフォネの前に並んでいる一つの皿に目を向ける。


「その白いやつが米で出来たライスですか」


「あら、リエルさんは食べた事ないの?」


「はい。わたしの村では小麦を使ったパンが主食でしたから、米って名前くらいしか知らないんです」


「確かに米を美味しく食べるにはちょっと手間が掛かるから、こういうちゃんとした場所でないと中々ね。でも、美味しいから一度食べてみる事をお勧めするわ。きっと気にいるわよ」


 そう言うとベルセフォネはコロッケをフォークで一口大に切って口に入れ、続いてライスを頬張ると、実に幸せそうな表情をリエルに見せてくれた。


 〖もぐもぐ・・・んぎゅ。米か。久しく食ってないがとても美味い物じゃ〗


 〖ミヤビは食べた事あるの?〗


 〖うむ。因みにじゃが、イナリズシという物があってな?その名の通り妾の好物の一つじゃな!作り方なら知っておる故作ってみたらどうじゃ?〗


 〖でも、ベルセフォネさんの話だと米って美味しく食べるのは難しいんでしょ?ちょっと作り方が分かってもあたしには無理じゃないかしら〗


 リエルもナイフとフォークを使ってステーキを切り分けると、その中の一つを口に入れて美味しそうに咀嚼している。

 そこでリエルは胸ポケットの中にいるクエレの事を思い出す。


「もぐもぐ・・・ベルセフォネさん、ちょっとお願いがあります」


「ん?・・・何かしら?」


 口の中の物を飲み込んだベルセフォネが何事かとリエルを見る。


「これから見せる事に驚くかもしれませんが、どうか騒がないで欲しいんです」


「リエルさんの事だからちょっと自信は無いけど・・・何だい?」


「この子です」


 リエルが胸ポケットのボタンを外すと、すかさず中からクエレが顔を出してリエルを見上げる。


「話は聞いてたけど・・・本当にいいの?この人間に私を見せて」


「ベルセフォネさんなら大丈夫。信用できる良い人よ」


「そう。なら遠慮はしないわ!私にもご飯を食べさせなさい!」


 クエレは胸ポケットから飛び出してテーブルに着地すると、切り分けられたステーキの皿へと一目散に走り寄る。

 皿へとたどり着いたクエレは口元に見えている涎を啜ると、迷いなく大き目に切られたステーキを選びだして齧り付く。

 暫く口をモグモグと動かした後、クエレの背中に生えている羽がピンっと張るのを見たリエルは、クエレが料理に満足していると判断する。


 クエレがテーブルに腰を下ろし、続けてステーキを頬張り始めるのを見たベルセフォネは確かな驚きを表情で露わにしている。


「何が出てくるのかと思っていたら・・・ピクシーとはね。始めて見る訳では無いけど、こうして人の作った料理を食べているのを見たのは初めてよ。しかも言葉を喋っている所からかなり知性が高い個体みたいだ。いや、驚いたね」


「名前はクエレって言うんですけど、この子もミヤビに負けず劣らず我儘で苦労してます」


「個性豊かな面々で楽しそうじゃない。本当、羨ましいわ」


 美味しそうに料理を頬張り続けるクエレを見て、リエルとベルセフォネも母親の話や冒険の話をしながらのんびりと食事を楽しむのだった。




 全ての皿が綺麗になった頃、二人は二杯目のお茶を飲みながら話しを続けていた。お茶のおかわりを頼んだ際に、テーブルの上にいたクエレを目撃したカレンが大声を上げそうになるハプニングが有ったが、リエルの従魔だと説明して事なきを得られた。


「私が知っているエマリエさんの事はこのくらいかな。私が子供の頃に会った切りで村にエマリエさんが滞在していた時間もそう長くなかったからね。それでも、あの時の光景は忘れられないよ」


 ベルセフォネの故郷の村を救ったリエルの母親と野盗の戦いの様子はさながら“この子にしてこの親あり”といった感じのものだった。


 エマリエの卓越した弓術を駆使した戦いぶりは野盗の一団に壊滅的な結果をもたらし、村の一画にクレーターが出来上がるほどの魔法まで使われたという。

 その後、倒した野盗団を全て縛り上げ、村の者が近くの町へ衛兵隊を呼びに馬を走らせている間、エマリエは逃げ出す者が出ないように捕らえた野盗団を見張っていたそうで、その時にベルセフォネがエマリエと知り合った事を語ってくれた。


「それってどれくらい前の出来事か覚えてますか?」


「そうだね・・・私が九才の時だから十七年前くらいだっただろうか」


「その時のお母さんって誰かと一緒でしたか?男の人とか」


「なるほど、お父上の事か。残念だけどその時のエマリエさんは一人だったよ。期待を裏切る様でごめんね」


「いえ、そんな。気にしないでください」


「所でリエルさんはこれからどうするの?ギルドで聞いた話から察すると別の町にも手がかりを探しに行くんでしょ?」


「取り敢えずお母さんの足跡を辿って、今は東に向かうつもりです」


「東と言うとサンゼル共和国ね。すると次の町はミルドワって事になるけど・・・」


 ここでベルセフォネは今日初めて訝しげな表情をリエルに見せる。


「ミルドワにはダンジョンがあるせいか素行が良くない者達がかなり多い。リエルさん達なら正直問題ない相手ばかりだろうけど、気をつけないといけないのはあの町の領主なのよ」


「領主様がどうかしたんですか?」


「正直尊敬できる様な人柄では無いわね。あの人の依頼はまともな物の方が珍しいのよ。裏ではかなり悪どい事をしてるって話で、関わらない様にしている冒険者は多いわ。リエルさんも気をつけなさいね」


「分かりました。覚えておきます」


「勿論困ったことが有ったら、私はいつでも連絡してもらって構わないわ。リエルさんの事だからもう受け取ってるんでしょ?コレ」


 そういうとベルセフォネは懐から水晶のはめられた一枚のプレートを取り出してリエルに見せる。


「はい。マルドゥクさんから頂きました。ベルセフォネさんも持ってるんですね」


「これは【コール・タブレット】っていって、最近発明された魔道具だって事は聞いた?」


「名前は初めて聞きましたけど、異世界から来た凄い人が作ったという事は聞きましたよ。唯、あたしはまだ使い方がよく分からないので・・・」


「良いわ、教えてあげる。いい?」


 リエルはベルセフォネに【コール・タブレット】の詳しい使い方を教わりつつ、未だ見ぬ町に期待を膨らませるのだった。


お疲れさまでした。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


熱いほうじ茶押し。好きなんですよねぇほうじ茶。

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