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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ世界へ。 バランディアの町編
73/99

72話 後日改めて

誤字脱字は時間があるときに修正します。


2018/2/21:最後にちょっと加筆しました。

 ギルド関係者と冒険者が人々を屋内へと誘導している様子を横目で見つつ、街の中を二人の兵士が全速力で疾走している。

 クラウスを呼びに行った兵士と、報告を受けた本人だ。

 ただクラウスが受けた報告は“大変な事が起きているので急いで駆けつけてほしい”というなんとも要領を得ない説明だった。

 兵士の様子から詳しい話を聞ける雰囲気ではなかった為、軽装の皮の胸当てを装着し、剣を差し急いで現場へと向かっている訳だが、道中街の様子を見ながらクラウスは判断を誤ったのではないかと後悔する。


(只事ではない様だが・・・なんという失態だ)


 だが今更後悔したところで仕方がない。間も無く衛兵所に到着する距離まで来ている以上、出来る事に全力で臨む決意を固めるクラウス。


 だが―――



 向かっている方向から突風が吹き抜けるかの如く、濃密な魔力がクラウスと兵士の全身を貫く。

 瞬間二人は足を止め、その視線の先にいるであろう存在に畏怖し、困惑し、絶望する。

 すぐにでも走ってきた道を引き返してしまいたい想いで思考が染め上げられてしまった兵士は、ガタガタとその場で震え出してしまう。


 情けないと思うかもしれないが、これは人間の感情を兵士が持っているなら止むを得ない反応だと言える。

 クラウスをして、その決意を一瞬で粉砕し、絶望を抱かせてしまう程の魔力にその身を曝されて、街のいち兵士が平静を保つのは不可能である。


「た、たいちょう・・・こ、これ、これはいった、いったい・・・」


 震える声で何とか言葉を発した兵士に対して、クラウスに言葉はない。だが、クラウスは再び動き出そうと止まっていた足を一歩踏み出す。



 次の瞬間――



 轟音が響き、大気が震えた――


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 轟音が響き渡った後の衛兵所の前は静けさに包まれていた。

 そこで最も存在を主張しているのは、淡い光を発するドーム状に展開された魔力の膜。

 中の様子は立ち込める砂埃に遮られて伺い知る事は出来ないが、所々に亀裂が見られる魔力の膜から砂埃が漏れ出してる。


 舞っていた砂埃が徐々に落ち着いて来ると、ドームの中に動く影が見えてくる。

 自身を魔法障壁で覆っているマルドゥクに、腰を落とし剣を地面に突き立てた姿勢のベルセフォネ。そして、薙刀を手に着弾点を見ているミヤビだ。


 そしてミヤビの視線の先では抉り取られた地面で魔力の粒子が宙へと霧散していくのが見られるだけで、標的にされた化け物は跡形もなく消え去っていた。


(とんでもない威力じゃな・・・村で見た時とだいぶ違うが、これがあの弓の純粋な力という事なんじゃろうか・・・)


 改めてリエルの力に驚くミヤビだが、肝心なことに気づく。


(むむ?リエルがおらんぞ!?)

「リエル!リエルよ!何処じゃ!?」


 目の前で弓を放ったはずのリエルの姿が何処にもないことに気づいたミヤビが、まだ土煙が立ち込めている中リエルを探して周囲に目を向ける。

【獣魔契約】でおおよその位置が特定できるとは言っても、周囲にはまだリエルから放たれた魔力が漂っている為、本人の位置を感知するには至らなかった。

 同様の理由で【魔力感知】でも引っかかる範囲が広すぎる為、ミヤビは視覚に頼るしかない。


 周囲を見渡しているミヤビに声が聞こえてくる。


「ミ・・・ミヤビ。こ、こっちよ・・・」


 聞こえてきた声の方へ顔を向けたミヤビは目を丸くしてしまう。

 それは粉々になった樽か木箱の破片の上でひっくり返っているリエルの姿が飛び込んできたからだ。

 魔弓の力を制御するのに集中していた為、発生した衝撃に耐えきれずに、リエルはミヤビの結界の外へと弾き飛ばされて出されてしまったのだ。


 目を丸くしていたミヤビも慌ててリエルの元へ駆け寄るともう一人、姿が見えなかった者がリエルの下敷きになっているのが確認できた。それはナシタだ。


 〖リ、リエル様。ご無事ですか?〗


 〖ナ、ナシタ!?なんでそんな所にいるの!?〗


 念話で声を上げるナシタに驚いたリエルは慌てて退いてあげようとするが、体に受けた負荷の所為でうまく体が動かせない様子。


 ミヤビは溜息をつくと、薙刀を炎に返し、マゴマゴしているリエルの手を掴んで引き起こす。

 ふらつく足取りではあるが、リエルは何とか立ち上がると、ナシタも起き上がって体を震わせている。


 〖何でお前はリエルの下で寝てたんじゃ?〗


 〖それを聞かれますか!吹き飛ばされたリエル様をお守りする為に決まっているではないですか!〗


 リエルが衝撃に耐えられずに体が飛ばされたのを見たナシタは直ぐに飛んでいった方向へ回り込んでクッションの役割をその身で担ったのだ。


 そんなナシタの行為に掛けられたミヤビの言葉は、ナシタを憤慨させるのに十分な一言だった。


 〖ナシタのおかげで大した怪我もしてないわ。ありがとね〗


 リエルは感謝の言葉をナシタに伝え、ナシタの頭を優しく撫でる。

【魔狼種】に属する【フォレストウルフ】の姿を取っているのに猫の様にゴロゴロと喉を気持ちよさそうに鳴らしているナシタを見てリエルも笑みを見せる。

 だが、そこでナシタがリエルの体の変化に気づいて声を上げる。


 〖リ、リエル様!?その瞳は如何なされたのですか!?〗


 〖え?〗


 〖なんじゃ?〗


 ナシタの驚いた様子に、ミヤビもリエルの顔を覗き込むと、その変化に気づく。


 〖リエル!お主その瞳はどうしたんじゃ!?〗


 〖え?え?何何!?〗


 リエルは自分の変化に気づいていないのかミヤビ達が驚いているのを見て表情に焦りが現れ始める。


 〖お主、片眼が戻っておらんぞ!今【魔力解放】を使っている訳では無いんじゃろう!?〗


 リエルが魔王としての力を行使するには【魔力解放】の能力を使う必要があり、その際には瞳が真紅ーー正確には眼球が黒く、中の瞳の部分が真紅に染まった状態に変貌するのだが、今のリエルは左眼だけがその状態を保ったままで、更に妙なのはその瞳には魔力の淡い光が揺らめいていたのだ。


 〖と、兎に角!そのままではあまりに目立つ!なんとかできんのか!?〗


 〖そ、そんなこと言われてもどうしたらいいかなんて分かんないわよ!?〗


 〖な、ならば仕方ない!少し不便かもしれんが我慢するんじゃぞ〗


 そう言うとミヤビは何もない空間に手を伸ばすと、空間にポッカリと黒い穴が開く。そこに手を突っ込むと、美しい模様が施された布地が引っ張り出される。


 〖取り敢えずこいつでそれを隠すんじゃ。それも目立つが今の状態よりは遥かにマシじゃ〗


 差し出された布を受け取ったリエルは、ミヤビに言われた通りに、左眼を隠す様に布を斜めに頭に巻き始める。すぐに巻き終えたリエルは、不安そうな表情でミヤビ達を見る。

 だがそこでも新たな問題が発覚する。


 〖・・・なんか輪郭みたいな物が見えるんだけど〗


 〖なんじゃと?というとそれはもしや・・・〗


 リエルの言葉に思い当たる節があったミヤビは自分の記憶の中を漁り始める。

 だが答えを見つけ出す前に後ろから声が掛けられる。


「とんでもない娘っ子じゃな!」


 声の主人はマルドゥクだったが、その後ろにはベルセフォネも一緒だった。


「あれ程の魔力とは――」


 リエルの様子を見たと同時にベルセフォネの言葉が途切れる。


「その布はどうしたの!?怪我でもしたの!?」


「よく見よベル。見れば至る所傷だらけではないか。一体どういうことなんじゃ?」


 慌てて駆け寄ってきた二人を見て自然と顔を顰めるミヤビ。


(これでは落ち着いて考え事もできんでは無いか・・・仕方がない)


 ミヤビが軽く咳払いをすると、マルドゥク達の視線はミヤビへと移動する。


「見てわかったじゃろうがこれが妾達が隠していた事の正体じゃよ。詳しい話をするにはここは少々目につき過ぎる故、ギルドに戻ってからでもーーと言いたいところじゃが、見ての通り今リエルはこの有様じゃ。妾としてはさっさと宿に戻ってゆっくりさせてやりたいのじゃが」


 ここでミヤビが宿を選んだのは、リエルの眼の事についてゆっくり考えたいという思惑があった為、ギルドのあの部屋ではなく、落ち着ける場所として、普段リエル達が利用している宿を選択したのだ。


「そ、そうじゃな。見たところかなり辛そうじゃし、後始末は儂等に任せて、嬢ちゃん達はそのまま宿へ戻った方がええじゃろう」


 ミヤビの言葉にマルドゥクは意を唱える事はなく、その提案を受け入れるのに時間は掛からなかった。


「すまんな。では明日ギルドへ赴く故、妾達は先に戻らせて貰うぞ」

 〖ナシタよ、リエルを運ぶには妾の服は少々汚れている故、お前に任せるが構わんか?〗


 ミヤビの体は血の沼に落ちた影響でドス黒いシミに塗れていたので当然といえば当然の配慮だった。


 〖あたしは大丈夫よ。歩くくらい問題ないわ〗


 〖嘘をつくでないわ。どう見たって立ってるのも辛そうではないか。以前も言ったがその傷は普通の【治療魔法】では癒し切ることは出来ん。大人しくナシタに運んで貰え〗


 〖リエル様!遠慮は無用です。どうぞ私の背におぶさりください〗


 〖むぅ・・・〗


 〖妾もこの汚れた格好でいつまでもいたくないんじゃ。さっさと――せいっ!〗


 ミヤビはリエルを軽く突っぱねると、バランスを崩したリエルがナシタの上に倒れこむ。もちろんナシタはそれを器用に衝撃を和らげる様に受け止める。


「では済まぬが後は頼むぞ」


「うむ。今回の件はこちらで詳しい話を聞いておくからそっちは心配せんでええぞ」


「ゆっくり休んでね」


 マルドゥク達と言葉を交わした後、ミヤビを先頭にして、その後をリエルを乗せたナシタが宿の方へと歩いていく。



その一部始終を上空から白いローブの女性が、背中から広がっている強靭な翼を羽ばたかせながら見下ろしていた。


お疲れさまでした。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


あと2話くらいしたらバランディアの町編は終わる予定です。

次の投稿は27日くらいで。

更新が遅くて申し訳ないです。

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