71話 魔王の片鱗
誤字脱字は時間があるときに修正します。
この話から魔法の強さの現し方を変更させて頂きます。
以前の話も随時直していくつもりです。
2018/2/17 ここまで修正しました。話の大筋などは変わってはおりません。ただ魔法の表現の仕方が変わっているので注意してください。読んで頂いてる方にはお手数おかけします。
ミヤビに薙刀を受けて幾つかの肉片へと変わり果てた未知の化け物は、地面に転がったまま動く気配はないまま、肉体を覆っていた黒い液体で道路に黒いシミを広げていく。
それを怪訝そうな表情で見ているミヤビ。
(仮面の男と関係があるのは間違いないようじゃが、奴が近くに居る気配は無い・・・か・・・。しかし、妾の感知を潜り抜けてこの場を観察しているという線も奴なら不可能では無いかもしれんし――)
姿の見えない仮面の男の事を警戒しながらも、目の前の相手に気を配り、ミヤビはかけらも油断はしていない。
化け物の一体から触手の様なものが大量に伸びると、機敏な動きでミヤビに向かって飛来する。
ミヤビは襲い来る触手を余裕を持って斬り払うと、追撃を仕掛けようと地面を蹴ろうとするが、切断した触手の動きに意識が向かう。
切り飛ばした先端部は地面に落ちると塵となって四散するが、本体から伸びている触手の方は、先に斬り伏せられた仲間の肉体へと伸びて絡み付き、自身の元へとその死体を引き寄せる。
すると、化け物の腹部に口を思わせる亀裂が現れるとそれは縦に裂け、引き寄せた赤黒い肉の塊に喰らい付く。
グジュグジュと不気味な咀嚼音を周囲に撒き散らしながら仲間の肉を飲み込んでいくその個体は、肉体を巨大化させつつ徐々に形状を変化させ始める。
「仲間を・・・食っている――いや、取り込んでいるのか!」
「何とも気色の悪い光景じゃな」
冷静なベルセフォネとミヤビに対してリエルとナシタはあからさまな顰めっ面を見せている。
そんな中、化け物の体は少し前とはまるで異なる姿へと変貌を遂げる。
左右に二本、計四本に増えた腕部、肉体もそれに合わせて一回り巨大化し、開いていた腹部には苦悶の表情に歪む顔が張り付き怨嗟の声を上げている。
『オオオオオォォォォ・・・』
頭部の顔で感情のない呻きを上げながら、四つに増えた光のない窪みはリエル達に向けられる。
そしてーー
『ヴォオオオオオオッッッ!!!』
「来るか!」
動き出した化け物に、ミヤビも薙刀を構え直して戦闘態勢を取る。向かって来る化け物は相変わらず動きは遅く、先程までと大して変わっていない。
目の前まで迫って来た化け物は二本の腕を振り上げ、ミヤビに向けて振り下ろす。
ミヤビはそれを薙刀の柄を使って頭の上で受け止める。
薙刀を通して二回の衝撃が立て続けにミヤビの体に響いてくるが、そのまま流れる様な動きで攻撃をいなして返しの斬り上げを伸びきった腕にお見舞いする。
だが、ここでミヤビも予想外の光景を目にする。
ミヤビが化け物の腕を斬り飛ばすつもりで放った斬撃は、無防備な腕に僅かにめり込む程度で止まってしまい切断するに至らなかったのだ。
『ヴォオオオオオオオオォォォ!!!』
「っ!!」
続けて放たれた化け物の足蹴りを紙一重の動きで躱しミヤビはもう一度、今度は胴体に向けて薙刀の横薙ぎを繰り出すが、その刃は化け物の肉体に多少食い込みはするが切断する事はかなわなかった。
『シャドオオォボオオルトオオオ・・・』
『ブラッド・・・プール』
そこへ別の二体がミヤビを取り囲む位置取りから、それぞれが異なる魔法が打ち出される。ミヤビは即座に反応し、その場を飛び退くことで、飛来する無数の弾丸から逃れるのだが、着地しようとしていた場所にもう一つの魔法が効果を表す。
「ぬあっ!?」
地面に足をつけた瞬間、ミヤビは足元の違和感でバランスを崩すとその場に沈み込み、瞬く間にミヤビの小さな体の腹部まで飲み込まれる。
『オオオオオオオオオオオオオォォォォ・・・』
『ヴァアアアアァァ・・・』
『ヴォオオオオォォォ・・・』
重い呻き上げながらミヤビに向かい迫ってくる化け物達。
大型の個体は身動きが取れないミヤビに近づくと、その二本の腕を強力な破壊力を生み出す事が出来るよう一本に融合させた巨大な腕を勢い良く振り上げる。
だが、その攻撃をリエル達が許さない。
「ミヤビ!」
リエルは躊躇うことなく魔力を解放し、溢れ出る魔力を素早くその手に集中させると、生み出された魔法を放つ。
回転する風の刃は瞬く間に目標へと到達し、振り上げられた腕を容易く切断して見せる。さらに追撃と言わんばかりのナシタが繰り出した強烈な飛び蹴りを受けて、化け物の巨体はバランスを崩して仰け反り――
『ヴォオオオオアアアアアアアァァァァ!?!?』
――雄叫びおあげながら、大地に仰向けに倒れこむ。
「ミヤビ!」「ミヤビ様!」
リエルとナシタがミヤビの元に駆け寄ると、二人は足元の血の沼地に気をつけながらミヤビの薙刀をリエルが掴み、ナシタがリエルの体を尻尾で引っ張る形で沼地から引き上げ始める。
ベルセフォネの方もリエル達の動きを助ける様に、その素早い身のこなしで化け物の一体に肉薄し、腰から抜きはなった長剣と、二本の具現せし刃を使って繰り出す剣撃の煌めきが相手の肉体を削ぎ落としていく。
「《万雷の蒼蛇よ 我が言霊に集いて かの者を汝の糧へと昇華せよ 【連鎖の雷光】!》
マルドゥクの方も詠唱によって青白い稲光を呼び出し、その閃光が空を走る。放たれた魔法は【雷鳴の碑文第五節魔法】に記録される中位魔法。生み出された雷撃はマルドゥクの意思に従い目標にした残りの一体を貫くと、倒れている大型の個体にも連鎖して襲い掛かり、凄まじい放電音を周囲に轟かす。
『―――ッ!?』
『ヴォガァアアアアアアガガガァアアアアアァァァ!?!?』
マルドゥクの実力を示すかの様に、最初に標的になった個体は呻き一つ上げずに大地へと倒れると、肉の焼け焦げた臭いを含む煙を動かなくなった肉体から立ち上らせている。
しかし大型個体の方は耐久力で優った様で、絶叫を上げてはいたが、自身を襲っていた雷撃が消失すると、その体を起こそうと動き始める。
「片方は仕留めきった様じゃが、彼方はまだ動けるか。大した耐久力じゃわい」
前衛として動いている者達より相手との距離に余裕があるマルドゥクは、周囲の状況を確認する。
粉々になって散らばっている肉片の中に立つベルセフォネは、既に次の標的である大型個体に向けて剣を構えており、リエル達も同様、標的をベルセフォネと挟む形で反対側の位置で無事に立っているのがマルドゥクには見て取れた。
「ベルの方もどうやら終わった様じゃな。嬢ちゃん達も戦闘継続には支障はなさそうじゃし、問題はあの個体か。さて」
マルドゥクは自身の持つ解析能力を使い、相手にしている化け物が一体どの様な存在なのかを調べようと試みる。
(これはまた・・・とんでもない奴じゃな!)
マルドゥクに読み取る事が出来た能力は全てでは無いが、十分に危険な存在であることを示す要素に不足はなかった。
「皆気をつけるんじゃ!此奴は【耐性獲得】の能力を持っておる!既に【斬撃耐性:強】と【刺突耐性:中】、【魔法防御:中】を身につけておる!剣や弓による半端な物理攻撃は奴には通用せんぞ!」
マルドゥクは得られた情報を全員に聞こえる様に声を上げる。
だが、その声に反応した化け物はマルドゥクに向けて腕を伸ばすと魔法を唱える。
『ブラァッドオォオウォォオル・・・』
放たれた魔法は膨大な負の魔力を含む赤黒い血液のような物で巨大な壁を形成し、マルドゥクを押し潰そうとかなりの速度で迫ってくる。
意表を突かれたマルドゥクは反応が遅れ、回避行動を取る事が出来なかった。
だが、現役を退いたとは言え優秀な冒険者であったマルドゥクは落ち着いてそれに対処する。
自身を包む様に魔力障壁を展開して、迫り来る壁を防ぐべく身構える。
マルドゥクの障壁と血の壁が接触すると、魔力の対消滅で生じた衝撃エネルギーが周囲に土埃を巻き上げる。
「マルドゥクさん!?」
「マルドゥク殿!」
リエルとベルセフォネが吹き付けてくる土煙から顔を手で覆いながら、姿の見えないマルドゥクを案じて声を上げる。
「大丈夫じゃ。分かってはおったがあの爺いも十分な実力を持っておるわ」
ミヤビは自身の感知能力でマルドゥクが健在である事を察知し、それをリエルにも簡単に告げる。
その言葉に答えるかの様に、砂埃の中からマルドゥクの声が聞こえてくる。
「ふぅ。危ない所じゃったわい」
姿が見えてきたマルドゥクだが、負傷をしたのか、その額から一筋の血流が頬を伝っている。
マルドゥクが姿を見せたのもつかの間、化け物は既に次の動きに出ていた。
化け物の体から再び伸びてきた触手が、周囲にいるリエルやベルセフォネに向けて襲い掛かってくる。
「はぁ!」
リエルはアルターキエラに魔力を通して魔刃を形成すると、ミヤビがやって見せた様に迫って来る触手を防ぐべく弓を振る。
アルターキエラの魔力の刃が強力な所為なのか、触手の太さの問題なのかは不明だが、斬撃耐性を物ともせずにリエルは触手を斬り飛ばしてみせる。
ベルセフォネの方でも問題なく切断できているので太さの問題だったのだろう、二人は触手による攻撃を難なく凌ぎきる。
だが、問題はその後だ。
その触手は再び、焼け焦げた仲間の死体に伸びると自身の元へ引き寄せる。
「貫け!【光剣の刃】!!」
ベルセフォネは浮遊している具現せし刃に聖剣気を込めて撃ちだす専用の魔技を、仲間の死体を取り込もうとしている化け物に向けて放つ。今までの交戦の中で、聖なる気が込められた剣撃であれば通用する事を実感しているから故の攻撃である。
『ガァアアアアアアアアァァァ!!!』
その攻撃はしっかりと化け物の体を貫いて見せるが、声を上げながらも化け物は仲間の死体を取り込む事をやめなかった。
ベルセフォネに続いてリエルとマルドゥクもそれぞれ魔法を使っての攻撃を試みるが、その行動を阻止する事は敵わず、化け物が仲間の死体を完全に取り込み終えると、化け物はさらに禍々しく能力を発揮する。
化け物の体から立ち上り始めたのは瘴気。非常の高濃度の瘴気が体中から吹き出し始めると、それは瞬く間に周囲へと広がり始める。
「いかん!!」
いち早くその動きに気づいたミヤビは即座に周囲を覆う様に魔力の膜を紡ぎ、瘴気の拡散を防ぐべく結界を構築する。
『ヴォオオオオオオオオオォォォォオオオオオォォォッッ!!!』
「ハアアァァッ!!」
「【ライトニングボルト】!!」
凄まじい咆哮を上げながら凶悪な濃度の瘴気をまき散らしていく化け物を止めようと、ベルセフォネとマルドゥクは攻撃を続けるが、新たに取り込んだ死体による強化も相まって全く動じる事なく、瘴気の拡散を強めていく。
まるで攻撃に動じないその化け物をみて、流石のミヤビも焦りを見せる。
(まずいぞ。ベルセフォネ達の攻撃では耐性の強化された奴の守りを抜くことは敵わないじゃろう。かと言って妾が手を出すにもこの結界を解かねばならんレベルの攻撃が必要になる。じゃが結界を解けばこの強まった瘴気が町の中に流れ込み、多くの人間が命を落とすじゃろう・・・どうする!?)
そんなミヤビの感情を感じ取ったのか、リエルが覚悟を決める。
「ミヤビ、ナシタ。もし、あたしが倒れたら後はお願いね」
「リエル様・・・?」
「・・・何をする気じゃ?」
「こうするのよ!」
リエルは魔力を解放すると、続けて一張りの弓をその手に握る。それは、リエルが持つ魔王としての能力が凝縮された魔力の結晶、風魔弓ストームブリンガーであった。
リエルの内から解き放たれた弓の魔力は、瞬く間に周囲の景色を歪め始める。
突如、自分達の肌を強烈に叩く魔力の波動に当てられた事で攻撃の手を止めて、吹き付ける魔力の出所に目を向ける。
魔力の発生源が何なのか理解をした時、ベルセフォネとマルドゥクはその事実に驚愕の表情を見せ言葉を失ってしまう。
だが、解き放たれた魔弓から流れる魔力の波は、ミヤビの結界をも消し飛ばしそうな程の、破壊的な力の波動を放っており、その力はリエルの肉体を驚異的な速さで蝕み、徐々に内部から噴き出る魔力が、リエルの肉体に裂けるような傷を与え始める。
「うぐぐっ――!!」
「無茶じゃリエル!!」
「リエル様!!」
激痛に襲われながらもリエルはその弓を構え、暴風を纏う矢に力を込めて引き絞る。一層その強さを増した破壊の魔力が矢へと収束するのを感じたリエルは声を上げる。
「二人共!離れて!!」
その声に従い即座に化け物から飛び退いたベルセフォネとマルドゥクを確認したリエルは、破壊の結晶を解き放つ。
激しい閃光が瞬き、その矢は目標へ瞬時に到達すると、その存在を跡形もなく消し飛し、直後、結界内の全てが吹き飛ぶほどの衝撃と轟音が周囲に響きわたる。
お疲れさまでした。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。
今回使われた効果が分かりずらい魔法、スキル補足
ブラッドプール=闇魔法。地面に血の沼を作り捉えた者の行動能力を阻害する魔法。攻撃能力はほとんどなし。
耐性獲得=条件を満たしたときに耐性を得る能力。今回の場合は死体を取り込む事で、その死体が受けた攻撃に従って耐性を獲得。ただし獲得できない耐性もある。
所々修正していきたいので次回はちょっと間が空いてしまいますが、気が向いたらまた読んであげてください。
話の進みも遅いし色々ひどい!でも最後まで書く!
次回投稿は20日くらいに




