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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ世界へ。 バランディアの町編
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59話 不吉の前兆

誤字脱字は時間があるときに修正していきます。

 宿へと帰ってきたリエル達は受付にいるカレンに挨拶をして奥へと進み、食堂の様子を軽く伺う。予想はしていた通りこの時間の食堂は満席であった為、食堂のカウンターにいたエイダに料理を頼み、とりあえず部屋へを戻る事にしたリエル。

 部屋への階段を上る途中で出会ったシエラに、いつも通り体中をわしゃわしゃされるミヤビ。気が済んだシエラが階段を下りていくのを見送ると、リエル達も部屋へと入っていく。


「ご飯ができるまでちょっと休憩ね」


 すると、胸ポケットから飛び出したクエレは最初に目に付いたベッドへと着地する。


「ん~!やっと自由に動けるわ!」


 体を伸ばして声を上げているクエレを見てリエルもジャケットを脱いで椅子に腰をかける。

 そしてポケットの中からギルドで受け取った魔道具を取り出してまじまじと観察する。


「これ、魔力を流すと遠くの人と連絡が取れるって言ってたけど、どんな感じなんだろうね」


 対面の椅子に行儀よく鎮座しているミヤビに話を振ってみたリエル。


「妾に聞かれてものぉ。自分で試してみたら良いではないか。キャスにで――」


 突如、リエルが持っていた魔道具が振動して中央の水晶部分が光を発し始める。

 その様子に驚いたリエルの体は軽く跳ね、握っていた魔道具を落としそうになる。


「び、びっくりした!」


「もしや、それは今、何処から連絡が来ておるんじゃないのか?」


「どれどれ・・・」


 取り敢えず魔道具に魔力を供給してみると、ミヤビの予想通り、それは連絡が来ている合図だった様で、マルドゥクの声が聞きえてきた。


 〈おーい?聞こえとるかー?〉


「あ、これマルドゥクさんの声だわ」


「そうみたいじゃな。話しかけて見たらどうじゃ?」


「そ、そうね・・・。あーはい、聞きえてますか?」


 リエルも魔道具に向かって喋りかけてみると、再びマルドゥクの声が返ってくる。


 〈おう。聞きえておるぞ!ちゃんと使えているみたいじゃな〉


「こんな風になる訳ですか。凄いですね」


 〈実際使って見たほうが分かりやすいじゃろうと思ってな。こうして連絡してみたんじゃが、取り込み中ならまた後でもよいぞ〉


「いえ、大丈夫です」


 〈なら続けるぞい。使い方は問題ないか?〉


「そうですね。連絡を受け取った感じは問題なさそうです」


 〈よしよし。こいつは距離によってはうまく繋がらない場合もあるのでそこは注意してくれ。それと、アイテムポーチに入っていても同様じゃ〉


「成程、覚えておきます」


「便利は便利じゃが、やはりこんな物か。どの程度の距離までなら連絡できるんじゃ?」


 〈儂には原理は分からんが、お互いがこのニグルド王国内の各町一定範囲内にいれば繋がるらしいぞ〉


「ふむ。それを聞く限りじゃと意外と広域をカバーできておる訳か」


 〈なんでも町を中継地点に魔力の波を伝えて、対象の魔道具を判別するって話じゃよ。先程も言ったが儂にはよくわからん原理じゃからな。興味があるならこちらから王都フェルムスのギルドに資料を送ってもらうぞ?〉


「いや、それには及ばん。別にそこまで気にするような事でもないからな」(それに、この爺にあまり借りを作るのは好ましくない)


 マルドゥクからの申し出をあっさり断るミヤビ。


 〈他に何か聞きたい事はあるか?〉


 マルドゥクの問いかけに、リエルはミヤビに視線を送るがミヤビは首を振り、問題ない事をリエルに示す。


「いえ、今は特に無いので大丈夫だと思います」


 〈ふむ。ならば、この辺で儂は失礼するぞ。聞きたいことがあれば遠慮しなくて良いからな〉


「はい。有り難うございます」


 すると、魔道具から光が失われ、室内に静けさが戻ってくる。


「ふぅ・・・」


 軽く息を吐き、椅子の背もたれに寄りかかるリエルは、手に持っていた魔道具をテーブルの上に手放し部屋の天井を見上げる。


(国内の町周辺って事は、レインウッドの村でも使えるのかしら?)


 リエルが最初に考えたのは祖母の事だ。

 これがもう一つあれば、村にいる家族にかける心配はもっと少なくなるし、気軽に話が出来る様になるのでは無いかと。

 だがそれは今すぐにどうにかなる物でもないので、とりあえずは一度置いておくことにして別の事に考えを移す。


 リエルは【マッピングサイト】を取り出しミヤビに喋りかける。


「ねぇミヤビ。ニグルド王国ってどれ位の大きさなの?」


「ん?妾は知らんぞ?最初に言ったと思うがこちらの地理や情勢は殆どしらんからな?」


「あれ?そうだっけ?」


「うむ。じゃが、それくらいの情報なら母君の残したそいつに記されてそうなものじゃがな。どれ 、ちょっと確認してみるか」


「何ですか?私も見たいです!」


「あ!私にも見せなさい!」


 ベッドの上でゴロゴロしていたクエレと床に寝そべっていたナシタも、リエルとミヤビの様子に興味を持ったのか近づいてくる。

 そんな中でもリエルは気にすることなくマッピングサイトを開き、立体地図を展開する。


 展開されている地図を見ているとミヤビが手を伸ばしてマッピングサイトをいじり始める。拡大、縮小を繰り返してみたり、表示されている都市の色を変えてみたりと試していると、地図に大きな円で色分けされた状態が映し出される。


「お、できたぞ。この円で記された各エリアがそれぞれ別の国として記録されているみたいじゃな。ただこれは母君が記録したものじゃろうから、現在とは少々違う可能性もある。目安程度に思っておいた方がよいじゃろう」


「おお!何ですかこれは?地図みたいですが大きいですね!」


「これ、たしか【マッピングサイト】だっけ?随分とまぁ珍しい物を持ってるのね」


 ナシタとクエレがそれぞれ思ったことを口にしているが、とりあえず今は放っておく事にして、そのまま話を続けるリエルとミヤビ。


「この地図の端、途切れてる部分はお母さんも行った事が無い場所って事でいいのよね?」


「記録されていないという事はそういう事じゃろうな」


「今あたし達がいる【ニグルド王国】から東の方には【サンゼル共和国】、北に向かうと山岳地帯、さらにそこから海を越えた先にあるのが【ヴァルファリア聖教国】ね」


「この地図で分かるのはその三ヵ国のようじゃな。これを見る限りだと――妾としては東に向かうのがよいと思うぞ。気候もそう変わらんじゃろうし、記されている町の量からみてもこちらが妥当だと考えるが」


「そうね。北に向かうと山を越えないといけないみたいだし、当面は東に向かうっていうのはあたしもいいと思う」


「時にリエルよ。お主、父君の事はどうやって探すつもりなんじゃ?」


 ミヤビの疑問の言葉を受けて、リエルは何とも言えない顔をミヤビへ返す。

 それもそのはず、リエルには父親の情報なんてほとんど持ち合わせていないのだから。


「まさか、何も考えておらんかったのか?」


「あ、あはは・・・」


 笑ってごまかそうとしているリエルをみて、ミヤビは目を細める。


「よくそれで父親に会いたいなんて考えた物じゃな・・・」


「だ、だって最初はお母さんの後を追っていけば何とかなると思ったんだもん!」


「そんな考えでは何時までたっても見つかりはせんぞ」


「な、何かいい考えはない?ミヤビなら何か考えてたりするでしょ?」


「私にいい考えがあります!」


「え!?何かあるの!?」


 ナシタという意外な者から、名案があるとの言葉にリエルは食いつき、ミヤビは微妙な表情でそれを見る。


「はい!リエル様のお父上なら、それは凄まじい御力を持っているはずです。行着く先々の町で有名な人物、或いは何か大きな出来事がなかったかを調べて行けばよいのではないかと愚考致します!」


「な、成程!ナシタ!それは名案よ!」


「ありがとうございます!」


「・・・考えが甘い気もするが、すぐに思いつく方法としてはまぁ悪くないのかもしれんな」


 ナシタの出してきた案はそれほど悪い物ではなかったようで、ミヤビもそれに異を唱える事はない。しかし、その話を聞いていたクエレから疑問の声が上がる。


「何?リエルのお父さんって魔王なんじゃないの?どうして下界なんかにいるのよ?」


「別に下界にいると決まった訳ではないのじゃが、その可能性が高いというだけじゃ。お前も知っておるじゃろうが、下界の存在が神界や魔界に行くのは容易な事ではない。こちらでリエルの母君と出会ったと考えるほうが自然ではないか?」


「でも、時々下界からの迷い込む者もいるわよ?」


「なんじゃと?」


 クエレの言葉が意外だったのか、ミヤビが明らかな驚きをみせてクエレに問いかける。


「え?あんた知らなかったの?」


「し、知らんぞそんな話!?」


「私も詳しい話は知らないけど、神界と魔界と地上界、この三つはお互いに影響を与えながら存在しているってのは知ってるわよね?」


「地上界ってあたし達がいる世界の事?」


「そうじゃ。まぁ妾達は下界と呼んでおるがな」


「そしてその影響っていうので一番大きな要素をあげると魔素(マナ)ね。これは三つの世界でそれぞれ魔素が循環しているんだけど、そのバランスが崩れると世界に大きな変化が出てしまう。何が起きるのかは知らないけど、多分やばい何かがあるんでしょうね。そのバランスを保つために神や魔王は下界を監視して、お互いが馬鹿な真似をしないように見張っているっていうのは知ってるわよね?」


「そのあたりの話は知っておる。肝心の部分をさっさと話さんか」


「じゃー小難しい話は抜きにして話すけど、その魔素の循環っていうのが問題らしくて、時々それぞれを繋ぐ道が開かれてしまうらしいわよ。そこを通って神界や魔界に迷い込む者がいるって訳ね」


「そんな話、妾は初めて聞いたぞ。大体魔素が通る道を人間なんかが通って無事に済むはずがない」


「稀な事だって話だけど、実際あるみたいよ?それに、下界の人間が神界にきてしまった時は記憶を操作したうえで送り返すけど、魔界の場合はどうなのか私は知らないからね」


「つまり、お母さんはそれに巻き込まれたせいで魔界に行ってしまった可能性があるって事?そこでお父さんと出会って・・・」


「確かにその可能性も出てくるが結局のところ妾達がやれる事は変わらんじゃろう。驚いて損したぞ」


「いや、あんたはこの事知ってないとまずいはずなんだけど?」


「覚えておらん」


「・・・あんたらしい」


 何故こんな事をわざわざ説明しないといけないのかとクエレは思ったが、相手がミヤビだという事を改めて思い出して納得する。


「え~と?つまり、何処にいるか分からないお父さんを探すには、ナシタの考えた通り手あたり次第に行着く町で情報を集めるしかないっていうのは変わらないのよね?」


「うむ。そうする他あるまい。ただ全く情報が見つからない場合はクエレの言った通り、母君が魔界にでも迷い込んだという線が強くなるがな」


「取り敢えずは明日、ギルドでお父さんに繋がるような情報がないか聞いてみる事から始めるとするわ」


「そうじゃな。それにしても――」


 ミヤビが何か言いかけるが、言葉は止まる。


「――来たか!クエレ、何処かに身を隠せ」


「何よ?」「どうしたの?」


 クエレとリエルが同時に声を上げるが、答えたのはナシタ。


「どうやら、誰か来た見たいですね」


「うむ。これはあの娘じゃ。やっと飯がきたぞ。分かったら姿を見られんように隠れておけ」


「そういうこと。わかったわ」


 クエレがベッドの中に潜り込んだのもつかの間、部屋の扉を叩く音が聞こえてくる。


「リエルお姉ちゃん~お待たせ~。ご飯持ってきたよ~」


 外から聞こえてきたのはシエラの声であった。リエルは席を立つと扉の方へと歩いていく。扉を開けると給仕用のプレートを持ったシエラが立っていたので、リエルは礼をいってそれを受け取る。


「ありがとう、シエラちゃん」


「どうぞごゆっくり~!」


 笑顔で言葉を返したシエラは、手ぶらになった体で軽快に走っていくとそのまま階段を下りていく。それを見送ったリエルは扉をしめ、テーブルへと戻ってくると山の様になったコロッケとパンが乗っている給仕プレートをテーブルの上に置く。


「クエレ、もう出てきて大丈夫よ」


 リエルの言葉で布団から出てきたクエレは再びテーブルの上へと着地すると、目の前の料理に興味を示す。


「これが【ころっけ】っていう奴ね!」


「うむ。実に美味じゃぞ」


「私も早く食べたいです!」


「はいはい。今分けてあげるからちょっと待ってて」


 ミヤビやナシタもコロッケを前に興奮を隠せない様子。リエルは手早く皿に分けるとそれぞれ食べやすい場所へ皿を置いてあげる。


「では、早速頂くわね!」


 クエレは自分と同じくらいの大きさのコロッケを皿の上で抱え込んで、期待を込めてその料理を口に運ぶ。サクッといい音を立ててクエレの口の中に入ったコロッケ。


「~~~っ!!」


 ふるふると震えたと思ったら、そのまま二口、三口と噛り付いていくクエレの様子をみて、リエルも料理を口に運び始める。

 ミヤビとナシタも既にコロッケに噛り付いてるは言うまでもない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やはり東門から外へ出た冒険者で町に戻ってきていない者が出てきてるみたいです。【ミルドワ】に向かっている可能性もありますが数が多すぎて、特定には時間が掛かるかと・・・」


「キャスはどう思う?」


「このタイミングから考えられるのは一つしかないでしょう。例の使役されている魔物の件が無関係だとは、私は思えませんね」


「まぁそうなるじゃろうな」


 腕を組んで考え込むマルドゥクの机にはいくつかの書類が広げられている。その中の一枚を手に取るとマルドゥクは静かに口を開く。


「これは思っていたより大きな問題が起きているのかもしれん・・・」


「新米の冒険者ならいざ知らず、Cランクの冒険者まで戻ってきていないとなるとのんびりしてはいられないと思いますね」


「そうじゃな・・・」


 持っていた書類を再び机に置き、マルドゥクは席を立って歩き出す。


「キャス。少しハボットの所に行ってくる。他に行方が分からない冒険者がおらんか調べておいてくれ。それと、【ミルドワ】のギルドへ連絡して名簿に載っている者が来ているかどうかの確認と、【ミルドワ】でも行方が分からない者が出ていないか問い合わせてみてくれ」


「わかりました。そうなると、東門は一時閉鎖という事になるんでしょうかね?」


「それもハボットと相談してくる。儂一人でそれを決める事はできんよ。兎に角、何か起きているのは間違いないが、お前は無茶な事はするんじゃないぞ」


「私の役目としては適切な気もしますが、この町に何かあった時の事を考えたら仕方ないですね」


 キャスの言葉を聞き終えると、マルドゥクは部屋から足早に出ていく。一人部屋に残ったキャスは、机の上の書類を纏めて束ねるとマルドゥク同様に部屋を後にする。


 机の上の書類に記されていたのは行方が分からなくなっている東門を利用した冒険者の名簿であり、そこには"戦いの雄叫び"のメンバーの名前も記されていた。


お疲れさまでした。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


次回は19日までには投稿する予定です。

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