閑話 エルフの村と三人組
誤字脱字は時間があるときに修正していきます。
2017/12/9 物足りなかったので加筆しました。
いつもと違う朝にも慣れてきたエリックとリリーナは、村で平穏な1日を過ごしている。
だが、リエルが居た頃の習慣は簡単には抜けない様で、今日もリリーナは三人分の朝食を作ってしまい、エリックも笑いをこぼしてしまう。
「慣れてきたと感じても、なかなかこの習慣という物は抜けないもんじゃな」
「仕方ないさ。俺だって朝リエルの部屋に起こしに行く癖が抜けないからね」
朝食を取りながら、今はここには居ない存在の事を気にしている様子のリリーナ達。
そこへ家の扉が叩かれる音が聞こえて来る。
「こんな早くから一体誰じゃ?」
「母さんは座ってていいよ。俺が見て来る」
立ち上がろうとするリリーナを制止して、エリックが玄関へと歩いて行く。
扉を開けるとそこにいたのはヴレアと見慣れない人物の二人の姿があった。
「おはようございます。朝早くから申し訳ないのですがお届け物です」
「いえいえ。ご苦労様です。ですが、衛兵さんがわざわざ届けに来るなんてちょっと驚きました」
「普段ならギルドの職員が届ける物なんですけど、ちょうど私の方でも届ける予定の物があったので、案内次いでに一緒にやって来た訳です」
「おはようございます。お手紙をお届けにギルドから参りました。こちらに受け取り完了のお名前を頂けますか?」
「はい。――――これでいいですか?」
「ありがとうございます。では、確かにお渡ししました。それでは失礼します。ヴレアさんもお疲れさまです」
「ご苦労様です」「手紙、ご苦労様です」
ギルド職員に挨拶を返す二人を後にして、手紙を届け終わった男はその場を後にする。
「それで、これは私からの届け物である書類なんですが、ちょっと話が長くなるのですがここでいいですか?」
「それでしたら、中へどうぞ」
「ありがとうございます。では、失礼して」
エリックに招かれて、ヴレアは家の中へと入っていく。リビングへ通されるとそこにはリリーナの姿を確認する事ができ、朝食を摂っている様子。
「おや?ヴレアさんではないですか。どうしましたこんな朝早くから」
「お食事中申し訳ありません。大事なお話しがあってやってきた次第ですが、お邪魔なら出直しますが」
「いえいえ、それには及びまんよ。お気遣い感謝しますじゃ。あなたもお忙しい身じゃろうから、手早く初めて頂いても構いませんぞ」
「はは、それじゃ早速。こちらに御覧になって頂きたいのですが」
そう言うとヴレアは封が施された封筒をリリーナへと差し出し言葉を続ける。
「領主様が、町からこの村へと駐屯兵を出したいと言う提案の計画書だと聞いてます。リリーナさんがこの村の纏め役だと聞いているので、何か意見があれば伺いたいのですが」
「それは大変有難い事ですが、私一人ではお返事出来ませんな。時間は頂いても構いませぬか?」
「勿論、村の人達で話し合って頂ければと思います。領主のハボット様も皆さんに納得して頂いた上で行いたいという事ですから」
「それはまた、随分懐の大きな方ですな。では後日村の者で相談して、結果をお持ちしますじゃ。その際はヴレア殿の元にお持ちすれば?」
「はい。私は書類を受け取ったら街に戻れとお達しが来てますので、それを受け取るまではここに滞在させてもらう予定です」
「では、その際は宜しくお願い致しますじゃ」
「はい。それでは、私はそろそろ戻ります」
ヴレアはリリーナ達にお辞儀をすると玄関の方へと向かい外へと出て行く。
エリックとリリーナは朝食を再開し始めるが、直ぐにエリックが声を上げる。
「お!母さん、この手紙はリエルからだよ」
「おお、ちゃんと送ってきたか。どれ、何が書かれておるんじゃ?元気にやっておるのか?」
「まだリエルが旅に出て何日も経ってないんだから元気でやってるさ。ミヤビ殿だって一緒なんだから。どれどれ・・・」
エリックは手紙をテーブルに広げると、リリーナと二人で内容を楽しみ始めるのだった。
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「ここんところ、あの生意気なハーフエルフを見ないけど、どうしたんだ?」
「僕が知るわけない。あのおじさんは無事だって言ってたから、家にいるんじゃないの?」
村の中心部にある広場の一画で、早朝にも関わらず三人の少年達がいつもと変わらない様子でたむろしている。
「元々あの子、用がない時は余りこっちまで来ないから、普段通りじゃ?」
「だって、採集の仕事にも来てないみたいだぞ?」
「もしかして怪我でもしてて動けない?」
ラングが何気なく発した言葉を聞いて動揺し、ガウディは直ぐに口を開く。
「怪我!?だ、だってあのおっさんは無事だって言ったじゃないか!?」
「生きてるから無事って意味かも。怪我をしてないとは言ってなかった。もしかしたら盗賊に酷い目に合わされたせいで泣いてるかも」
ガウディの気持ちなど全く無視した内容をズバズバと口にするラング。その言葉はガウディの心にどんどんダメージを与えて行く。
「ラ、ラング君。そんな根拠もない事言ったらガウディ君が心配しちゃうよ。」
「ん。そうだった。今のは冗談」
取ってつけたような言葉を返してくるラングであったが、既にガウディの心中は荒波の中へ放り出された小舟のような様相であった。
「す、すぐにリエルの家に行くぞ!」
「は?」「え!?」
「いいから行くぞ!」
踵を返して歩きだすガウディを、立ったまま見ている二人。
「ラング君のせいだよ」
「違うし。ガウディが阿保なだけ」
先にガウディを追って走り出したのはミールで、その後をラングが追う形で走っていく。
そこでラングが何かを呟いく。
「迂闊だった」
一行がリエルの家を目指して歩いていると、前方から兵士の男が歩いてくる。
「あ、あの人、僕等がおじさんと話してた時に一緒にいた人じゃない?」
「そういえば見た事あるな!」
「なら、あの人に聞けばいい」
そんな話をしていると前方にいた兵士――ヴレアの方から話を掛けてきた。
「おや?君達は前もあったね。今日も三人で仲がいいね」
「おう!兵士の兄ちゃん!」
「どうも」「おはようございますー」
「うん、おはよう」
しっかりと挨拶をしてくる三人をみて、ヴレアも同じように挨拶をする。
(やっぱりいいな。こうやって子供が元気に遊べる世の中って)
「なぁ兵士の兄ちゃん!リエル見なかったか!?」
目の前の光景に感動していたのもつかの間、一人の少年から質問が投げ掛けられたヴレアは直ぐに気持ちを切り替える。
「え?リエルさん?リエルさんは――」
そこでヴレアは思い出す。
(リエルさんは用事があるからって町に向かったと思うけど、この子達はその事知らないのか?だとしたら私が話していいものだろうか・・・」
少し考えるヴレアだったが、他人が人の事情を簡単に話すのはよくないだろうという結果になる。
「済まないが見てないな。どうかしたのかい?」
「知らないなら大丈夫!俺達ちょっと急いでるから!」
ヴレアにそう告げると、ガウディは走ってリエルの家に向かい始める。
「すいません!ガ、ガウディ君!待ってよー!」
ミールもその後を追って走り去っていく。一人残ったラングとヴレア。二人は目が合うとラングが口を開く。
「ガウディがリエルにほの字。姿が見えないから心配で仕方がないみたい」
「ああ、成程・・・」
その言葉で納得したヴレア。
「僕も行く。どうもありがとう」
そういうとラングも二人を追ってその場からいなくなってしまい、一人ブレアが残される。
「・・・青春だなぁ」
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リエルの住んでいる家までやってきたガウディ達。
今まで一度も訪ねに来た事など無かったのに、突然押しかけて平気なのかとガウディは扉を叩くのを躊躇してしまう。
「行かないの?」
扉を叩くのを躊躇しているガウディにラングが声をかける。
「い、行くさ。ただ、ちょっと心の準備が・・・」
「何も考えないで動くからだよ。しょうがない」
「あ、ちょっと――」
ラングはガウディの制止を無視して、家の扉をノックすると、素早くガウディの後ろへと戻ってくる。
「なっ――!?」
「後はガウディに任せる。僕の仕事はここまで」
自分には関係ないと言わんばかりのラングに食ってかかろうとしたガウディであったが、意外にも早くその扉が開いた為のそ機会を失う事になる。
開いた扉から姿を見せたのは男のエルフで、ガウディ達もそれが誰かくらいは知っていた。
「おや?君達はたしか――。何か用かい?」
姿を見せたのエリックが珍しい物でも見るような目でガウディ達を見ていると
「お、おはようございます!え、えーと!大した事じゃないんだけど、リエル――ちゃんを最近見かけないから、ど、どうしたのかと思って!」
「リエル?リエルは――」
「どうしたんじゃエリックよ?」
家の奥から声が聞こえてくると、その声の主が姿を見せる。
「今日は随分来客が多いのお。ん?なんじゃ、悪ガキ共ではないか。どうしたんじゃこんな所で?」
「べ、別に悪い事なんてしてないぞ!――少ししか」
「僕はガウディに連れてこられただけ」
「あ、ぼ、僕も!」
「あ!?お前たずるいぞ!」
とばっちりを喰らいたくないラングは真っ先に無関係を主張し、ミールもそれに乗っかる形で声を上げる。そんな二人の言葉に焦るガウディ。
何とも騒がしい光景がエリック達の前で繰り広げられている。
「しかし、驚いたな。リエルを訪ねて来る人がテルマさんやナイル意外にいるなんて」
「それよりもエリック。こやつらは何しにきたんじゃ?」
「いや、それがさ――」
エリックがリリーナに説明しようとすると、ガウディが口を開く。
「お、俺はただリエルの奴に会いに来ただけだよ!」
「何?リエルじゃと?」
「お、おう」
「リエルとお主らはどういう関係なんじゃ?」
「え?・・・よ、よく話をしてたから、友達?だと思う」
妙な言い方ではあるが、嘘ではないだろうとガウディは思い、そう口に出す。それが功を制したのかはわからないが、リリーナからリエルの所在について聞く事に成功する。が――
「リエルならここにはおらんぞ?数日前に旅に出てしまったからのお」
「・・・え?」
てっきり家の中にいる物だとばかり思っていたガウディは、リリーナから発せられた予想外の事実にあっけにとられた様な声を上げる。
「えーーーっ!?なんで!?旅!?一人で!?だ、大丈夫なのかよ!?あいつ、俺よりも年下だろ!?危なくないのかよ!?」
激しく動揺を見せるガウディにリリーナは落ち着いて喋りかける。
「一人ではないぞ。ちゃんと頼りになる方が一緒じゃ。それに手紙もさっき届いてな。楽しくやっているようじゃから心配はいらんよ」
リリーナが口にした言葉を聞いて黙っていたガウディだが段々とその意味が理解できてくると大きく安堵の声を洩らす。
「はぁ~・・・。そうか、ちゃんと大人の人と一緒なのか~。よかったぁ~」
「うむ。じゃから済まんがリエルはここにはおらんよ。折角きたのにすまんな」
「い、いや!元気ならいいんだ!じ、じゃあ俺は帰るから!」
話を聞いたガウディは逃げる様にその場を後にする。ラングとミールもエリック達に挨拶すると、ガウディの後を追って走り出す。
「あんまり悪さばっかりすんじゃないぞ」
リリーナが最後に投げ掛けた言葉を聞いたガウディは手を上げて答えるとそのまま姿が見えなくなるまで走っていった。
「よかったのかい?リエルの事教えて」
エリックがリリーナに問いかける。
「何、問題ないじゃろう。それに・・・リエルの事を心配して来てくれたんじゃ。無下にするのはしのびないじゃろう」
「・・・まぁそうだね」
二人は、この村にもちゃんとリエルの事を心配してくれる人がいた事が嬉しかった。たとえそれが村では悪ガキと言われている様な相手でも。
お疲れさまです。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。
前々から書きたかった三人組の話なんですが、時間があるときにこちらも進めていきたいな~と思ってます。




