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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ世界へ。 バランディアの町編
56/99

56話 小さな訪問者 後編

55話と前編後編に分けました。話の進行がゆっくりですいません。


誤字脱字は時間あるときに修正します。

 油の入った鍋はそのままチェストリングへとしまい、食器やナイフを洗っているリエル。

 洗い終わった食器はミヤビが魔法で乾燥させている。

 ナシタは特にやる事がないので横になって気持ちよさそうに日を浴びている。


 リエルの横で洗い物の手伝いをしていたミヤビが声を掛けてくる。


「何も言わんのか?」


「何が?」


「さっきの話じゃ。法具の回収の件、勝手に話を進めた事に何か言われると思っておったんじゃがな」


「んー、別に旅の途中で見つけたら知らせてあげる程度なんでしょ?問題ないと思うけど、他にも何かあったりするの?」


「まぁその通りなんじゃが・・・もっと何か言われると思っておったんじゃが、拍子抜けじゃな」


「別に構わないわよ。あたしの旅ってお母さんの歩んできた世界を見てみたいって事とお父さんに会ってみたいっていう漠然とした考えだし、どこに居るのかはっきりと分かってないお父さんの事は兎も角、お母さんの立ち寄った場所はある程度分かってる訳だから問題ないわ」


 食器をアイテムポーチへとしまい終えると、リエルはナシタの横に膨れたお腹を仰向けにして地面に寝そべっているピクシーに目を向ける。


「ところであの子――クエレだっけ?あの子はどうするの?」


「さぁな。あいつはあいつでやる事が有るじゃろうから気にかける必要は無いじゃろう。妾の預かり知るところでは無い」


「ふーん」


 リエルとしては特に関わる理由はないのでそれ以上聞くつもりはなく、どこか素っ気ない感じでミヤビの答えに反応している。


「さて、飯も食ったし、妾達もそろそろ移動するか」


「そうね。まだ時間はお昼過ぎくらいだと思うけど、もう少しリヴルの森で獲物を集めようと思うんだけど、どうする?」


「異論は無いぞ。妾も食後の運動に獲物を狩るとしよう」


「じゃー決まりね」


「森へ向かうのですね?ならば私も働かせていただきます!」


 いつの間にか日向ぼっこをやめて、リエルの下まで来ていたナシタも、二人の話を聞いてやる気の様子を見せている。


「なによ、もう行くの?」


 ナシタの後ろからひょっこりと顔を覗かせたのはクエレだった。


「そうじゃ。お前にも役目があるようにこちらにも目的があるからな」


「そう。じゃー行くとしましょうか」


 クエレはナシタの頭の上に移動すると、そこに着地し腰を下ろす。突然頭の上に降りてきた存在に明らかな不快感を示しているナシタは、頭を勢いよく左右に振るう。クエレはその勢いで姿勢を保つことができずに頭の上から転げ落ちて無様に地面へと落下する。


「痛っ!――何すんのよこの無礼者!」


「無礼なのは貴様の方だ。何を勝手に私の頭の上に座ってる」


「はぁ!?」


「私はリエル様の忠実なる僕。この身はリエル様の為に存在しているといっても過言ではない」


 言葉は礼儀正しい物だが、ナシタの口調には若干の怒りを感じさせる物が含まれていた。一方でクエレの言葉はリエルへと飛び火する。


「ちょっとあんた飼い主でしょ!飼い犬の躾がなってないんじゃない!?」


「あ、あたし?ええ・・・」


「そうよ!あんたの犬でしょ!?目上の者に対する姿勢っていうのが全然できてないじゃない!それで主人のつもり!?」


「貴様・・・それ以上リエル様を侮辱するならば容赦はせんぞ」


 一歩前に踏み出すナシタであるが、クエレはそれに動じる事はなく言葉を続ける。


「やってみなさいよ。下等な【フォレストウルフ】の分際であたしに勝てると思ってるの?」


 今にも襲い掛かりそうなナシタを見て、ミヤビが横から声をかける。


「お前、何をやってるんじゃ?」


「何って――この下等な生き物達に存在の違いを教えてあげてるんだけど?」


「違う。お前、やる事があるじゃろう。なんでナシタの頭に跨っておったんじゃ?」


 ミヤビの言葉を受けると、嫌な笑顔を見せて言葉を返してくるクエレ。


「私も一緒にいってあげるつもりだけど問題あるの?」


「・・・本気でいっておるのか?」


「えぇそうよ?嬉しいでしょ?」


「何を企んでおるんじゃ?」


「あら、ひどい言い草ね」


 流石はミヤビの知り合いというだけあって、その行動に驚きこそしないが呆れた様子のリエルとナシタ。当の本人は当然の様に言葉を続け始める。

 リエルはそのまま二人の様子を黙って見ているが、ナシタの方はクエレの言動に嫌気がさしたのか、リエルの傍に座り込んでそっぷを向いて瞼を閉じている。


「法具の場所なんて見当もつかない以上、どう探しても結果は変わらないでしょ?だったら回収しにくる手間を考えれば一緒に行動した方が楽じゃない。それにあんただけ美味しい物を食べてるなんてずるいと思わない?」


「貴様には加護があるから別に食事の必要なんぞないじゃろう。それに妾はこの子と【従魔契約】を交わしている身。さっき少し話したが色々あって今の妾は加護の力が失われている故、食事を摂るのは必然であって別にやましい事なんぞ何もないぞ」


「それよ。なんで貴方そんなエルフと【従魔契約】を交わしたりしたのよ。正直貴方が大人しく従う様な存在には見えないけど?」


「じゃから色々あったといっておるじゃろう」


「色々って何よ?」


「お前に話す必要性が感じられん。そもそも付いてくると言っておるが、その判断は妾がするものではない訳じゃが?」


「そう。ならエルフの娘」


「なんですか?」


「一緒に付いて行くけど問題ないでしょ?」


 かなり強引なクエレの言動にもミヤビで慣れている為かリエルも臆することなく言葉を返す。


「う~ん。ピクシーは目立つから困るんだけど」


「あらそう?それなら仕方ないわね」


 やけにあっさり引き下がるクエレに拍子抜けしてしまうリエルだが、ミヤビは逆に不振感を強くする。


 〖リエル、あまり信用せんほうがいいぞ。こいつの事じゃ。絶対何か企んどるぞ〗


 〖・・・ミヤビが言うと説得力があるわね〗


 〖お主は妾を何だとおもっておるんじゃ・・・。兎に角じゃ。絶対な――〗


「目立たなければいいんでしょ?ならこれで問題ないわね」


 不意にクエレの声が聞こえてくるが、その姿はミヤビとの会話でクエレから目を離した僅かな時間で確認できなくなっていた。どこにいったのかと周りを見回すリエルとミヤビ。

 すると、足元にいたナシタのふさふさした毛の中から顔を出すクエレを発見して声を上げるリエル。


「いつの間にそんな所に・・・」


「あっ!?貴様いつの間に!?」


 自分の体毛に隠れたクエレにナシタも気づかなかったのか、リエルの言葉でそれに気づくと必死に振り落とそうと体を激しく動かし始める。

 だが、しっかりと毛に掴まっているクエレを振り落とす事は出来ずにいるナシタ。クエレは振り回されていてもお構いなしで言葉を続ける。


「これで目立つことはないでしょ?問題は解決ね」


「ナシタが嫌がってるからやめてあげてほしいんだけど」


「何よ!?それくらい我慢させなさいよ!」


「貴様っ!いい加減に――しろっ!」


 ついにナシタの怒りが爆発し、その体から光を発し自分の姿を変化させる。ナシタは人化の術を使って人間の姿を取ると首元に掴まっているクエレを素早く捕らえると体から引き剥がす事に成功する。


 ナシタの手の中にいるクエレは暴れだすかと思いきや意外にも大人しく、そして驚いた表情でナシタを見て口を開く。


「あんた、どうやら唯の犬っころじゃないみたいね?人化の術が使えるなんて驚いたわよ」


「私はリエル様をお守りする使命がある。これくらいできて当然だ」


「でも、あんまり人化には慣れてないみたいね?」


「何だと?」


 何のことだかわからないナシタはクエレの言葉に疑問を覚える。そんなナシタにミヤビが声をかける。


「ナシタよ。リエルに怒鳴られる前に元に戻った方がいいんではないか?」


 その言葉でようやく自分の失態に気づいたナシタは慌ててリエルの方を確認する。リエルは顔を手で隠して下を向いている為表情は確認できないが、その耳は真っ赤になっているのはナシタにも分かった。


 ナシタはすぐにクエレを解放して、元の狼の姿へと体を変化させてリエルの反応を恐る恐る伺い始める。


「申し訳ありませんリエル様!つ、つい我を忘れて!ど、どうかお許しください!?」


「リエル、もう平気じゃぞ。」


「・・・」


 指の隙間からナシタを確認するリエル。その目で普段の見慣れた狼の姿をしたナシタである事を確認できたリエルはナシタに何も言わずにクエレに喋りかける。


「・・・今みたいな事があると困るから絶対やめて」


「あらあら、うぶな娘ね。たかが雄の裸くらいで取り乱すなんて」


「クエレ。あんまりリエルを揶揄うと後が怖い。それくらいにしておいたほうがよいぞ」


「まぁこの犬が普通じゃない事はわかったし、その娘にも何かあるんでしょうね」


 くすくすと笑っているクエレに、リエルが声を大きくして口を開く。


「うるさいわね!あんた達とあたしは違うのよ!」


「はいはい。それじゃ、この犬がダメっていうなら――」


「妾は嫌じゃぞ」


「まだ何もいってないけど?」


「貴様の考える事じゃからな。先に釘を刺しておいても妾に損はない」


「なら、残るはここしかないわね」


 そう言うとクエレはリエルの傍まで近づいてくると、ジャケットの胸ポケットへと体を潜り込ませてくる。そしてそこからひょっこりと顔だしているクエレはポケットの中の具合を確かめながら言葉を続ける。


「これで文句ないわね?」


「それ、狭くないの?」


「別に問題ないわよ?邪魔な物はないし快適だわ」


 ニヤニヤしながら意味深な言い方をしてくるクエレの言葉にむっとするリエル。


「・・・ミヤビ。なんかこの子、腹が立つんだけど」


「ま、まぁそう怒るでない。それにお主はまだ12年しか生きてないじゃろ?未来は明るいはずじゃ」


「はぁ・・・。もういいわ。これ以上手間をかけるのも時間が勿体ないし」


「ちょっと!その私を邪魔者みたいな言い方、やめなさいよ!」


「わかったわよ。あと、そこにいるのはいいけど大勢の前で急に喋ったりしないでよね」


「はいはい、目立たないようにすればいいんでしょ?その代わりちゃんとご飯食べさせなさいよ」


 大きくため息を付いたリエルとは対照的に、クエレのこれから来るであろう食事の事に思いをはせている。


「随分時間を食ったが、森へ向かうとするぞリエル」


「はいはい。ほらナシタ。別に怒ってないからいつまでも黙ってないでいくわよ」


 ずっとしょんぼりとしていたナシタであったが、リエルに声を掛けられると耳をぴんっと立てて嬉しそうにリエルの元へと走り寄ってくる。


 その後、森へと到着した一行は森での狩猟を時間の許す限り行うのだった。


お疲れさまでした。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


次回投稿はちょっと遅れて7日くらいに

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