55話 小さな訪問者 前編
誤字脱字は随時修正します。
リエル達の前には、大量のカラアゲが盛られた器が置かれており、3人はそれを見て目を輝かせている。
「これでお肉は全部揚げ終わったわね」
「く、食ってもよいか?」
「・・・ゴクリッ」
すぐにでも手を伸ばそうとウズウズしているミヤビと、その横で涎を垂らしているナシタ。リエルも同じ気持ちらしく、ミヤビの言葉に力強く頷く。
「冷めないうちに頂きましょう!」
リエルは受け皿とフォークを握り、出来上がった料理へと手を伸ばすと一つをフォークで刺してそのまま口へと運ぶ。
「あふっ!はふはふ・・・もぐむぐ」
少し時間が経ってはいるが、料理の熱さは十分に保たれていた為、噛り付いたリエルは口の中で空気を循環させ熱を冷まし、程よい加減になるとそれを味わい始める。
「ふぉいふぃー!」
リエルから笑顔が漏れる。
「リエル様!わ、私も食べたいです!です!
」
「あ、ごめんねナシタ!・・・はいどうぞ!」
リエルが受け皿に乗せて差し出すと、ナシタも料理に口をつけ始める。
衣のサクサクとした音がナシタの口元から聞こえてくる。
その音をきいて、リエルも再び料理を口に運び美味しそうに頬張っている。
「うーん!これは癖になる美味しさね!カリッとしてサクサクしたこの衣がとってもいい感じで、齧ると中から溢れてくる肉汁が堪らないわね」
「はぐはぐ・・・もぐもぐ・・・これは絶品ですね!とても美味しいですリエル様!」
「ぷはー!こいつと一緒にやると堪らんな!」
リエルとナシタがミヤビに目を向けると、どこから出したのか、いつの間にかミヤビの手にはコップが握られている。
「何飲んでるの?」
「酒じゃ。【ころっけ】の時も思っておったが、この【アゲモノ】という料理には酒が合うと思ってな。予想通り実に美味い」
「以前も見かけた事があるけど、一体どこから出してるのそれ?」
「時空魔法の一種を使っているとだけ言っておくか。まだまだリエルには無理な芸当じゃな」
手に持っているフォークに刺さったカラアゲを食べながらお酒を口にしているその様子は、少女の姿で取る光景とは思えない物であった。
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(何をしているのかしら?)
そこには一匹のピクシーが草の陰から二人と1匹の様子を観察している姿がある。
(あの娘にイナリを封印がこんなに短期間で解かれたのは予定外だったけど、なんであいつは大人しく一緒に行動してるのよ。下界観光をさせるために罰が与えられた訳じゃないでしょうに)
何やら準備を始めた一行から距離を保ちつつ、考え事をしながら観察しているピクシー。見られているとは知らない一行は何やら話をしているが、距離があるため聞き取りづらく何を話しているのかはわからなかった。
すると一行は忙しく動き始める
(あれは――料理かしら?)
皿や鍋を用意して、何かを切っているの様子から食事の準備でもしているのだろうと判断するピクシーは、興味深そうにその様子を眺めている。
(全く。罰を受けているはずなのにどうしてあんなにのんびりしてられるのか。神界に戻る気がないのかしら?)
しばらく様子を見ていると、一行は火の付いた鍋に集まり始めると何かを鍋に入れているのが様が見受けられるのもつかの間、少女がその場から少し離れた場所に置いてある何かが入った器をもって鍋までもどってくる。
(所詮下界の食べ物だというのに、何をあんなに真面目に手伝っているのやら。前から分かっていた事だけどイナリの考える事はよくわからないわね)
そんな事を考えているうちに少女は鍋から出来上がったと思われる料理を引き上げると、尻尾の生えた少女がそれを受け取り口に運んでいる。
その少女の表情を目にしたピクシーは目を丸くし驚いた。
(なにあの顔!?だらしないったらないわ!・・・も、もう少し近くへ・・・)
ピクシーは草むらから移動し、一行に見つからないように近づいていく。
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料理に舌鼓を打っているリエル達。
カラアゲと一緒にパンを齧りながら上機嫌のリエルとナシタ。ミヤビは余程カラアゲが気に入ったのかそればかり食べながらお酒を飲み干している。
そんな様子を見せていたミヤビであったが、ふと何かを感じたのか周囲を見渡し始める。
「どうしたの?」
「いや、何か気配を感じるんじゃが、これは――」
「魔物ですか?」
ミヤビの様子に気づいたリエルが声をかけ、ナシタもそれに反応し、周囲を見渡す。
「いつか来るとは思っておったが、意外に遅かったな・・・」
ミヤビはそう口にすると立ち上がり、辺りを注意深く探り始める。
(やはり正確な位置はわからんな。神族の加護を持っている相手はこれじゃから面倒なんじゃ)
周囲を探っているミヤビであったが、先に動いたのはナシタであった。
ナシタは素早くその場から走りだすと、少し離れた草陰へと走りそこに飛び込む。リエル達もナシタの飛び込んだ草むらへと走りよって様子をみている。すると――
〖リエル様、どうやらこれが原因の様です〗
草むらから出てきたナシタの口には1匹の小さな羽の生えた妖精が咥えられていた。ばたばたと暴れているそれはピクシーであり、リエルは見るのは初めてではないが少し驚く。
「ピクシーじゃない。昔見た事があるけど、こんな場所にもいる物なのね」
「リエル、それは違うな。こいつは姿こそピクシーの物だが中身は別物じゃ。そうじゃろう?」
意味ありげな言葉をピクシーに投げ掛けるミヤビに対して、ナシタに咥えられて身動きがとれないピクシーは何もいうでもなくその牙から逃れようと暴れている。
「ナシタ、かわいそうだから放してあげ――」
「待て。そのままじゃナシタ。逃がすでないぞ」
「ちょっとミヤビ?弱い者いじめはやめなさいよ」
「そんなのではない。こいつは妾の天眼が通用しない。そして神族の加護を持っている存在特有の気配を感じさせている。黙っているがこいつは言葉を理解し話す事ができるはずじゃ」
「え・・・それって・・・この子も?」
「そうなんじゃろう?大方妾の行動を監視するのが目的だったんじゃろうが、こんな距離まで近づいてバレないとでも思ったのか?」
見つけたのはナシタなのだが、あえてその事には触れない事にししたリエル。ミヤビの言葉を受けてピクシーは暴れるのをやめ大人しくすると、鋭い睨みでミヤビを見ている。
「なんとか言え。その姿とて下界で活動するための仮初の物じゃろう」
「何かの間違いじゃないの?」
「・・・頭が高いぞ人間め」
ピクシーがブスッとした表情で口にした言葉は高圧的な気配を感じさせる物だった。
「あ、喋った」
「ええい!放せ!私は神皇様の忠実なる使いであるぞ!無礼だぞ!!」
口を開いたと思ったら非常に高飛車な態度を摂り始めるピクシーに対して、ミヤビは特に気にすることもなく言葉を返す。
「そんな偉いお主が下界の存在に捕まるとは笑わせてくれるな?妾が聞きたいのはそんな下らない話ではないんじゃがな?」
「黙りなさいイナリ!貴方こそ、そんな未熟なエルフに大人しく従っているなんて恥ずかしくないのですか!?」
「イナリ?」
「妾の事じゃ。神界にいた時にそう呼ばれておった。そしてそれを知っておるという事はやはり妾を監視しに来た者で間違いないか」
ミヤビはずいっと一歩前にでると、ピクシーの前へと立ち喋りはじめる。
「別に妾は何か命令されて下界にいる訳ではないからな。神共の罰という事で下界に落とされたんじゃから、そこから妾が何をしようと貴様らに文句を言われる筋合いはないぞ?神界に戻って来いとも言われている訳ではないからな」
「全く反省してないのですね!」
「反省するも何も、あの程度の事で妾を下界に落とす貴様等の方が器が小さいのじゃ。取り敢えずここで話をしても時間が勿体ない故、食事をしながら貴様の下らん話を聞いてやる。何か理由があって妾を監視していたんじゃろうからな」
ミヤビが踵を返して歩き始めると続けて言葉を発する。
「戻るぞリエル。ナシタよ、そのままそいつを連れてこい」
〖よろしいのですかリエル様?〗
「まぁ、あたし達には神様の考えなんてわからないし、ミヤビに任せるしかないんじゃないかしら?」
〖畏まりました。しかし、このままでは私はカラアゲを食べる事が・・・ぐぬぬ〗
そそくさと戻っていくミヤビの後を、若干の不満を覚えつつもナシタ、そしてリエルもそれについて食事をしていた場所へと歩いていく。
元の場所へと戻ってくると、リエル達は腰を下ろしてナシタに咥えられているピクシーに目をやる。
相変わらずの表情のままのピクシーであるが、意外にもその視線は目の前のカラアゲに向いていた。
「さて、妾は見ての通り食事の途中。言いたい事があるなら勝手に喋るといい」
「・・・その前に私を放しなさい。気の利かないのも相変わらずですね」
「生憎妾にピクシーの知り合いはおらん。誰かもわからん奴に礼儀など知った事か」
そういうとミヤビはカラアゲにフォークを突き刺して美味そうに頬張り始める。ナシタはどうするべきか判断に困っているのを見たリエルがそれに声をかける。
「ナシタ、放してあげてもいいんじゃない?そのままじゃ貴方もご飯が食べられないし」
その言葉をきいたナシタはミヤビに視線を送ると、ミヤビもそれに頷いた為、口を開いてピクシーを地面に下ろす。
「全く突然跳びかかるとは無礼な犬です。・・・それにしても――」
一言ナシタへ悪態をつくと、その視線はすぐに料理へと移る。その視線が傍で料理を美味しそうに食べているミヤビに移ると、ゴクリと何かを飲み込む音がピクシーから聞こえてくる。
それに気づいているミヤビは、コップの酒を一気に飲み干す。
「で?妾に何か用でもあるのか?さっさと要件を済ませたらどうじゃ?」
「はっ!そ、そうだった。イナリ、あな――」
「今、妾はミヤビと名乗っておる。その呼び方はやめよ。胸糞悪い神共の顔が浮かんで気分が悪い」
「な、なんて無礼な事を!相も変わらず口の悪い事です!元はと言えば貴方が酒に酔った勢いで神皇様の持ち物を下界にばら撒いたのが悪いのでしょう!それを胸糞悪いとはなんという言い草です!」
「別に使っていない物じゃったろうが。それに人間如きには扱う事は出来ない物故、大した問題でもないだろうに、その程度の事で妾を下界に落として封印まで施すなんてひどい話じゃと思うがな」
「ミヤビ、それはどう考えても貴方が悪いとおもうけど」
「兎に角!妾の事をイナリと呼ぶな。それと貴様の正体もそろそろ教えてもらいたいんじゃがな?」
ミヤビはピクシーに軽く視線を送ると再び料理を口に運ぶ。
「・・・あんたのせいでとばっちりを受けた被害者よ!なんでよりによって私が一緒の時に!貴方のせいで私もひどい目にあったんですからね!」
「ほう!その口振りから察するにクエレか!随分可愛らしい姿になったものじゃな。クククッ」
「貴方のせいでこんな目に合ってるよの!」
「まぁ妾と酒盛りをしてたのは貴様じゃったからな。じゃが、止めなかったお主にも非はあるじゃろ?お主には少々悪いと思うが同罪じゃろ」
「悪いと思っているならイナ――ミヤビ!貴方は自分で起こした事に責任を取ってもらいます!下界に散った"神法具"をを全て回収しなさい!それが貴方に与えられた罰です!」
「・・・その言葉には嘘があるな。本当の事を言え」
「嘘などありません!何を根拠にそ――」
「その様な事をさせるつもりなら、なぜ妾に封印を施す必要があったのじゃ?それをさせるなら最初からそう命じて妾をこちらに送ればよかったではないか。それに貴様がここにいるという事はそれがお主に与えられた罰という事なのではないのか?」
「ぐっ・・・」
「察するに貴様に命じられたが"神法具"の回収なんじゃろう?それを妾に押し付けようと考えている。面倒くさい事を嫌う貴様らしいやり方じゃな」
図星を付かれたのかクエレと名乗ったピクシーは、顔を赤くしてぷるぷると震えている。その様子を横目にミヤビは何食わぬ顔で食事を続ける。
しかし、カラアゲを一つ口に放り込むとその手を止めて再び口を開く。
「じゃが、その仕事を手伝ってもよいぞ。条件はあるがな」
「・・・なによ」
「そうそう、そちらの話し方のほうが貴様らしい。無理に高貴さを出そうとしても焼け石に水じゃぞ」
「うるさいわね!さっさと条件をいいなさい!」
「妾の動向を知っておるのは貴様だけか?」
「・・・そうよ。神族の加護が感知できないからどこにいるか探すのが大変だったのよ!なんで加護が失われているのよ」
「いろいろあってな。話を戻そう。妾の動向については他の神共には秘密にしておいてもらう。そうそうないとは思っておるが、手を出されても面倒じゃからな。それが約束できるなら手を貸してやってもよい」
「そんな事でいいの?それなら問題ないけど――」
「ならば話は終わりじゃな。法具を回収したらどうすればよい?」
「魔力を法具に流してくれればいい。そうすれば私の方で感知できるから」
「ではそうする故、貴様はどこへでも行くがいい。妾はゆっくり食事を取らせてもらうからな」
「待ちなさい。私にも条件がある」
「貴様の罰に手を貸してやっているというのに、妾に条件を出すとはなかなかふざけた事を言ってくれるな」
「だ、黙れ!元はお前のせいなんだから、当たり前よ!」
「わかったわかった。で?条件とはなんじゃ」
「・・・私にもそれを食べさせなさい」
クエレの言葉に呆れた顔を見せるミヤビは、フォークでカラアゲを一つ取り上げるとクエレの前に差し出す。
「約束は守ってもらうぞ」
「わかってる」
小さな体で差し出されたフォークからカラアゲを引き抜くとそれを小さな口で頬張る。
「――っ!?」
背中の羽をピンと伸ばして驚いた表情を見せたクエレ。その後はミヤビ達同様、むしゃぶりつく様にカラアゲを平らげるのだった。
お疲れさまです。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。
この時期はどうしても時間が取れないので今回設定がおかしい部分が出てきてるかもしれませんが
何分見切り発車の部分があるので勘弁してください。




