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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ世界へ。 バランディアの町編
52/99

52話 久々の狩猟

誤字脱字は時間があるときに修正します。

 机に突っ伏しているままのハボットでは放っておく事にしたマルドゥク。再びため息を吐き出すと、どうしたらいい分からずに待っているリエルに声をかける。


「話を聞く限り、リエル嬢ちゃんへと用事はもう済んだんではないか?」


「そうですか。それなら、あたし達はこの辺で席を外しても大丈夫ですか?」


「どうじゃねクラウスよ。まだ何か聞いておく事はあるのか?」


「そうですね・・・」


 クラウスが伝え忘れている事はないかを熟考するが、答える前にキャスが疑問を口にする。


「ところで、その魔物の出現が確認されているのはどこなんですかね?」


「場所は町の東側の街道みたいですね。報告があったのは今回が初めてですが、もしかしたら他にも被害にあった人達もいるかもしれません。ギルドに関係ありそうな依頼とかは届いていないのですか?」


 今度はクラウスが質問を返してくる。


「どうなんじゃキャス?関係ありそうな依頼に思い当たる物はないんか?」


「ん~そうですね~」


 キャスが腕を組んで考え始める。しばし考えていたキャスだったが、おもむろに腰のポーチへと手を伸ばすと、そこから紐で束ねられた紙を取り出し、目を通し始める。


「ありました。直接関係あるかはわかりませんけど、東の街道にて商人が魔物に荷物を奪われる事件があったみたいです。この商人の依頼内容は奪われた商品を取り戻してほしいというものですが、幸いにも襲われた場所について正確な場所が記載されてますね。東の街道沿いの森あたりのようですね」


「やはり他にも被害に遭われた人はいるみたいですね」


「ふむ、確かに関係はありそうではある」


「ちなみに、この依頼がギルドに出されたのは二日前みたいです」


「それが今回、冒険者達を襲った者と同一犯なら話は早いんじゃが、もう少し詳しい情報がほしいのぅ」


 リエルに伝える事が無いか確認していた筈が、それを他所に今回の件について考え始めてしまったクラウス達。


 〖用が済んだならそろそろ帰らしてほしいんじゃがな。退屈でしかたないぞ〗


 〖そうですね。私も軽く体を動かしたい気分です。リエル様!この後の予定ですが、特にルエル様に予定が無ければ近くで魔物でも狩りに行くのは如何でしょうか?〗


 〖そうね~。近いうちに次の町へ向かうかもしれないから、手持ちの資金はもうちょっと欲しいところだし、どこか近くで魔物でも倒して素材を換金しておきたいわね〗


 特に聞くこともないリエル達はこれからの予定の相談をしている。取り敢えず魔物を狩りに行って、これからの旅に必要不可欠な旅の費用を稼ぐ事に決めたリエル達。


 〖依頼で討伐系の物があれば、目標討伐の報酬と空いた時間に倒した魔物の素材で実入りは期待出来るじゃろうから、まずは依頼で討伐依頼がないか探す事からじゃな〗


 〖でも、結構時間もたってるから、そこまでいい条件の依頼は残ってないかもね〗


 〖そうであれば、適当な獲物を見つけて狩猟するだけでもよろしいかと思います。私達三人であれば問題ない量を集められるかと〗


 〖そうじゃな。依頼がなければないで別にやる事は変わらん。妾はそれで構わん〗


 〖なら、早速――と言いたい所だけど〗


 リエルはマルドゥク達に目をやるが、まだ話しは続いている様子。このままでは埒が明かないので、自分から声をかける事にする。


「あのー、特に話も無ければあたし達はこの辺で席を外したいんですけどかまいませんか?」


 その声にクラウスが慌てて反応する。


「す、すいません。そうでしたね。つい集中してしまって」


「いや~待たせてすまんのぉ嬢ちゃん。こっちは問題ないからもう大丈夫じゃぞ。手間を取らせてわるかったのぉ」


「では。お先に失礼します」


 そういうとリエルは席を立ち、扉を開けると従魔を連れて部屋を出て行く。リエルが部屋を出るのを見送ったマルドゥク達は、今だにテーブルに突っ伏している男に目をやる。


「さて、嬢ちゃんもいなくなったし、そろそろハボットを起こしてもよかろう」


「そうですね。この変態がリエルちゃんに何しでかさないか不安でしたが、そんな度胸はない様で安心しました」


「先程から思っていたのですが、ハボット様は一体どうなされたのですか?」


 マルドゥク達の言っている事が何のことかわからないクラウスは思い切って聞いてみるのだが、疑問を解消するチャンスはハボット本人によって奪われる。


 勢い良く体を起こすハボットに、ビクッと反応するクラウス。


「済まない。少々気が動転してしまった様だ」


 起き上がったハボットの第一声にクラウスを除いた二人があきれた様子を見せている。

 しかし、ハボットは気にも止めずに言葉を続ける。


「それで、どう思う?」


「今回の一件は早めに手を打った方がいいと思いますね。被害が広がるま――」


「そんなことは聞いていない。リエルさんの目に私はどう映ったと思う!?」


「は?」


 突然、意味のわからない事を口走るハボットに、クラウスは二の句も出せずに沈黙する。


「そうではないかと思っておったが・・・呆れたもんじゃな・・・」


「大丈夫ですよー。リエルちゃんはハボット様が変人だと思っているでしょうから気にしないでいいと思いますよ?」


「なっ!?そんな馬鹿な!?何故!?」


 キャスの言葉は、ハボットの心にえぐる様な苦しみを与える事に成功したようで、ハボットは頭を抱えながら再びテーブルへと倒れ込む。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 再び掲示板の前に立つリエル達は、手頃な依頼がないかを吟味している。


 〖やっぱり、残っている依頼の中にはあまり良さそうなものは無いわね〗


 〖仕方なかろう。それなら予定通り適当に獲物を探して狩ることにするぞ〗


 〖なら、それで決まりね。後は場所になるけど、リヴルの森になるのかしら〗


 〖奥地の方はどうか分かりませんが、私が活動していた付近では大した魔物は居ませんでしたので、素材としての価値はイマイチかと思われますが〗


 〖そう言われても、あたしもこの辺りの事はよく知らないからね。それに、あんまり怖い魔物はちょっと・・・〗


 〖何を言っておるんじゃリエルよ。お主の力はわかりやすく言えば、最上位と位置付けられている【ドラゴン】なんぞ比べ物にならん潜在能力があるんじゃぞ?恐れる理由などないんじゃがな〗


 〖それでも怖い物は怖いのよ!あんた達と一緒にされても困るわよ!〗


 〖そんな調子ではいつまで経っても自分の力を使いこなす事なんぞ無理じゃとおもうがな~。まぁよい。行先はリヴルの森でも妾は構わん故、さっさと行くぞ。退屈で眠くなるわ〗


 欠伸をしながらトコトコと先を歩くミヤビの後を、リエルとナシタが続いきギルドの外へと出ていく。北門へと向かって歩いていき、到着すると先日同様、詰所で町の外へとでる手続きをすませて、リヴルの森へと向かう。


 町からそれなりに離れてくると、ナシタが満を持して声を上げる。


 〖では!私の出番ですね!〗


 一声あげたナシタは体を馬の姿へと変化させ、リエルの前へと躍り出る。


 〖リエル様!目的地までお運び致します!どうぞお乗りください!〗


 〖気持ちはありがたいんだけど、手綱も鞍も付いてないからちょっと乗りずらいわよ〗


 〖む!言われてみればその通りですね。少々お待ちを・・・〗


 ナシタはそう言うと、魔力操作に意識を集中させる。するとナシタから流れ出る魔力が徐々に形を取り始める。

 ナシタが魔力で形成したのは、2本の角から伸びている手綱に、二人分座る場所のある大き目の鞍であった。


 〖ほほう。なかなかやるではないか。というかナシタよ。お前それだけの事ができるのなら、人化の術をつかっても服くらい一緒に作れたのではないか?〗


 〖それについては、私が服を着る習慣がなかったので失念していたのと、人化の術に慣れていなかった点から起きてしまった事象でございます。決して!リエル様に裸体を見せたかった訳ではありませんので!〗


 必死になって弁解するナシタを見て、リエルも思うところはあったのだろうが触れない事にする。リエルはナシタに近づいて手綱を握り、鞍を軽く叩いてみる。


 〖お気に召しましたかでしょうか、リエル様?〗


 〖ええ。これなら大丈夫そうね。ありがとね、ナシタ〗


 リエルの言葉を受けて、しびれる様な感覚を覚えたナシタは鼻息荒く身震いしたのもつかの間、体を地面につける様に足をまげて座り、リエルが乗りやすい態勢を取る。


 〖以前見た時の姿より大きくないかしら?〗


 〖それはミヤビ様も乗る事を想定して少し体を大きめに変化させてますので。それではリエル様。どうぞお乗りください。勿論ミヤビ様の場所もございます〗


 〖わかったわ。よいっしょっと――〗


 掛け声と共にナシタに跨るリエルと、それに続いてリエルの後ろへと飛び乗るミヤビ。二人が乗った事を認識したナシタはゆっくりと体を起こす。徐々に視界の位置が高くなっていく事に少々驚くリエル。それはリエルが村で乗った事のある馬よりもナシタの大きさは一回り程上回っており、今見ている視界よりも低い位置からみていた景色が普通だった為である。


 〖どうでしょうか?何か不都合はございませんか?〗


 〖ナシタが大きいのもあって地面との距離が遠いのが、ちょっとだけ怖い。落としたりしないでよ?〗


 〖お任せください!そのような失敗は致しません!〗


 〖妾は今の所何の問題もないぞ。後は動いてみたらどうなるかじゃな。少し動いてみよ〗


 その言葉を聞いて、手綱を強く握り少し不安になっているリエルとは対照的に、ミヤビは何食わぬ顔でナシタの上で横になっている。


 〖ゆ、ゆっくりね?〗


 〖では、少しこのまま歩きますね〗


 そう答えたナシタは立派な体躯を支えている四本の脚を動かし歩き始める。意外と揺れが少ないその歩き方にリエルの不安は徐々に小さくなっていく。後ろで横になっているミヤビも問題はないようだ。


 〖うむ、中々悪くない。これは楽じゃ〗


 〖そうね。歩いてる感じは安心できそうで助かるわね。でも、ここまで揺れが少ないと、ナシタは無理してるんじゃない?〗


 〖そんな事はございませんのでご心配は無用です。しばしこのままの方がよろしいですか?〗


 〖ううん、歩いた感じは大丈夫だから、走ってもらっていい?〗


 〖畏まりました〗


 〖最初はゆっ――〗


 ナシタの鋭い加速によって、リエルは言葉を最後まで発する事は敵わなかった。ナシタの速度は、リエルが微かに発した声を遙か後方へと置き去りにする。

 慌てて態勢を低くし、手綱にしがみ付き、身を斬る様な風を耐えるリエル。それとは裏腹に後ろにいるミヤビは平然としている。

 恐怖を覚える程の速度で大地を駆けるナシタを何とか止めようと、リエルは必死に腕を動かしナシタの首を叩く。


 〖と、止まって!ナシタ!ナシタ!!〗


 〖はい?どうしました?〗


 〖止まりなさい!この馬鹿!〗


 〖は、はいっ!?〗


 リエルの怒号を受けたナシタは速度を落とし、立ち止まる。どうしたのかと後ろに首を回すと顔面目掛けて何かが飛んでくる。


 〖ぐはっ!?〗


 案の定、それはリエルの拳であった。鞍の上に立っているリエルはナシタに向かって声を上げる。


 〖なんて速度で走るのよ!普通は徐々に速度を上げていく物じゃないの!?〗


 〖なんじゃなんじゃ?何を怒っておるんじゃリエルよ?〗


 訳が分からにといった様子のナシタとミヤビ。これは感覚の違いなのだろう。ナシタにとってはそこまで速度を出したつもりではないし、ミヤビにとっても動じるような事では無かったのだろうが、リエルにとっては違うのだ。


 〖もっとゆっくり走って頂戴!あんな速さで走られたら碌に目も開けてられないし、風も凄くて大変なのよ!〗


 〖リエルよ。風の抵抗が問題だと言うのなら、魔力の壁を展開すれば良い。難しい事ではない、と言うかナシタが魔障壁を展開すればいい話じゃな〗


 〖そう言う事じゃなくて、怖いのよ!分からないの!?〗


 〖あぁ。なるほどな〗〖気づきませんでした!〗


 二人揃って考えていなかったようだ。結局、ナシタに乗るのはまたの機会にして、自分の足で向かう事に森へと向かう事にする。


 【ウィンドウォーク】を使いながら走っているリエル達は道中、誰とも出会う事も無かった事もあり、速度を落とさずに走り、程なくして森へと到着する。


 〖途中誰とも会わなかったのはよかったけど、近くに誰か居そう?〗


 〖今の所、人の気配はないから大丈夫じゃ〗


「そう、なら普通に話しても大丈夫よね」


「わ、私の出番が・・・うぐぐ」


「ナシタに乗れば楽ができたんじゃがな。なんでやめたんじゃ?」


「・・・怖いから」


「それくらい慣れればよいじゃろうに」


「理由はもう一つあるわ。やっぱりナシタにミヤビと二人で乗ろうとすると大きすぎるのよ。嫌でも目立つわ」


「うーむ。ナシタも案外役に立たんな」


「むぐぐ・・・返す言葉もございません」


 首を項垂れさせて落ち込むナシタを不憫に思ったリエル。元気づけようとフォローを入れる。


「まぁナシタに乗るならやっぱり普通の大きさで一人乗りするしかないわよ」


「それなら問題ないのですね!?」


「妾も楽をしたかったがやむを得ないか。兎に角、今は狩りに集中するとしよう」


「そうね。この話はまた後でしましょう。さ、行くわよ」


 リエルはいつもの様に矢筒を腰へと装着し、弓を握ると森の中へと入っていく。ミヤビに索敵を任せて、ナシタは普段見せていた狼の姿へと体を変化させて周囲を警戒しながら、一行は森の中を進んでいく。


 〖この先に居るな〗


 〖了解っ〗


 ミヤビの言葉を受けて、リエルは気配を殺しながら弓を構える。構えた弓の手元に魔力の輪が形成され、遙か前方を映し出す。

 そこにいたのはロックベア。厚い毛皮をもった大型の熊の様な魔物で、鋭い爪と強靭な体を持つ典型的な力だけの魔物である。

 リエルは弦を弾き絞り、息を止めて狙いを定める。

 引き絞られた弦に撃ちだされた矢は一筋の光となり、目標を貫く事に成功する。ロックベアは何が起きたのか気づくことなく、頭部を撃ち抜いたリエルの一撃によりその動きを止めて地面へと倒れ込む。


 確かな手応えを感じながら、リエル達は狩りを始めるのだった。


お疲れさまです。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


想定している基準が違うと、仕事でもこういう事ありますよね。

怖い怖い。

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