47話 無事に終了、依頼の報告
受付ではベリンダや他のギルド職員達が冒険者の対応に追われていた。
リエル達もそこで依頼完了の報告を済まそうと列に並んで順番を待っている。
〖簡単な依頼のはずじゃったのに予想以上に時間を食ったな〗
〖でも、これから先、ナシタに乗って移動できるからよかったんじゃない?〗
〖はい!私がお役に立って見せます!〗
〖それに初めての依頼だし、こういう事があるかもしれないって分かって、いい経験だったとあたしは思うわよ?〗
〖それはそうかもしれんな。そう考えれば悪くない結果という事か。それにしてもなかなか列が進まんのぉ〗
なかなか報告が終わらない事に若干不満を漏らしているミヤビ。お腹が空いているのもあって少し機嫌が悪いらしい。
そわそわしているミヤビをみたリエルは軽くその頭を撫でながら、昼食はたくさん食べさせて上げる事を約束し、もう少し我慢するように伝える。
「見ていて思ったんだけど、リエルちゃんってもしかして【魔獣言語】がわかるの?」
不意にアラーナから声がかかる。【魔獣言語】という単語は初めてきいたリエルは首を傾げる。その様子をみたカルツも簡単に説明をしてくれた。
「魔物の言葉ってのは、種族毎に喋っている言葉--波長っていうのか?それが異なっているらしいんだが、特定の種族と意思疎通ができる能力ってのがあるんだよ。てっきり俺もリエルはその辺知っていると思ったんだが違うのか?」
その説明を聞いたリエルは、以前ミヤビに聞いた念話の事を思い出す。従魔の契約をしている者同士は念話による意思疎通が可能だと聞いてたのだが、カルツやアラーナの反応を見る限りだとミヤビの説明では矛盾している様に感じたのだ。
〖従魔の契約をすると誰でも念話が使えるんじゃないの?〗
〖あー・・・それはな、妾の説明の仕方が悪かったな。カルツが言っている事は間違っていない。よいか?妾やナシタは人語を理解し、喋る事も出来る。故に思念に乗せてそれを契約者に人語で伝える事が出来る訳じゃが、通常、人語を喋れない魔獣の場合、思念である程度の考えを伝えるくらいしか念話ではできん。それを完全に理解するには先ほど言っていた魔獣言語を理解する能力が必要になるって訳じゃ〗
〖なるほどね。でも、それなら都合がよさそうね〗
ミヤビに詳しい話を聞いたリエルはカルツ達に答えを返す。
「魔獣言語って言葉は知りませんでしたけど、確かにあたしとミヤビ達は断片的な物ですけど会話ができるのは確かです」
「なるほど。だからフォレストウルフとも従魔の契約を結ぶ事ができた訳ですね。魔狼種関係の言葉の波長が理解できるって事になるんですかね?テイマーの方ってこの辺だとほとんど見かけないので、私としては実に興味がある話です」
ついにミルドもその話に食いついてくる。ミルドとしては興味深い分野の話だったのだろう、ミヤビとナシタ、そしてリエルをそれぞれ観察するように見ている。
〖なんですかこの失礼な輩は?私の事をじろじろとみて〗
〖妾達の存在が珍しいんじゃろう。言われてみれば従魔連れの人間はまだ見た事ないしのぉ。別の町に行けばそうでもないんじゃろうか?〗
「ミルド、あんた危ない人に見えるからやめなさいよ。リエルちゃんも困ってるでしょ」
「あたしは別に構いませんけど、ナシタは少し気にしてるみたいですよ」
「おや、それは申し訳ない。なるほどなるほど、そういう事もリエルさんには伝わる訳ですね。いや~羨ましいなぁ」
「従魔を連れた冒険者ってそんなに珍しいんですか?」
「そうだな、従魔を従えている冒険者ってのは実はそこまで多くないと思うぞ。実際俺が見た事あるのはリエルの他でも二人くらいしか今までであった事はないな」
「そうね。私達も冒険者を初めてから結構長いけど、魔獣使いってそこまで頻繁に出会う職業ではないわね。従魔の食事とかいろいろ大変らしいから低位の冒険者なんかだと、その燃費の悪るさで人気がそれほどないってのいうも理由の一つだけど、素質の問題っていうのが一番の理由みたいよ?」
「テイマーというのは変わった職業ですからね。素質がない者でもなれない訳ではないですけど、適性が無い事に労力を割り振るより、その労力で別の職業を目指した方が健全だと言われるくらいです。一つ手っ取り早い方法もあるんですけど私は余りその方法は好みじゃ無いので説明は割愛させて下さい」
「そうだな。俺も流石にあれは納得できねぇな。まぁ従魔を連れている冒険者ってのは少し憧れちまうっていうのは確かにあるな。素質があったら、頼りになる従魔を育て上げてみたいって感じでな」
それぞれが思い思いの事を口にしている中、ギルドの受付も大分列が進み、程なくしてリエル達の順番がやって来る。
「お待たせ致しました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「依頼の報告に来たんですけど。これが依頼書と必要な薬草です。確認お願いします」
リエルはギルドカードと依頼書、それと採集してきた薬草が入った袋を二つ、受付の女性に差し出す。
女性はカードを魔道具へと通して、依頼書と内容を確認して、袋の中を確認する。
十分な量が集まっている事を確認し、別の職員へと依頼書を渡すと、受け取った職員は受付の奥へと向かう。
「はい!確認完了です!お預かりした薬草はこちらから依頼元の魔術師ギルドへ届けますので、リエルさんのお仕事はこれで無事終了となります!」
そこへ、奥から戻ってきた先程の職員から袋を受け取る女性職員は、それをリエルの前に差し出す。
「では、こちらが報酬になります。お受け取り下さい。またよろしくお願いしますね。お疲れ様でした」
「有難うございます」
リエルは袋を受け取り会釈をすると、受付から離れていく。
カルツ達も既に受付を終わらせたようで、少し離れた場所でリエル達を待っていた。
「おう。無事完了か?」
「はい、おかげさまで問題無いみたいです」
「私達は別に何もしてないから、気にする必要なんて無いわよ?」
「それでも手を煩わせてしまった事は事実ですから」
「礼儀正しくていい事じゃないですかね?冒険者ってのは職業柄、その辺りはイマイチな方が多いですから」
「まっ!俺は細かい事は気にしないからどっちでもいいけどな!それよりも早く飯でも食いに行こうぜ」
「そうですね。あたし達も宿に戻るとします。どうもお疲れ様でした」
「ん?なんだ連れないな?」
「リエルちゃんだって都合があるから無理に誘うわけにはいかないでしょ。まぁ機会があれば一緒に食事でもしましょうね」
アラーナの言葉に軽く頷くとリエル達はギルドを後にして、宿へと歩いていく。
街中を二匹の従魔を連れて歩いているエルフの少女の姿はやはりとても目立つ為、度々こちらを見て驚く人が見受けられる。
ミヤビは気にする事は無いのだが、ナシタはどうも落ち着かないらしく、リエルに張り付くように歩いている。
〖情けないのぉ。人間如きにビクビクするで無い〗
〖ち、違いますよミヤビ様!?私は別に恐れてなどおりません!私にはリエル様をお守りするという使命があるのです!け、決して逸れないようにくっついている訳ではありません!〗
〖尻尾を股下に隠しておきながらその台詞はなかなか説得力があるのぉ?〗
ナシタは、はっとして後ろ覗き、尻尾を震わせる。
〖ミヤビ、あんまりナシタを虐めるのはやめなさいよ。そう言うところは性格悪いんだから〗
〖リエル様・・・〗
リエルの優しい言葉に興奮してしまったナシタは、リエルの足へ体を擦り付けて甘えている。
ミヤビは空かさず追撃を加える。
〖リエルに裸体を見せたり体を擦り付けたり、助平な小僧じゃな。まーミノタウロスと言えば性の象徴みたいな所があるし、元が元なので当然と言えば当然なのかもしれんが・・・。仕える者としてどうかと思うぞ?〗
〖えっ・・・〗
ミヤビの話を聞いてナシタからサッと離れるリエル。
〖ち、違いますリエル様!?ミ、ミヤビ様も誤解を与える様な言い方はおやめください!〗
あたふたしているナシタを見てケラケラと笑っているミヤビ。
なんだか意地悪なミヤビの様子にリエルは少し考える。
(どうしたのかしら?・・・あ、もしかして・・・)
〖もしかしてミヤビ、ヤキモチ?〗
〖なっ!?ち、違うぞ!?決して妾は嫉妬なぞしておらんぞ!?〗
リエルの言葉で今度はミヤビがあたふたし始める。
その様子をを見ているリエルはニヤニヤと笑みを浮かべる。
〖ミヤビったら何だかんだいって構って欲しい訳ね。それでナシタにちょっかい出して。ホント、素直じゃ無いわねー〗
〖違うぞ!妾は――ぐぬぬっ、も、もうよい!さっさと帰って飯を食わせい!〗
リエルを追い抜きせかせかと歩いていくミヤビを見ながら“やれやれ”といった様子のリエル。
そこへナシタがリエルにだけに聞こえる様に質問する。
〖ミヤビ様は私の事をお嫌いなのでしょうか・・・〗
〖そんな事はないと思うわよ。ミヤビがああいう性格なだけよ。人が困ってるのを見るのが楽しくてしょうがないんじゃない?〗
〖そういう物なのでしょうか?〗
〖気にしすぎよナシタ。ほら、ミヤビがドンドン先に行っちゃうから、あたし達も行くわよ〗
〖畏まりました、リエル様〗
ミヤビが少し先で立ち止まって早くしろと催促しているのを見ながらリエルとナシタも宿へと急ぐのだった。
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宿へと帰ってくると、最初にそれに気づいたのは受付にいたカレンであった。
「あれ?リエルさん、お帰りなさい。ミヤビちゃんと――」
カレンが沈黙していると、その後ろからミヤビという言葉に反応したシエラが姿を現し、それを見た途端大きく目を見開き声を上げる。
「あれー!?色が違うミヤビちゃんがいるー!?」
「・・・どうしたんですか、その子?」
「ははは、ギルドの依頼でリヴルの森に入ったんですけど、そこでテイムしてしまいまして」
「リエルお姉ちゃんズルイ!シエラも犬さん欲しいー!」
騒ぎ始めたシエラの声を聞きつけて、今度はエイダがやって来る。
「どうしたのシエラ?大きな声を出して・・・あらリエルさん。お帰りな――あらあら?ミヤビちゃんが・・・二匹?」
「お母さん、あたしも犬さん欲しい!ねぇってばー!」
このままでは何時まで経っても埒が明かないので、とりあえずミヤビにシエラの相手を頼み、その間にエイダへと説明する。
「ギルドの依頼でリブルの森へ入ったんですけど、いろいろあってあたしがテイムした新しい従魔です。名前はナシタっていうんですけど、一緒の部屋でも大丈夫ですか?」
「なるほどね~。リエルさんはテイマーなのね。それなら納得だわ。でも弓の腕もすごいのにテイマーの素質まで持ってるなんてすごいわねぇ」
「エイダさんもテイマーの話はご存知なんですか?」
「いえいえ、そこまで詳しい事は知りませんよ。ただテイマーっていうのは生まれながらの素質が大事だっていうのは聞いたことがありますから。あ、あとお部屋の事は今まで通りで問題ないですよ。リエルさんの従魔だったら暴れたりしないでしょ?」
「はい。それはお約束します。ご迷惑はかけませんので、申し訳ないですけどお願いします」
「いえいえ。あ、あと帰ってきてお疲れの所悪いんですけど、夫が少し話したい事があるそうなので御呼びしても大丈夫かしら?」
「あたしにですか?なんだろう?」
エイダの言葉に反応したのはミヤビを同じだった。
〖例のノートに乗っていた料理の件ではないか?もしや試作品ができたとかか!?〗
〖あぁ、【ころっけ】だっけ?どうなんだろう。取り敢えずご飯は話の後でいい?〗
〖ああ、妾は構わん。異世界の料理の話の方が重要じゃ〗
〖私はリエル様に従いますので問題ありません〗
「わかりました。ミヤビ達もお腹が空いてるみたいなので食堂の方で待ってればいいですか?」
「では、そちらに夫を連れて行きますので、申し訳ないですけどお願いしますね」
カレンは受付の仕事があるのでその場に残り、残りの全員は食堂へと向かうのだった。期待に胸を膨らませるミヤビの上機嫌な様子を見たシエラもるんるん気分で後をついてくるのだった。
昼食時から外れた時間にも関わらず、食堂の中にはそれなりのお客さんが食事を楽しんでいた。
その食堂の中で、他の客よりも離れた位置のテーブルへと向かうリエル。
自分が従魔連れという事を意識してのリエルなりの配慮である。
席に着いた事を確認すると、リエル達の注文を確認している。
エイダに日替わりランチを勧められたのでリエルはそれを三人分お願いするとエイダは頷きながらシエラに喋り掛ける。
「お父さんを呼びに行くけどシエラ?あんまりリエルさん達に迷惑かけちゃだめよ?」
去り際にシエラに告げるとテーブルから離れて行くエイダ。
「平気よ!ね?ミヤビちゃん!」
相変わらずミヤビはシエラのお気に入りらしく、背中を撫でたりして、ミヤビのモフモフ感を堪能している。
その様子にミヤビはと言うと、今回は空腹感のせいかいまいち反応は良くない。
〖ナシタ。出番じゃ。代わりにこの娘の相手をしてやってくれ。妾は腹が減って、今この娘の相手は面倒じゃ〗
〖わ、私ですか?ですがその人間はミヤビ様を好んでいるのでは?〗
〖むぅ〗
ナシタの言っていることも確かだと分かっているのだが、いかんせん今はもう食事の事で頭が一杯なミヤビ。仕方なく尻尾振ってシエラの相手をし始める。
〖ご飯はすぐ来るだろうからもうちょっと我慢してねミヤビ〗
シエラの相手をしながら食事が来るのを首を長くする思いで待つミヤビなのであった。
お疲れさまです。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。
また次回も1日間が空くと思います。どうもすいません。




