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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ世界へ。 バランディアの町編
44/99

44話 新たな主 前編

誤字脱字は時間があるときに修正します。


2017/11/11 20:10 ミノタウロスの名前がしっくりしなかったので変更しました


前:バース

後:ナシタ


どうもすいません。

 森の入り口に立っているカルツ達。


「結局森まで着いちまったぞ」


「そうですね。これは寄り道してくれてる事を祈るしか無さそうですね。ぐはっ!?」


 横からミルドの顔面に拳が刺さる。


「まだリエルちゃんが死んでるとは限らないのに、なんてこと言うのよ!!」


「そ、そんなつもりで言ったわけではないのに・・・と言うか口より先に手を出すのやめて下さい!僕はか弱い魔法使いなんですから貴方のパンチは洒落にならないくらい痛いんですよ!」


「誤解を生むような言い方をするあんたが悪いんでしょ!」


「グエッ!?」


「その辺でやめとけ。相手がミノタウロスなら簡単には行かない。アラーナのパンチはまじで洒落にならない」


 お腹を抑えて悶絶しているミルドをみて迂闊なことを言わなくてよかったと考える一方で、リエルが無事でいるかどうか気になっているカルツは武器を手に握り、森へと一歩踏み出そうとする。

 しかし、悶絶していたミルドがそれを制止した。


「ま、待ってください。ゲホッ!な、何かおかしな魔力が近づいてきます!エオッエホッ!」


 カルツは舌打ちをして軽くアラーナを見る。既に剣を抜き身の状態で握っているアラーナもそれに気づいて申し訳なさそうにカルツをみる。


「ミルドは一端離れろ。そんなんじゃミノタウロスの相手がまともにできるわけねぇ」


「ま、待ってください!これは・・・複数の異なる魔力が感じられます」


「なに?」「一匹じゃないの!?」


 再び開かれたミルドが発した言葉は二人に確かな危険を感じさせる内容だった。だがそれも一時の事で、さらにミルドは言葉を続ける。


「ですが・・・なんか違和感があるような・・・」


 ミルドは魔力感知に優れた能力を持っているため、この手の索敵が非常にうまく、カルツ達もその能力は信頼しており、頼りにできる物だと理解もしている。

 そのミルドがおかしな魔力が混じっていると告げている以上は、油断できない何かが迫ってきている事は十分把握できた。


 痛みも引いてきたミルドが杖と短剣を構えて森へと向き直り、カルツとアラーナも臨戦態勢で相手を待ち構える。

 しかし現れたのは強敵ではなく、探し求めていたリエル達の姿であった。


 -------------------


「ダメよ!てゆーかあたしは別に王女でも何でもないからね!?」


『シカシ 魔王様ノゴ息女デアラレルナラバ姫殿下ハ ワ――』


「姫殿下じゃないから!その呼び方はダメ!絶対ダメ!!」


『ソ ソンナ事ヲ申サレマシテモ・・・』


 ミノタウロスは必死に断ろうとしているリエルに負けじと食い下がる。


「ダメな物はダメなの!それにあなたを連れて帰ったらそれこそ大変な事になるに決まってるじゃないの!そうよね!?ミヤビ!!」


 名前を呼ばれたミヤビであったが、何やら考え事をしているようでリエルの叫びにうわ言に様に言葉を洩らす。


「ふむ・・・ダンジョン核の支配・・・契約の上書き・・・ふむふむ・・・。ん?ああ、すまぬ。呼ばれた気がしたがなんじゃ?」


「なんじゃ?・・・じゃないわよ!ミノタウロスなんて連れて帰ったら絶対に問題になるわよね!?」


「ん~む・・・」


 再び黙ってしまうミヤビ。その様子を黙ってみているミノタウロスと、隣で騒いでいるリエル。そんな板挟みの様な中で、ミヤビが爆弾を投下する。


「何とかできるかもしれんぞ?」


『本当――』「できないわよ!!」


 ミノタウロスの言葉をかき消す様に、ミヤビに向かってリエルが吠える。


「いいから聞くんじゃリエル」


「嫌よ!聞きたくない!」


 耳を塞いでそっぷを向いているリエルにミヤビがため息をつく。


「子供かお主は・・・。あ、まだ小便臭いガキじゃっぶぎゅ!?」


 例の如くリエルの拳がミヤビの頭上へと落ちてくる。人型の時に受けるのは初めてだった為、その衝撃は頭の上から体の芯まで響いたようで、ミヤビは悶絶してしまう。

 リエルは腕を組んでそっぷを向いている。


「痛いのじゃ!お主もそのすぐに手を出す癖を直した方がいいのではないか!?人間か喰らっておったらくたばっておるぞ!」


「だってミヤビにはこれくらいやらないと効かないでしょ!」


「ぐぬぬぬ!」


『無理ニトハ申シマセン。先ホドモ事情ガアルトオッシャッテオリマシタカラ』


 ミノタウロスは落ち着いた様子で口を開く。


『ダンジョン核ト共ニ消滅スル。ソレハ生ミ出サレタ俺ニトッテハ当タリ前ノ事ナノダロウ。最後ニ偉大ナ方ノゴ息女デ在ラレル貴方ニオ会イデキタダケデモ俺ハ満足デス』


「すまんな。可能性はあるのでじゃがこれは妾だけではどうする事もできぬ問題故、リエルの協力は必要不可欠なのだが、当の本人がこの様子では難しい。諦めろ」


 ミヤビの言葉に、なぜか自分が悪い様な言い方が含まれているのをリエルは聞き逃さなかった。


「あ、あたしが悪いみたいな言い方しないでよ!だ、だってしょうがないじゃないの!ミノタウロスなんて連れて歩けないでしょ!?」


「じゃから妾の話を聞けと言っているのに、お主は全く聞く耳を持たんからな。諦める他あるまい?違うか?ん?違うなら何か言ってみるがいい?」


「むぐぐぐ・・・」


 リエルを煽るような態度で下から覗きこむミヤビに若干いらつきを覚えるリエル。


「いいわ!言ってみなさいよ!でも、その後問題になってもあたしのせいじゃないからね!」


 その言葉を聞いたミヤビはニンマリと頬を釣り上げ嫌らしい笑みを浮かべている。


(こやつ、やはり案外単純じゃな。と言うより根が優しいせいじゃろう、結局のところあいつが不憫に思ってはおったんじゃろうが、事情がそれを良しとしなかったといったところか)


 そんな事を考えているのもつかの間、笑みを浮かべているミヤビを見て説明を促す。


「ニヤニヤしてないで早く言いなさいよ!」


「わかったわかった。よいか?先ほど説明した事を覚えておるか?ダンジョン核には二通りあるといった話じゃ」


「・・・ええ。それがどうしたの?」


「ダンジョン核を生み出したのが今回は神としよう。神がダンジョン核を生み出しだのであれば、それは間接的にその神の所有物、あるいは眷属と言ってもいいのではないかと妾は考えた。故に神に支配出来る物であるならば、魔王でも同じことができるのではないか?」


「言ってる事がわからないからもっとわかりやすくお願い」


「つまり、自然発生した核であっても、お主が魔王の力を使って契約を上書きしてしまえば、こいつはダンジョン核の縛りから抜ける事が出来るのかもしれんと思った訳じゃ。さらに付け加えるなら今回の様な不完全な状態のダンジョン核が対象になるのであれば、正常な物より簡単にできるとは思わんか?」


「え~と?要するにあたしがこのミノタウロスと従魔契約をして、ダンジョン核から支配を奪うって事?」


「うむ。そういう事じゃ」


「そんな事できるの?」


「可能性の話だといったじゃろう。憶測にすぎん。ただ何もしなければ可能性はゼロじゃが、やってみたらゼロではなくなるかもしれんぞ?」


 ミヤビの説明をきいたリエルはしばし考える。


「従魔の契約をした場合、あたしに何か問題はないの?」


「契約の内容次第と言ったところか?まぁ今回の場合ならこいつはリエルの僕になる事を望んでいるからほとんど問題はないと言ってもいいじゃろう。ただあるとすれば、こいつはダンジョン核によって生み出された存在であるため、その存在を定着させるのに膨大な量の魔力が契約には必要になるじゃろう。まぁお主の異常な魔法力なら結局問題は無いという事じゃな」


「でも、ミヤビと契約されてた時はそんな様子なかったわよね?」


「妾は例外じゃろうな。お互いが正確な契約を交わした訳でもないし、妾が稲荷空孤という種の頂点まで辿り着いただけの自力を持っていた事も要因の一つじゃろう」


「・・・よくわからないけど、ミヤビが”自分はすごいぞ”って言いたい事はわかったわ」


「そうじゃな。妾は実にすごいんじゃ。敬ってよいぞ」


「最後のもう一つ、契約が成功したとして、ミノタウロスを町に連れて行くなんて無理よ。それはどうするの?」


「それなんじゃがな?契約の問題が解決すれば、同時に解決する物だと妾は予想していおる」


「・・・つまり?」


「やってみないとわからん。僕としての契約ならば十分期待できる結果はでると思っておる」


「出たとこ勝負なのね・・・結局」


 肩を落としてがっかりするリエルをミノタウロスは申し訳なさそうに見ている。それに気づいたリエルは軽くため息を付くと決意を固める。


「・・・わかったわ。契約しましょう」


『本当カ!?イヤ デスカ』


「ええ。このまま放っておいたらこの先ミヤビに何言われるかわからないわ」


「別に妾はどっちでも構わんぞ?見捨てるのだってお主の自由じゃ」


「あんたのそういう言い方が嫌なのよ!」


 またもやニンマリ笑みを浮かべてリエルをみるミヤビに、イラッとするリエルだったがぐっと堪える。ミヤビはコホンと軽く鳴らすと。


「なら、さっさと契約を済ますとしよう。おっとその前にじゃ」


 ミヤビはミノタウロスに向けて【天眼】のスキルを発動する。


「うむ。やはり能力の中に【ダンジョンキーパー】のスキルがあるな。それ以外は割と普通じゃな。生み出されてからそれほど時間が経ってないせいじゃろう」


「ところで契約ってどうすればいいの?」


「本来は魔力で描いた契約陣が本来は必要なんじゃが・・・お主の場合は例外のようじゃしなぁ。ダンジョン核からの契約を奪い取るとなれば、やはり【魔力解放】をしている事は前提になってくるとおもうぞ」


『契約ニ関スル知識ハ俺モ ダンジョン核ニヨッテ与エラレテイルヨウデスノデ 姫デ リエル 様ハ俺ノ僕トシテノ忠誠ヲ受ケ入レテ頂ケレバヨロシイカト思イマス』


「わ、わかったわ」


「ではリエルよ。【魔力解放】を使い、その魔力をそいつに向けて流し込め。分かっておるだろうが今の限界時間を忘れるなよ」


 ミヤビの言葉に軽く頷き、リエルは深く息を吸い込み魔王の力を解放する。再び周囲に吹き荒れ始めた魔力の嵐はリエルの制御を受けてミノタウロスへと注がれる。


『我 新タナル主 リエル様ノオ心ノママニ コノ身ノ全テヲ御身ニ尽クシ 永遠ノ忠誠ヲ 此処ニ約束イタシマス』


 忠誠の言葉を口から紡ぎだすミノタウロス。するとリエルから注がれていた魔力が急速にミノタウロスの周囲を覆い始める。

 更に次の瞬間、成長を止めていたはずのダンジョン核が形を崩し粒子へと変貌すると、魔力の膜で覆われていたミノタウロスの元へと吸い込まれていく。

 周囲に漏れていたリエルの魔力も吸収しながらも、ミノタウロスを取り巻いていた魔力の膜は次第に縮小させ始め、元はミノタウロスだった筈の存在は新な姿を現し始める。

 ミヤビは【天眼】のスキルでミノタウロスの状態を終始観察していた為、その変化に逸早く気づくと、リエルへと声を放つ。


「リエル!そこまでじゃ!」


 ミヤビの言葉に反応して魔力の供給を止めると自身も素早く【魔力解放】の能力をカットする。強烈な疲労感に襲われたリエルはその場に膝をついて荒くなっている呼吸を整えようとしている。

 予想外の疲れ方をしているリエルを目にしたミヤビはリエルへと駆け寄り声をかける。


「リエルよ!大丈夫か!?どこか痛むか!?」


「だ・・・大丈夫・・・ちょっと疲れただけよ・・・。それで・・・これは成功・・・なの?」


「成功じゃ。その証拠にこいつにはもう【ダンジョンキーパー】の能力をもっておらん。そして最後までお主が問題にしていた事も解決されているようじゃぞ。見てみるがいい」


 ミヤビの話を聞いて、リエルは顔を上げミノタウロスを見る。そこにいたのは頭から立派な巻き角をはやし、四本の足で力強い体躯を支えている雄々しい一頭の馬が目に入る。


「これが・・・ミノタウロス?馬になってるけど」


 リエルの額にはまだ珠の様な汗が浮かんでいるが、ミヤビに寄り添われながらゆっくりと立ち上がる。そんなリエルが発した疑問にミヤビが答える。


「存在を作り変えたのじゃろう。これはこいつの述べた契約の内容が、お主の問題を解消する最善の形を取らせた結果と考えられる。そして存在を作り変えるという行為のために膨大な魔力が必要となり、お主に過剰な負荷をかけたというんじゃな」


「ミヤビ様のおっしゃる通りかと思います」


 口を開いたミノタウロスであった存在は、今までとは違いハッキリとした口調で言葉を話し始める。


「私が御身に仕える上で、どの様な結果を望むのかを考えた結果、人の町でも問題ないと思える容姿へと姿を変えた訳です。しかし、そのせいで御身には大変苦労を掛けてしまった事は私の一生の不覚・・・どのような罰でも謹んでお受けいたします」


 その言葉を聞いたリエルは、ミノタウロスへと喋りかける。


「いいのよ。貴方があたしの事を考えてやってくれた事なんでしょ?だったらそれは問題じゃないわ」


 その言葉に感極まったような様子のミノタウロス。


「御身に仕える事、誇りに思います。リエル様の御心のままに私をお使いください」


「リエル様・・・。その・・・ミノタウロスさん?その呼び方はどうにかなりませんか?」


「ならばやはり姫殿下と御呼びしたよろしいでしょうか?」


「いいです!リエル様でいいです!姫殿下は恥ずかしいからやめてください!」


「畏まりました。では、その様にさせて頂きます。それで・・・申し訳ないのですが、私は既にミノタウロスとは存在自体が変わってしまってますので、よろしければ私に名を頂きたいのですがよろしいでしょうか?」


「へ?名前まであたしがつけるの?」


「まぁ主であるリエルが名を与えるのは成り行きとしては当然じゃろうな」


 ミヤビの言葉にどうしたものかと考え込んでしまう。


「ねぇミヤビ。誕生って意味を持っている言葉って、何かしらない?」


「なるほど、悪くはないな。そうじゃな・・・異世界の言語で【ナシタ】という言葉があるぞ?どうじゃ?」


「ナシタ・・・ナシタね・・・」


 ミヤビに教えてもらった言葉を繰り返し、やがてリエルはミノタウロスに名を与える。


「貴方の名前を考えました。誕生を意味して、ナシタと名付けたいんだけど、どうでしょう?」


「謹んで頂戴いたします。このナシタ、全身全霊をもってリエル様にお仕えさせて頂きます」


 そう言葉を返すと、ナシタの体は微かな光を放ちながらその姿を変化させる。【人化の術】である。

 2本の角を、短めの黒い頭髪の間から生やしている、整った顔立ちに黄金色の瞳を輝かせる青年の姿へと変化し、リエルの前へと跪く。

【天眼】の力で【人化の術】を使える様になっていた事を既に確認していたミヤビにそれほどの驚きはなかったが、リエルはそうもいかず声を上げる。

 ただ声を上げた理由は【人化の術】に驚いたからではないのだが。


「きゃー!!なんで何も着てないのよ!!」


お疲れさまです。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。

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