41話 初めての依頼とリブルの森
誤字脱字、おかしな部分は時間があるときに修正していきます。
掲示板の前には人集りができており、皆依頼を吟味しているのを見る事ができる。
リエル達も少し後ろの方でその様子を観察している。
一人の男が掲示板に張られていた紙を手に取ると、そのまま受付へと歩いて行った。
(なるほど。依頼が書かれている用紙を受付にもっていけばいいのね。)
依頼の受注方法を再確認できたリエルは、掲示板の前が空くのをそのまま待つ事にする。
「あら?そこにいるのはもしかしてリエルちゃんじゃない?」
「お!ほんとだぜ!」
「ちょっと!二人とも失礼ですよ!」
どこかで聞いた事がある声が後ろからリエルへと掛けられる。振り返ると昨日広場で見た三人組の冒険者の姿がそこにはあった。
〖なんじゃ、こやつらは?〗
〖確か・・・昨日広場で見た人達じゃないかしら?〗
〖昨日?広場?う~む・・・。あ!思い出したぞ。確か・・・カツルと・・・アラーナ?もう一人は忘れたてしもうた〗
〖そんな名前だったっけ?なんか違う様な・・・〗
「ん?どした?ぼけっとした顔して?」
斧を持っている男が口を開く。
「い、いえ。すいません。えっと・・・アラーナさんと・・・カ、カツルさん?それと・・・。すいません。忘れちゃいました」
「ぷっ!貴方達、よっぽど印象に残らないみたいね!リエルちゃんが私の事覚えていてくれてうれしいわ」
「カルツだ!カ・ル・ツ!」
「まぁ僕は実際影が薄いってよく言われますから気になりませんけどね。改めまして、僕はミルドです」
丁寧に名乗ってくれている二人とは違って、アラーナはお腹を抱えている。慌ててリエルが頭を下げて謝罪をする。
「ご、ごめんなさい!カルツさんとミルドさんですね!失礼しました!」(ミヤビの馬鹿!違うじゃないの!)
軽くミヤビに目をやるが、ミヤビは顔を反らして欠伸をしている。
「その様子だと冒険者の登録は無事に終わったみたいだな。まぁ登録に資格なんて物は必要ねぇから落ちるって事もねぇんだけどな」
「そうね。登録してから上に行けるかどうか。そこが重要な所かしらね」
「それで?依頼を受けにきたのか?」
「えぇ。そんなところです」
リエルはカルツの質問に簡単に答える。すると物静かなミルドがリエルに喋りかけてくる。
「あまり先輩面するのも失礼かもしれませんが、最初は討伐系の依頼より、採集系をお勧めしますよ。冒険者になりたてで浮かれた者達が適正ランクだからと討伐系の依頼を受けて、そのまま帰ってこないなんてことは珍しくありませんからね」
「ミルドさん達もこれからお仕事ですか?」
リエルの何気ない質問に答えたのはカルツだった。
「俺達は依頼が終わって報告に来たところだぞ。結構いい獲物だったからそいつを換金して、これから一杯やるつもりだ」
「というと、魔物退治の依頼か何かって事ですか?」
「まぁそんなところよ。東の街道に出た【ランドタイガー】の討伐依頼だったんだけど、確かに大物だったから換金が楽しみね」
「貴方達は近接クラスだからいいですけど、僕は結構危なかったんですからね!二人して僕を放っておいてランドタイガーに突撃するから大変でしたよ!」
「おう!やっぱ戦闘は肉弾戦に限るぜ!」
「ごめんねミルド。でも、あなたを信用してるからできる事なのよ?」
「全くもう・・・。大体ですね--」
自分の質問のせいで、依頼の話で盛り上がってしまっている三人の様子を見ているリエルは、どうしたらいいだろうと考えてしまう。
するとミヤビが感心したようにリエルに喋りかける。
〖ふ~む。【ランドタイガー】を討伐できるだけの腕は持っておる訳か。なかなかやるのぉ〗
〖あたしは知らないからわからないんだけど、その魔物って強いの?〗
〖そうじゃな・・・フォッシルリザードの強固な鱗ほどではないが、堅牢な体躯を持ち、動きも早い。何より気を付けないといけないのは奴の頭の良さじゃ。単体でもフェイントや、相手の隙を突くような攻撃を繰り出してくる観察力をもっているし、群れの場合、それを率いるリーダーによって与えられる役割を忠実にこなした、戦術的な戦闘方法を取るほど優れた知能を持っている〗
〖へぇ~。なんか面倒くさそうな相手ね〗
〖強さの基準で言えばフォッシルリザードより上だと妾は位置付けるかのぉ〗
ミヤビの説明を聞いていると、アラーナが申し訳なさそうに喋りかけてきた。
「ごめんなさいねリエルちゃん。こっちで勝手に盛り上がっちゃって」
「いえ、大丈夫です」
「まぁあんまり引き留めても悪ぃからな。声をかけておいてなんだけど俺達も受付にいくとするわ」
「はい、あたしも依頼を何か探しますので」
「そう。じゃ~リエルちゃん。またね」
「がんばってくださいね」
「ありがとうございます」
三人はリエルと別れ受付へと歩いていく。三人と話をしている間に掲示板の方も大分人が減ったようですんなりと掲示板の前へと向かう事ができた。
依頼を眺めるリエルは、どんな物があるのかじっくりと調べる事にする。
(ふんふん・・・。あ、薬草採集かぁ。こっちは素材の納品依頼ね。結構いろんな依頼が持ち込まれるのね。)
〖何かありそうか?〗
〖そうね。ミルドさんは採集系から始めるのがいいっていってたけど、ミヤビは何かないの?〗
〖どれどれ・・・。う~む・・・妾としてはどれも退屈そうな物ばかりじゃなぁ~。どれでもいいのではないか?〗
〖適当ね。まぁあたしはどれも興味あるけど、ここは大人しくミルドさんのいう事に従って、こっちの薬草採取でも受けようと思うんだけど〗
〖うむ。妾はそれで構わん。それなら時間もゆっくり使えるじゃろうしな〗
〖じゃぁ、これをもってキャスさんの所へいきましょう〗
リエルは掲示板から依頼書を剥がすと受付へと歩いていく。
「これ、お願いします」
「はいはい~。お?リエルちゃん。何かいい依頼は見つかりましたかね~?」
キャスは差し出された依頼書を受け取り目を通す。ふんふんと一人頷き、以前軽く話を聞いた魔道具へと手を伸ばすと何かを確認している。
しばらくするとキャスがリエルへと向き直り口を開く。
「はい、それではこれで受付完了となります。目的の薬草はオモナエシン、オトギリウムの二種類ですね。場所はリヴルの森がよろしいかと思います」
「リブルの森?」
「はい。場所はここですね」
キャスは周辺の地図を取り出すと簡単に場所を説明してくれた。
「この町の北口から出て少し道なりに歩いていただければ左側に見えてくる森がリヴルの森と呼ばれている森林です。出入り口にいる衛兵の方へこの依頼書を見せれば外へ出られますからね。それと、森には魔物も出る恐れが有りますから十分注意してくださいね」
「わかりました。北口から道なりに行けばいいんですね」
「はい。ではでは、気を付けていってくださいね~」
リエルは依頼書を受け取るとキャスと別れる。初めての依頼を受けたリエルはやる気を強くもってギルドの外へと歩いていく。
〖北口といっておったからあっちじゃな〗
〖うん。ありがと。じゃ、いきましょ!〗
軽く会話を交わすと二人は町の大通りを歩いていく。
少し歩くと、先日見かけた屋台を発見したリエル達。二人は顔を見合わせると屋台の方へと歩いていく。
昨日は気づかなかったが、屋台の隅にサンドイッチと書かれた看板が立っている事に気づいたリエル。相変わらずおいしそうな匂いを漂わせているその屋台で、リエル達は四つのサンドイッチを注文する。
「はい。四つだね。また来てくれて嬉しいよ。これからお出かけかい?」
「はい。ギルドの仕事で。町の外へ行くので小腹が空いたときにとおもって」
「え?もしかしてお嬢ちゃんは冒険者か何かかい?」
「はい。一応冒険者ですね」
リエルの言葉に何とも言えない表情をする屋台の男。
「まだ小さいのに大変だなぁ・・・。よし!これも持っていきな!がんばるんだよ!」
そういうと男は五つのサンドイッチの包みが入った袋をリエルへと差し出した。それにお礼を言うと、男も快く頷き、リエル達は屋台を後にする。
歩きながらチェストリングへとその袋をしまうとミヤビは話をかけてくる。
〖何やら憐れんだ目でみておったが・・・あの男、なんか勘違いしとらんか?〗
〖そう?別にいい人だと思うけど・・・〗
〖それはそうなんじゃろうが・・・まぁよいか〗
〖・・・?〗
やがてリエル達の前に大きな門が見えてきた。町へ来たときと同様、傍の詰所へとリエル達は向かい、傍に立っている兵士へと声をかける。
「すみません。リヴルの森へ向かうので外へ出たいのですが」
そういうとリエルはキャスから渡された依頼書を兵士へと手渡す。
「はい。確認させて頂きました。もう一つ確認のためギルドカードをお見せいただいてもよろしいですか?」
「はい。これです」
手袋を外して、カードを手に取とると兵士へと差し出して、兵士はそれを受け取り確認する。
「はい。ありがとうございます。リエルさんですね?こちら、お返ししますね。それと従魔に着けて頂いてるバンドの方もこちらへ返却をお願いしますね」
リエルは頷き、ミヤビの前足についているバンドを外して兵士へと渡し、確認を終えた兵士はカードをリエルへと返すと門が開く。
「では、お気をつけて!」
兵士に見送られながら二人はリヴルの森を目指して歩いていく。
徐々に町の門が見えなくなってきた頃、ミヤビがリエルへと喋りかけてくる。
〖さてリエル。今後の為にお主に一つ便利な魔法を教授してやろう〗
〖どうしたの突然?〗
〖なに、これからも町から町へと移動するような時に徒歩で移動では何かと不便じゃろう。故にそれを解消してやろうという訳じゃ。よいか、よく見ておくのじゃぞ?〗
ミヤビはリエルに説明すると、魔法を発動させる。するとミヤビの足元が土埃を軽く上げ始める。そして軽く地を蹴っただけの様にしか見えなかったミヤビが、すごい速さで疾走する。あっという間に遙か前方へと移動したミヤビは再びすごい速さでリエルの前へと戻ってくる。
〖どうじゃ?すごいじゃろう〗
〖すごいスピード・・・何をやったの?〗
〖これが今からお主に教える魔法。【ウィンドウォーク】の効果じゃ。お主は風魔法との親和性が非常に高い故習得するのにそれほど時間はかからんじゃろうが、この魔法は【風の碑文第五節魔法】に属する結構なレベルの魔法じゃ〗
〖へぇ~。確かに便利そうね。どうやったらいいの?〗
〖よしよし、やる気になっておるな。それでは説明するぞ〗
歩きながらミヤビの説明を聞き、何度か試行錯誤を繰り返すリエル。詠唱をすればもっと簡単にできるのだが、ミヤビは無詠唱での魔法の行使に長けていた為、【ウィンドウォーク】の詠唱文を忘れてしまっていたのだ。感覚で覚えているといった所だろうか。
最初はうまくいっていなかったリエルだが、次第に要領を掴んできたのか30分程練習すると・・・。
〖どう?こんな感じでいいかしら!?〗
そこには先ほどのミヤビ同様かなりのスピードで地を駆けるリエルの姿を見る事ができた。
〖うむ。やはりお主は風魔法の覚えは異常なほど早いな。流石最上位能力持ちと言ったところか〗
〖えへへ。これで移動はかなり楽になりそうだわ。ありがとね!ミヤビ!〗
〖うむうむ。ならば先ほどのサンドイッチを食わせてくれ〗
〖・・・まさかそれが目的であたしに魔法を教えようなんて考えたんじゃないわよね?〗
〖ん?もちろん違うぞ?単純にのろのろと歩いるのが面倒だっただけじゃ〗
〖あらそう。・・・まぁいいわ。あたしも少し疲れたからそこの木陰で軽く休憩しましょうか〗
そういうと二人は道からそれて、陰になっている木の裏へと移動すると、腰を降ろしてサンドイッチを広げ始める。
ミヤビの前に包みを一つ広げるとリエルも一つを広げて口へと運ぶ。その様子をみたミヤビもサンドイッチを頬張ろうと口を開けるが次の瞬間、何かがこちらへ近づいてくるのを察知する。
〖ん?なんかこちらへ向かってくるぞ?〗
〖魔物?〗
〖いや・・・この感じは人間じゃな。まぁ町へ向かっているみたいじゃし、妾達には関係ないじゃろう。近くに魔物の気配はないしな〗
そう言い終えるとミヤビもサンドイッチを頬張り始めるのだった。
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「この時間になると暇ですね~。そう思いませんか~?ベリンダさん」
「まぁ平和な証拠でいいんじゃないかしら?」
朝の受付が集中する時間が過ぎて、少し手隙な様子でベリンダと話しをしているキャス。
「それはそうなんですけど、やっぱり冒険者ギルドとしてはもっとこう、”どかーん!”とか”ずがーん!”とかやってる方がそれらしいというか~」
「物騒な事言わないでよ。あんたがそういう事言うと毎回よくない事がおきるんだから」
「いやですよ~ベリンダさん。人を危険人物みたいに言わないでくださいよ~」
次の瞬間、ギルドの扉が勢いよく開かれ、息を切らしながら男が飛び込んでくる。
「た、大変だ!リブルの森にミノタウロスが出たぞ!!」
男の叫んだ言葉がキャスとベリンダ、それと何人かの冒険者達がいる室内に響き渡る。ベリンダがジトっとした視線をキャスへと向ける。
「あ、あはは~・・・。わ、私のせいではないですよね~?」
「・・・どうだかね?」
「嫌だなぁ~。たまたまですよ~たまたまた。そんな怖いか・・・あ!?」
「な、なによ?」
「リブルの森にはリエルちゃん達が向かっているはずです!た、大変です!そこの貴方!そこで騒いでいないでこちらで詳しく説明しなさい!!」
キャスは叫んでいる男を怒鳴りつけると、男から話を聞き始めるのだった。
お疲れさまでした。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂けたら幸いです。
魔法解説
【風の碑文第五節魔法】中位魔法【ウィンドウォーク】:足の底と地面との間に空気の断層を生み出し、風の力で疾風の如き動きを可能にする中位風魔法




