4話 幼少期の話 中編 初めての人間
次の後編で幼少の話は一区切りになると思います。
朝日が窓から差し込んでくる部屋の中で、少々早めの起床となった少女が声を上げる。
「ふぁぁあ~っ」
リエルはあくびをしながらまだ眠い目を擦りながらベッドから出る。まだ覚醒しきってない頭で、なにやら青臭い匂いがする。元を探るとどうやら自分の服についてる、薬草の汁が原因だと気づき、首をかしげる。そういえばどうやってベッドまで来たのか記憶がない。深く考えるのはやめて、服を着替えてリビングへと向かう。
リビングに入ると、リリーナが錬金術で作ったポーションを、手さげの籠に入れているのが目に入ってくる。
「おばあちゃん、おはよう~」
「おぉ。おはようリエル。寝坊助さんが珍しく早いねぇ。ほれ、そこのナベにスープがあるから温かいうちにお食べ」
「はーい。あれ?エリック兄さんは今日はお仕事お休みじゃないの?」
「エリックは、昨日見つけた結界の場所を確認しにいってるよ。流石にわしだけじゃ何なのかわからないからね。どうするか判断する
には他の者にも見てもらった方がいい答えがでるじゃろうからな」
「あたしも見に行く!」
「これ、無茶いうんじゃないよ。昨日の様子では危険そうな物ではなさそうじゃが、森の中には魔物だっているんだから危ないんじゃぞ」
「でもでも!昨日は何もでなかったし・・・」
「とにかくじゃ、今のままでは一人で森の中に行くのはやめるんじゃ。エリックが戻ってきてから話をきいてみて、どうするか考えるから、今は我慢しておくれ」
「はーい・・・」
遊べる場所が増えると思い、期待していたが、肩透かしをくらって若干残念ではあるが、年の割に賢い少女は素直に納得すると、器の中の暖かいスープを口に運びつつ、エリックが帰ってくるまでどうしようかと考えるのだった。
朝ご飯を食べ終えて、食器を片付けるリエルに、リリーナが声をかける。
「リエルや、こいつをテルマの所に届けてくれんか。ちょっといつもより量が多いから気を付けてもってっておくれ。お駄賃にこれでお菓子でも買っといで」
以前、嬉しそうにお菓子を見せてきたのを思い出し、銅貨を3枚をリエルに手渡しリエルの頭を撫でた。
「はーい!お届け物はあたしの仕事だからね!」
子供は自分に役目があるというのは嬉しいのだろう、意気揚々と返事を返してテーブルの上にある籠を手に取ると、玄関から外へと走り出すのだった。
家から村の中心部に向かう下り道を元気よく走っていくリエルだが、いつもより多いポーションの瓶が発する音に慌てて速度を落とす。耳を垂らし、恐る恐る籠の中を確認して、割れてない事を確認すると先ほどよりも速度を落としつつ足を進める。
町の中心部を少し歩いたころ目的の雑貨屋が見えてくる。見慣れた人物が慣れた手つきで花壇の手入れをしている、はずなのだが今日は様子が違った。テルマとナイルの二人が、少女は初めて見るため確証はないが、【人間族】と思われる人物が店の前で話をしている。
「そういう訳でして、申し訳ないんですけど何とかならないでしょうか?」
「そういわれても、作ってるのは私じゃないから、本人に聞いてみないと判断しかねるよ」
「そうですか・・・。いえ、無理を言ってるのは承知しております。申し訳ない。エルフ族との取引は私にとっても大事にしたいのですが、相手がその・・・町の貴族の方でしてどうにも押しが強くて」
「貴族だって!?そんな偉い人の目に留まるなんて、きっとリリーナさんに伝えたら光栄に思ってくれると思いますよ。だからこそ、私だけでは到底決められないんで、また後日にして頂戴」
「そう、ですね。いえ、本当に申し訳ないです」
「せっかく持ってきていただいた話なのに、悪いねぇ。あら・・・」
その存在に気づいたテルマが声を掛けようとしたその直後、少し離れたところから間を伺っていた少女が声をかける。
「テルマさん、ナイルさん、こんにちわー。まだお話し中だった?」
「こんにちわ、リエルちゃん。あら?もしかしてそっちの籠は、ポーションかしら?」
「うん!おばあちゃんに頼まれたお届け物でーす」
肩に掛けていた籠をよっこいしょといった感じで両手で差し出すと、それを受け取るために腰を落としたテルマより早く、別の人物の声が響いた。
「おお!まさかとは思いますがなんというタイミング!っと、失礼致しました。初めましてお嬢さん?私はこちらの方達にお世話になっているオルフェンという者です。ええと、リエル・・・さんと呼んでもかまいませんか?」
何やら仰々しい感じでリエルに声をかけてきた男に、驚いてビクッとするリエル。それをみたナイルは少し呆れたように言葉をかける。
「オルフェンさん、そんな大声だしたらリエルちゃんがびっくりするよ」
「いや、面目ない。喜びのあまりつい・・・」
「全く・・・、こんにちわ、リエルちゃん。驚かせちゃってごめんね」
驚きで時間が止まっていたリエルにナイルが声をかけると、我に返った少女は再び動き始める。
「こ、こんにちわ。ちょっとびっくりした」
「ハハハッ、だろうね。僕も初めてオルフェンさんに会った時は、あの大げさな動きに驚かされたからね。えっと、行商隊で来ている商人のオルフェンさんっていうんだけど、僕が言うのもおかしな事かもしれないけど、信頼できる人だから安心して」
「いやぁ、本当に失礼しました。私、エルフの方が作ってくれている非常に効果の高いポーションを買い求めにやってきたのですが、希望の数に届かなくて困っておりましたところ、ナイスなタイミングでそちらを持って現れたリエルさんを見て、驚きと喜びでつい大きな声を出してしまいました。お許しください」
「うん。大きな声で耳がちょっと痛かったけど大丈夫」
「エルフ族の方は優れた五感をお持ちの方が多いですからね。お詫びというのもなんですが、こんなものでよければお受け取りください」
そいうと、オルフェンは持っていたマジックポーチから、鮮やかな袋の包みを取り出し、少女に差し出した。
「とってもおいしいお菓子です。中身はそんなに多くないのですが、よろしければお召し上がりください」
両手で差し出し、頭を下げて詫びている仕草は、子供相手にするには大げさな気もするが、それはオルフェンが礼儀と心がもっとも大事な物と考えている彼の矜持なのだ。一方で差し出されたリエルの方は、喜んで受け取り、見た目通りとてもかわいい笑顔をオルフェンに見せてくれた。
「うわぁ!ありがとう!」
「ははは、お詫びのつもりが素敵なお礼を頂いてしまいましたね」
何のことかわからないと首を傾げるリエルに、一連のやり取りを笑いながら見ていたテルマが話を振る。
「さて、そろそろいいかな?リエルちゃんをあんまり待たせるとリリーナさんが心配するだろうから、その籠を受け取っちゃおうかね」
そういわれて返事をしたリエルは、持っていたお菓子をポケットにしまい足元に置いておいた籠を手に取ると差し出し、テルマは「ありがとね」とお礼を返し、受け取る。
「それと、さっきの話なんだけど、オルフェンさんが、ぜひリリーナさんの作ったポーションを取引させてほしいって言ってるんだけど、よかったらリリーナさんに後で私が会いに行くって伝えておいてほしいんだけど、リエルちゃんにお願いしていいかしら?」
「おばあちゃんのポーションってそんなにすごいの?」
リエルの何気ない返しにオルフェンが、少し興奮気味に答える。
「いやぁ、もちろん!リリーナ殿の作るポーションは正直、中位回復ポーションよりも効果が高い素晴らしい物ですよ!王都で同じものを手に入れようとしたら下位ポーション8個分くらいの値段はする代物です!あっ、もちろん仕入れさせて頂いてる金額はちゃんと考慮させて頂いてますよ!町の方で販売する時も普通の下位ポーションよりは値段は高いですが、一般の庶民の方でも手に届く金額で販売させてもらってますし、購入していただいた方達もこの金額でこの効果はありがたいとおっしゃられているくらい素晴らしい物です!それにこの『はいはい、そこまでにして頂戴!』ポーションのすごい・・・」
「落ち着きのない人だね全く。またリエルちゃんが固まっちまうよ」
怒涛の勢いで素晴らしさを説明するオルフェンの言葉をテルマがやれやれといった表情で話しを遮るが、リエルとしては祖母の事を褒めている話をもう少し聞いていたいと少し残念にも思うが、そこは黙っている事にした。
「それで、今のオルフェンさんが言ってた通り、リリーナさんの作るポーションはかなり効果が高いんだよ。流石凄腕の魔術師って感じだね」
「そうですね、聞いた限りですがリリーナ殿は素晴らしい使い手のようですね。できれば一度私もお会いしたい所です」
「へぇ~!やっぱりリエルのおばあちゃんはすごいんだ!」
大好きなおばあちゃんがみんなから褒められている様子に、リエルは耳をぴこぴこさせながら喜んでいた。
「そういう訳なんだけど、リエルちゃん、お願いできるかしら」
「はーい」
快く引き受けてくれたリエルにテルマは笑みを返す。新しいお使いの仕事を引き受けたリエルは二人と、いつのまにか花壇の手入れを始めていたナイルに挨拶をして来た道を軽い足取りで戻っていくのだった。
ちょっと短めでしたが、会話が多い内容はちょっと難しいです。読んでいただいてありがとうございました。




