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3話 幼少期の話 前編 最初の出会い

もう少し幼少期の話続きます

「リエル、気を付けていってくるんだよ。母さんもいい歳なんだから無茶しないでおくれよ。 痛っ!」

 と、エリックに言われ、馬鹿にするんじゃないよと言わんばかりにリリーナは杖で息子を小突く。リエルはその横で返事をしつつ、ニコニコしている。


 今日は、リリーナと一緒に森の浅い部分にはいって錬金術に使う植物を採取しに行く予定だった。


 3人で朝食を終えて、エリックが仕事のため村の方へと降りて行くのを二人で見送ると、リエルとリリーナは必要な道具を袋につめて山道へと向かった。



 この山道に初めて足を踏み入れるリエルにとって、見るものすべてが新鮮で、その瞳が一つの物に固定されることはなく、目まぐるしくあたりを見ては興奮と驚きで笑顔を漏らしている。ちょっとしたものを見かける旅にリリーナに聞いてみる。


 20分ほど進んでいき興奮冷めやらなぬままのリエルと、リリーナの二人は目的の場所までやってくる。


 荷物を降ろしコップを取り出すと、リリーナは魔法で水を出してコップに注いでいく。まだまだ子供のリエルも山道を20分も歩くのは少々疲れたようで、ごくごくと水を飲みほしていた。一息入れた後にリリーナが仕事の内容を話し始める。


「今日集めるのはあたしが作っているポーションの材料になる薬草なんだけど、ちょっと見分けるのが難しいからね。リエルは熱冷ましに使う、こっちの草をあつめてくれるかい?」


 そういうと、もってきた袋のうちの一つから、緑色のちょっと太い茎に葉がちょことちょこつけた草を取り出す。


「はーい。いっぱいとってくるね!」


「あぁ、頼んだよ。あっ、あんまり遠くにいっちゃだめだからねぇ。村に近い場所といってもここは森の中。ほかの動物だっているからね」


「大丈夫だよ!あたしだって魔法がつかえるんだもん!」


「これ、リエル。自然を甘く見ちゃだめだよ。動物といっても野生の獣、中には魔物だっているんだからね」


「ま、魔物がでるの?・・・わかった。遠くにいかない」


 初めて見る物ばかりで、舞い上がっていたリエルも魔物と聞いて怖くなったのか、おとなしくリリーナから目の届くところで薬草探しを開始した。


 暖かい陽気の中、森の様子にも慣れてきたリエルは、薬草摘みを楽しんでいた。初めての森の中、見る物すべてが輝いている世界を満喫しているリエルだが。


「むぅ?」


 半刻ほど薬草摘みに勤しんでいた二人だったが、リリーナがあたりを確認するように見ている。リエルもそれに気づいたのか、リリーナを見ながら首をかしげる。


「おばあちゃん?」


「何やら魔力が移動してるのを感じるが・・・これは・・・。なぜこんなところに?」


 リリーナは少し難しい顔をしているが、魔物の気配を感じない。リエルも微かにその魔力を感じ取ったのか、はっとしてあたりを見渡す。


 その時、何か素早いものがリリーナの背後の林から飛んできた。衝突するコースではなかったためそのままリリーナを通り越したが、リエルの方へと向かって飛翔物体は進路を取っていた。ぶつかりそうになる手前で、それは止まり、リエルもそれを目にして、それもリエルを目視した。


 それは、ピクシーと呼ばれる小さな妖精だった。


「やはりピクシーじゃったか。じゃがなんでこんなところにピクシーが?」


「なにこれ?!妖精さん?!かわいいぃ!」


 疑問に思っているリリーナとは対照的に、初めてピクシーをみたリエルは耳を忙しなく上下させ観察している。


「おまえさん、こんな所で何をしとるんじゃ?群れから逸れちまったのかい?」


 リエルのそばまで歩いていき事情を伺おうと言葉を向ける。高位の精霊や妖精は人語を話すことができるが、目の前のピクシーはどうやら理解はできるようだがしゃべることはできないらしい。身振り手振りで森の奥を指し示すピクシーを見ながらリリーナはどうしたものかと腕を組んで考えている。


 しばし考え、口を開く。


「リエル、よくお聞き。ピクシーがこんな人里近くに姿を現す事はほとんどない。恐らくこの子が指し示す場所に原因があるんじゃろう。それが何なのか見当もつかん。危険がないとも言い切れないが、ばあちゃんは様子を確認しにいきたいのじゃが、リエル、お前を放っておくのは危険かもしれん。いったん村にもどるよ。お主もそれでかまわんか?」


 ピクシーに向き直り確認を取るが、話を聞いたピクシーは慌ててリエルの服の袖を無理やり引っ張り連れて行こうと行動する。


 リリーナは少し唸りを上げて考える。


「しかたないね。 サモン、アーススピリットガードナ」


 リリーナは結論をだし、【地精霊召喚魔法】で【アーススピリットガードナー】を2体、呼び出した。理由がわからない以上、拒否する事も考えたが、その逆、拒否する事がまずい事態になるかもしれないという考えの板挟みの結果。事態の確認を優先、安全のために護衛の召喚魔法で前後の守りを固める。


「リエル、どうやらこの子はおまえに用があるみたいじゃ」


「あたしに?なんで?」


「残念じゃが予想がつかん。ただ何があるかわからないからね。離れるんじゃないよ」


「う、うん」


 事態がいまいち呑み込めてないリエルは頷くと、リリーナの後ろに隠れるように寄り添った。


 ピクシーに案内されながら二人と2体は森の中を歩いていく。鳥のさえずりや風の音が聞こえる森の中は異変を感じさせずにいつもの景観を保っている。時折聞こえる繁みの揺れる音も、人の気配を感じて離れていく動物が発するもので、リエルはその音に反応するとびくりとはねて音の出所を探してそわそわしている。


 結構な距離を進んだ所で、リリーナは視界に異質な物を捉える。


「これは結界だね。なぜこんなところに?それに、この漂っている魔力は・・・」


 青白い薄いドーム状と思われる膜が、少し先に立っている樹木を中心に展開されているのを見て、目的の場所へと到着したのだろうと警戒心を新たにする。


「中の様子を見てくるからリエル、ちょっとここで大人しくまっとっておくれ」


「おばあちゃん、これなんなの?」


「魔物の侵入を防ぐ類の結界じゃないかとおもうけど、正確にはわからないね。危険は無さそうだが触るんじゃないよ」


「う、うん・・・」


 召喚した2体の精霊を残して結界へ歩みはじめたところで、ふと回りに目をやるが、ピクシーの姿が消えていた。どこへ行ったのか疑問だったが今は目の前の疑問を解決するのを優先し、結界へと手を伸ばし、中へと入る。 問題なく侵入する事が出来たが、入ってみると外に漂っていた魔力がさらに濃密になり、周囲を覆っている。ただ、敵意や悪意といった負の魔力とは違い、息苦しさは感じられなかった。


 樹の根元まで進み、その源泉を確認したリリーナは困惑する。


「これは一体・・・まいったねこれは・・・」


 リリーナしてどうしたらいいかと渋い顔して眼前の物を観察する。魔力の漂う中心には一つの卵が暖かい光を放ちながら静かに転がっていた。こちらに対して何か行動を起こすという感じもなかった。


「とりあえずは危険はない、か。 リエル、もう入ってきてもいいよ」


 結界の外で召喚獣に守られ、些か居心地がわるかったのか、そわそわしていたリエルが駆け足で迫ってきた。結界に恐る恐る入りながら、リリーナの傍まできて何があったのか聞いてくるリエルに、リリーナは指をさしてその卵を指さした。


「うわぁ~、おっきな卵!おばあちゃん、これ!卵だよね?!」


「う~む、その様にみえるが、唯の動物の物とは思えない。しかしこんな物がなんだってこんな場所で、しかもこれほどまでに厳重な結界に守られてここにあるのか。それにここまで案内してくれたピクシーもいつの間にか姿を消しちまってるし、わからんことだらけじゃよ」


 あっ、とした表情でリエルもピクシーがいなくなっていることに気づいたのかあたりをきょろきょろと見渡す。


「とにかくこのままここにいても仕方ないね。調べるにしても下手に触っていいものかどうかもわからないからね」


 村の付近にこの得体のしれない存在があるというのはやはり不安ではあるが、現状できる事は少ない。村でどうするか相談する必要があるだろうと考えるリリーナだが、果たしてこの事を話して村が平穏な生活を維持できるだろうか、という心配もあるため、表情はあまりよくない。


 リリーナはリエルに、この場所の事はまだ秘密にしておくように約束させ、帰る準備を二人で始めるのだった。


 二人は家路を歩くが、行きと比べ荷物が増えているため足取りは少々重く、リエルもいろいろあって流石に疲れたのだろう、瞼を重そうに歩いている。


 なんとか家まで到着すると、荷物を戸口に降ろし中に入るリリーナとリエル。玄関口で座り込んでそのまま眠ってしまったリエルをみて、リリーナは笑みを浮かべながらリエルを抱き上げベットへと運ぶ。そっとベットにリエルを降ろすと軽くを頬を撫でて、リリーナは部屋からでていく。



 しばらくして、エリックが家路に着くと、何やらテーブルの前で考え込んみながら古い書物を広げているリリーナの姿があった。


「ただいま。どうしたんだい?難しい顔をして」


「おぉ、おかえりエリック。なに、ちょっと困った事があったね。お前にも相談しようとおもっておったんじゃ」


「困った事? そんな古い物まで持ち出すくらいだから何かあったのは検討つくけど・・・」


「まぁのぉ。 あぁ、話の前にお前夕食がまだじゃろう?食いながら聞いてくれんか」


 リリーナは、森で取ってきたキノコと畑の野菜を作ったシチューのような料理を器によそってエリックの前に差し出す。エリックがイスに座り料理に手を付けながら話を聞く素振りを見せる。リリーナは今日の出来事を説明しだした。


「・・・それは、確かにこの村じゃ聞いた事ない話だね」


「うむ、あのあたりにはよう足を運ぶことはあったが、あのような物はあそこにはなかったはずじゃ。あったら誰かが気づいておるじゃろう」


「俺も狩りとか村の警備であのあたりは行ったりするけど、聞いたこともないよ」


「じゃろうな。儂等の前に姿を見せたピクシーもどこか普通のピクシーとは雰囲気が違うように思えた。リエルに用があったのだろうということはわかったのが、あの場所に連れて行った理由がわからん。単純に異変を知らせようとしただけならリエルは必要なかろうて」


「強力な結界を張ってまで、その卵ってやつをあの場所に置いておく理由か・・・」


「というより、あの卵事態が結界を維持しているように感じたがな。何にしてもわからんことだらけだ。リエルにはこの事は秘密にしておくように言ってあるが、儂にしたらそういう訳にもいかんからな」


「そうだね。明日は見回りの当番から外れてるから、俺もその場所を見に行ってみるよ。実物を見ないと何ともいえないからさ」


「そうしてみておくれ。ただ、あまり刺激はしない方がいい物かもしれないから慎重にな」


 話を終えるとエリックは空になった器を片付け寝支度を始める。リリーナは変わらず古い書物から情報を集める作業を夜更けまで続けたのだった。


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