39話 宿屋にて意外な再開
誤字脱字は時間があるときに修正します。
今回ちょっと短いです。
騒ぎのあった大通りから、路地へと入っていくリエル達。先を歩くリエルにミヤビが声をかける。
〖リエルよ。お主がなぜあそこまで腹を立てたのか妾には分かりかねるが、スキルが発動しかかっていたのは感心せんぞ〗
〖・・・ごめん。でも、あいつの言葉を聞いてたら・・・〗
〖最初に見た時から感じてはおったが、あの能力はお主の感情に大きく影響を受けている様に見える。怒りや憎しみといった感情に引っ張られるようにな〗
ミヤビの想像している事は実際リエルも感じていたのだが、どうしたらいいのかリエルにはわからなかった。黙って歩いているリエルにミヤビは言葉を続ける。
〖恐らく潜在的な物なんじゃろうな。怒りや憎しみを抱かせるような相手が目の前に現れた時に、その対象を排除しようと働いてしまう防衛本能みたいな物と考えるとしっくりくる〗
〖・・・あたしはどうしたらいいのかな?〗
〖力に飲まれないようにするしかない。心を強く持ち、自分を見失わないようにするしか妾には思いつかん。何せ魔王の力なんて妾の知りうる知識の範疇を超えている〗
助言をするミヤビではあったが、まだ子供であるリエルにそれが難しい事は十分理解できた。
心を完全に支配するのは、大の大人でも簡単な事にいかず、些細な事でも簡単に揺れ動いてしまう物だ。
〖・・・自分の事だけど先が不安になるわ〗
〖こればっかりは妾にはどうしようもないからのぉ。お主次第じゃから努力するんじゃな。最悪力ずくで止める形になるじゃろうが我慢してもらうぞ〗
〖取り返しのつかない事が起きるよりいいわ。そうなったらお願いね〗
〖あくまで最終手段じゃがな。・・・む?リエルよ。例の宿とやらはあれではないか?〗
話をしながら歩いてる二人の視線の先には【精霊の寝床】と看板に書かれた建物が見えている。
外見はまだ真新しいさを残しており、明るい印象を抱かせる作りが見て取れた。
〖えーと、メモで確認してもここで間違いないみたいね〗
〖ふむ、ならば美味い飯でも頂いて気分転換でもするとしよう〗
ミヤビの言葉にいつものリエルであれば呆れていただろうが、今はその言葉を嬉しく思う。
二人は宿に入ると、料理のいい香りが漂ってくる。
お勧めされるだけの人気があるようで、一階フロア部分にある食堂では多くの人達で賑わっていた。
リエルは受け付けへと向かうとカウンターの中の女性に声をかける。
「すいません。部屋を借りたいんですけど大丈夫ですか?」
「いらっしゃいませ。はい、空いているお部屋は御座いますので大丈夫ですよ。ただお連れの従魔の方は外の厩舎に泊めてもらいますが宜しいですか?」
「え、一緒じゃダメなんですか?」
「申し訳ございませんが・・・」
どうやら従魔と部屋は別になるという事で、どうしようかと考えてしまうリエル。
「ちょっと待ってもらって良いですか?」
「では、お決まりになったらお願いします」
受付の女性に軽く頭を下げると、リエルはミヤビを連れてカウンターから離れた位置へと移動する。
〖どうする?別々の部屋になっちゃうみたいよ?〗
〖うーむ。妾は厩舎なんぞで寝たくないぞ。布団がいいのじゃ〗
〖そうよねぇ。あたしも別々はちょっと不安だし・・・。折角キャスさんに教えてもらったけど別の宿を探す?〗
〖仕方ないじゃろうな〗
結論が出た二人は宿を後にしようとすると、聞いた事がある声がリエル達にかけられる。
「あれ~!?お姉ちゃんとミヤビちゃんだ!」
宿を後にしようとしていたリエル達の後ろから聞いたことがある声が耳に入って来たの為、後ろを振り返るリエル達。そこにいたのは町に来る途中で出会ったシエラであった。
「シエラちゃん?どうしてここに?」
「え?だってシエラのお家はここだよ?」
「え?もしかしてシエラちゃんのお父さんのお店って此処の事だったの!?」
驚くリエルを他所に、ミヤビをわしゃわしゃと撫で始めるシエラ。
すると程なくしてカウンターの奥からエイダが姿を現した。
エイダはリエルの姿を見ると驚いた様子で声をかけて来る。
「あらリエルさん!こんな所でお会いするなんて!もしかして宿をお探しでこちらに?」
エイダの問いかけに複雑な表情を見せるリエル。
「えぇ。そうなんですけど・・・」
するとカウンターにいた女性がエイダに近寄って来る。
「お母さん、この人と知り合いなの?」
「えぇそうよ。この方が町に来る途中、魔物に襲われてた私達を助けてくれた方で、リエルさんよ」
「え!?この人が!?」
自分よりもかなり小さい目の前の少女が母親の命を救ってくれ人物だと知った女性は驚きの声を上げる。
エイダは女性に頷くと、リエルに分かるようにその女性を紹介してくれた。
「この子は私の娘でカレンと言います。よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします!母と妹、お爺ちゃん達を助けてくれた事、有難うございました!」
深いお辞儀をするカレンに慌ててリエルが口を開く。
「あ、頭を下げなくても平気ですから!こ、こちらこそよろしくお願いします」
リエルに言葉で頭を上げるカレンはエイダに一言何か告げるとカウンターの奥へとパタパタと走って行く。
「それで、どれくらいの間宿泊する予定なんですか?」
エイダのその言葉に、リエルは申し訳なさそうに答えを返す。
「それなんですけど、ミヤビと部屋が別になってしまうという事なので、残念ですけどまたの機会という事になりました」
「あら、良いのよそんなの?ミヤビちゃんは大人しいですし、あの人もきっと歓迎してくれますよ」
「でも、ご迷惑じゃないですか?あたし達だけそういう扱いしてるとお店の評判に傷がつ――」
リエルがそう言いかけた時、男性の声が聞こえて来る。
「そんなことありませんよ。寧ろ家族の命の恩人をそんな些細なことで困らせることの方がよっぽど問題です!」
奥からカレンと共に姿を現した男性がリエルにそう告げながら早足で歩み寄り、リエルの手を取り握りしめる。
「初めまして。私はメルヴィンと言います。妻を助けて頂いて本当にありがとうございました」
「リエルです。こっちが従魔のミヤビといいます」
メルヴィンに握られた手をリエルも握り返しお互い握手を交わして軽く紹介を済ませる。
「それで、先ほどの話ですが、うちとしてはリエルさんとミヤビちゃんで一緒の部屋を使って頂いても全然かまいませんので、ぜひうちに泊まっていってください!」
折角の誘いを断るのも悪いし、料理も諦められなかったリエルはその申し出を受ける事に決める。
「では、お言葉に甘えてご厄介になります。どれくらい滞在するか今の所未定なんですけど1泊の料金ってどれくらいなんですか?」
「いえいえ、普通部屋になりますけど料金は無料でかまいません。じゃないとお礼にならないじゃないですか!食事付きでかまいませんか?」
「い、いえ!?それは流石に申し訳ないのでちゃんとお支払いしますよ!」
「いえいえそんな!遠慮なさらずに!」
そんなやり取りをしばらく続ける二人だったが、最終的にお互いが妥協して、食事代だけ貰うという事で落ち着いた。二人のやり取りを見ていたエイダとカレンはくすくすと笑い、カレンがリエルに喋りかける。
「では、お部屋にご案内させて頂きますね!ほらシエラ!ミヤビちゃんをいい加減放しなさい!」
カレンに呼ばれたシエラは不満の声を上げるが、いつか見た光景と同じようにエイダに力ずくで引き剥がされてしますのだった。
名残惜しそうに見ているシエラに”また後でね”とリエルは告げるとシエラは頷き、リエル達はカレンの案内で部屋へと向かう。
案内された部屋の扉を開けると、そこは窓が一つ付いた部屋にベッドと机が備え付けられた簡単な作りではあるが清潔感がただよう綺麗な室内が広がっていた。
「こちらのお部屋を自由に使って頂いて構いません。重ねてお礼を言わせてもらいますが、本当にありがとうございました。滞在中はごゆっくりお過ごしください」
「はい、ありがとうございます。早速で悪いんですけど、食事って下の食堂で取ればいいんですよね?」
「はい。お父さんが腕によりをかけて料理を作ってくれるので、きっと満足して頂けると思いますよ」
「それは楽しみです。ね、ミヤビ」
ミヤビは尻尾をぶんぶんと振り回して感情を隠すことなく振る舞う。その様子をみたカレンも笑みをこぼすと軽くお辞儀をして部屋を後にする。
部屋に残された二人はそれぞれミヤビはベッドに飛び乗り、リエルは椅子へと腰を降ろす。
〖ちょっと複雑な気分だけど別の宿を探す事にならなくてよかったわ。少し休んだらご飯を食べに下に行きましょう〗
〖うむ。人助けもしておくものじゃな〗
〖そうよ?まぁ損得で行動する訳じゃないけど、こういう事だってあるってわかったでしょ?〗
〖む。ま、まぁな〗
少し悔しそうなミヤビではあるが、結局のところ得をしたので言い返す事はしなかったミヤビ。リエルは軽く体を伸ばすとこれからどうするかをミヤビと軽く相談し、空腹気味なお腹を満たすためにミヤビと共に食堂へと向かうのだった。
お疲れさまです。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂けたら幸いです。




