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魔王の娘〜元神獣と父探し冒険記〜  作者: 蜂蜜餡子
いざ世界へ。 バランディアの町編
38/99

38話 幼い外見にご用心

誤字脱字は時間あるときに修正していきます。

 カウンターの奥から皮袋を持って現れたキャスはリエルの元へと戻ってくる。


「お待たせしました~。こちらが買取金額になりま~す。リエルさんのおっしゃる通り、ソニックバードの変異種の物で間違いありませんので銀貨70枚での買取になりま~す」


「銀貨70枚!?」


 驚いて大声を出してしまったリエル。周囲にいた他の冒険者もその声に反応してリエルに視線が集まる。それを気にすることなく言葉を続けるキャス。


「は~い。変異種・・・あ、亜種個体の事は一般的には変異種って呼ばれてます。それは通常種と異なる変化を遂げた強い個体であるのが普通なので必然的に買取金額は通常より高くなります。リエルさんが持ち込んでくれた魔石は状態もよく、内包する魔力もなかなかの物でしたので、これだけの金額を付けさせて頂きました~。うれしいですか~?」


 最初に説明していた時とはうって変わって、なんとも気の抜けた話し方をしているキャス。どうやらこちらが彼女の本来の話し方らしい。

 キャスはリエルの前へ、ジャラジャラと音を響かせる皮袋を差し出すと、口を縛っている紐を緩めて中を確認させる。


「こちらで枚数を数えていきますか?」


「い、いえ!?大丈夫です!」


 予想外の大金に焦るリエルであったが、震える手で袋を受け取るとアイテムポーチへと収納する。金額の受け取りを確認したキャスはニコリと微笑みリエルに喋りかける。


「気を付けてくださいね~。世の中には悪い人もいますから、大きな声でお金の話をすると厄介な事に巻き込まれたりしますからね。冒険者としてやっていくならこれくらいは慣れておいた方がいいですよ?」


「は、はい。気を付けます・・・」


 先ほどの大声を恥ずかしく思ったのかリエルはすこしもじもじしながらキャスの話を聞いている。するとキャスは周囲を見ながら言葉を発する。


「まぁこの中にはそんな人達はいないと思いますけどね~」


 威圧の籠ったその言葉に、彼女の事をよく知っていると思われる冒険者達は顔を縦にふって頷いてる。その様子を確認したキャスは再び笑みを浮かべるとリエルを見る。


「ただ、本当に気を付けてください。冒険者の中にも素行の悪い者は当然いますからね。あ、あとこれは宿屋さんの場所が書いてある簡単なメモです。どうぞ~」


 キャスにお礼を言いながらメモを受け取ると、リエルは軽く頭を下げてギルドを去っていく。リエルが出て行った後に、近くにいた別のギルド職員が、受付で笑顔を振りまいているキャスへと話しかけてくる。


「キャスったら。またいい子でも見つけたの?」


「えぇ、とってもかわいかったです。持って帰りたいくらいでしたね~」


「ほんと、あんたって危ない性格してるわね。それよりいいの?」


「何がですか?べリンダさん?」


「あなたがあの子に見とれてる間にゴブスの奴があっちから外へ行ったわよ?」


 そういうとべリンダと呼ばれた女性は正面の入り口とは別の出入り口を指し示す。その話を聞いたキャスの表情は先ほどのニコニコした物から能面の様に変化する。それを見た他の冒険者達は身震いをする。


「さっき私があれほど釘を刺したのに・・・ですか?」


「そうみたいよ?どうするの?」


 その問いかけに少し間をおいてキャスが答える。


「ギルドの職員である私は冒険者同士の諍いに基本手を出しません。ですが、幼い少女が悪漢に襲わているのであれば話は別、それを助けるのは普通ですよね?べリンダさんもそう思いますよね?」


「随分とまぁ偏った考えだ事。だったらさっきの三人組も助けてあげなさいよ。依怙贔屓ばっかりして」


「あれはいいんです。相手もやる気満々の様に見えましたから。それに贔屓ではありません。区別です」


「・・・あなた、よくギルド職員が務まってるわね。普通ならクビよ?」


「それだけ私の能力が評価されていると考えてもらえたらと思います」


「はいはい。で?どうするの?」


 答えを聞こうとしたところで外から大きな声が聞こえてくる。その声をきいてお互い顔を見合わせるキャスとべリンダ。先に口を開いたのはべリンダだった。


「・・・始まったわよ?」


「困りました。流石にこの大通りで絡んで行くとは思ってませんでした」


 言葉は普通だがキャスの表情はすでに鬼の形相へと変化していた。それをみたべリンダが若干引いている。そんなべリンダにキャスは静かに喋りかける。


「少しここをお任せしてもいいですか?」


「はいはい。後でご飯でもおごってもらうわよ?」


 キャスは頷くとカウンターの奥へと姿を消す。キャスがいなくったカウンターの中、べリンダと他の職員、果ては室内の冒険者からそろってため息が漏れる。


 --------------


 メモを見ながら大通りを歩くリエルとミヤビ。


「え~と?このメモを見ると・・・こっちね?」


 宿屋へと進路を取るリエルにミヤビが声をかける。


 〖・・・リエル。先ほどの男がこちらを後を付いてきておるぞ〗


 ミヤビの言葉にリエルは軽く後ろを振り返る。すると確かにギルドで絡んできたゴブスが少し離れた所を歩いてきている。


 〖どうするんじゃ?〗


 〖う~ん。たまたまこっちに用があ――〗


「おいガキんちょ!ちょっと待ちな!」


 リエルの予想とは違い、ゴブスの目的はリエルであった。リエルはため息を付いて振り返る。その様子を見たゴブスはニヤニヤと笑いながらリエルへと近づいてくる。


「さっきギルドであったから名前はわかるよな?」


「ゴブスさんですよね?何か御用ですか?」


「なに。おまえ戦闘講習に興味があるんだろ?だったら俺が教えてやるぜ?今なら銀貨40枚で受けてやる。ほれ、さっさと出しな」


「折角だけど遠慮しておきます。貴方からは教わる事はなさそうですので」


「あ?舐めた事いってんじゃねーぞクソガキ?いいからさっさとだせばいいんだよ」


 ゴブスの威圧を込めた言葉が周囲に響く。それを聞いていた周囲の人達はたちまちその場から離れていく。冒険者同士の喧嘩であれば、それほど回りの者が気に留めるような事はないのだが、リエルとゴブスの容姿からでは、どう見ても少女が悪漢に絡まれている様にしか見えず、慌てて衛兵を探しに行く者も見受けられたほどだ。


「お断りします」


「ほう?いい度胸じゃねーか。言っておくが冒険者同士の争い事には基本ギルドや衛兵共は関与しないぞ?それでも断るっていうのか?」


「争い事ですか?どう見てもただの言いがかりだと思うんですが」


 〖先ほどといい・・・どこまでも面倒な奴じゃな・・・〗


 次第に不快感を露わにしていくリエルとミヤビ。堪らずミヤビが牙を剥き出しにしてリエルの前へと歩みでる。その様子を見たリエルがミヤビを窘める様に声をかける。


「ミヤビ。構わないでいきましょう」


 踵を返して再び歩き始めたリエルにゴブスはしつこく絡んでくる。


「おいおいまだ話は終わってないぞ。なんだなんだ?やっぱりお前も唯の腰抜けか。唯の戦闘講習だっていってんのによ?そんなんで冒険者がやっていけるのかよ?」


 無視して歩いていくリエルとミヤビ。ゴブスもこの状況で手をだせば、罪に問われる事を理解しているためどうする事もできずに付きまうしかできずにいた。


 冒険者同士の喧嘩に基本ギルドや衛兵達が関与しないというのは嘘ではない。

 言い方は悪いかもしれないが、殴り合いの喧嘩を始めた時点でそれを周りの者が無理やり止めれば、後にお互いの間に遺恨を残し、最悪衛兵やギルドの目の届かない所で殺し合いにまで発展してしまう可能性がある。

 そうならないようにきっちり最後までやらせて決着をつける形にした方が結果的にお互い都合がいいのだ。もっとも殺し合いに発展しそうな状況であれば、ギルドや衛兵も止めに入るし、死人を出せばそれは罪に問われるのも言うまでもない事である。


 逆に言えば一方的に危害を加えているようであれば、衛兵がためらう事なく加害者を拘束し、然るべき罰を与えるという事だ。


 完全に無視を決め込むリエルにゴブスは罵声を浴びせ始める。


「ったくつまんねぇガキだな。でかい口叩く癖に逃げるしかない訳だ。そんなんじゃ冒険者をやったってすぐにくたばっちまうだろうぜ。どうせお前の両親もその口なんだろ?ええ?情けねぇ話だなぁおい?」


 無神経に罵倒を言葉を口にするゴブスの、ある一言がリエルの怒りに火を付けた。

 リエルは振り返りゴブスを睨みながら言葉を発する。


「あたしの事はどう言おうと構いませんけど、関係ない両親の話をするのはやめてください」


「お?なんだ?図星か?はっはっはっ!やっぱり雑魚冒険者の子供かよ!」


「それ以上その汚い口を開くならあたしも黙ってないわよ」


 明らかな怒りを含むその口調と、碧色の炎の様な揺らめきがリエルの体から漏れ出ている。

 怪しい気配をゴブスの本能が察知したのかはわからないが、リエルの気圧され思わず一歩下がる。


 そのリエルの様子をみて、ミヤビが不穏な物を感じて慌てて止めようとする。


 〖落ち着んじゃリエル!漏れとるぞ!〗


 しかし、リエルはミヤビの言葉に答える事なくゴブスを鋭く睨んだ視線を外す事はなかった。気圧されていたゴブスは一歩強く踏み出すと再び口を開く。


「弱っちい両親を持つと苦労するよなぁ。ガキの頃から冒険者なんて危険な仕事をする羽目になったりして災難だなぁ?」


 その言葉についにリエルの怒りが爆発する。


「黙れ!!」


 リエルの腕が上がりゴブスに向けて魔法が放たれる。詠唱破棄されているがその魔法は【オーバーマジック】が使われている為、通常詠唱よりも遙かに強い魔力が込められていた。

 打ち出された魔法は【風の碑文第一節魔法】である【エアバレット】。圧縮された空気の弾を打ち出す魔法で、通常、威力はそこまで高い物ではないのだが、ことリエルの場合はそうはいかなかった。


「がはっ!?」


 まともにそれを喰らったゴブスは軽々と宙を吹へとき飛び石畳の地面へと叩きつけられる。


「ごほっごほっ!こ、このクソガキッ!!」


 起き上がったゴブスはリエルに駆け寄り、拳を突き出す。しかしその攻撃はリエルに当たる事なく空を切る。続けざまに繰り出される拳打をすべて躱すリエルに周囲から驚きの声が上がる。

【身体能力向上】の能力を持っているリエルの動きはゴブス如きでは捉える事が出来ない体捌きを可能にしていた。

 全ての攻撃を躱されているゴブスが怒鳴りを上げながら、尚も攻撃を繰り出し続ける。


「こ、このガキッ!?ど、どうなってやがる!?なんであたらねぇ!?」


 その隙をリエルは見逃す事なくゴブスの懐に潜り込むと、今度はゴブスの胸に手をあてゼロ距離から【エアバレット】をお見舞いする。その瞬間ゴブスの胸当ては砕け散り、衝撃で再び後方へと吹き飛び、地面へと倒れ沈黙する。


 完全に気を失ってしまったゴブスにリエルは歩いて近づき、荒れ狂う碧色の魔力が籠った手を振り上げる。


 〖やめよリエル!それ以上やれば其奴は死んでしまうぞ!正気に戻るんじゃ!〗


 ミヤビが慌ててそれを止めようと二人の間に割って入ろうとする。

 だが次の瞬間それよりも早く、リエルの体を何者かが後ろから抱き留めそれを阻止する。


「リエルちゃん、それ以上はだめですよ~。それをやったらゴブスが死んじゃいます。そうしたらリエルちゃん捕まっちゃいますよ?」


 力の抜けそうな声で喋りかけてくるのは、先ほどギルドの受付で話をしたキャスであった。

 キャスの言葉でリエルが我に返って振り返ると、その手に込められていた魔力はすぐに散っていく。


「キャスさん?どうしてここに?」


「ん~、それはですね~、こいつがリエルちゃんの後を追ってギルドを出て行ったのを知ったからリエルちゃんを助けにきたんですよ~?残念ながらこの馬鹿を助ける形になってしまいましたけどね~」


 リエルは視線をゴブスへと向けると砕けた胸当ての下の傷をみてはっとする。


「た、大変!ど、どうしよう!?」


「まぁ途中から見てましたが、どう見てもこいつの自業自得なのでリエルさんに非はありませんよ。怪我の方もこちらで治療しますので問題ないと思います。まぁ治療費はもらいますけどね~」


「だ、大丈夫です!あたしが治しますから!」


「へ?」


 リエルは腰を降ろすとゴブスの胸に手を当て治療魔法を掛け始める。するとゴブスの青く変色している胸の怪我が見る見る健康的な色へと戻っていく。


「へぇ~!驚きましたね~。先ほども見てましたけどリエルちゃん、やっぱりすごい子みたいですね~」


「い、いえ、それほどでもないです」


「しかしリエルちゃんは可愛い上に優しいですねぇ。こんな馬鹿でも治療してあげるなんて、お姉さんは感心してしまいますよ~」


 ニコニコと笑顔みせるキャスを見ているミヤビは黙ってその様子を見ている。


「さて、リエルちゃんも無事でしたので私はギルドの仕事に戻りますね。この馬鹿も衛兵さんに任せるのでリエルちゃんはもう行ってもらっても大丈夫ですよ~」


「は、はい。お願いします。どうもお騒がせしました」


 キャスにお辞儀をするとリエルとミヤビはその場をそそくさと離れていく。その後ろ姿を見ているキャスは何やら顔を紅潮させながらぽつりとつぶやく。


「持って帰りたい・・・」


お疲れさまです。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂けたら幸いです。


貨幣価値は

銅貨1枚=100円

銀貨1枚=1000円

金貨1枚=100000円

と考えてます。


設定ではキャスさんはガチです。

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