37話 冒険者のルール
誤字脱字は時間があるときに修正してきます。
建物の中へと入ったリエル達は二人の男が対峙ているところを最初に目にする。何やらもめているようだがリエルはそれを少し気にしつつも避ける様に受付へと向かうと、中の女性はリエルに気づいて受付台の方へと歩いてくる。
「いらっしゃいませ。ご用件はなんでしょうか?」
「冒険者の登録をしたいんですけど、こっちでよかったですか?」
女性は少しも驚くことなくリエルの言葉に対応する。
「はい、大丈夫です。こちらの用紙に名前を記入して貰いたいのですが、文字の読み書きはできますか?」
そういって一枚のプレートをリエルの前へと差し出す。
「はい、大丈夫です。あ、あたしの名前だけでいいんですか?こっちの従魔・・・ミヤビっていうんですけど」
「はい、問題ないです。しかし従魔連れとは珍しいですね」
リエルは受け取ったプレートに名前を書いて渡すと、ミヤビを見てたい女性はリエルに向き直りプレートを受け取り名前を確認する。
「リエルさんですね。それと従魔のほうがミヤビちゃんといってましたね。私はキャスといいますのでよろしくお願いしますね。これからいくつかお話しをしますけど大丈夫ですか?」
「キャスさんですね。よろしくお願いします」
キャスは冒険者についての仕事についてを説明を始める。
冒険者にはランクがあり、受けられる仕事はランクによってきまってくる。
最初は簡単な依頼しか受ける事ができないが、仕事をこなして実績を積んでいく事でランクを上げるための試験、昇格試験を受ける権利を獲得することができる。
受けてきた仕事の内容によっては試験なしでランクが上がる事もあるそうだが、基本は合格する事で冒険者ランクがあがり、受けられる仕事の幅が上がっていくと言う訳だ。
「ここまでで何か質問はありますか?」
「最初はどのランクから始まるのですか?」
「そうですね~。基本的には一番下のFランクからのスタートになりますね」
「ランクが上がるのにどれくらい依頼をこなすといいんですか?」
「FからEへと上がるのには人によりますが大体20から30くらいの依頼をこなす必要がありますね。個人によって差が出てくるのはギルドとしてその人間が昇格するに相応しいかどうかも判断させてもらっているからです」
「え?どういう事ですか?」
「そのまんまの意味ですよ。ランクが上がる事によってより難易度や重要度が高く、報酬がいい仕事を受けられるようになりますから、依頼人が貴族の方や町の領主様からの依頼なんていう事もあったりするわけです。そういう方達に会って問題を起こす様な人物だった大変ですからね」
「なるほど。よくわかりました」
キャスは軽く微笑むと話を続ける。
「では、ここまでは問題なさそうなので報酬の話へ移らせて貰いますね」
「はい。お願いします」
「報酬は依頼に記載されている物が基本で、状況によって増減する場合があります。例えば、依頼の中で貴重な薬草などの群生地など発見し報告して頂いた場合、それは大きな功績になりますので、ギルドから恩賞として通常とは別に報酬が出たりする訳です」
「報告した場合って事は、別に強制という訳じゃないって事ですか?」
「そうですね。できれば報告して頂きたいですけど何かとそういう物事には厄介な事情があったりしますからね。強制ではないですけど、ギルドとしても相談して頂ければ事情を考慮する事もありますから、もしそういったものを見つけた場合はできれば報告してほしいですね」
「覚えておきます」
「はい、お願いします。それと冒険者間での報酬の分配については基本ギルドでは関与する事はありません」
リエルはその言葉の意味が分からず首を傾げるが、キャスは少し目を輝かせながらリエルに詳しく説明してくれた。
「例えを出しながら説明しますね。AのパーティとBのパーティがそれぞれ別の依頼を受けていたとして、そのAとBが道中で貴重な物を同じ場所で同時に発見したとします。その場合、先にギルドへ報告をして頂いたパーティの功績となるのですが、後のパーティはその報酬を受け取る事はできません。そうなった場合、遺恨が残らないようにお互いのパーティで話を付けてもらうという事です。そこにギルドが関与する事は基本的にはありません」
「冒険者同士で相談してくださいという事ですね。なるほど、わかりました」
「それと、今話した事にも関係してくるのですが、冒険者同士の揉め事にもギルドが進んで関与する事はありません。目の前で殺し合いを始めるような事があればそれは別ですけどね。そのあたりも気を付けてください」
そういうと、キャスはリエルの後ろを指さして最後に付け加える。
「まぁすぐそこで起きている様な物程度ならギルドは手を出したりしないという事ですね」
「でも、建物壊れてますよ?」
「あぁ、問題ありません。後でしっかり請求しますから」
「なるほど。つまり自己責任て事ですね」
「そういう事です。受けた依頼に関しても同様で、道中で起きた事態に関しては自己責任が原則になりますので自分の実力に合わないような依頼はなるべく避ける事をお勧めします。冒険者として最初に覚えておくことは大体これくらいですかね。あと駆け出しの冒険者に便利な情報として、ギルドでは戦闘講習もやってたりします。参加は有料になりますけど現役の上位冒険者や引退した凄腕の冒険者だった方にギルドが依頼をして、駆け出しの冒険者に訓練を付けて貰う訳ですね」
キャスが教えてくれた戦闘講習の話にリエルは興味をしめす。
「へぇ~。あたしもそこまで戦闘経験がある訳じゃないからいつか利用させてもらおうかな」
「お前さんみたいな講習に参加しても相手にされないぞ?」
突然後ろから声が掛けられる。リエルが振り向くとそこには先ほど揉め事を起こしていた男の一人が立っていた。
振り向いたリエルを見下ろしている男が言葉を続ける。
「なんだ?やっぱりまだガキじゃねーか。【魔獣使い】見たいだがここはお前さんみたいな子供が来る場所じゃないぞ?」
男の言葉に若干不快感を示すキャスが男に向けて言葉をぶつける。
「ゴブスさん。突然なんですか?仕事の邪魔をする暇があるならさっさと壊した備品の修理代を払ってどこかいってもらえませんか?」
「キャスさん、俺は駆け出しの冒険者に訓練を付けてやっただけだぜ?なんならこのガキにも訓練を付けてやろうか?」
「そんな依頼をした覚えはありません。馬鹿な事言ってるとマスターに報告しますよ」
「ボランティアだよボランティア。使えない冒険者が少しは強くなってくれるならギルドとしても助かるだろ?」
ゴブスと呼ばれた男の態度にミヤビが明らかな不快感を示す。
〖なんじゃこの男は・・・無礼な奴じゃな〗
〖なんかいや~な感じの人ね〗
リエルの心中とは裏腹に、ゴブスはリエルに喋りかけてくる。
「で、どうだ?俺が訓練を付けてやるぜ?今なら格安で、ギルドの修理費程度でかまわないぜ?」
「それ以上邪魔をするなら、ほんとにマスターを呼びますよ?」
威圧の籠ったキャスの言葉に近くのテーブルで依頼を見ていた別の冒険者もカウンターから離れたテーブルへと移動し、傍若無人に振る舞っていたゴブスも若干たじろいてしまう。
「そんな声ださなくてもわかってるよ。冗談だよ冗談、ったく」
「冗談はいいので早く修理費を払ってください」
「それはそこで伸びてる腑抜け共から受け取ってくれよ。俺は訓練を付けてやっただけだからな?」
「最初からみてましたがどうみてもあなたが一方的に絡んでいたようにしか見えませんでしたよ?いい加減にしてくれないかしら」
「いやいや、そんな事いわれてもなぁ・・・」
そんなやり取りをしている最中、再びギルドの入り口の扉が開く音がして次に聞いたことがある声が響いてくる。
「やっぱり!リエルさんではありませんか!」
その言葉に反応してリエルとミヤビは振り向くと、そこにいたのはクラウスであった。
「あ、クラウスさん。こんにちわ」
「えぇ、こんにちわ。そろって元気そうで何よりです」
何やら面識がありそうな二人の様子にキャスが喋りかける。
「クラウスさんはリエルさんをご存知なのですか?」
「えぇ、ちょっとご縁がありましてね。以前向かった村でお世話になったんですよ。先ほど従魔が町を走り回っていた事を部下から聞きましてね。まさかと思って見に来たら、ギルドに大穴が空いているにで何事かと思ってこっちに顔を出してみた訳ですよ」
「それなんですけどね。こいつが修理費の支払いを拒否してるんですよ。連行してもらっていいですか?仕事の邪魔もしてくるので困ってるんですよ」
キャスはゴブスを指さしながらクラウスに説明を始めると、たまらずゴブスが口を挟む。
「ま、待った!?わかった!払うから勘弁してくれ!ほら!これでいいだろ?」
ゴブスは懐から修理費用を支払うとその場からそそくさと離れていく。その様子をみていたクラウスは問題はないかキャスに確認し、キャスもそれに問題ない事を告げる。
話が済んだクラウスは改めてリエルに話しかける。
「しかしリエルさんがどうしてこんな所に?何かギルドに依頼でも?」
クラウスの疑問にどう答えるか考えるリエルであったがミヤビがそれに反応する。
〖止むを得ないじゃろう。クラウスが町に戻ってきている事を聞いた時からこうなる事は想定していたからな。それに冒険者として行動していればいずれはリエルの実力も周知されてしまう訳じゃし。クラウスも魔王の力の事は知らないし、それさえばれなければもうこの際仕方ないじゃろう〗
ミヤビの考えに同意するリエルはクラウスの疑問に答える。
「あたし、ミヤビと旅に出る事にしたので、冒険者登録をしようとやって来たんです」
するとクラウスは驚かれると思っていたリエルなのだが、意外にも反応は普通だった。
「なるほど。確かに冒険者として登録しておいた方がいろいろ情報が聞けて便利ですからね」
そういうと、クラウスは腰を落としてリエルに耳打ちするように話しかける。
「・・・でも、君の実力だと絶対噂になるとおもうけどそれはいいのかい?」
「えぇ、村では秘密っていいましたけど、それは村の人にあたし達の事がばれると問題が起きるとおもったからです。村の外にいる今だった前ほど困る事もないと思いますからね」
「なるほど、村の人達の事を考えるとあの時の選択としては最良だったって事か」
「ただ、あたしの魔法の事は知られても問題ないんですけど、ミヤビの事はこれからも秘密でお願いします」
「あぁ、それは大丈夫だよ。ミヤビ殿がとんでもない魔獣である事は十分理解しているつもりだから秘密にしておくよ」
そんなやり取りをしている二人を見ていたキャスが不審に思って声をかけてくる。
「あの・・・どうかしましたか?」
「あぁ、すまない。ちょっとね。私が聞きたい事はもう聞けたから後は其方にお任せします。ではリエルさん、時間ができたらまた後で話でも聞かせてください」
「はい、クラウスさんもご苦労さまです」
そういうとクラウスはリエルにお辞儀を返してギルドを後にする。再びキャスに向き直るリエル。
「お待たせしました。えっと、どこまで聞きましたっけ?」
「え?えっと・・・ゴブスが邪魔したせいでどこまで話したか・・・あ、そうです。戦闘講習の件までですね。コホン。あと大事なのは討伐した魔物の素材についてですね。魔物の素材はギルドに持って来て頂ければこちらで買取を行ってます。解体済みであればいいのですが、解体をこちらに任せる形になると手数料が買取金額から差し引かれますので注意してください」
「わかりました」
「そこまで話せば後は何か聞きたい事とかがないようでしたら、本登録に移りますけどどうしますか?」
「はい、特にありませんのでお願いします」
「何か気になる事があったら遠慮せずに仰ってくださいね。ではこちらがリエルさんの冒険者表になります」
そういうとキャスは一枚のカードを特殊な手袋を付けた手で取り出しリエルへと差し出す。
「このカードは最初に触れた人物の魔力を読み取り内部に記録する物になってます。本人以外の者がこのカードを持っても情報が表示されず使う事が出来ないようになってますので安心してください。ただ無くしてしまうと再発行する際に手数料がかかるので無くさないようにしてください。では、こちらを手に取ってください」
リエルは頷くと手袋を外してカードを手に取る。するとカードが微かな光を発している。その様子をみていたキャスが口を開く。
「はい、無事に登録完了です。これでこのカードをリエルさん以外が使う事はできません。このように・・・」
キャスが手袋をしていない手でカードを持つと、たちまち黒く変色していく。そして再びリエルに手渡すと元の色へと戻っていく。
「このカードにはリエルさんの情報が記録されていますが、その情報はギルドで扱っているこの魔道具を使わないと読み取る事が出来ないようになっているので、外見からわかるのは名前と冒険者ランクだけとなっています」
カードの裏面にはリエルの名前と冒険者ランクと思われるFという文字が映し出されている。
「情報ってどんな事が記録されてるんですか?」
「それはギルドで記録する情報ですね。こなした依頼の数とかその人物に対する評価といった感じの物です」
「へぇ~。なんだかすごい魔道具なんですねそれ」
「そうですよぉ?なんでも異世界から来たという偉い人が作った魔道具らしいです」
「異世界?」
「リエルさんは異世界人の事はご存知ではないのですね。確かに珍しい人ですし、自分を異世界から来た存在だと明かさない方もいるみたいです。簡単にいうと別の世界から召喚された人らしいです。ほんと、簡単な説明ですけど、あまり詳しい事は私も知らないんです」
キャスの話に興味をもったミヤビがリエルへと話しかける。
〖異世界の話は妾も聞いた事がある。そこには様々な文化があり異なる発展を遂げた世界が無数に存在するという話じゃぞ〗
〖なんだかすごいのね。あまりあたしには関係はなさそう〗
〖そうじゃな・・・。ん?もしやと思うがお主がもっておったあのノート。あれに記されていた料理は異世界の物なのではないか?書いてる材料や技法などあまりにも知らん事が多く記載されておったからな。そうか異世界料理のレシピだったか!なぜそこに考えがいたらなかったんじゃ妾は!?〗
何やら一人で盛り上がっているミヤビは放っておくことにして、リエルはキャスの話に耳を傾ける。
「そんな訳で興味があったら図書館などで調べてみるといいと思いますよ。以上でギルドの説明が終了になります。リエルさんはFランクからのスタートになりますのであちらの依頼掲示板に載っている物ならどれでも依頼を受領することができますので、よろしくお願いしますね」
「はい。丁寧にありがとうございます」
「いえいえ~、それが私の仕事ですから。それにリエルさんはすごくかわいいのでついですね。えへへ」
最後に以外な一面を見せてくれたキャスにリエルは質問する。
「それといくつか聞きたいんですけど、どこかいい宿屋とかって知りませんか?」
「そうですね~。だったら【精霊の寝床】っていう名前の宿がありますので、そこをお勧めしますよ。料金も部屋の質で選べますし、何よりお料理がおいしいと評判です」
料理が美味しいという話をきいたミヤビが予想通りの反応をする。
〖よし!そこで決まりじゃ!〗
〖はいはい。わかったわよ〗
「それと、早速で悪いんですけど、これって買取できますか?」
リエルはアイテムポーチから魔石を一つ取り出す。それをみたキャスが驚きの声を上げる。
「うわっ!それってもしかして、特殊な魔物の魔石じゃないですか~!どうしたんですかそれ~!?」
「道中で出会った魔物の物ですけど。ソニックバードの亜種の魔石なんですが買い取れます?」
「すごいですね・・・先ほどのクラウスさんの反応といいもしかして・・・リエルさんってすっごい人なんですか?ミヤビちゃんもかわいいですけど不思議な雰囲気を漂わせてますし・・・。おっと、詮索はご法度でしたね。もちろん買取できますよ。ちょっとお預かりしますのでそちらでお待ちくださいね」
そういうとキャスはカウンターの奥へと歩いていき、リエルはキャスが戻るのを椅子に座って待つのだった。
お疲れさまです。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。
ゴブスさんとの衝突はクラウスさんによって回避されてしまいました。




