36話 野蛮?で粗暴?な冒険者
町の中へと入る許可を貰い、一行ははれてバランディアへと到着する。
「リエルさん、冒険者ギルドはこの大通りを行けば見えてくるよ。大きな建物だからすぐわかると思う。俺達は依頼主の所へ行かないといけないからここで別れるけど、しばらくはこの町にいるのか?」
「まだ決めてないのですけど、しばらくはいると思います」
「そうか。じゃ~機会があったらまたよろしくな」
「はい、こちらこそ。それでは、オーラフさん、フィルさん、リカルドさん達もお元気で」
「またね、ミヤビちゃん」
『フォンッ!』
一行はそれぞれの目的のために別れを告げると、それぞれの道を歩き出す。再び二人に戻ったリエル達はまずは冒険者ギルドへ向かう事にする。
〖ここを真っ直ぐ行けばいいのね〗
〖なかなかの大きさの町じゃな。活気があってよい〗
村の外、人が住んでいる町に来るのは初めてのリエルはあたりの様子を観察しながら道なりに歩いてく。おかしな形をした建物や見慣れない服装をしている人など、リエルにとってはすべてが新鮮だった。ふとミヤビが何かを察知してあたりを見渡す。
〖なにやら・・・うまそうな匂いがするぞ?〗
〖あたしは何もかん・・・あ、確かに少し。何の匂いだろう?〗
鼻をくすぐるこのいい香りがどこから漂っているのかを探すリエルとミヤビ。やがてミヤビが大通りの脇に出ている屋台に目を付ける。
〖どうやらあれのようじゃぞ。実に気になる・・・見に行かんか?〗
〖まぁ用事ははっきりしてるから構わないわよ。それにあたしも興味あるわ!〗
食欲に負けたリエル達は屋台に向かって歩いていく。その屋台は焼いた肉をパンにはさんだ簡単な料理を提供しているみたいだが、それだけとは思えない何かを感じさせる香りを発していた。
〖特に目新しい感じはしないけど、すごくいい香りね〗
〖うむ、どうやら肉の他になにやらソースがかかってるようじゃが、実にうまそうじゃな〗
〖食べてみる?え~っと・・・〗
手持ちのお金はそこまであるという訳ではないので、まずは値段を確認するリエル。一つ銅貨2枚らしいがリエルはこれが適正なのかどうかを判断する術はない。そのため手持ちと相談した結果購入を決める。肉を焼いている男性にリエルは声をかける。
「すいません。これを二つください」
「いらっしゃい!おや?お嬢ちゃん初めて見る顔だね?そっちに従魔を連れている所を見ると冒険者か何かかい?」
「まぁそんなところです。先ほどこの町に来たばかりなので」
「へぇ~!小さいのにすごいね。よしっ、おまけして2個で3銅貨でいいよ」
「え、いいの?」
リエルの言葉に男性は笑顔で答える。
「遠慮しなくていいぞ。ほれ、焼き立ては熱いから気を付けな!」
男性は手際よく焼いた肉をパンに挟むと、そこにソースをかけて紙で包む。それを二つ用意しリエルへと差し出す。
リエルはポケットから銅貨3枚を取り出すと男性に手渡し、包みを受け取るとお礼をいって店を後にする。
どこか落ち着ける場所はないかとあたりを見渡しながら歩くリエルを、ミヤビがせっついてくる。
〖は、早く食わせるのじゃ!〗
〖ちょっとまってよ!歩きながら食べるなんて田舎者みたいで恥ずかしいでしょ!〗
〖ぬぅ!な、なら・・・お!あそこでどうじゃ?どうやら広場のようじゃぞ!そこへ行くぞ!〗
〖あっ!ちょ、ちょっと駄目よミヤビ!一人で先に行かないで!〗
ミヤビがリエルを置いて公園らしき場所へと走っていくと、リエルは慌てて追いかける。先行するミヤビが向かう先では驚いた人達が真っ二つになった海のように割れていく。そのあと走るリエルの表情は引きつっていた。
軽い騒ぎになってしまっている人の波の中を抜けたミヤビは広場へと到着すると後ろを振り返る。
(何やら騒がしいが・・・なんじゃ?まぁよいか。リエルの奴遅いのぉ。)
事態がわかっていないミヤビはそのままリエルが到着するのを待っているが、それよりも早く別の者達がミヤビの元へと現れる。
「こいつか!?町の中を走っていた従魔は!」
現れたのは町の警備兵であり、近くを巡回していた所を騒ぎを聞きつけてここに現れたのだ。兵士はミヤビを見ながらバンドを確認して口を開く。
「従魔のバンドはついているが・・・飼い主はどこにいるんだ。全く!」
憤慨する衛兵を他所にミヤビは特に反応する事なく、リエルを待つ。
そこへやっとリエルが追いつき、目の前の状況をみて絶句する。鬼の形相でリエルを見ている兵士がミヤビの傍に立っていたからだ。
「君!もしかしてこの従魔の飼い主かい!?」
「は、はい・・・そうです」
予想通りの状況にリエルは頭を抱えたくなるが、それは後にして兵士の続く話に耳を傾ける。
「困るよ!町の中で従魔を走らせるなんて!一歩間違えれば大変な事になってたかもしれないんだよ!」
「は、はい。すいません」(ど、どうしてあたしがこんな目に・・・)
頭を下げるリエルを見ているミヤビは特に気にした様子もない。
「全く・・・まぁ今回は大事になってないからこれくらいにしておくけど、気を付けてくれよ。次は何か罰則が付くかもしれないからね」
「すいません。気を付けます」
リエルは兵士に再度頭を下げると、兵士は元の巡回ルートに戻っていく。
〖さっ、話は終わったのじゃろう?早くさっきのぶっ!?〗
リエルの怒りの拳がミヤビの脳天に打ち込まれる。今までにないほど力の入った一撃にミヤビは思わずゴロゴロと地面を転がりながら悶絶する。
〖この馬鹿!あんたのせいで怒られたじゃない!入り口でも言ってたでしょ!あんたが何か問題を起こすとあたしのせいになるんだからね!まったく食べ物の事になるとそれしか考えないんだら!そんなんだから神様失格になるのよ!〗
珍しく本気で怒っているリエルの様子に、流石のミヤビもまずいと判断したのか大人しく謝罪する。
〖わ、わるかったのじゃ!い、以後気を付ける故そんなに怒るでない!〗
リエルはため息を付くと、チェストリングにしまったておいた包みを二つ取り出して、一つをミヤビの前に広げておく。
〖全くもう・・・ほんとに頼むわよ・・・。はい、これ〗
〖わ、わかっておる。流石に妾がやり過ぎた故そうカッカするでない。あぐっ・・・っ!〗
購入した料理を一口齧ったミヤビがはぐらかす様に言葉を続ける。
〖ほれ、お主も食ったらどうじゃ?〗
そういうとミヤビは目の前の料理に噛り付き、おいしそうに食べているミヤビをみたリエルも自分の分に口を付け始める。
二人して料理を堪能していると、見知らぬ男が声をかけてくる。
「やぁお嬢ちゃん。こんな所で何してるんだ?」
「はい?」
「いやな、この辺でなにやら騒ぎがあったみたいだから来てみたんだが、もう終わっちまった後見たいだから暇してたところでな。そしたら、いっちょまえに従魔なんか連れてるお嬢ちゃんがいたからちょっと声をかけたてみたって訳だ」
リエルに声をかけてきた男の他にその連れと思われる男と女が少し後ろに立っていた。それぞれ武器を下げており、どうやら唯の一般人という訳ではないのは一目でわかった。
リエルはどう対応したらいいかを考えていると、話しかけてきた男の後ろで立っていた、腰に剣を下げた長い黒髪の女性が口を開く。
「ちょっとカルツ。あんた挨拶くらいまともにできないの?見なさいよ。あんたの怖い顔をみて怯えてるじゃない」
「はぁ!?この顔のどこが怖いんだよ!どうみたっていけてる男前だろうが!?」
その言葉にもう一人の些か頼りなさそうな男が反応を示す。
「少なくてもいけてるかどうかは人によって判断が分かれるとおもうけどな」
「はっ、美的センスのない奴らだな全く」
「あの・・・何か御用ですか?」
リエルはとりあえず要件を聞こうと話を遮り口を挟む。
「あら、ごめんなさいね。いきなり話掛けておいて放っておかれたら困るのは当たり前よね」
女性は柔らかい口調で答えると改めて話を始める。
「私達はこの町に滞在している冒険者で、こっちの怖い顔をしてるのがカルツ、そっちのがミルドで私はアラーナっていうんだけど、よければあなたの名前を聞かせてもらえない?」
「・・・リエルです」
アラーナの言葉を受けて、若干警戒交じりの口調のリエル。
「・・・もう!カルツのせいで要らぬ誤解を受けちゃってるじゃない!ごめんなさいね。・・・リエルちゃんって呼ばせてもらってかまわないかしら?」
「どうぞ」
「私達はさっきここで従魔が暴れてるって聞いてやってきたんだけど、いざ来てみたら騒ぎは収まった後みたいでね。それでたまたまリエルちゃんとそこの従魔が目についたからものだから、カルツが興味を持って声をかけてみたって訳なんだけど驚かせちゃったわね」
結局の所、原因はミヤビの行動だったと理解したリエルは申し訳なさそうに口を開いた。
「えぇっと・・・それ、この子の事で間違いないです。兵士の方もかんかんでした。お騒がせしてしまってすいません」
最後の一口を食べ終えたミヤビは面倒くさそうにその様子をみている。
「へぇ~。やっぱりそいつはリエルの従魔なのか!正直まさかとは思ったけどすごいな!」
「あんたねぇ、ほんと礼儀って物を知らない野蛮人ね」
「あぁ~ん?別にいいじゃねぇかそれくらい。実際俺は野蛮な冒険者だからな」
カルツの反応にため息を付くアラーナ。
「従魔を連れてるなんて珍しい子だと思ってね。もしかしてリエルちゃんも冒険者なの?」
「違います。登録のために冒険者ギルドに向かう途中ではありますけど。食事も済んだのでそろそろ行こうと思っているので、この辺で失礼しても構いませんか?」
「あらそう?もう少しお話ししたかったけど、それなら仕方ないわね」
「おう。突然悪かったな!今度あったら詫びに飯くらいご馳走させてくれ」
「はい、それじゃ失礼します」
「がんばってね~」
よくわからない三人組を後にするリエル達。
〖なにやらよくわからん者達だったのぉ。特にあのアラーナとか言っておった女じゃが、リエルを舐める様に視線を走らせておったぞ〗
〖元はと言えばあんたのせいなんだからね!なんだかすごく疲れたわ・・・〗
〖そ、そうじゃったな。すまんすまん。ほれ、さっさとギルドに行って用事を済ませるとしようではないか〗
〖そうしましょう・・・泊まる場所も探さないといけないけど、そういうのってギルドで聞けるのかな・・・〗
疲れを感じながらも、冒険者ギルドを目指して歩いていくリエル。やがてそれらしき建物が見えてくる。聞いていた話ではそれほど大きくないとフィル達は言っていたが、リエルからしたらその建物は十分に巨大だった。
〖おっきい建物ねぇ。村じゃこんな大きな建物なかったわ〗
〖確かにでかいのぉ。人の感覚というのはわからんもんじゃな〗
二人してその建物を眺めていると、突然ギルドの入り口から一人の男が転がってくる。次の瞬間には建物の中から激しい激突音が響くと同時に建物の壁を貫いて別の男が飛び出してくる。
〖・・・な、なにこれ?〗
〖・・・さぁ?なんじゃろうな?どうする?少し様子をみるか?〗
現在進行形で建物の中から激しい音が聞こえてくるが、そのまま立っていても仕方がないと判断したリエルはミヤビに声をかけて中へと入っていくのだった。
お疲れさまです。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。




