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29話 約束と帰宅後

誤字脱字は時間があるときに修正していきます。

「フォッシルリザードを倒した事、クラウスさんに押し付けちゃったけど大丈夫だったの?」


 村への帰り道、二人は先程クラウスと交わした約束について話をしている。


「お主が倒した事をわざわざ公にするメリットがない。であれば倒したのはクラウスという事にしておいた方が都合が良かろう」


「でもこの先、冒険者として仕事をするんだから、結局いつかはバレちゃうんじゃない?」


「完全に隠し通す事は確かに無理じゃろう。そうなれば良からぬ事を企む者が、お主の前に現れる事もあるかもしれん」


「あたしだって関わりたくないけど・・・」


「じゃがそれが今から起きるのと、この先少しでもお主が成長を遂げた後に起きるのでは、対応できる状況というのは大きく違って来る。言ってる意味は分かるじゃろ?」


 その言葉に首を傾げるリエルを見て、ミヤビは説明を続ける。


「そういうところは本当に子供と変わらんな。よいか?お主はまだ戦闘の経験も少ない上、自分の力をどこまで使いこなせるかも分かっておらん。そんな状態で謀を企む様な輩に、矢継ぎ早に狙われる様なことになったら旅どころではない」


 ミヤビの説明を聞いているリエルは成る程といった表情で頷いている。


「じゃが、多少でも戦闘の経験を積み、自分の能力を少しでも理解した状態であれば、少なくとも今の状況よりは遥かにマシじゃと思わんか?」


「なるほど!つまりあたしがもっと成長すればいいのね!」


「お主はやはり阿呆じゃなぁ〜。まぁ極論で言えばそんな所じゃ。・・・それとリエルよ」


 ミヤビの雰囲気が変わるのを感じたリエルは何を言われるのかと少々身構える。


「魔王のスキルを迂闊に使うのはやめよ。この際だからはっきりと言っておこう。お主の体はまだ魔王の力を行使するには弱い。今、無理をして使い続ければそれは取り返しのつかない事態を招く事は想像に難くない」


「でも、今、あたしは何ともないよ?ミヤビが気にし過ぎじゃないの?」


「阿呆。昨晩の出来事を忘れたのか。お主が気を失った時、体中が魔力に耐えられずにできた傷でボロボロじゃったんじゃ。想像できないほどの痛みがお主を襲っていたはずじゃぞ」


「そ、そうだけど、それはミヤビが治してくれたんでしょ?だった同じようにして――」


「あれは正確には治すのとは違う。妾の血を触媒にして、与えた者の細胞を無理やり活性化させて再生したに過ぎん。普通の魔法では治す事ができなかったからな。そして、無理に細胞の成長を促進したせいでお主の寿命を削る結果になった」


「ち、ちょっと!なんでそんな大事な事を黙っていたのよ!?」


「仮に!話しておったら、【魔力解放】をクラウスを助ける時に使う事を止めたか?」


「それは・・・」


 クラウスの命が危ないと感じた時には、考えなしで【魔力解放】を使っていたリエル。

 恐らく自分の命が蝕まれると知っていたとしても同じ事をしてただろう事を想像するのは簡単だった。それはミヤビとて結果は変わっていなかったと考えているだろう事を理解する。


「お主の無鉄砲さはある程度理解しているつもりじゃが、今後は迂闊に使うのは控えよ。少しづつその身体に慣らしていくんじゃ。そうすればいずれは完全に使いこなす事もできるじゃろう。死んでしまってはお主の目的は達成する事ができなくなる。わかったか?」


「わかったわ。約束する」


「よしよし。不本意だがやむを得ない事態であれば妾も手を貸そう。だがな、妾が優先するのはリエル、お主であって他の者は所詮はおまけじゃからな」


「そんなこと言ってても助けてくれるくせに。さっきだって石になった人を放っておけるのに、解石薬まで渡してあげるし。ほんとにミヤビって素直じゃないわね。本当は優しいのに」


「や、喧しいわ!」


 神であったミヤビと、下界の者とはやはり見方が違うせいなのだろう。


 すべての者を助けるなどというのは傲慢な考えであり、力ない者は淘汰され、力ある者が世界を作っていくのはこの世界の理だという考え方が染みついているミヤビにとって、リエルの考え方が理解できなかったのだ。


 手を貸す事で繁栄をもたらしてしまうような存在である神が、片側だけの物の見方をする事は出来ない。


 人は生きる為に魔物と戦いう事があるわけだが、それは魔物とて同じなのだ。

 生きる為に戦い、その結果、強い者が生き残り、弱い者は淘汰されるという当たり前の考え方がミヤビの根幹にあるため、このような考え方の差違が起きてしまっているのだ。


 ただミヤビが言いたいのはそんな難しい話ではなく、わざわざ自分の命を削ってまで無理に他人を助けるのは馬鹿げているという意味の方が本音なのだが。


「もうよい。兎に角、魔王の力を使うのは極力控え、経験を積み、自力を向上させる事を考えるのじゃぞ」


「分かったわよ。・・・そろそろ村が見えて来るけど、ここまま進んで平気なの?」


「無論、周囲の気配はちゃんと確認しているから今のところ問題はない。じゃが油断して姿を見られると全てが無駄になるからな。こも辺りで道を逸れるとするか」


 ミヤビはリエルにそう答えると、草むらの方へと二人で入って行き、来るときに乗り越えた柵まで誰にも見つかる事なく無事に到着する。

 ミヤビは柵を飛び越えると、周囲を伺いながらリエルに入って来るように合図を送り、村へと帰還する。


 〖これからどうするの?〗


 〖そうじゃなぁ。妾としてはこのままお主の家に向かい、飯でも食わせてもらおうと思っておったのだが、考えてみたら皆は避難所じゃったな〗


 〖お婆ちゃん達に心配かけちゃってるし、早く避難所に向かった方がいいんじゃない?〗


 〖まぁ飯が食えない以上妾はどっちでも構わんが、クラウス達がそろそろ戻って来るじゃろうから家に戻っていても問題ない気も・・・。む、噂をすれば〗


 そんな事を相談していると一人の兵士が避難所の方に走っていくのをミヤビが感知する。


 〖どうやら戻ってきたみたいじゃぞ?恐らく避難してる者達へ安全を伝えにいったんじゃろうな〗


 〖じゃー家で待ってましょう〗


 二人は結論を出し、誰にも見られる事ない様に家路に着くのだった。


 ーーーーーーーーーー


「リエル!?お前どこに行っておったんじゃ!?心配させよって!」


 リビングでミヤビと椅子に座っている姿を見たリリーナが声を上げる。


「そうだぞ!お前の姿がないから衛兵さんに確認してみたら、村で見かけて避難する様に伝えたと言っていたから、てっきり避難所にいるものと思っていたのに姿が無いから心配したんだぞ!」


 続いてエリックも口を開いてリエルに問いただす。


「心配かけてごめんなさい」


 心配をかけた事を素直に謝るリエルの姿をみて、リリーナ達は軽くため息をつき言葉を続けた。


「ここ数日は色々ありすぎて生きた心地がせんぞ全く。・・・それで?一体どこに行っておったんじゃ」


「えっと・・・お、怒らないでね」


「なんじゃ?怒られる様な事をしておったんか?」


「ぬ、沼地にちょっと・・・」


 その言葉を聞いて、リリーナとエリックは何となく予想はしていた答えがリエルから帰ってきた事に再びため息をつく。


「はぁ〜。全く親子揃ってなにを考えておるんじゃろうな・・・。ミヤビ殿。どういう事か説明してくれんか?」


 なんとも言えない雰囲気を含んだ口調でリリーナはミヤビへと声をかける。


「ん?な、なんじゃ?妾は別に無理強いはしとらんぞ?リエルが村を守りたいというから妾はそれに従っただけじゃぞ?」


「あ!ずるい!あたしのせいにするつもり!?」


「わ、妾は事実を述べたにすぎんぞ!別に嘘は言っておらん!」


「そ、そうかも知れないけど、少しはいい方ってものがあるでしょ!?」


 二人のやり取りを見せられているリリーナとエリック。

 エリックは思わず笑いを漏らす。


「はははっ!まるで姉さんの子供の頃を見てるみたいだよ。母さんもそうは思わないかい?」


「笑い事では無いぞ全く」


 エリックの言葉にリリーナも口元に笑みを浮かべて応える。


「ま、まぁ良いでは無いか?妾が付いておる故、リエルに怪我もせずにこうして無事なんじゃ。その辺で許してやってはくれんか?」


「・・・もうよい。考えてみればこれから冒険者として旅に出るんじゃ。無事に帰って来れるだけの能力を持っている事を見せてもらえた思うことにしよう」


 リリーナも、これから旅に出る二人に、これ以上小言をいうのも野暮だと思い、前向きな考えをする事にして話を続ける。


「さ、そろそろ夕飯の準備でもするとするかのぉ。ところでリエル。エリックに聞いたんじゃが、エマリエの弓を持って森へ狩りへ行ったんじゃろう?何か取れたんか?」


「あ!そ、そうだ忘れてた!えっとね・・・。ちょっとここだと狭いから外で出すけどいい?」


「ほう。無事狩猟は成功したわけじゃな。よしよし、では外で獲物を見せてもらうとしようかのぉ」


 三人と一匹はそろって家の外へと出ると、裏庭に移動する。

 リエルはチェストリングを開くと、リストの中からラットブルとソニックバードを取り出して地面へと並べる。

 それを見たリリーナとエリックは驚きで目を大きく見開く。


「こ、こいつはたまげたな・・・ラットブルの大きさもじゃが・・・」


「こいつはソニックバードみたいだけど。・・・亜種みたいだね・・・」


「うむ。ソニックバードの方は亜種でなかなか手強い相手じゃったが、リエルが狩った獲物じゃ。見事な戦いじゃったよ。妾の教え方がいいからじゃろうな。カカカッ!」


 えっへんといった感じで胸を張っているリエルを放っておいてミヤビが二人にそのまま話を続ける。


「これで今日の飯の材料は十分じゃろう。妾も空腹故、何かうまい飯を作ってくれ。どんな料理が出てくるか楽しみにしておるぞ」


「すまんがミヤビ殿。これはすぐにすぐは無理じゃよ。血抜きをせねばならんし・・・。ソニックバードの方はまぁ何とかなるばラットブルはこの大きさじゃと流石にすぐには無理じゃ」


「ん。かまわんぞ。どちらかと言えばソニックバードの肉の方が興味がある。あ、あとリエルよ。あれも出すんじゃ」


「あれ?あぁ、フォッシルリザードの肉ね。・・・はい」


 そういうと再びリエルがチェストリングを覗いて一塊の肉のブロックを地面へとおく。


「これが沼地に現れた魔物の正体じゃ。ひと悶着あって肉を貰える事になったからもらってきた。これもうまいから使ってくれ」


「やはり沼地に現れたのはフォッシルリザードじゃった訳か。やれやれ。まぁそういう事なら、腕によりをかけてミヤビ殿が満足できるごちそうを作ってやるとするかのぉ。ほれエリックとリエルも手伝え。一人じゃ流石に時間がかかるわい」


 ミヤビはその言葉に満足そうに頷き、作業を始める三人を他所に一人のんびりと庭の椅子へと移動し横になって夕食ができるのをのんびり待つのだった。

お疲れさまです。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


ツンデレミヤビさんとアホの子リエルさん

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