28話 事実を知る者と後始末
誤字脱字は時間があるときに修正していきます。
「わたしに異論はないが本当にいいのか?」
「かまわん。そちらの方がこの子にとって都合がよい」
「そういう事なら構わないが・・・しかしフォッシルリザードの討伐か・・・」
「命を救われたうえ、名誉まで手に入るのじゃ。文句は言わせん」
「文句を言うつもりは無いのだが、何というか、歯痒いな。私は大したことはしていないのに周りから祭り上げられるかもしれないと言うのは・・・な」
「ならば自分の力不足だと認め、次に活かすがよい。今回は自身の無力さの生んだ結果じゃと思って諦めるんじゃな」
ミヤビのきつい言い方に黙って聞いていたリエルが口を挟む。
「ちょっとミヤビ!クラウスさんは村の為にここまで頑張ってくれてたのに、そんな言い方は・・・」
「だが事実じゃ。リエルの言葉は聞こえはいいが結局は同じ事じゃ。民を守る職務についていながらそれを果たせなかった以上はな」
「でも!・・・」
「リエルさん、ミヤビ殿の言っていることは間違っていないよ」
ミヤビとリエルの会話を聞いていたクラウスが口を開くが直ぐにリエルがそれに異議を唱える。
「でも!クラウスさんは村を守ろうとフォッシルリザードの足止めをしていたじゃない!」
「援軍が来るまで持ち持ち堪えられた確証はないが少なくとも、もっと安全に時間を稼ぐ方法は他にもあった。だが私は奴を倒そうと判断を誤り、結果自分の命をも失うところだったといわけさ。リエルさんの言葉は有難いがミヤビ殿の言ってることは間違っていないよ」
そう言ってリエルの言葉に答えを返した。
クラウスの言っていることに納得出来ないリエルだが、何を言っていいのか分からず沈黙するしか無かった。
「さ、この話はここまでにしよう。ミヤビ殿の提案に反対するつもりも私にはない。この結果は受け入れるさ」
クラウスがそう切り出し重い空気が漂っていた沈黙を破る。
「うむ、頼むぞ。・・・して、石になっとる者はどうするつもりじゃ?」
「フォッシルリザードが現れた事は伝令が伝えているはずだから、解石薬も準備してくるだろう。それで治療するつもりだが、それまではここで周囲を警戒しておく必要があるだろうな」
石化状態で破壊されれば命はない以上、動けない者達を守る必要があるのは当然の事ではある。だがクラウス一人ではもし複数の魔物が表れたとき対応できないと考えたミヤビはクラウスにある提案をする。
「それでは時間がかかり過ぎる。今はフォッシルリザードの存在があったおかげでなりを顰めているが、日が落ちれば潜んでいた魔物も姿を見せ始めるじゃろう。そうなった場合お主だけでは守り切れる保証はない。そこでじゃ・・・リエルよ」
「・・・なに?」
「いつまでもしょぼくれているでない。・・・全く」
未だ納得できない様子のリエルは若干だが不貞腐れている様子。やれやれといった感じのミヤビだが兎に角要件を伝える事にする。
「リングの中に母君の持ち物があるじゃろう。その中を見たときに解石薬があったはずじゃ。それを今あるだけ出すんじゃ。それで石になった者達を元に戻す。そして後に到着する者から解石薬を使った分だけ返してもらおうと思っておるが何か問題はあるか?」
「それでクラウスさんやこの人達が助からなあたしは構わないわよ」
兵士達を助けるためだとミヤビが言い出したあたりから機嫌を直し始めていたリエルは、この提案を了承する。無論クラウスにとってもその提案は非常に助かるものであり、断る理由はなかった。
「よしよし。ならばさっそく――」
隊長ー!?ご無事ですかー!?
ミヤビはちらりと顔を傾けクラウスの後ろの方から声を上げて向かってくる人影を確認する。それはヴレアであった。
ミヤビは少し渋い顔をしているが、ヴレア一人だけに自分とリエルの存在が知られる位で済むならまだマシだろうと姿を隠す事を諦める事にする。そんな事を考えている間にヴレアはクラウスの元へと到着する。
「隊長!無事で何よりです!」
「うむ。まぁ・・・な」
「?・・・どうし・・・なっ!?なんでこんな所に子供が!?それにそっちのは!?」
鎧に身を包んでいるクラウスの陰に隠れて見えていなかった一人と一匹の姿を近くで確認したとたん驚きの声をあげる。若干ばつが悪そうなクラウスの視線がリエル達に向くが、それに答える形でミヤビは口を開く。
「仕方あるまい。警戒を怠った妾にも問題がある故、話してしまってもかまわん」
「なっ!?こ、言葉を理解しているとはかなり高位の魔物か!?」
「申し訳ない。えー・・・おほん」
わざとらしく咳払いをすると、クラウスは今にも攻撃しようと身構えているヴレアに語り掛ける。
「まずは落ち着いて話を聞くんだヴレア。この子の事は知っているだろうが紹介しよう。リエルさんと、そちらはその従魔であるミヤビ殿だ。私が無事なのは彼女達のおかげなんだよ」
「た・・・確かにこの子は・・・。ですがその時は従魔など見ませんでしたよ!?しかもこの年でこれほどの魔物を従魔にしているなんて聞いた事ないですよ!なんなんですかこの子達は!?」
経験豊富なクラウスと違い、まだまだ若輩者であるヴレアとでは受けた衝撃の大きさが違い過ぎたのだろう。いまだ驚きと警戒の声を上げているヴレアに、クラウスは強い口調で再び語り掛ける。
「落ち着くんだヴレア!!あまり彼女達を困らせるんじゃない!私は情けないぞ!」
「す、すいません」
クラウスの強い口調での叱咤を受けて、何とか落ち着こうと努めるヴレア。
「えー・・・。申し訳ありません。失礼な事を言ってしまって。許しては頂けないでしょうか」
「かまわん。リエルも平気じゃろう?」
「あたしは大丈夫。ヴレアさんの反応は別に普通だとおもうし・・・」
「という事じゃ。ありがたく感謝してよいぞ」
「ミヤビはすぐ調子に乗らないで」
当たり前の様なやり取りをしているリエルとミヤビに、唖然とした表情のヴレア。
「本当にミヤビ・・・殿は、リエルさんの従魔なのですか?なんというかその・・・」
「事実じゃがそれよりもまず話が聞ける状態になったなら先に言っておこう。クラウスにも約束してもらった事をお主にも承諾してもらうぞ。要件は簡単じゃ。妾達の事は他言無用じゃ」
「私からも厳命する。ヴレアよ、リエルさんとミヤビ殿の事は絶対に秘密だ」
「ミヤビ殿が普通の従魔でない事は何となくわかりますし、リエルさんもミヤビ殿を従魔にしているという事から、流石の私でも公に話していい内容じゃないのはわかりますよ!もちろん他言するつもりはないですから安心してください」
「うむうむ、話が早くて助かるぞ。・・・さて、話は終わりじゃ。このまま時間をかけてる場合ではないからな。さっさとやる事をやって村へ帰るぞ」
ミヤビはそういうと、リエルに解石薬を取り出させる。取り出された瓶を地面へと並べていく様子を見ているクラウスとヴレアが驚きの声を上げる。
「それはもしや・・収納能力のある魔道具ですか?そんな物まで持っているとは驚きですよ」
「あぁ、マジックポーチとは違うようだが・・・まさか【チェストリング】ではないですか!?」
「ほう。よく知っておったな。かなり珍しい物じゃからこんな辺境の様な場所で知っておる者がおるとは思わなかったぞ」
驚きの声を上げていた二人であったが、クラウスは聞いた事があったようで言葉を続ける。
「実物を見たのは初めてです。先ほど話していたミヤビ殿の言葉の中にリングという言葉がなかったらヴレアと同様、私もマジックポーチか何かだと思ってますよ。しかしこうして実物を見る事になるとは思ってませんでした」
「私は【チェストリング】と言われてもさっぱりですよ。お二人の反応から余程の物なのだろうという事くらいしかわかりませんからね」
淡々と解石薬を並べているリエルが必要な分を出し終え、ミヤビへ話しかける。
「これで足りるかな?」
「妾に聞かれても困る。クラウスよ。どうなんじゃ?」
「十分間に合うと思います。早速使わせて頂き、皆を自由にしてやろうと思います。ヴレア、お前も手伝ってくれ」
「わかりました。ではあちらは――」
「待つんじゃ。その前に妾達は村へ戻らせてもらうぞ。あまり妾達の事を知られるのは面倒な事になるからな」
ヴレアの言葉を遮り、喋りはじめるミヤビ。クラウス達はその意味を理解しているため疑問はなかく、特に言い返す事もなく軽く頷く。
「それと、フォッシルリザードの肉を少々もらっていくぞ。あれはなかなかうまいからな」
「え!?食べるつもりなの?」
「ん?そうじゃぞ?リエルは食うた事ないじゃろうが、ドラゴンの近縁種というだけあって肉の味はかなりの美味じゃからもっていかないのはもったいない。ほれ、さっさと必要な分だけ持っていくぞ。クラウスも異論はないじゃろ?」
「え、ええ。それは構いませんけど。私も食べた事はないので興味があるのですが、毒とかって平気なんですか?」
クラウスの質問に、ヴレアも同じように首を縦にふって疑問の意思を示す。
「頭部にある毒袋は損傷してないから問題ないぞ。興味があるならお主たちも食ってみるといい。せっかくの獲物。有効活用せねば損じゃ。ほれ、さっさと必要な部位を持っていくぞ」
そういうとミヤビは三人に付いてくるように促し、フォッシルリザードの元へと近づく。ウキウキ気分のミヤビに対して他の三人の表情はやや懐疑的であるが、おとなしく付いて行く。
フォッシルリザードを見ているミヤビは、その腹部の辺りを狙って前足を軽く動かす。すると、フォッシルリザードの腹部に綺麗な切れ目が入れられ、大体リエルの体より少し小さい程度のサイズの肉のブロックが切り取られる。
「これくらいで十分じゃな」
「今、何をやったのですか!?フォッシルリザードの鱗すらたやすく切断してるようですが・・・」
ヴレアが驚いた顔でその光景を見ている。
「スキルを使って切り出しただけじゃぞ。まぁ細かい事は気にするな。何ならお主達の分も切ってやるが?」
「い、いえ。ご心配なく。兵士達を戻した後、村まで運びますのでそこで必要なら解体もしますから」
「ふむ?まぁそれなら別に無理にとは言わん。さてリエルよ。妾達は先にここを離れるぞ。さっさと帰って飯にするのじゃ。今日の飯も楽しみじゃのぉ!」
食事の事を頭に浮かべながら今にも涎を垂らしそうなミヤビを他所に、リエルはクラウス達に挨拶と共にお辞儀を返し、ミヤビと共に村へと戻るのだった。
「と、とにかく!早いところ石になった者達を元に戻してやろう!」
「そ、そうですね。・・・まさかこれがおいしいとは・・・私はまだまだ知らない事が多いみたいです・・・」
「大丈夫だ。私もこれを食べてみようなんて思わない。まぁミヤビ殿が言うくらいだから嘘でもないだろうから、折角頂いたんだ。後で摘まんでみるとしよう」
リエル達が去った後に残った二人は何とも言えない空気を出しながら兵士達の治療を開始するのだった。
お疲れさまです。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂ければ幸いです。




