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27話 リエルとミヤビ、時々クラウス

誤字脱字は時間があるときに修正していきます。

「なんだろう?何かあったのかな?」


「ふむ。村の様子から察するにまた厄介ごとの気配はするが・・・取り敢えず行ってみるか」


 森から出て帰る道へ差し掛かるところから村の様子が見えるのだが、そこから人が慌ただしく走り回っているのが見えた二人は不穏な気配を察知する。

 村へと戻ると丁度一人の兵士が避難の指示を村人に出しているところに出くわした。


「何かあったんですか?」


「沼地の道の方で魔物が出たんだよ。子供が一人でこんな所にいたら危ないから、お嬢ちゃんも急いで避難所に向かいなさい」


「魔物ですか!?わ、分かりました。すぐに避難所に向かいます。ありがとうございます」


「なに、隊長が魔物を食い止めているし、町にも応援の要請を出しているのですぐに解決するから安心して避難所で待機していたまえ。私は他に残っている人がいないか見て回らないと行けないからこの辺で失礼させてもうよ」


 軽くお辞儀をしてから走っていく兵士の様子を見送るリエル。ミヤビは兵士の話から現れた魔物が強敵であるだろう事を敏感に察知する。


 〖リエルよ。先ほどの兵士の話から察するに強力な魔物が出たと見える〗


 〖どうしてそう思うの?〗


 〖すぐに解決できならここまで大規模な避難誘導などせんだろうし、援軍がくるまで隊長自らが足止めに参加している以上、今の戦力では手に余る相手の可能性は十分に考えられるじゃろう。そして・・・〗


 姿を不可視化しているミヤビが念話でリエルに自分の考えを聞かせる。


 〖沼地の道と行っておったが・・・。恐らくじゃが、現れたのはフォッシルリザードで確定ではないかと妾は推測しておる。以前もそこで出現が確認されておるわけじゃしな〗


 〖フォッシルリザード・・・。お母さんが倒したって言ってた魔物だったっけ?〗


 〖うむ。あれは近接職が相手にするとなると十分な攻撃手段が無ければ強固な守りを破るのは無理じゃ。魔法なら幾らかダメージを通しやすくはなるが純粋な戦士クラスでは分が悪い〗


 〖・・・それじゃ残ってる兵士の人が危険なんじゃ・・・〗


 〖うむ、隊長は確か・・・クラウス?とかいっておったが、天眼で見たわけでは無いから正確な強さまではわからんが実力はありそうだが厳しいというのが妾の所見じゃな〗


 〖・・・ねぇミヤビ?お母さ―― 〗


 〖だめじゃ〗


 リエルの言葉を聞き終えより早く、一言で否定するミヤビ。


 〖な、なによ。最後まで聞きなさいよ〗


 〖聞かんでも分かる。どうせ母君が倒した魔物を自分の手で倒したいと考えたんじゃろう?〗


 〖そ、そうだけど何でダメなのよ。魔法なら戦えるんでしょ?なら――〗


 〖確かにお主の魔法なら相手にすることは可能じゃろう。弓は兎も角、魔法であれば十分倒せるのは保障しよう。じゃがそれは他の者にリエルの力の事が知られてしまうのは避けられん。そうなれば何が起きるかは分かるじゃろう?〗


 〖でも、今なら兵士の人や隊長さんも助けられるかも知れないのに、何もしないなんて酷いよ!〗


 〖その気持ちは分からんでもない。じゃが他に手が無いじゃろう?お主の存在を知られる事無く遠距離から魔法で倒そうとするならば、それだけの威力が出せる魔法を使わなくてはフォッシルリザードを倒せんじゃろう〗


 〖あたしは【サイクロン】までなら使えるわよ?【バーストマジック】を使えば――〗


 〖スキル込みの【サイクロン】であればダメージは十分じゃろう。じゃが遠距離から正確に対象だけを魔法の範囲に収めて狙撃するのは難しいぞ?近くには戦っている兵士がいるかもしれん。それを避けるように制御できるなら反対はせんがどうなんじゃ?〗


 ミヤビの言葉にリエルは沈黙する。そもそも戦闘経験がまだ乏しいリエルには遠距離からの魔法を使った正確な狙撃など未知の体験。やれるかどうか問われれば答えは分かりきっていた。


 〖そういう事じゃ。遠距離から弓での狙撃ではダメージが通せないのなら姿を見せて戦うしかない。それを避けねばならない以上、残念じゃが出来ることは限られる。兵士達が力尽きてからフォッシルリザードを討伐するといった所か〗


 〖それは隊長さん達を見殺しにしろって事!?駄目よそんなの!〗


 〖方法がないのじゃから仕方がないじゃろう〗


 ミヤビの言葉に何も言えなくなるリエル。そこから滲み出る遣る瀬無さは隠しきれず溢れてくる。それを見かねたミヤビは仕方がないといった感じで口を開いた。


 〖正直、面倒ごとは避けたいのじゃがな。このままではお主の心に遺恨しか残らんようじゃし、やむを得ないか・・・。方法がないといったが考え方を変えればできんことはない〗


 〖・・・聞かせて〗


 〖簡単じゃよ。前提条件である存在を隠して戦うという選択を捨てればよい。要は姿を晒して普通に魔法で戦えはいいだけの話じゃ。じゃが後について回るかもしれない詮索などは覚悟する事になる〗


 〖それでみんなを救う事ができるっていうならあたしはやるわ〗


 〖少しは考えてほしかったが・・・やはり母君の無鉄砲さはしっかり受け継がれておるということか。やれやれ。覚悟ができておるなら他にいう事はない。さっさとフォッシルリザードのいる場所まで行くとするぞ〗


 〖わかった。・・・ねぇミヤビ?〗


 〖なんじゃ?まだ何かあるのか?〗


 〖ミヤビはあたしの事を心配してくれてたの?〗


 リエルの突然の問いかけに歯切れの悪い答えを返すミヤビ。


 〖ん?・・・まぁ・・・そうじゃな〗


 その答えにリエルは優しい微笑みを浮かべながら再びミヤビに話しかける。


 〖そっか・・・。ありがとねミヤビ。あたし、家族以外の人があたしの事を心配してくれてるのってテルマさんやナイルさんくらいだったから・・・なんだか嬉しい〗


 ずっと気味の悪い存在だと扱われて生きてきたリエルにとって、ミヤビが自分の事を心配してくれている事が堪らなく嬉しかった。

 ミヤビには理解できなかったのだろうが、面と向かってそんな事を言われてしまっては、平静を保っていられなかったミヤビ。


 〖か、勘違いするでない!別に妾はお主の事ではなく、後に厄介事に巻き込まれるのがいやじゃっただけじゃ!〗


 〖ふふっ、なんだかミヤビってお母さんみたい〗


 〖ぐ、ぐぬぬ・・・。そんな事はもうよい!さっさと行くぞ!〗


 ミヤビの言葉を受けてリエルも頷き走り出す。向かうのは勿論フォッシルリザードの場所である。沼地への道に通じる出口の付近でヴレアと数名の兵士が話をしている。その様子を隠れながら見ているリエルとミヤビ。


 〖ふむ。どうやら奴らはこの道で防御の陣を敷いて、いずれ来るかもしれない魔物に備えるつもりらしいな。そして話の内容から、予想通り相手はフォッシルリザードで間違いないようじゃな。そして状況は極めてよくない〗


 〖なら急がないとみんなやられちゃうよ〗


 〖そうじゃな。じゃが、あそこを通ればすぐに見つかり止められてしまうじゃろう。あそこを通らずにどこか柵を乗り越えて向かうとするぞ。どこかないのか?〗


 〖そうね・・・。だったらこっちから・・・〗


 ミヤビの提案に同意したリエルは、建物の陰の奥へ移動して柵を乗り越えると、そのまま草陰を移動して沼地へと向かう。


 〖先ほどの兵士達が話していた内容からわかっておる事は戦っているのは隊長のクラウスだけの様じゃから、つらい光景を目にする事を予め覚悟しておけ。状況に心を乱されるでないぞ〗


 〖・・・わかった〗


 二人はこれから向かう場所で起きている事を覚悟し、先を急ぐ。やがて石になった兵士があたりに見える様になり、それを生み出した元凶であるフォッシルリザードを目視する。


 〖おったぞ。言わなくてもわかっておるじゃろうが・・・〗


 〖油断するなって事よね!大丈夫!〗


 リエルはフォッシルリザードに向けて魔法を放つ準備をする。だが魔法を放つ瞬間その手が止まる。フォッシルリザードの陰で見えていなかったクラウスの姿が吹き飛ばされる形で目に入った。


 〖まずいぞリエル!あれは完全に致命傷じゃ!お主の魔法ではまに―――〗


 ミヤビが手を下そうとした瞬間、隣にいたリエルからとてつもない魔力が迸る。それは【魔力解放】によって体から噴出したリエルの魔王としての魔力であった。

 放出された魔力に気づいたミヤビはリエルに目を向け、それを止めようとするが、リエルは真紅の瞳でフォッシルリザードを見据えながら、【ウィンドソーサー】に【魔力解放】によって吹き出る膨大な魔力に【バーストマジック】をのせて解き放つ。


 暴威の如き魔力が込められた風の刃はフォッシルリザードの胴体を一撃の元に両断し、何が起きたのかをフォッシルリザードに理解させる事なく、その命の炎を消し飛ばす事に成功する。


 〖・・・これで大丈夫。・・・ふぅ〗


 即座に【魔力解放】状態を解除し、通常の状態へと戻るリエルにミヤビの声が頭に入ってくる。


 〖馬鹿者!お主あまり無茶をするでない!〗


 〖しょうがないじゃない。あれじゃないとあの人を助けるが間に合わなかったんだから〗


 〖妾がいる事を忘れるでないわ!・・・まぁ気は進まないがお主の気持ちを無下にするのは不本意故、手を貸すくらいの事はしてやろうと考えておったというのに・・・全く〗


 ミヤビの以外な言葉にリエルは少し驚いたが、特に何も言わずに倒れている男へと近づいていく。完全に沈黙しているフォッシルリザードの横を通り抜け、男の様子を確認する。


「大丈夫ですか?今直しますから」


「き、君は・・・どうしてここに・・・」


「治療するか喋らないで・・・」


 リエルはクラウスに治療魔法を掛け始める。するとクラウスの体を襲っていた痛みは見る見る引いていき、荒い息遣いが平常へと戻っていく。治療が終えて息をつくリエルに、クラウスは再び話しかける。


「あ、ありがとう。おかげで助かった。私はバランディアから来た衛兵隊の隊長を務めているクラウス。そして・・・その容姿から察するに・・・君がリエルさんであっているかな?」


「そうですけど、なんでわかったんですか?」


「何、村で話を聞いていた際に三人組の少年に、心配だから探してほしいと頼まれてね。その時聞いた容姿と似ていたからもしやと思ってな。ただ聞いていたのと肌の色がすこし違ったから一瞬違うかと思ったけど、髪の色は聞いていた通りだったからそうではないかと思ってね」


「あの人達が私を心配してた?なんで?」


「え?友達じゃないのか?」


「別にそういう訳じゃないです」


「ふむ。・・・まぁそれは置いておくとして。・・・何をやったのかわからないが今のは君の仕業かい?」


「それは・・・」


 クラウスの質問にリエルはどう答えればいいか考える。そこへミヤビが草むらから獣の姿で現れる。それに驚いたクラウスは素早くリエルを庇う様に立ち塞がる。


「くっ!また魔物か!」


 その様子を見たリエルは慌てて声を上げる。


「あ、慌てなくても大丈夫ですから!落ち着いてください!」


「よい、リエルよ。妾が話す」


「な!?しゃ、しゃべった!?」


 突然の事で驚くクラウスにミヤビは構わず言葉を続ける。


「落ち着け人間よ。妾はその子の従魔でミヤビという者じゃ。正直、妾は貴様を助けに来るのは反対じゃったのだがな。リエルに感謝するといい。その子が自分の力を隠す事を優先しておったら貴様は今頃くたばっておったじゃろう」


「じ、従魔だと?」


 クラウスは依然驚いた表情でミヤビからリエルへと視線を移す。その視線にリエルも答えて静かに頷いた。


「本当だよ。ミヤビはあたしの従魔だから何もしないわ」


「お、驚いたな・・・君の様な子供が従魔を連れているなんて。しかも見たところかなり高位の魔獣のようだが・・・君は一体・・・」


「それについては妾から話がある」


 ミヤビは有無を言わさず言葉を告げる。


「単刀直入に言おう。この子の力の事は他言無用で頼む。それを了承するなら少しくらいは理由を話してやろう。拒否するならば悪いが妾は貴様の命をここで取る。どうじゃ?」


「ちょっとミヤビ!?何てこというのよ!そんな事だめよ!」


 ミヤビはリエルの言葉を無視して強い眼差しをクラウスに向けている。


 ミヤビの言葉にクラウスは沈黙するが、すぐにミヤビに言葉を返した。


「わかった。約束しよう。それと・・・理由に関しては話して頂かなくても結構だ。話せない理由を無理に聞き出すつもりは私にはないからな。それに・・・」


 ミヤビを見ていたクラウスは再びリエルに視線を戻す。


「命の恩人が困るような行為をするような趣味はないからね」


 その言葉にリエルは少し驚くが、すぐにクラウスという人間の心意気を理解しその言葉を受け入れるのだった。

お疲れさまです。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


台風がやばかったです。

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