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26話 化石蜥蜴

誤字脱字は随時修正していきます。おかしいと思う部分ありましたら指摘頂いても助かります。

「見事!ようやったぞリエル!」


「はぁ・・・はぁ・・・」


 倒れて地に伏しているソニックバードに矢を番えたまま近付くリエルは、ミヤビの言葉でようやく臨戦態勢を緩め、荒い息と共に構えを解く。


「どう・・・あたしは・・・うまく・・・やれたわよ」


 戦闘状態という緊張下にあったためか、リエルの息はまだ荒く、言葉は少し途切れ途切れになっているのが見受けられる。


「うむ。褒めてつかわす。・・・どうじゃった?命を賭けた戦いというのは。ものの数分の戦いだと言うのに疲労を感じるじゃろう」


「・・・疲れた」


「そうじゃ。それが命がかかっている緊張状態の戦いじゃ。お主は慣れていないから息が上がっておるが、場数を踏んでゆけばそれもマシになるじゃろう」


「・・・ふぅ」


 荒かった息が整い出したリエルは小さく息を吐くリエル。その様子をみていたミヤビは地に伏した魔物を見ながら言葉を続ける。


「妾が言ったことを忘れるでないぞ。こやつは最後の瞬間、お主を殺ったと油断した。その結果がこれじゃ」


「油断していたら、あたしがこうなっていたかも知れないのね・・・。大丈夫。ミヤビが言ったこと、絶対忘れない」


 リエルの言葉を聞いたミヤビは優しく微笑みながらリエルの頭を撫でる。


「うむ、良い子じゃ」


「こ、子供扱いしないでよね!」


 照れてはいるが大人しく頭を撫でられるリエルにミヤビは笑いを漏らすと次の行動に移る。


「ふふっ、ならばさっさとこやつをしまって村に戻るとするぞ。弓の具合はそれなりに掴めたじゃろう。それに初めての実戦は疲れたじゃろうしな」


「うん。きっと帰ったら二人ともこれをみてびっくりするわね!」


「ラットブルは兎も角こいつは亜種じゃったようじゃしな。通常種よりも味に期待ができるぞ」


 ミヤビの言葉に珍しく喉をゴクリと鳴らす。疲れて空腹のところに美味しい食材と聞いて思わず反応してしまうのだった。


 ーーーーーーーーー


 メデューサ、バジリスク、コッカトリス、カトブレパス。石化の魔法、魔眼、石化毒の状態異常を操る魔物は有名なものでこの程度だろうが、他にも石化を操る魔物は勿論存在する。

 フォッシルリザードもそのうちの一つである。


 陸竜の近縁種であるが外見はサンショウウオに近く、湿地や沼地に生息している水棲種が進化した過程で生まれた魔物だと考えられている。


 その強さは、岩の様な硬質の鱗に覆われ肉体の非常に高い防御力に、その硬い鱗に覆われた体から繰り出す突進などの攻撃力は強力で、極め付けは体内に持つ毒腺からでる石化毒を巧みに使った石化のブレスに代表される様な石化の状態異常攻撃によりかなり強い。

 しかし高い防御力とは裏腹に動きは鈍く、石化攻撃への対策が出来ていれば、気をつけるのは直接攻撃と、高い防御力に対してどうダメージを与えるかという問題くらいの為、ギルドにより定められているランクはCとなっているが、それはあくまでも対策が出来ているならの話である。


 ーーーーーーーーーーー


 クラウスとヴレアの眼前には悲惨な光景が広がっていた。

 盗賊を捕らえ、先に村へと向かっていたはずの兵士達はフォッシルリザードによる襲撃によって甚大な被害を受けていた。

 石の石像が多彩な姿で立ち並ぶ目の前の光景。あえて幸運な点を述べるなら、石になった兵士達がまだ形を保っているという事だろう。

 石像が立ち並ぶエリアから少し離れた位置でこの惨状を作り出した元凶を、仲間の石像を守る為に、まだ無事な数名の兵士が何とか囮になって注意を引きつけている状況である。


「た、隊長!?フォッシルリザードです!」


「見れば分かる!早く手を貸すぞ!石化している者達を攻撃させるな!砕かれたおしまいだ!」


 そうヴレアに告げるクラウスは、剣を抜いてフォッシルリザードへ向かい走り出す。

 近付くにつれその魔物の大きさがはっきりし始める。

 身長170センチほどの兵士に対して二倍程の高さの場所に、口から毒を垂らしているフォッシルリザードの頭部が位置しており、大凡ではあるが全長5メートルといった目測であった。


(でかい・・・。これ程の大きさの個体は初めて見る。人の通りが途絶えてしまった事で討伐される事なく、長い時間かけてここまで成長してきたわけか・・・だがっ!)


 注意を引いてる兵士に襲いかろうとしているフォッシルリザードの横を取る形なっているクラウスは、走る速度を乗せた強力な刺突を無防備になっている脇腹めがけて繰り出す。


「セイッ!!」


 囮になってる兵士から注意を自分に向ける為、気合いの入った声を発しながら剣を突き出したクラウスだったが。


 ギャリリッ!


 クラウスの剣はフォッシルリザードの鱗を砕き、多少の傷を残すが、致命的なダメージを追う事なくフォッシルリザードの体はクラウスの攻撃を弾いてみせた。


『グルルゥ?』


 攻撃を受けた事でクラウスの存在に気づいたフォッシルリザードだが、目の前で剣を構えている兵士に前足で薙ぎ払うように攻撃を敢行する。

 兵士はそれをうまく飛び退く形で回避するが、直後自分の体が何かで濡れるのを感じる。


「ぐあぁぁっ!!?」


 みるみる兵士の体は侵食して行くように石へと変わって行く。


 石化毒。


 フォッシルリザードは前足の攻撃を囮にし、合わせて毒液を吐いていたのだ。


「た、たい・・・。・・・」


 兵士の言葉は最後まで紡がれる事はなく、後に残ったのは石像とフォッシルリザードの不気味な鳴き声だけだった。


「ヴレア!お前は村に戻ってこの事を知らせろ!バランディアから応援を呼ばせるんだ!急げ!」


 クラウスの叫びが上がる。


「隊長はどうするのです!?」


「いいから行け!長くは持たん!」


「わ、私も一緒に残ります!隊長だけを残して行くわ――」


「さっさと行け!自分がなぜ兵士になったのか忘れたのか!?」


「・・・くそっ!」


 ヴレアはクラウスの言葉に従い走り出す。身につけていた装備をその場に投げ捨てフォッシルリザードの横を駆け抜ける。動きの遅いフォッシルリザードはそれを捉えることは出来ずに離脱を許してしまう。


「すぐに戻ります!死なないでくださいね!」


 そう言い残し、ヴレア村へと走っていく。


『グルルアアアァァ!!』


「貴様の相手は私だぞ!はあぁ!!」


 ヴレアを追うそぶりを見せたフォッシルリザードへ、クラウスの剣撃が繰り出される。

 フォッシルリザードの硬い体にひるむ事なく攻撃を繰り出してくるクラウスに、堪らず距離を取ろうと動き出すフォッシルリザード。

 体を振り回す様に動かして尻尾でクラウスを薙ぎ払おうとする。

 巨体から繰り出された攻撃に、クラウスは咄嗟に防御の姿勢をとり、その一撃を受け止め、衝撃を逃す様に吹き飛ばされる。


 難を逃れたクラウスに、フォッシルリザードは威嚇する様に声をあげ、再び襲いかかり始める。


 ーーーーーーーーー


 村へと戻ったヴレアはすぐに簡易の詰所であるテントへと駆け込んだ。


「大変です!盗賊を追った先でフォッシルリザードが姿を現しました!村人の非難とバランディアへ援軍の要請をして下さい!隊長が食い止めていますが長くは持たないでしょう!急いで行動して下さい!」


 そう、隣の町といっても近い訳ではないのだ。村で馬を借りて疾走しても往復で半日はかかる距離なのだ。

 残ったクラウスが一人でそれだけの時間を稼ぐのは奇跡でも起きない限り不可能である。


 ヴレアは兵士達へクラウスからの命令を伝えると、テントの中にいた数名の兵士達は速やかに行動を開始する。


 村に再び緊張が走る。一人の兵士は、村で保有している馬を借りてバランディアへ向かい、残った兵士達が村人を避難所に集まるように誘導していく。


「村の避難状況はどうですか?」


「今のところ七割程度と言ったところです。既に村の奥の家々にも知らせに向かっているので程なく避難は完了するかと思います」


 ヴレアはその状況を把握すると、避難が完了し次第、フォッシルリザードが出た沼地へ向かう道を封鎖する準備を始める。


 しばし時間が過ぎて村人の避難が完了するとテントへ戻ってきた兵士達に沼地への道の封鎖を指示すると、ヴレアはクラウスの元へと再び走り始める。


 ーーーーーーーーーー


 なんとか石化している仲間達からフォッシルリザードを引き離し、戦闘状態を維持しているクラウスであったが、劣勢なのは否めない状況であった。

 ナイルから受け取った解石薬は既に使い終えた後で、なんとか今の状態を維持している。


(くっ・・・このままではやられるのは時間の問題か!しかし少しでも時間を稼がねば)


 石化毒を食らってしまい、解石薬でその効果を打ち消した後の為、今はまだ石化に耐性を持ってはいるがその効果も長くは持たない。

 効果が切れた後に再び石化毒を食らえば抗う術はないこの状況。

 クラウスは意を決して、打って出る。


『キシャアアアアッ!』


 フォッシルリザードもクラウスの攻撃を幾度も受けているため、その体には無数の傷跡が刻まれており、出血している箇所も見受けられる。

 高い防御力を持っているとは言っても、クラウス程の猛者の攻撃を受け続ければその体も無傷とはいかなかったのだ。


 目の前の人間が強敵だと理解したフォッシルリザードは、向かってくるクラウスに威嚇の声を発して、迎えうとうと前足を振り下ろす。


 ガキンッ!


 なんとクラウスはそれを力で受け止めるという強行策をとる。【衝撃緩和】のアーツを使い、前足の一撃を無理やり防いだのだ。


「はあああぁぁっ!!」


 攻撃を受け止められ片足が浮いている状態の、体のバランスを崩したフォッシルリザードめがけて再びアーツを乗せて攻撃を繰り出す。

 クラウスの放った【オーバーアタック】の乗った一撃がフォッシルリザードの胸に突き刺さる。


『グギャギャアアァァ!?』


 胸を貫かれた激痛に激しく暴れるフォッシルリザード。しかしクラウスは攻撃の手を休めず、胸に受けたダメージで低い位置にまでもたげられたフォッシルリザードの頭部に、引き抜いた剣を振りかぶりオーバーアタックをかけて振り下ろす。


 キィィィン!


 振り下ろされた剣がフォッシルリザードに直撃した瞬間、刀身は【オーバーアタック】の負荷に耐えられずに砕けて折れてしまったのだった。

 クラウスの表情に焦りの色を見たフォッシルリザードが即座に攻撃へと転じ、その頭部でクラウスを叩き飛ばす。


「ガッハァッ!!」


 フォッシルリザードの攻撃に備える事が出来なかったクラウスはまともに攻撃を受け、大きく吹き飛ばされてしまう。

 吹き飛んだクラウスは地面を無造作に転げながら着地し、口から血を吐き出す。


「ガッ・・・ゴフッ」


 受けたダメージによって倒れているクラウスにフォッシルリザードが近づいてくる。何とか起き上がろうと体に力を入れるが、クラウスは起き上がることが出来ない。


(ここまでか・・・。)


 動かない体に覚悟を決めたクラウスは地に伏したまま目を閉じ、その時を待つ。すると何かが地面に落ちる音がしたのだが、クラウスの命はそこに変わらず残ったままであった。

 そして次の瞬間、何か巨大な物が倒れる音が響く。


(な・・・何が起きた・・・。)


 急に静かになった辺りの様子に再び開かれたクラウスの目に移ったのは頭部を胴体から切断され息絶えているフォッシルリザードの姿だった。


お疲れ様です。

ここまで読んで頂いてもありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


スキル解説

オーバーアタック:攻撃力が大きく上昇するが武器と肉体に強い負荷がかかる諸刃のアーツ。

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