23話 準備開始
ミヤビを部屋に残し、リエルはリリーナの部屋の扉を叩く。返事がないため扉を開けるがそこに探している人物の姿は見られない。持っていた手紙の詰まった箱を部屋の机の上に置くと部屋を後にする。
次に向かったのはリビングだが、エリックが椅子に座って何やら考え事に没頭している。リエルは何気なく近寄り声をかける。
「エリック兄さん。お婆ちゃんどこに行ったか知らない?」
「ん?お婆ちゃんならさっき外に出て行ったけどどうかしたかい?」
「うん。ちょっと村をでる準備の事で相談しようと思って」
「いつここを発つか決めたのかい?」
「明日か、その次にはバランディアに向かおうと思ってるんだけど・・・。エリック兄さんは、旅をするのに必要な物ってどんなものがあると思う?」
「そうだなぁ。俺も遠出した事は昔あったけどそこまで長い期間じゃなかったからなぁ。ただその時に必要だと思ったのは野宿する為の寝袋とテント、あとはこの辺ではあまり必要ないだろうけど気温の変化に対応できる物がいつかは必要になるだろうね」
「食べ物とかは?」
「リエルがどんな旅をするのかわからないけど、保存に適した物を数日分は常備しておいた方がいいと思うよ?ただそれに関しては先にお婆ちゃんの相談してくるといいよ。まぁ一般的な旅人の常識として非常用の食料は常に考えておくようにするといい」
「うん、ちゃんと覚えておくね。じゃーお婆ちゃんの所に行ってくる!」
「うん、いってらっしゃい」
リエルはリリーナを探しに家の外へと出る。取り敢えず裏庭へと向かってみると母の眠っている場所に、手を合わせてしゃがみこんでいるリリーナの姿を見つける。リエルはそれを邪魔する事なく終わるのを待つこと数分、リリーナは立ち上がって振り返りリエルの存在に気づく。
「おや、リエル。なにか用かい?」
「何をしてたの?」
「ちょっとエマリエに報告をな」
「もしかしてあたしの事?」
「はははっ、まぁそうじゃな。それで?どうかしたのかい?」
リエルは先程エリックとしていた会話の事を説明すると、リリーナもここにリエルが来た理由を察して、二人でリリーナの部屋へと向かう。
部屋へと戻るとリエルを椅子に座らせたリリーナは備えられてある棚から少し大きめの収納箱を取り出すとそれを抱えてリエルの前に持ってくる。
リエルの前で箱を開けるリリーナは口を開く
。
「これはリリーナが冒険者をやっておった時の持ち物じゃ。必要な物は使うといいぞ」
リリーナの言葉にリエルは自然と大きな声が出てしまう。
「お母さんの!?」
「あぁそうじゃ。村に帰って来た時の持ち物じゃよ」
「あたしが使ってもいいの?大事な物なんじゃない?」
「これは全て彼奴が冒険者として収集した物ばかりじゃから元からうちに有った物では無いから心配せんでもいいへいきじゃよ」
「そうじゃなくて、お婆ちゃんにとってこれお母さんの形見だよ!」
「そうかも知れん。じゃがそれはリエルにとっても同じじゃろう。だったら娘のお前がそれを役立てる事に儂は何の不満なんぞ無い。エリックもこの事は了承しておる」
リリーナはそう告げると箱の中から一つ道具を手に取るとリエルに見せる。
「これは収納用の魔道具でな。時間固定が施されており、しまった物を時間経過をする事なく保管しておける珍しいアイテムじゃ」
「・・・カバンみたいなものかな?でも形が腕輪にしか見えないよ?」
リエルの疑問に、リリーナの錬金術師としての血が騒ぐのかニヤニヤと表情でリエルの腕を軽くとって腕輪を通す。すると、リエルの腕に対して大きめだった腕輪はシュッと形を変え、リエルの腕にピッタリとした大きさに変化した。
「おお!」と驚きの声を上げるリエルにリリーナは説明を始める。
「リエルよ。その腕輪に魔力を流してみなさい」
「う、うん。こう・・・かな。・・・きゃ!?」
「できたようじゃな。何が見える?」
「・・・なんかのリストみたい。これってもしかして中に入ってる物?」
「そうじゃ。試しに何か選んで頭で取り出そうと念じて見るがよい。すると手元の辺りの空間に穴が開くじゃろ」
頷くリエルはとりあえずリストに載っている物から釣竿が目についたのでそれを取り出そうと試みる。
すると手物の空間に穴が開く。恐る恐る手を入れると直ぐに何じゃが手に当たるのを感じてそを掴んで引っ張る。
「うわっ!ほんとに釣竿が出てきた・・・。凄い魔道具なんじゃないのこれ・・・」
「時間の固定化が施されている点を考慮するなら普通に何処かで作られた物ではないじゃろう。だからエマリエはそれとは別にマジックポーチも使っておったようじゃしな」
リリーナは箱から小さいが丈夫そうなポーチを取り出してリエルに見せる。そこから導き出された答えを理解したリエルは声を上げる。
「そ、それってやっぱりこの腕輪が価値がある物でお母さんは周りにバレないようにしてたって事なんじゃ!?盗まれたりしたらやだから持ってげないよ!」
「あぁその点は問題ない。そいつが優れているのは保存性能もさる事ながら使用者の方でロックをかけて、他人には開けないようにする事が出来るそうじゃよ?帰ってきて道具の整理をしてたエマリエに儂が何をしとるのか問いかけた時に色々と聞かせてくれたよ」
「そ、それでもやっぱり怖いよ。マジックポーチなら普通に見かけるからそっちを持ってぐわ!」
「ふむ。まぁそう直ぐに決める必要もないじゃろう。エマリエがやっていた様に二つ持っていってもいいしのぉ。それに実は普通に作られている物なのかも知れんぞ?」
「う、うーん・・・」
「・・・そうじゃな、ミヤビ殿にでも聞いてみたら良い。彼の方は長い時の中を生きてきた方じゃし、きっといい答えをくれるじゃろう」
その言葉にリエルはミヤビに聞いてから考えようと決め、とりあえず手に持っていた釣竿を腕輪にしまう。
「あぁ、あとその魔道具の中の物はエマリエが使っていた頃のままじゃから使えそうなものが有れば使うのも良いじゃろう」
「持って行くような事になったらそうするわ。他にはどんなものがあるの?」
母の持ち物に興味津々なリエルは何か面白そうな物がないか、目的を忘れて探し出す。その中である物に目が止まり、リエルはそっと手に取る。
それは一冊のノートであった。
リリーナの顔を見て開いても問題ないかを確認し、リリーナは首を縦に振ってそれに答えた。
リエルがノートを開くと、そこに書かれていたのは意外な物だった。
「これはレシピかな?なんだか見たことない料理のスケッチがされてるけど、お婆ちゃんこれは?」
「うむ。儂も確認したが料理のレシピを記したもので間違い無いと思うぞ。ただ見慣れない材料や言葉も多く使われていて再現は試した事は無いんじゃがな」
「ふ〜ん・・・」
リエルはノート捲っていくと一つだけ見た事がある料理を見つける。正確には直接見たわけではないのだが。
(これって・・・夢の中でみたやつ・・・だよね?ぷりんあらもーど?名前かな?)
夢の中で見たあの黄色い物体のスケッチが描かれているの見つけたリエルだが、材料などを見ると砂糖や牛乳、卵といった物はわかるのだが、リリーナの言った通り聞いたことない材料なども多く記されていた。
「・・・お婆ちゃん。これあたしが持って行ってもいいかな?」
「変わった物に興味をもったのぉ。何か気になることでもあったのかい?」
「ううん。ただミヤビが食べ物に凄く興味を持ってるみたいだから見せてあげようと思って」
夢の事は話さずに理由をリリーナに語ったリエル。別に隠している訳ではないのだが夢の話などしても仕方がないと思った為、特に言わなかっただけである。
「はっはっはっ!確かにミヤビ殿なら興味を示すじゃろうな!構わんよ、持って行ってあげなさい」
「ちょっとミヤビのところに行ってくるね。直ぐ戻ってくるから!」
笑って答えたリリーナにそう告げるリエルだったがリリーナがそれを制止する。
「あぁ待つんじゃリエルよ。だったら箱ごと持っていくといい。お前達二人で旅に出るんじゃ。二人で見たほうがええじゃろう。必要な物は持って行って構わんから二人で確認しなさい」
「じゃーそうするね。持って行かない物はまた後で返しに来るわね」
リリーナの言葉に納得し、リエルは差し出された箱を受け取ると部屋を後にし自室に戻る。
中に入るとミヤビが地図を眺めながら周辺の事を確認していたのだが、リエルが持っていた箱を見ると立体地図を消して興味を示した。
「戻ったか。で、その持っている箱は何じゃ?」
「お母さんが冒険者の時に使ってた道具だって。必要なものがあったら持って行きなさいってお婆ちゃんとエリック兄さんから」
「なるほど、それは妾も興味がでる話じゃな。どれ、見せてみよ」
結構な重さを感じさせる様子でリエルは持っていた箱を床へと下ろし軽く息を吐く。その様子を見ていたミヤビだったがリエルの右腕に目がいった。
「む?リエルよ。もしやその腕に付けてるのは【チェストリング】ではないのか?」
「え?あぁコレね。お母さんが使ってた収納用の魔道具らしいけど、そういう名前なのね。なんでも中に入っている物は入れた時のまま保存できる効果があるそうよ」
「ほほう。そこまで知っているなら話は早い。そいつはかなり珍しいアイテムじゃから良かったではないか。それも使っても良いのじゃろ?」
「お婆ちゃんはいいって言ってたけど・・・これってやっぱり珍しい物なんだね。こんなの持ち歩いて大丈夫かな・・・」
「なんじゃ?そんな事心配しとったのか。別にそいつは腕に付けなくたっていいんじゃぞ。ちょっと外してみよ」
ミヤビの言葉にリエルは首をかしげるが、腕から外そうとすると、腕輪は抵抗なく外す事が出来た。
「よし。それでは今度は指にはめる様にしてみよ」
「指に?それはちょっと大きすぎるからむ・・・あ」
リエルが腕輪に指を通すと腕輪がすぐに大きさを変え指にピッタリの形状に変化して、違和感や動作に支障を感じさせる事もなくそこに納まる。
「・・・ピッタシだし全然邪魔にならないねこれ」
「そいじゃろう?その上からレザーグローブか何かで手を隠すようにすればそのリングの事はバレる心配もないという事じゃ。どうじゃ?他に問題はないか?」
「うん。これなら持って行っても大丈夫だわ!鍵もかけられるって言ってたか心配無いわね」
リエルの言葉にウンウンと頷くミヤビ。そんなミヤビにリエルは唐突に一冊のノートを見せながら話しかける。
「ねぇミヤビ。これもお母さんが持っていた物なんだけど気になることがあるの。これ、料理のレシピみたいなんだけど、貴方の知ってる料理ってこの中に載ってる?」
「ふむ!食い物の本か!どれ、見せてみよ。実に興味がある」
そう言ってミヤビは床に広げられたノートに目を通し始めるのだった。
お疲れ様です。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
楽しんで頂ければ幸いです。




