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24話 ミヤビの興味と母の弓

誤字脱字は時間がある時に修正していきます

 一冊のノートを読み進めていたミヤビが一言言葉を漏らした。


「・・・たい」


「ん?何か言った?」


 ミヤビの微かな一言の呟きを、母の持ち物がしまってある箱を中を確認していたリエルが拾い反応を示す。


「なんじゃこの料理の数々は!?妾はこんな物見た事もないぞ!?うわぁぁあ!食いたいのじゃ!」


 普段から食べ物には強い関心を示していたミヤビであったが、ノートに記された料理の数々に今までにない衝撃を受けたようで、普段のキリッとした風貌からは別人のように床の上をゴロゴロと転げ回っていた。


「・・・何?どうしたのよ」


 その様子に若干の呆れ混じりの声で返すリエルに、勢いよく飛び起きたミヤビがズイッと身を乗り出しリエルに語る。


「よいか!?ここに記された食い物は、料理の名前から材料まで妾の知らぬ物が幾つも記載されておるのじゃ!妾としてはこれを食わねば下界に落とされた意味がないと言っても過言ではない!どうなんじゃ!?お主はここに書いている料理を知っておるのか!?心して答えよリエル!!」


「ちょ、ちょっと落ち着いてよ!ちょ!ち、近すぎ!わっ!?・・・グエッ!」


 ものすごい剣幕でリエルに詰め寄るミヤビの勢いで後ろへひっくり返るリエル。それでもミヤビは倒れたミヤビに飛び乗り説明を求め騒ぎ続ける。

 お腹の上で騒いでいるミヤビに、リエルは堪らず両手で押し退けようと手を突き出す。

 が、ミヤビはそれを飛び退く形で回避して床へと着地し言葉を続ける。


「さぁどうじゃ!?話す気になったか?偽りはゆるさぶっ!?」


 詰め寄ったリエルの拳がミヤビの頭部に落ちる。


「いったいじゃないの!この馬鹿!」


 リエルにゲンコツをお見舞いされて大人しくなったミヤビだが、その瞳はリエルに説明を強く求めている。


「いい!?これはお母さんが持っていた物だから、村から出た事がないあたしなんかが、どんな料理かなんて知る訳ないでしょ!」


「むむむ!そいつは由々しき事態じゃ!誰か知っとるものはおらんのか!?」


 ミヤビはどうしてもノートに記された料理についての情報が欲しいらしく、再び床を転げ回っている。

 呆れた様子でため息をつくリエル。


「ちょっと落ち着いてよ。・・・あたしには詳しい事は分からないんだけど話してあげる。ミヤビが夢の中の話をどう思うのかは知らないけど、あたしが見た夢の中でそのノートに載っている料理を見た事があるの」


「夢の中でじゃと?所詮夢は夢であって現実ではない。まるで意味の無いはな・・・」


 そこまで口にしたミヤビであったが言葉を止める。なぜこのタイミングで夢の話なんかをリエルがしたのか、その訳を察した為である。


「・・・お主はその夢を見る前にこのノート、もしくは料理の存在は知らなかった訳じゃな?」


「そうよ?因みに料理の名前はぷりんあらもーどって言うみたいよ」


 味については話せばまた暴れ出す事が簡単に予想できたリエルは黙っておくことにした。


「ふむ。興味深い話ではあるが、妾にもその夢が持つ意味はわからん。残念じゃがな」


 知らない情報を夢でみた原因はミヤビにも分からないとう事らしい。


「そう・・・。でも、これからの旅でこのノートに載ってる料理の事も何か分かるだろうし、今は諦めるしか無いんじゃないかな」


「ぐぬぬ・・・残念じゃが仕方ない」


 実に残念な思いが伝わってくるほどの落胆ぶりを見せているミヤビ。そんな様子を見せられたリエルは言葉を漏らした。


「・・・こんなのが元は神様って」


 リエルは再びため息をついて、旅に必要な物を探して箱の中に視線を戻すのだった。


 作業を再開して数分後。リエルに混じってミヤビも箱の中から色々と手に取り必要であろう道具を説明しながら選別していく。


「ふむ、こんな物で良いのではないか?」


「・・・これだけで平気?」


「うむ。水を浄化する魔道具、照明石、ポケットスペースに携帯用の魔道コンロに食器が多数、それに寝袋か。むしろ普通に考えたら多過ぎるくらいじゃ」


「このポケットスペースって魔道具も、話を聞く限りだと凄い便利な物ね。チェストリングもそうだけど、お母さんったらこんな物どこで手に入れたのかしら」


 そんな事を言いながら、リエルは選別した道具をリングの能力で次々と収納していく。


「チェストリング様様じゃな。持ち物に関してはそいつがあれば困る事は無いじゃろう。どれ、入っているものを見せてみよ」


「どうやって?」


「ん?リストの出し方は知っとるじゃろう?それを念話の要領で妾に向けて可視化イメージとして送れば良い。これが出来ると念話の利便性が大きく向上するから出来るようになるんじゃぞ。ほれ、まずは試してみよ」


「ちょ、そんなに急かさないでよ。・・・」


 リエルはミヤビの言う通り、リングの収納物リストを展開するとそれを見ながら念話でその見ている様子を送ろうと集中する。


「・・・お!?きたぞきたぞ。初めてにしては上出来じゃ。ちと見辛いが初めてならこんなもんじゃろう」


「・・・ちゃんとリスト確認して・・・まだ・・・慣れてないからあんまり・・・」


 集中しているリエルの言葉に『あいわかった』と漏らし、ミヤビはリストに目を通していく。

 すると、その中に気になるものを見つけたミヤビはリエルに声をかける。


「リエルよ。そこにある【写ガラス】とあるじゃろう。ちとそれを見せてくれんか?」


「・・・これね?」


 リエルが空間からカード状の物体を取り出す。それを確認したリエルは驚きの声を上げる。


「これって!お婆ちゃんと・・・もしかしてお爺ちゃん?」


「ほう。写ガラスなど珍しいから何が写っているのかと思ったら母君のご両親じゃったか」


「確かエリック兄さんが産まれて直ぐに亡くなったとしか聞いてないから詳しい事は分からないけど多分そうじゃないかな?・・・ちょっとお婆ちゃんのところ行ってくる!」


 リエルは写ガラスをもってリリーナの部屋に向かう。部屋に入るとリリーナが母からの手紙を読み返している様だが、リエルはリリーナに駆け寄り写ガラスを見せる。


「お婆ちゃん!これ!」


「ん?む!?それは爺さんと儂で撮った写ガラスではないか!?もしやエマリエの持ち物の中にあったんか?」


「この中に入ってるのをたまたま見つけたの。やっぱりこの人がお爺ちゃんなんだね」


 リングを見せながらリリーナに、写ガラスを見つけた経緯を話すと、形状が変わってはいるが渡した腕輪だろう事を察して、その事には触れることなくリエルから写ガラスを受け取る。


「なるほど、エマリエの奴が持って行きおったのか。見つかってよかった・・・。エマリエの奴!黙ってこんな大事な物を持って行く奴があるか全く!」


「やっぱり大事な物だったのね。ミヤビが写ガラスは珍しい物だって言ってたから持ってきたんだけど」(お母さん・・・お婆ちゃんの大事な物黙って持って行ったんだ・・・やり過ぎじゃないかな・・・)


 微妙な思いをリエルは抱くが口に出す事はなかった。


「ありがとうなリエル。こいつは死んだ爺さんが昔手に入れたものでな。二人の姿を写して残そうと、こうして大事にしとったもの物なんじゃよ」


 リリーナは大事そうに写ガラスを撫でるとリエルに笑顔を見せた。

 若干、母のやった事に罪悪感があったがリエルだが、その笑顔みて同じように笑みを返してリリーナの部屋を後にする。


 自室に戻ろうとした所で今度はエリックに声をかけられるリエル。


「お、リエル。準備はどんな感じだい?」


「え?うん。とりあえずは持って行くものは揃ったところ!」


「順調のようだね。ならそろそろ俺もこいつを渡しておこう。ほら、これだ」


「・・・弓?エリック兄さんが作ってくれたの?」


「違うよリエル。それは姉さんが使っていた長弓を、リエルに合わせて調整した物だよ。姉さんが使っていた時のままだとちょっと大き過ぎたからね。ちょっと握ってごらん?」


「お母さんが使ってた弓・・・」


 息を呑み弓を見つめるリエルはそれを受け取り、成りの部分を軽く触ったりしたあと握りの部分を持って構えを取る。

 その弓はリエルの体と同じくらいの大きさでありながら重さを感じさせる事無く、不思議な雰囲気を纏った美しい作りをしている。


「どうだい?握った感じに違和感はないかい?」


「・・・凄い。手に吸い付くようで・・・。あ、うん!大丈夫!お母さんが使ってた弓かぁ」


「あぁ、無くすんじゃないぞ?あとこっちはその弓と対になった矢筒で、魔力を流すと中に矢を生み出す効果があるみたいだよ。一緒に持って行きなさい」


「うん。エリック兄さんありがとう。大切に使せてもらうね!」


 エリックにお礼をいうと部屋へと戻るリエル。その後ろ姿をみるエリックの顔は嬉しそうに微笑んでいた。


(姉さんの弓を娘のリエルが受け継いで、姉さんは幸せだろうな)


 リエルの背中から漏れる嬉しそうな気配にそう思うエリックだった。


 ーーーーーーーーーー


「お主、戻ってくるたびに何かを持ってくるのぉ。今度は弓か」


 部屋に戻ってきたリエルにミヤビが話しかける。嬉しそうなリエルの様子に何事かと思っているミヤビ。


「これはお母さんが使っていた弓をあたし用に調整してくれたんだって!どう?かっこいいでしょ?」


「・・・阿呆らしい。嬉しいのは分かるが格好よりももっと大事な事があるじゃろう」


「む。何よそれ?素直じゃないわねーミヤビって」


「リエルよ。新しい得物を手に入れたらまず自分にとって合っているかどうか、うまく使えるかどうか試さんといかんじゃろう。まさかぶっつけ本番でいきなり使うつもりじゃあるまいな?」


 ミヤビの言葉は真面目だった。それはそうだ。普段使っていた物とは違う武器をいきなり実戦で使うなど余程のことがない限りやる事ではない。

 普段から使う事でその真価を発揮するという事をミヤビの言葉は意味している。


「それくらい分かってるわよ。だからちょっと森まで行くけど、ミヤビはどうする?」


「森なら妾が出歩いていても問題ないじゃろう、このままじっとしてるのも退屈じゃし妾もゆくぞ」


 そう言うとミヤビは人化の術で人へと姿を変化する。そのまま部屋の扉をあけ外へと向かおうとする。


「尻尾が出てるけどいいの?」


「ん?構わんじゃろう。エリックも気にしておったが尻尾くらい獣人族にも生えておるんじゃから気にするほどの物ではないわ」


(そう言う事じゃないんだけど・・・まぁいっか)


 リエルはミヤビの後を追う形になってしまったが部屋を後にしリビングにいたエリックに森に行くことを告げるとミヤビと共に外へと出て行くのだった。


お疲れ様です。

ここまで読んで頂いて有難うございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


道具の解説です。

【ポケットスペース】外見はテントですが内部が外見より広い簡易住居みたいに使えるファンタジーに良くあるアレです。


【照明石】魔力を流すと光る松明みたいな石です


【写ガラス】言うまでもなく写真みたいな物です。

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