21話 幼き頃の母について
誤字脱字あったら随時修正します。
2017/10/18 20:15
エマリエさんのユニークスキルを少し訂正しました。
【サクリファイス】寿命と引き換えに驚異的な力を使える
→【サクリファイスマジック】寿命と控えに驚異的な威力の魔法を使うことができる。その効力は【バーストマジック】が1とするなら7位の強さです。
「この地図の記録からだと、最も離れている町は、ここじゃな」
ミヤビは地図の一点を前足で指して口を開いた。
そこには【ヴァルファリア聖教国】と記されており、簡素だがかなり大きめの都市だと感じさせるシルエットが地図上には置かれている。
村から遥か北に位置する、大陸を海で隔てた場所に築かれた都市で、周辺には特に他の町は書かれていないが、雪原と書かれたエリアが広く見られる。リエルがミヤビに問いかける。
「すっごい遠いね。お母さん、こんなところまで何しに行ったんだろう?それに雪原って何だろう?」
「ん?リエルは雪を見たことがないのか?確かにこの辺では縁のなさそうな光景じゃから無理もないか。そうじゃな。柔らかい氷の結晶を雪というのだがそれが空から降って来るわけじゃ。降り積もった雪で覆われている場所が雪原と言ったところか?簡潔じゃがそんな感じじゃな」
「氷が降って来るなんて寒そうね。あまり行きたくないわ」
「まぁ実際寒い地域でよく見る気象現象じゃから、ここの様に過ごしやすい環境という訳ではないじゃろうな。ただ、母君の見た世界を見たいんじゃろう?それに中々美しい情景じゃから悪くは無いと思うがな」
「あたしは緑の森のほうがいいわ。でも、お母さんが見たなら、あたしもいつか見て見たいわね」
そんな会話をしながら母が書き記して来た地図を眺めているリエルにミヤビは質問をしてみる。
「そう言えばお主は母君がどの様な経緯をえて世界に踏み込んで行ったのか知っておるのか?」
「お母さんが冒険者になった理由?・・・そう言えば聞いたことなかったかも。と言うか冒険者だったのは聞いた事あるけど、どんな事をしてたのかは全然知らない」
「左様か。じゃが結構優秀な者だったんじゃろ?どんあ偉業を成し遂げたのかは少々興味がある。これ程まで色んな場所へと渡り歩けるほど実力があったのなら何かしらありそうな気がするぞ?」
「う〜ん。そう言われるとあたしも気になってくる。お婆ちゃんなら何か知ってるかもしれないから――」
言いかけたところでミヤビのお腹から空腹を報せる音がなる。
「ん?なんじゃ?お主、腹が減ったのか。しょうがない奴じゃな。まぁ丁度いい、飯でも食いながらリリーナに話を聞くとするか。今度は何が出て来るのか楽しみじゃのぉ!」
「ちょっと!今のはあなたのおな――」
例のごとくミヤビは部屋を飛び出しリエルの言葉を置き去りにしてリビングへと走っていく。
「・・・食い意地だけは本当にすごいわね!」
そこで丁度リエルのお腹も可愛らしい音を立てる。
リエルは咄嗟にお腹を抑えて扉の方を見るが勿論ミヤビの姿はそこには無い。
ほっとするリエルも足早にリビングへと向かうのだった。
リビングではリリーナが昼食の準備をしている最中で、リエルもそれに加わる。ミヤビはいつもの様に椅子に座ってその様子を眺めている。そこへエリックも帰宅し、三人と一匹は昼食を摂り始める。
「ハグハグ・・・不思議な薫りがする肉じゃが美味い!思うのじゃが下界の料理は・・・モグモグ・・・食す度に妾に驚きを与えてきおるな」
「ハハハ、こんな家庭料理でもミヤビ殿のお口に合ってよかったわい。それは鯰の一種じゃが、食べ慣れてる私等はそうでもないんじゃが、やはりミヤビ殿にとっては新鮮なんじゃろうな」
「そうじゃな。ハグッ・・ずっと昔にも下界の食い物は食べてきたが昔に比べて食文化のレベルは大きく・・あむあむっ・・変化しておると実感できるな」
自分の器に口を突っ込みながら器用に喋るミヤビ。その様子を笑みを浮かべながら見ていたリリーナ。そこへリエルが話を振る。
「ねぇお婆ちゃん。お母さんって十五歳で村を出たって言ってたけど、何でなの?」
「ん?エマリエの旅の切っ掛けに興味があるのか?・・・話してやっても構わんが長くなるから食事の後でじゃな」
「姉さんの子供の頃の話か。・・・正直、とんでもない事ばかり起こしてた記憶しか俺にはないな」
エリックは昔を思い出して苦笑し、リリーナも腕を組んで頷く。リエルも若干頬を引きつらせて幼き母の行動を想像するのだった。
ーーーーーーーーーー
昼食を終えた後、母の話を聞くために椅子に座って待っていると、食器を下げに行ったリリーナが木のコップとヤカンをもって席に戻って来る。
コップをそれぞれの前に置くとヤカンから食後のお茶を注いでいく。
そして、一口それを口に含むとホッと息をついて話を始める。
「エマリエの子供の頃か。そうじゃな、非常に好奇心が強い元気な子じゃったな。何にでもすぐに興味を示して飛びついておったよ」
「年は二つしか離れてなかったけど、確か俺が8才の頃には姉さんは森で弓を持って狩までしてたと思うったけど・・・」
「え、お母さんって10才の時からそんな事やってたの!?」
「確かにそうじゃったな。懐かしいのぉ。最初は泥だらけで帰ってきたから何かあったのか聞いてみたら、森の中で見かけた魔物にちょっかいを出して追いかけ回されたそうでな」
「たまげたな。その年で森で見つけた魔物にケンカを売るとは。リエル、どうやらお主の母君はただの阿呆じゃったんじゃなふぃぶっ!?」
ミヤビの言葉を最後まで聞かずにリエルは両手で顔を挟み言葉を止めミヤビを睨む。
その様子に苦笑しているエリックとリリーナだが、話は続く。
「無論そんな無茶をきつく叱った訳じゃが・・・その後どうじゃったかな?」
「姉さんは弓の訓練に没頭する様になって、暫くたった頃、森でラットブルを仕留めて引きずって帰ってきたんじゃなかったかな。今思ってもとんでもない姉だよ」
「そうじゃったそうじゃった!あの時は流石に開いた口が塞がらんかったよ。”そいつはどうしたんだ?”ってきいたら、”復讐してやった!”なんて言うもんだからね」
「村の人もみんな驚いてたなぁ。まぁそのせいか、姉さんは村の子供たちの間で注目の的に躍り出る訳だ」
「あの頃は良くうちに子供達がきてエマリエがいるか聞かれたもんじゃよ。挙げ句の果てには狩猟班からスカウトに来る大人まで出る始末じゃったからな」
「なんかお母さんって思ってたより、ずっと凶暴だったんだ・・・なんだかちょっと恥ずかしい」
「うむ。正直今聞いてる話じゃととんでもない娘とい印象しかうけんな」
リエルとミヤビの言葉にエリックとリリーナは我慢できずに声を上げて笑う。
「はっはっはっ。そうじゃな!元気すぎて困った娘じゃったよ。じゃが、そんなエマリエも月日が経つにつれて成長して、十二の頃のは狩猟班に混じって森での狩猟に勤しむ様になっとったよ」
「俺なんてその頃はまだ普通の生活を送ってたのに、姉さんのやる事には、俺はいつも頭を悩ませてたものだよ。男の俺がまだ弓すら握ったことがないって言うのに何てことしてくれるんだってね」
「はははっ、まぁそれが切っ掛けでエリックも弓の訓練を始めたんじゃなかったかのぉ?女の子に負けてられないといってな」
「母さん?優秀な姉を持った弟ってのは結構辛いものなんだよ?まぁお陰で俺も苦労に見合った実力を身につけられたんだけどね」
昔を懐かしむ、今の自分の存在について考えさせられているエリックを他所にリリーナは話の続きを語る。
「丁度その頃からじゃったかのぉ。村に人間の商人達が訪れる様になったのは。お互い交流を深めていかないかとな」
「そんなに昔から人間族との交流が始まってたんだ。なんか凄いね」
リエルは自分のまだ知らないこの村の歴史を聞いて感嘆の声をあげる。それにリリーナは頷き再び話を続ける。
「その様な日々を毎日送っておった儂らじゃったがある日、村とバランディアを繋ぐ街道への道、今は使われていない沼地の道にフォッシルリザードが現れてな。そりゃー村中大慌てじゃったよ」
「そいつはまた面倒な魔物が現れたものじゃな」
「あたしには分かんないんだけど強いの?その魔物って」
「討伐するのにはかなりの実力者が必要になる相手じゃぞ。石化の毒を使い高い防御力と攻撃力を持つドラゴン種に近い魔物じゃから並みの使い手では歯が立たんじゃろうな」
リエルの疑問に答えるミヤビの言葉にリリーナも頷く。
「討伐する為の援軍を待っていては村が壊滅してしまうほど時間は切迫しとったんじゃが」
話をしていたリリーナは一口お茶を飲み一拍おく。そして口を開く。
「エマリエが一人でフォッシルリザードのいる場所へと走って行ったそうじゃ。儂はその話を後で聞いたんじゃが、話を聞いた瞬間立ってられなくなって崩れ落ちてしまったよ」
「・・・リエルよ。すまん。お主の母君は阿呆などではない。ただの大馬鹿ものふぎゃ!?」
言わずもながらミヤビの頭上にリエルの拳が落ちた。
「直ぐに討伐隊が村人から選出されエマリエの後を追ったそうじゃ。じゃが追いついた場所で見たのは傷だらけので何とか立っているエマリエと、既に生き絶えたフォッシルリザードの姿じゃったそうじゃ」
「それが本当なら母君はかなり特殊じゃな。十二の娘が相手にできる様な存在では決して無いぞ?常識ではあり得ん話じゃ」
リリーナの話を聞いていたミヤビはエマリエが普通ではないという事を暗に口にする。その言葉にリリーナは答えを語る。
「先に答えを話すならば、エマリエはユニークスキル持ちだったんじゃよ。その力がフォッシルリザードを葬った答えじゃったんじゃ。スキルの名前は【サクリファイスマジック】。効果は自分の命、寿命を対価に驚異的な魔法を行使することができる呪いの様な、しかし強力なスキルじゃ」
(命を削る力か・・・因果とは残酷なものじゃな。じゃがリエルの場合が少し事情が異なるのはまだ救いかのぉ・・・)
ミヤビはリエルの力が少なからず母親の影響を受けている可能性を理解し考えを巡らせる。
一方のリエルはリリーナの語ったエマリエの命を削る力の話で驚き、固まってしまうのだった。
お疲れ様です。
ここまで読んで頂いて有難う御座います。
楽しんで頂ければ幸いです。




