18話 旅立つ許可を得るために 後編
誤字脱字は随時読み直したときに修正していきます。
歩きながらリリーナの家に向かうクラウスとヴレア。走っていると周りに何かあったのかとたびたび声を掛けられる為、走るのはやめる形となった訳だ。
村中央まできたのだが、通るついでにどうなっているか見ていった方がいいだろうという話になり、昨夜見た光景がどうなっているのかを確認する事にする。
そこには、昨晩見た真っ赤に染まった地面の痕跡はなく、辺り一面に漂っていた血の匂いもない、一面普通の土色へと浄化されていた。
「見違えたな。昨夜見た光景が嘘のようだ。流石は魔術師ギルドから派遣された使い手だな。仕事がしっかりしている」
「そうですね。作業が速いのもすごいですがここまで綺麗になってるとは驚きですよ」
送られてきた魔法使い達の働きに感嘆の言葉を贈る二人だったが、クラウスはともかくヴレアは言葉の内容とは裏腹に表情が芳しくない。クラウスもそれには気が付いたが、何かを聞く訳でもなく二人は再び歩き出す。辺りを観察しながら先を歩いていくクラウスに向けてヴレアが意を決したかのように言葉を発する。
「・・・隊長。実は昨日の晩、リエルさん達が隠れていたいという森を見てきたのです。そこで見たものがどういう意味を持つのか私にはわからないのです・・・」
「なるほど。昨日戻ってきた時のお前の様子といい、今といい・・・何かあるとは思っていたがやっと話す気になったか。しかしこのタイミングか・・・もう少し場所を選んでほしいが仕方がないな」
「す、すいません・・・」
「うむ。それで?一体何をみたんだね?」
歩きながら話の続きを促すクラウスに、ヴレアは喉を小さく慣らすと口を開いた。
「恐らく人間の物だと思われる死体が三人分ほどあったのですが、その死体の服装は昨晩の盗賊の物と同じような恰好に見受けられたました。、既に魔物に食い荒らされていたため死体の回収は不可能だったので土を被せて埋めた後、アンデットにならないように聖水をかけて処理はしました。問題なのはその死体の傍に出来上がっていた灰の山で、そこから漂う匂いは間違いなく人間の焼け焦げた匂いでした・・・」
「焼け焦げた人間の灰・・・。それは確かに人間の物だと断言でき・・・いや、すまない。お前が言うなら確かだろうな」
「はい、そこは間違いないと思います」
クラウスが納得した理由。それはヴレアの付いている職業に由来する。ヴレアの付いているクラス、魔法剣士は、割と有名なクラスではあるが、魔法と剣士の両方の才能が一定のレベルに達していないと付くことできないクラスであり、それぞれ適正の高い属性魔法と剣妓を使いこなす事ができるクラスである。
ヴレアの適正属性は炎であり、それを使い人々の平和を守る兵士として職務をこなしているため、時には人間相手にもその炎を繰り出すこともあるため、あまり得意にはなりたくないが人の焼ける匂いは嗅ぎなれていた。
「なるほど。・・・しかし人が灰になるほどの火力となると、どうなんだ?私は魔法が使えないからそこまでピンと来ないんだが」
「正直私にもわかりません。ドラゴン種の使う炎のブレスですら人一人を完璧な灰にまでするなんて、よっぽど上位個体でないと無理なんじゃないかと思います。ですが・・・」
ヴレアの続く言葉を何となく察したクラウス。あえて口を挟まず話を続けるように促す。
「昨夜、ここに来る時に見たあの閃光。もしあれが原因なのだとしたら、やっぱりあのリエルって子は何か隠している可能性がありますね・・・」
「あの光の正体か。なるほど、確かに筋は通っているように聞こえるな。だが言っておくぞ。何か事情があるのかもしれない以上、深く詮索するような真似は私は好かん。私も気になるがそれを無理やり話させるような無茶はするんじゃないぞ」
「・・・わかりました。肝に銘じておきます」
ヴレアの答えにクラウスは頷きく。だが、リリーナの家に向かう足は自然と早まり、程なくして二人は目的地へと到着するのだった。
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既に裏庭へと集まっているリエル達。やや緊張した表情のリエルに対してミヤビはというと、置かれている椅子に横になり、満腹感の中眠そうにしている。そんなミヤビを恨めしそうな目で見つめるリエルにエリックが歩み寄って口を開く。
「さて、いいかいリエル。俺がリエルに見せてもらいたいのは、以前教えた弓を使った身の守りがどれだけ上達しているかを試させてもらうよ。俺はこの木の棒でリエルに攻撃をするから、リエルはこっちの弓を使って攻撃を防ぎ切れば俺からの課題はおしまいだ。わかったかい?」
「この弓でエリック兄さんの攻撃をしのぎ切ればいいのね。・・・わかった」
リエルの言葉を受け、エリックは頷くと間合いを取るように少し離れる。そして木の棒を構え、リエルも両手に弓を握り正面で構える。
準備ができたと判断したリリーナが声を発する。
「準備はいいね?それじゃーいくよ。・・・はじめい!」
リリーナの開始の合図を受け、リエルは腰を少し落としエリックの攻撃に備える。エリックはその様子を見て、素早く間合いを詰め、鋭い突きをリエルに放つ。
「セイッ!!」
放たれた突きの速度は軽い木の棒という事もありかなり早く、棒先はリエルの肩へと迫ってくる。しかし、リエルはそれを弓の成りの部分で払い、攻撃の勢いを肩よりさらに横へと反らし、そのまま後ろへ一歩跳びのき構えを治す。
攻撃をいなされたエリックは素早く手元へ武器を引き、下がったリエルに向けて鋭く踏み込み棒を振り下ろす。
すかさず弓の成りを使い上段から振り下ろされた攻撃を湾曲部分を使って地面へと軌道を導く。流石にここまでうまく捌かれるのは予想できなかったエリックは少しバランスを崩し、動きに鈍りが生じるのに対して、それだけの勢いを捌いたリエルは何事も無かったかのように素早く距離を空けると、再び弓を正面に構えて追撃に備える。その様子を見ていたミヤビも、堂に入っているリエルの動きに感心する。
(ほ~!なかなかいい動きをするではないか!エリックの方も使い慣れていない獲物でよくやるが、それを考慮しても捌いているリエルの動きは悪くないのぉ。見事なものじゃ)
リエルは小さな身体と機敏な動きでエリックの攻撃を次々といなし、躱し、反らしていく。エリックも心の中でリエルの成長ぶりに驚きを感じていた。
(すごいな・・・。リエルの奴、いつの間にこんなに弓の扱いが上手になったんだろうな。流石は姉さんの血を引いているね。末恐ろしい子だよっほんとにっ!)
心の中で思わず声に力が入るその攻撃は、最後に使うと決めていたアーツを使った一撃。【衝撃強化〗をかけた下段から切り上げる一撃。弓で受けても、衝撃を逃がす事が出来なければ腕から身体へ衝撃が突き抜けダメージを受ける事になるこのアーツをどう返すのか、リエルの動きにエリックは集中する。
唯の下段からの切り上げだと思っていたリエルは、その攻撃を今までと同じように弓の成りで受け止めようとする。成りと棒が接触する瞬間、棒に纏わされた魔力を感じ取りる。咄嗟にリエルがとった行動。それは素早くエリックに肉薄すると、棒を切り上げようとするエリックの腕に成りを押し当てる事で切り上げを止める事に成功する。この判断に腕を成りで押さえつけれているエリックも言葉を上げる。
「すごいな・・・。よく棒を受けるのがまずいと判断して握っている腕の方を抑えるなんて考えるよ・・・全く」
感嘆の言葉をリエルに掛けるエリックに、リエルは握っていた弓から力を抜いて腕を下げる。それを見たエリックも言葉を続けた。
「・・・俺からは特に言える事はないね!十分リエルの実力は見せてもらったよ。俺の判断は文句なしの合格だ。見事な物だったぞ、リエル」
その言葉を受けたリエルはホッと息を吐き、エリックに笑顔を見せた。
「うむ!実に見事じゃった。正直そこまで動けるとは思っていなかったからのぉ!はよう終わらんかとみておったがつい見入ってしまったぞ?あっぱれな動きじゃ」
ミヤビを思わず声を上げる。しかし、それと同時に二つの声が少し距離を置いた先で聞こえてくる。声のした方へ顔を向けるミヤビが思わず「あっ」といった感じで口を開けている。その視線の先に居た者の正体はクラウス達であった。
恐らく音でこちらに気づき、不審に思って見に来たといったところだろう。
向こうからは、椅子の背もたれの陰にいるミヤビの姿に気づいていない。すかさずミヤビは姿を不可視状態にする。
歩いてくるクラウス達はその視界に三人の姿を確認すると、声をかける。
「おはようございます。失礼かと思いましたが何やら大きな音がしていたので確認しに来てしまいました。何か取り込み中でしたか?」
その言葉にリリーナは軽く会釈を返す。ミヤビの座っていた椅子をちらりと確認して、隠れている事を把握しすると言葉を返した。
「おはようございますじゃ。お騒がせしてしまったかのぉ。何、大したことではない。リエルとエリックが模擬戦をしていた音じゃよ」
「驚きましたね。まだ小さいのに朝早くから訓練とは、うちの兵達も見習ってほしいですね」
「ハハハッ、別に毎日やっているわけじゃないからのぉ。今日はちょっとありましてな。それで、こちらへはどのようなご用件でいらっしゃったのかのぉ?」
「いやぁ、それがですね・・・朝早くに申し訳ないと思ったのですが、例の盗賊の件で知恵を貸して頂きたくて赴いた次第です」
申し訳なさそうに話を切り出したクラウスに、エリックが口を開く。
「それなら、私で問題なければ話を聞きますよ。訓練も終わったから今日の予定は私はありませんからね。どうです?」
「いえ、エリック殿に手を貸して頂けると我々も助かります。詳しい話は・・・」
「ええ、歩きながらでかまいませんよ。ちょっと家の前で待っててもらっていいですか?」
「では、我々は先のあちらでお待ちしてますのでよろしくお願いします」
そういうとクラウス達は来た道を戻っていく。その様子を見送る三人と一匹。エリックはクラウス達を追っていた視線をきるとリエルへと顔を向ける。
「これからお婆ちゃんの出す試練に合格すれば、村の外へ行く許可がもらえるんだ。精一杯やりなさい。じゃ、母さん?あまりやりすぎないようにね」
「うむ。こちらは任せておいて、クラウス殿に力を貸しておやりなさい」
そういって会話を切り上げると、エリックは去り際に軽くリエルの頭を撫でるとクラウス達の待っている場所へと歩いていく。
「少し焦ったが妾の姿は見られなかったようじゃな。思わず戦いに見入って周囲への警戒を怠っておったわ。あぶないあぶない」
不可視化を解いたミヤビが椅子の上に姿をみせて喋っている。その様子に少しほっとした表情でリエルとリリーナは見ている。するとリリーナはリエルへと視線を戻して
「さぁ、休憩は十分できたじゃろ。次は儂の出す試練に挑んでもらうぞ。とは言っても、エリックとのやり取りで十分ではないかとも思っておるがな。・・・さて、儂が見せてもらいたいのは魔力のコントロールがどれだけ上手くできておるかじゃ」
そういうとリリーナは可視化された状態の魔力を掌に集め一つの球体を作り出す。その球体を掌で浮かせたまま言葉を続ける。
「今からこれをリエルに渡す。お前はこの魔力球を維持しながら、更に儂が送り込む魔力の量を感じ取りそれが破裂しないように、もしくは消えないようにそれをコントロールしてもらう。準備はよいか?」
リリーナの言葉にリエルは力強く頷き手を魔力の球体へと伸ばし、それを受け取る。リリーナから離れた球体はすぐに力を拡散していき、自身の大きさを失っていく。
慌てて魔力を送り、その形を維持するリエルに
「準備はよいか?はじめるぞ?」
と言葉をかけ、魔力のコントロールする試練を開始する。
リリーナは大きく流したり、逆に少なくしたりと繰り返しながら魔力を流し込んでくるのにリエルは合わせて魔力を調節するリエル。
時折大きく膨れ上がり破裂しそうになる球体を何とか制御しているリエル。
(外部からの魔力にこれだけ対応できるなら、魔力のコントロールは問題なさそうではなる。じゃがこの急激な変化に対応できるかみせてもらおうかのぉ)
リリーナは空いているもう一つの手で一つの球体を作り出す。そしてリエルに話しかける。
「よし、ならばこれで最後じゃ。今からこっちの球を少し離れたところから飛ばす。近い魔力率であればそれは互いに消滅させる事が出来るはずじゃ。リエルはそっちの球を一人でコントロールし、儂の持っているこちらの球と対消滅させる事ができたならば、合格の判定をやろう。準備はよいな?」
「わかった!やってみせるわ!」
「よい返事じゃ。ではいくぞ!」
間合いと取ったリリーナはリエルに向けて魔力の球を放つ。放たれた球の速度はそれほど早くはないが込められた魔力を合わせる為の時間はそこまであるとは思えない、それくらいの速度は出ている。
リエルは全身の神経を集中し、向かってくる球の魔力を推し量り手に持った魔力の球を放つ。魔力の稲光が接触した瞬間に周囲に放たれる。その光が消え去ったとき互いは魔力を消費し尽して消滅した。対消滅である。リリーナは二コリと笑い言葉を発する。
「見事じゃ。これを成し遂げられるならば十分魔力のコントロールは合格といっていいじゃろう。ようやったのぉ」
「・・・はぁ~・・・すごく緊張した・・・これで、あたしは認めてもらえるの?」
「儂とエリック、二人が出した課題に合格したんじゃ。十分リエルの力は見せてもらったよ。旅に出る事を認めよう」
リリーナの言葉にリエルは両手を上げて高らかに喜びの声をあげるのだった。
御疲れさまでした。ここまで読んでいただいてありがとうございます。楽しんでいただければ幸いです。
弓の成りとは弓本体の撓る部分だったとおもうんですが違ったらごめんなさい
クラス紹介
魔法剣士:いろんなゲームでよく聞く魔法と剣を使う戦士ですね。イメージ的には魔法と剣といっても剣に魔法を纏わせるような感じで戦うのがメインみたいな感じと思ってもらえればいいです。




