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17話 旅立つ許可を得るために 前編

誤字脱字は読み直したときに随時修正する予定です。

 リリーナとの話を終えたリエルはミヤビと共に自分の部屋へと帰ってくる。狐顔のミヤビからは表情は読み取れないが、リエルの表情は少し暗い。


(明日、二人に認められればいよいよ村を出る許可がもらえるんだよね・・・。大丈夫かな・・・)


 リリーナの出した条件は三つだが、村を出た後が前提の二つなので実際には一つだが。エリックとリリーナそれぞれとの模擬戦で力を認めてもらう事が大前提なのだが、まともな戦いの経験はリエルにはない。そのため自分がどれだけの事ができるのか自分でもわからない状態なのは不安になっても仕方ないだろう。

 その様子を見ていたミヤビは言葉をかける。


「リエルよ。分かっておるとは思うが言っておこう。明日の模擬戦、あの能力を使うのは絶対にやめるんじゃぞ。今の状態でお主が使うには過ぎた力じゃ。身体に与える負荷も甚大じゃし、あれではへたをすれば二人の命を奪ってしまう事が容易に想像できる」


 ミヤビの言ってる事はリエルにもわかっていた。いずれは何処かで使い慣らしていかねばいけないとは思ってはいるがそれは今ではない。今必要なのは、あの力を使わずにどこまでやれるのかをリリーナ達に見せ、それを認めさせる事が大事だとリエルは考えていた。


「大丈夫。アレは使うつもりはないから。どんな内容の戦いになるのかはわからないけど、あの力を使わずにお婆ちゃん達に認めてもらわないとだめだと思うの」


「そうじゃ。魔王の力を使えば戦闘の面だけみれば大抵の問題は片付ける事はできるじゃろう。それだけの力をあれは感じさせる物だった。じゃが、人目の付く場所でそう何度も使い続ければ必ずよからぬ結果を生む事になるじゃろう。それは避けねばならん。言ってる事はわかるな?」


 ミヤビの言葉にリエルは頷く。それに頷き返すミヤビは言葉を続ける。


「じゃがそこまで心配しなくても恐らく問題はないとおもうぞ?魔法に関しての話じゃが、お主の魔法力は極めて高く、膨大な量を誇っている。その魔法力をもって自分でコントロールできる低位の魔法を【バーストマジック〗の能力で強化するだけでも十分な戦闘手段になるじゃろう。魔法使いとして見た場合、今のお主は能力だけでみたら、最上位と言っても差し支えないだけの力を持っておるのじゃからな」


「そんなにあたしの魔法力ってすごいんだ・・・。あんまり実感がわかないけど・・・」


「そうじゃぞ?化け物に片足を突っ込んでいると思いが良い」


「化け物はひどいわ!あたしはただのハーフエルフよ!」


「クハハッ!そうじゃな。気を悪くすな。例えじゃた・と・え。クカカカッ!」


 笑っているミヤビを頬を膨らませて睨むリエル。その表情には先ほどまでの不安に飲み込まれそうな雰囲気はなくなっていた。会話もほどほどにすると、リエルはベッドに潜り込みミヤビへと「おやすみ」と言葉をかけると眠りにつくのだった。


 -------------


 翌日、まぶしい光はリエルの部屋の窓から室内を照らしている。

 そこにはすでに目を覚まして着替え済ませたリエルの姿があった。

 チラリとベッドへ視線を向けため息をつくリエル。そこには、まだベッドの上でだらしのない姿でミヤビが眠っていた。


「ミヤビ起きて!もう朝だよ!ミヤビ!」


「う・・・う〜む、何じゃ騒々しい。妾はまだ眠いのじゃ。ほっといて良いから行って良いぞ・・・」


 ミヤビは器用に布団の中へとスルスルと潜り込んでいく。その様子を見ていたリエルは容赦無くその毛布を剝ぎ取りミヤビに声を発する。


「ダメよ!早く起きて準備しないと!布団だって干さないと!」


 声を上げるリエルだが、ミヤビの方はベットに齧り付くに様に引っ付き耳を前方に寝かせて明らかな拒絶の意思を見せている。そのままの姿勢でミヤビが口を開く。


「妾は別に戦いには参加せんのじゃからほっといても構わんじゃろう」


「な!何よそれ!?一緒に来て何か助言とかくれたりする気はないの!?」


 リエルからの言葉を受けても頑なにその場を動こうとしないミヤビ。その様子にリエルは最終手段を使うことにする。


「わかったわ。じゃー貴方は朝ごはんはいらないって事ね?ならお婆ちゃんにはそう伝え――」


 最後まで言う間も無くミヤビはすごい速さでリビングへと走って行く。その様子にリエルは腕を組みながら「まったく!」と言葉を漏らす。


 まだ出会って一晩程度の付き合いであるリエルとミヤビではあるが、リエルはミヤビの性格が何となくだが理解しつつあった。

 これは契約の力が働いている事も起因しているのだが本人は知る由もなかった。


 リビングにミヤビが姿を現し、少ししてリエルもやってくる。既にリリーナとエリックも起きて朝ごはんの準備をしていた。姿を見せた二人に気づいたリリーナとエリック。


「おや?おはようリエル、ミヤビ殿。そろそろ起こしに行こうと思っておったところじゃが手間が省けたわい」


「おはよう二人共。よく眠れたかい?今日は大事な日だからな。体調は平気かい?」


「おはようお婆ちゃん、エリック兄さん。あたしは大丈夫よ。ただミヤビが寝坊助で大変だったわ!」


「むむ!そんな事はない!起きてはおったぞ!横になっていただけじゃ。それより妾は空腹じゃ、飯を食わしてくれ」


「もうすぐできるからコレでも食べて少し待っててくだされ。エリックや、そこの干し肉を持ってってやってくれ」


「わかったよ母さん。・・・ミヤビさん。これなんだけど、ちょっとクセがあるから口に合わなくても怒らないでくれよ?」



「む?肉か!確かに変わった匂いがするがどれ、頂くとしよう。あぐあぐ・・・ふむ、別に問題ないぞ。噛めば噛む程旨味が出てくるな。昨日の汁物も美味かったが、こちらもイケる」


 椅子に座り干し肉をかじる様子を呆れながら見ていたリエルもリリーナのそばまで移動し顔を濡らした布で拭いてからテーブルへと戻り、ミヤビの隣の椅子に腰をかける。


 丁度リリーナも食事の準備が終わり皿に乗った、焼いた卵と干し肉を炙った物、それに籠に乗ったパンをテーブルへと運んでくる。

 朝ごはんの準備も終わり、エリックとリリーナも席に着く。


「おまたせ。それじゃ頂こうかね。しっかり食べて、力を出せるようにしないとね」


 リエルはリリーナの言葉の意味を理解し頷く。3人と1匹は朝食を摂りながらこの後の事を話し合う。


「リエル、食べ終わったら早速、模擬戦をやるけどエリックと儂を相手に戦ってもらう訳ではない。模擬戦とは言ったが見せてほしいのはリエルがどれだけの状況に対応できるかという事じゃ。それぞれが出す課題に結果を出せなければ、旅に出る許可はやれん。それはわかっておるな?」


「大丈夫。でも模擬戦てきいてたからてっきり戦うのかとおもってた」


「うむ。確かに模擬戦といったからな。そう捉えるのは自然じゃろう。だが今のリエルの力は少なからず理解しているつもりじゃ。じゃが、もし儂等と模擬戦をして、予期せぬ事態が起きたときそれを止める事ができないと判断したんじゃよ」


 家族にも恐れるような力を自分が持っているという事実を改めて理解し、少し暗い顔をするリエル。だがリリーナはそんなリエルをしっかりと見て言葉を続ける。


「そんな顔をするな。儂等はお前の事を恐ろしいとは思っておらんよ。こんな優しいいい子に育ってくれた事を誇りに思っておるくらいじゃ。じゃがな?もしあの力が制御できずに儂等を傷つけてしまったら、きっとリエルの心に一生消えない傷が残ってしまう。リエルのそんな姿は儂等だって見たくないからのぉ」


「そうだよリエル。俺や母さんがリエルを嫌いになるわけないだろう?そんな事心配なんてする必要はないよ。リエルはただ俺達が出す課題に結果を出せばいいんだからね」


 二人の言葉はリエルの心にしっかりと届き笑顔を返してくれた。


(・・・家族に恵まれたためじゃろうな。大事な人を傷つけられる事に激しい怒りを見せ、自分の苦痛も顧みずに無意識に魔王の力を使い続けたのは。大切な者の為に自分を犠牲にするような事は、あまり褒められるものではないと思うが今それをいうのは無粋じゃな)


 話を聞きながら食事をとっているミヤビは、何も言うことなくその様子を眺めながら炙った干し肉に舌鼓をうつのだった。


 -----------


 村の入り口にテントを張って滞在していた衛兵達も早朝から慌ただしく動き回っていた。

 それは、逃亡を続けている盗賊の残党と思われる人物の足取りが未だに掴めていないためである。

 クラウスとヴレアも既に朝食を済ませて持ち場で作業をしている。


「まだ賊の所在はわかってないのか?」


「その様です。村の中を捜索したようですが、以前行方はわかってないようです」


「そうか。すぐに片付くかと思ったが、流石、一人生き残っているだけの事はある。厄介な相手だな」


 盗賊の生き残りに称賛の言葉を上げるクラウスではあったが、その表情は若干苛立ちを見せている。

 正義を信条にするクラウスにとって、人攫いのような非道な真似をする相手を野放しにしているこの状況が彼にとっては非常に歯痒いものであるが故の苛立ち。

 その様子は隣で会話をしているヴレアにもひしひしと伝わってくる。


「もしかするともうこの村にはいないのでは?かなりのやり手の様ですから、見張りの配置されているルートとは別の場所から街道へ出た可能性はないのですか?」


「それは俺も考えた。だが正直我々はこのあたりの地理はそこまで詳しくないから何ともいえんな。だが可能性はあると思って街道の方へも何人かいってもらっているのだが報告はない。うーむ。・・・そういえば村の中央の浄化作業はどうなっているんだ?」


「はい。そちらの方は昨晩後発で送ったもらった魔法使いの方達が滞りなく処理してくれたみたいです。流石魔術師ギルドの方達といったところですね」


「もう終わらしてくれたのか。助かるな。流石にあのまま長時間放っておくわけにはいかなかったからな。しかし賊の行方のほうは芳しくないな」


 頭を抱えるクラウスにヴレアは一つ提案を思いつく。


「それなのですが、この村の狩猟班の方にこのあたりの抜け道などを聞いてみたらよいのではないですか?リリーナ殿への現状の報告もしないといけないでしょうからエリック殿に伺ってみては?」


 はっと頭を上げるクラウス。なぜそれに思い至らなかったのかと心の中で自分を罵倒する。だが、気持ちをすぐに切り替えヴレアに話しかける。


「そうだ!それだ!早朝で申し訳ない所だがこのまま手を拱いている訳にもいかん!早速リリーナ殿の元へいくぞ!」


 そういうとクラウスは駆け足で村の中へと走っていく。そのあとをため息を付きながらヴレアも追走するのであった。

お疲れさまでした。ここまで読んでいただいてありがとうございます。楽しんでいただければ幸いです。

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