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16話 旅立つ許可と条件

誤字脱字があったら時間があるときに修正していきます。

 リリーナに声を掛けられると、外で待機していたヴレア達だが、森の方には襲撃者がきた様子もない事からエリックとテルマの二人で村で情報を集めているクラウスの所へ伝えてきたほうがいいという話になり、ヴレアと別行動をとる事になった。


 家の中に入っていくヴレアだが、彼は経験豊富なベテランの兵士という訳ではないので、エルフの暮らしについての知識は持ち合わせていなかった。

 そのため、エルフの人達がどのような生活をしているのかという興味を持っていたのだが、人間の暮らしとそこまで大きな違いはないのだと知り、種族の違いとは些細な物なんだと思い言葉を口にする。


「かなりの使い手であるリリーナ殿のお住まいなので、どんな物が出てくるのかと内心思ってましたが、いざ拝見させて頂くと、我々の暮らしと大して変わっているという訳ではないのですね」


「はははっ、そうじゃろうな。別に研究に偏った暮らしをしているわけではないからのぉ。一昔前ならそうでもなかったじゃろうが、今は神秘の獲得を夢見るような年でもないからな、分相応の生活で遅れれば満足じゃよ。息子と孫がいてくれるだけで十分じゃわい」


 軽い会話をしながら足を進める二人。リビングに入るとそこには銀の髪をした少女が長椅子に座っているのと、その傍でもう一人が横になっている様子を確認する。


「孫のリエルと、テルマの所のナイルじゃ。リエルはどうやら起きてしまったようじゃが、ナイルの方はまだ眠ってるからゆっくりさせてやってくれ」


「そうですね。見たところ怪我も無さそうですし、これで村で出会った子供達に知らせてあげれば心配させないですみそうです」


 ヴレアは、自分の仕事に誇りを持っている為、子供達との約束を破らずに済んだ事をとても嬉しく思っていた。

 子供達が、弱い立場の人達が、安心して暮らすことが出来る世の中を強く願うが故に、ヴレアは自分に出来る事をしたいと考えて兵士としての道を歩むと決めたのだ。

 そんなヴレアの存在は一部の人間にとって、即ち自分の利益を優先するような汚職兵士や、悪徳貴族にとっては非常に目障りな者だったのだろう、ヴレアは王都から研修と言う名目でバランディアの町へと厄介払いにされたという訳だだが本人は勿論そんな事は知る由もなかった。


「さて、私はリエルさん達の無事も確認できましたのでこれ以上特にないのですが、クラウス隊長が気にしていたのでリエルさんに少しだけ話を聞いてもかまいませんか?」


「眠っていたら遠慮してもらったが起きているならかまわんじゃろう。リエル、こちらはバランディアの町から来てくださった衛兵隊の方でヴレア殿じゃ」


「ヴレア・ペイロードと言います。よろしくお願いしますね」


「リエルです。こちらこそよろしくお願いします」


 小さくお辞儀をするリエルの姿から、まだまだ子供の域をでていない幼さを残しているが何か内に秘めた物を感じさせる不思議な印象をヴレアは覚える。

 直感ではあるが、クラウスの予想通り何か話せない事情があるのだろうとは思ったが、それを無理やり聞き出そうという気はヴレアにはなかった。


「少しだけ話を聞きたいんだけど、盗賊が村を襲撃していた時、君達はどこにいたのか話してもらってもかまわないかい?」


「えっと、あたしは森の中で弓の訓練をしてたんですけど、そこへナイルさんがやってきて村が今危険な状況だって聞いたので、そのまま森の中に隠れてました」


「なるほど。しかし災難だったね。怪我がなくてよかったよ。他に何か気づいた点とかはないかな?」


「いえ、あたしは特には・・・。すいません」


「いや、謝る事はないさ。つまらない事を聞いて悪かったね」


 そう言うとヴレアは質問を終えて話を変える。


「村の方は怪我をしていた人達もいたけど、みんな無事だったから安心してほしい。それと・・・一つだけ聞きたいんだが、森の中にいたって話だけど、我々が村に向かっている時にこの村のあたりに一筋の光が降ってきたの見たんだけど、何か知らないかい?」


「い!いえ!?あたしは何もしらないです!」


 一筋の光と聞いて心当たりがあったリエル。そう、それはミヤビが行った攻撃の事だ。分からないと答えるのが一番簡単な方法だったのだが、不意の質問だった為その言葉の中に含まれた動揺は明らかだった。

 不審に思ったヴレアであったが質問を続ける事はしなかった。


「そ、そうかい?知らないならいいんだ。もしかしたら見間違えかもしれないからね。変な事をきいて驚かせてしまったみたいだね」


「だ、大丈夫です!」


 挙動不審なリエルをひやひやしながら見ていたリリーナだったが、たまらず口を挟む。


「すまぬがこの子も疲れておるので、その辺で勘弁してやってくれんか?」


「も、申し訳ない。自分も見たものが何だったのか気になったためつい・・・。で、では。あまり時間を取らせても悪いですからね。私もこの辺で失礼させて頂きます。賊がどうなったか気にもなるので」


「ご苦労様ですじゃ。盗賊の生き残りの事はよろしくたのみます」


 妙な雰囲気を感じてはいたが、ヴレアは二人に挨拶をするとリリーナの家を後にしたが、その足は村の方へではなく反対側の森へと向かっていた。ヴレアは得られた情報と感じた疑問を頭の中で整理しながら足を進めていた。


(何か話せない事があるという隊長の予想は恐らく当たっているだろうな。そしてそれは、あの閃光にも関係しているような気がする。森の中にいたという話だがもしかしたら何かわかるかもしれない。少しだけ確認しておいた方がよさそうだ)


 ヴレアは疑問の正体が森の中にあるかもしれないと考え、一人夜の森へと入っていく。ヴレアの剣の腕はかなりの物だが、流石に一人で何とかできる状況は限られているため、少し確認したら戻ろうという程度の考えであったが、そこで見たものは、後にヴレアが更なる疑問を感じる結果を生む事になるのだった。


 -----------

 ヴレアが去ったあと、室内に残ったリエルとリリーナ。そこへ話が終わった事を察知したミヤビも姿をみせる。そこでリリーナが最初に口を開いく。


「恐らく何か疑問を感じてはいたじゃろうが、それを無理に聞いてくるような人物でなくてよかったわい」


「うむ。話だけは聞いておったが、もっといろいろ聞かれると妾も思っておったがのぉ」


 リリーナの言葉にミヤビも同意をしめす。衛兵という立場上、事態を正確に把握する必要がある以上、強く説明を求める事もできるのだが、それを諦めて相手の事情を優先するという行動、目先の利益のみで行動するよな性格の人物ではない事がリリーナも伺えた。


「とりあえずこれでリエルとミヤビ殿の事はこれ以上詮索される事はないじゃろう。ひとまず問題はなさそうじゃな。さて、リエルも起きている事だし確認したい事がある。こっちに座りなさい」


 一つの問題が片付いたと判断したリリーナは、リエルを椅子に座らせ話掛ける。リエルの身体の変化の事だ。

 一体森で何があったのかをリエルに説明するように促すリリーナ。

 リエルもそれに答え、あった事を説明する。無論、自分の父親の事などは話さない方がいいとミヤビに念話で言われている為、そこは隠しながら事情を説明する。

 一通りの話を聞いた後にリリーナは確認するように口を開いた。


「なるほど。大体の話は分かった。やはりあの卵はミヤビ殿が封印されていた物だったわけか。そして、消えた首飾りか・・・。リエル、あの首飾りはな、魔封じの水晶といって、エマリエが強すぎるお主の魔力が身体に悪影響を及ぼすと考えて、それを封印するために使った物なんじゃ」


 リリーナは首飾りをなくしたと思っていたリエルに、真実を話して聞かせる。


「封印されていた力を元の場所に返した結果、役目を終えた水晶が消滅したんじゃろうな。あの時見せた力が封じれていたお主の力という事なんじゃろう。すべてを取り戻し身体に変化が生じた結果、今のような肌の色への変化があったんじゃろうと思われる」


「つまり、これが本当のあたしって事なのかな?」


「そうじゃな。失われていた部分を取り戻り、活力を得た事で、以前の黒い肌から今の綺麗な小麦色になったんじゃろう。前よりずっと可愛いから心配することはないぞ」


「そうかな?えへへ」


 リエル自身、身体の変化については心配があったのだ。依然と違う自分に家族が今まで通り接してくれるかどうかという心配が。

 正直な所、リエルは以前の真っ黒な肌より今の方がいいと思っていたため、リリーナにも、違和感なく認めてもらえた事に自然と笑顔がでる。


(なるほどな。それでこの子は自分の事をダークエルフとのハーフだと思っておったわけか。依然の姿というのはわからんが確か肌の色が黒となれば、ダークエルフを連想するのは当たり前じゃな)


 とくに口を挟む事なく長椅子の方で話を聞きながら酒を飲んでいるミヤビ。その後も少し話を続けるが確認が大体終わったところでリエルが話を振った。


「お婆ちゃん。あたし、村をでて・・・世界を見に行こうと思うの」


「どうしたんじゃ突然?」


 当たり前の疑問がリリーナから帰ってくる。だが以外にもその言葉に強い拒絶の雰囲気は感じられなかった。そのおかげかリエルも普通に言葉を返す。


「お母さんの歩んだ道を、あたしもいつか見てみたいとずっと思っていたの。そのために村の仕事も割り振ってもらって、お金をためて準備してたんだけど・・・お婆ちゃんはやっぱりまだあたしには早いと思うかもしれないけど、あたしもどうしても確かめないといけない事があるの!お願い!」


「むぅ、しかしな。まだ12歳で子供でしかないお前を一人で旅に出すのはいくら何でも無理じゃよ。何をそんなに急いでおるんじゃ?」


 リリーナ取っては当然とも思える言葉が返ってくる。しかしリエルは諦める事なく言葉を返す。


「一人じゃないわ!ミヤビが一緒に来てくれるって言ってるから二人よ!それにお母さんだって若い時から冒険者として活動してたってお婆ちゃんはいってたじゃない!」


「確かにエマリエが旅にでたのは早かったがそれでも15の時じゃぞ。リエルよりも3年もあとの事じゃ。いくらなんでも12歳では早すぎる。先ほども聞いたがなぜ今なんじゃ?」


「それは・・・」


「ふむ・・・」


 言葉に詰まってしまうリエルの様子に何か事情があるのだろう事はわかったリリーナ。ミヤビに視線を送るとミヤビは首を横に振る。


(儂には話せない事情か。ミヤビ殿の存在の事を考えるなら余程の事なのは想像はつく。しかし・・・)


 リリーナは考える。それほどの事情ならとも思うのだが、心配な気持ちはどうしても拭いきれなかった。

 ミヤビが信用できないわけではない。少し前にみた能力から、神に近い存在という話も納得していたし、その力もかなりの物なのは理解できる。

 それでも世界にはいろんな危険が存在する。今日の様にエルフを狙う輩は今も少ないのだ。ましてや子供のエルフともなれば悪党共が目を輝かせて手を出してくるだろう。

 そんな事になった時にリエルは自身を守り切ることができるのかどうか。

 ミヤビが一緒にいる点は喜ばしい事かもしれないがそれに頼り切るのは絶対によくないとリリーナ考える。


「何か事情があるのはわかった。ならば、条件がある」


 顔を伏せて俯いていたリエルが顔をあげリリーナを見る。その瞳は真剣な意思を十分に感じさせる強い視線だった。


「必ず無事で帰ってくる事。それと、町に着いた時に手紙を書くようにする事を約束してくれ。でないと儂は心配でしょうがないわい」


「わかった!約束する!」


「それともう一つ。これも絶対条件じゃ。明日、エリックと儂、それぞれ一人ずつを相手に模擬戦をしてもらう。自分の身を守る事ができないなら旅にでるのは諦めるんじゃ。よいか?」


 リリーナとエリックを相手にした模擬戦。その言葉を聞いたミヤビはその意図を察する。だがあえて何もいう事なく黙って二人の様子を見守る。

 リリーナの言葉にしばし沈黙していたリエルだが決意の籠った返事をリリーナへと返す。


「わかった。それで認めてもらえるなら、あたしはやるわ」


「そうか。それほどの決意なら止めはせん。ならば話はそれだけじゃ。ほかに何もないなら今日はもう寝なさい。エリック達が戻ってきたら話は伝えておくから万全の体調で挑めるようにしっかり休むといい」


「うん、ごめんなさいお婆ちゃん。我儘いって」


 リエルの心には少し罪悪感があった。すべてを話すことができないもどかしさと、リリーナを心配させてしまっている事に対する負い目からくる物だ。しかしリリーナから帰ってきた言葉でリエルの心の棘は消え去った。


「いいんじゃよ。儂もこのような日がくるんじゃないかと思っておった。お前はエマリエの子じゃからな。頑固な所はエマリエにそっくりじゃよ。じゃが、約束は約束じゃ。明日の結果次第では諦めてもらう、しっかりやるんじゃぞ」


 そういうとリリーナはリエルの頭を撫でる。リリーナの優しさと本当に自分を大事にしてくれている事を改めて知ることになり、リエルはリリーナに笑顔を返すのだった。


 -----------


 自分の部屋へと歩いていくリエルの後をミヤビが付いて行き、静かになった室内。椅子に座り、コップの中の水を口に運ぶリリーナ。そこにエリックとテルマが帰ってきた。

 賊の事を少し話した後にテルマは、眠っているナイルを抱えると、自宅へと帰っていく。

 残ったエリックに、リリーナは先ほどリエルとしていた話を全て説明する。


「リエルがそんな事を考えていたとはね。正直俺はまだ早いと思うけど・・・」


「うむ。だがあの子の意思は本物じゃよ。恐らくここで止めるのは今後、あの子の中によくない物が残ってしまうじゃろう。それに、儂等二人が納得いく結果が出せなければ旅に出るのは諦めてもらうのは念を押してあるからな。明日、その結果もわかるじゃろう」


「そうか。なら俺からいう事は何もないよ。できればその事情とやらも話してもらえればいいんだけどね。多分俺達に心配をかけないためなんだろうけど、正直そっちのほうが心配だよ」


「はっはっは。たしかにな。じゃが、いずれ答えが分かる日がくるじゃろう。今はあの子を信じて待つとしよう」


 二人はそのまましばらく会話を続けながら夜の時間を過ごすのだった。


お疲れさまです。ここまで読んでいただいてありがとうございました。楽しんでいただければ幸いです。

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