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AEON

BGM Crystal Lake - AEON

「あーはいはい、どうせもう余裕だから簡単すぎて……えっ、追い、つ、く? Follow誰を?」

「ラッパーみたいな話し方するところか? そこ」

 ラップも、AIがだいたいの韻を生み出してしまう時代だけれど。


 そこに、一人の少年が加わる。冬矢である。学校を抜け出して買ってきたらしい(違反である)アイス片手に。


「暑いー。どうしたんだ莉奈。両手挙げてホールドアップして」

「大月冬矢さん。事件です事件。ここにいる副島陸って人、学問で追いつきたい人がいるらしいです」

「…………は?」

 冬矢も同じく手を挙げる。二人そろってホールドアップ。傍から見れば不審者(主に自分がだが)じゃないかと陸は肩をすくめた。

「俺さ、北海道出身じゃん。昔旭川に住んでたの。そこで……大天才がいたわけよ」

「その人と友達だったの? 陸くんは。幼馴染、みたい、な?」

 また挙動が大げさになる莉奈。

 それを見て、また陸はいう。

「そんなところ。あれに追いつくなら、もっと努力したいんだが……数学も何も、解法思いつくのだるくてさ」

 

 数学の天才、というものを読者はご存じだろうか。一度お手すきの方はページをめくる手か画面をクリックする手を止め、一度本戦の問題を見ることを勧める。

 意味が分からないから。正確にいえば、読めるし文章の意味も、問題の意味だってすぐにわかるのに、解法がさっぱり思いつかない。こうなるから。

 別に、習ってない関数やら、習ってない数式やらが出てくるわけではない。中学生でも、問題の意味するところはすぐに読み解けるくらい。

 なのに難しいという異次元ぶり。


「数学の天才ってのは、あいつを言うんだ」

 陸はそういって、窓から北の方をながめた。

 あいつ、いまどうしてるんだろう、と。

 その表情を見て、息をのむ莉奈がいた。その様子を見て、色男は罪だねと心のうちに思う冬矢がいた。


//

 ところで肝心の、試験結果であるが。


「受かってたわ」

「は? マジで言ってる?」


 しばらくたって。夏の雰囲気が影を潜め、秋の空気が日本にやってきたというころ。陸が受けた数学五輪日本大会――すなわち、日本代表選考試験の第一次試験の成績が公開となった。

 陸が何とはなしに出したスマートフォンの画面。そこに、家にいる母から通知。「おめでとう」のメッセージとリンクと顔文字。

 陸はそれを開いて確認した。一次試験突破者一覧の中に、彼の名はあった。副島陸、人見高校二年。


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