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末代家族8:かずみの章2「はじめてのおつかい」

「あたしのことは、『ヨーキ』でいいよ。利澤りざわって、言いにくいでしょ?」


「なんでヨーキなんですか?」


「洋子だから。小学生の頃、誰かが『ヨーキ』って言い出したら、みんなそう呼ぶようになっちゃった」


「じゃあ、ヨーキさん、よろしくお願いします」


「かずみちゃんは、なんて呼べばいい?」


「家族からは、『ズミ』って呼ばれてます」


「あたしも、そう呼んでいい?」


「はい、もちろん」


「じゃ、ズミちゃん、よろしく!」


今、かずみはヨーキさんこと、利澤洋子さんの運転するクルマの助手席にいる。買い物に行くなら、かずみも一緒に連れて行ってくれないかと、伯父さんが頼んでくれたのだ。


ヨーキさんのクルマは、目の覚めるようなイエローのハッチバックだった。これなら、沢山のクルマが停まってる駐車場でも見つけやすいだろうなと思ったら、


「目立つでしょ?遠くから見て、すぐにうちのクルマって分かるから、この色にしたんだ」


まさにその通りだった。



「大きい!広い!」


行先はスーパーマーケットだと思っていたが、到着したのは巨大なショッピングモールの立体駐車場だった。


「この辺でひと通りの買い物を済ませようと思ったら、やっぱりここかなあ」


ヨーキさんが応える。


伯父さんは、週末にまとめてこのショッピングモールで1週間分の買い出しを済ませ、平日は買い物をしないそうなので、今度からはかずみたちもそれに便乗することになってる。今日は、次の買い出しに行くまでの4日分の食材を買うことが、かずみのミッションだ。


「食品売り場は1階ね。あたしは2階の生活雑貨の方に用があるから。買い物終わったら、LINEで連絡ちょうだい」


待ち合わせをするのに必要だったので、さっきヨーキさんとかずみは、LINEの連絡先を交換していた。


「さて、と」


最初は今日の夕食分の食材だけを買う予定だったのだが、そう頻繁には買い物に来られないということがわかったため、急遽、4日分の食材を買うことになった。美保が大急ぎで4日分の朝・昼・晩のメニューを考え、それをもとに購入する食材のリストを作った。さいわい、伯父さんちに用意されていた冷蔵庫が大容量だったため、食料の保存は問題ない。


それにしても、4日分となると結構な量だ。ヨーキさんが付き添ってくれると言ってくれたのは、クルマを出してくれるからだけではない。かずみ一人では、購入した食材を運べないからだ。


野菜は、ニンジンや玉ねぎ、ジャガイモといった保存の利くものが中心になる。葉物野菜も買ったが、こちらは今日・明日中くらいには消費しないとダメだろう。肉類は冷凍すれば良いので、そこまで神経質にならなくても大丈夫。魚は調理の難易度が高いので、切り身だけ。これも冷凍保存はできるが、早めに消費するに越したことはない。


各種調味料やカレーのルー、だしの素なども合わせると、買い物かご3つに山盛りとなった。ショッピングモール用の大型のカートだから何とかなったものの、押して歩くのもけっこう大変だ。


美保から預かったカードで支払いを終えると、かずみはヨーキさんとの待ち合わせ場所である、ドラッグストアの前に向かった。ドラッグストアの前で、ヨーキさんは1メートルほどの筒状になったものを抱えて待っていた。


「おお、けっこうな量になったねえ!あたしが押すから、これもカートに載せさせてね」


「なんですか、それ?」


「スダレ。もうすぐ夏が来るからさ。西日が差し込んでくると暑いじゃん。これを窓の前に括りつけて、日差しが部屋に入ってこないようにすんの」


「え!?やっぱ、西日って暑いんですかね?伯父さんちの僕の部屋、西向きなんですけど」


「へえ、ズミちゃんて、『僕っ子』なんだ」


「変ですか?」


「別に変じゃないよ。うちの娘、小学5年生なんだけど、その友達とかでも普通に『僕っ子』いるよ」


「ちゃんと使い分けはしてるつもりですけど」


「まあ、どうなんだろうね。例えば、全校生徒の前で発表とかする時に、女の子が『僕』って言ったらおかしいのかね、今でも」


「ヨーキさん、西日の話」


「ああ、そうそう。夏場の西日は、強烈だよー。最近の夏だとエアコン、フル稼働してもキツイかも。西日を遮るだけで、電気代もかなり節約できるかも」


「カーテンとかじゃダメですかね?」


「遮光カーテンとかなら、遮ることはできるね。最近は遮熱カーテンとかもあるみたいだし」


かずみが選んだ部屋の西向きの窓には、今はレースのカーテンしかついていない。そうか、遮光カーテンか…


「でも、いくら遮光カーテンで遮っても、日差しが窓ガラスの内側まで差し込んできちゃったら、熱は部屋の中に籠るんだって。だから、窓ガラスの外側で、日差しをシャットアウトしないと意味ないらしいよ」


遮光カーテンの価格をスマホでチェックしていたら、結構な値段することに密かに驚いていたら、ヨーキがさらに追い打ちをかけてきた。これは、部屋選びを間違えたかもしれない、とかずみが思いはじめたところに、ヨーキさんが、さっき買ったというスダレをかずみの前に差し出してきた。


「だから、これね。スダレは窓の外側に取り付けるから、日差しが窓ガラスの外側でシャットアウトされるんで、効果バツグンだよ」


「ああ、そういう…」


「それに、適度に隙間が空いてるから、遮光カーテンみたいに部屋の中が真っ暗になることもないし、何よりも安い!いま、ネットで遮光カーテンの値段、調べてたっしょ?お高いよね~」


「そしたら、僕の部屋にも欲しいかも。スダレ」


「自分でやってもいいけど、ズミちゃん、少し背が低めだから、伯父さんに頼むといいよ。あたしからも頼んどいてあげる。安いし、こんなの伯父さんが買ってくれるよ。渋ったら、あたしがどやしつけてやる」


立体駐車場に着くと、かずみとヨーキは買い込んだ食材をクルマに2人がかりで、クルマに詰め込んだ。ハッチバックの荷室だけでは収まらず、一部は後部座席の上にも載せることになった。


「さーて、帰りますか!ちなみに、今晩のおかずは何?」


「美保ちゃんの考えたメニューだと、白身魚のムニエルかな。作るのは詩織ちゃんだけど」


「姉妹っていいよねー。あたしんところは、下が弟だったからさ。うちは娘も1人っ子だし。いいなあ、憧れるなあ」


「僕は、お兄ちゃんか、弟が欲しかったです」


「ないものねだりだねえ、お互い。今度、遊びに行っていい?」


「伯父さんが良ければ」


「大丈夫、大丈夫!佐藤君ちじゃなくて、ズミちゃんたちの家に行くから」


そう言って、カラカラ笑いながら、ヨーキさんはイエローのハッチバックを発進させた。


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