革の首輪
ミディアムにプレゼントです。ミディアムの為に頑張ります。
朝、目が覚め、顔を洗いに行ったらミディアムも一緒に起きてきた。
「おはよう」
「おはよう御座います」
挨拶はしてくれるのだが会話が無い。
あまり目も合わせてくれない様な気がする。俯いていて良く分らない。
長い間、火傷の事で色々有ったのだろうと思うと何も言えない。
「朝から悪いが卵の薄皮を一緒に取ろうか?」
「はぃ」
俺とミディアムの共同作業だ。二人で薄皮を剥ぐ。
ミディアムは集中して作業して、俺はしばし見入ってしまう。
まだ不自由な手で作業していて。少しは頑張れるのだと感心した。
「ご苦労様、朝食にしよう」
「はぃ」
卵の薄皮は片付け、朝食の準備をした。
朝食を終えて、出かける支度をする。
「今日は昼に一度戻るから」
「はぃ分りました」
まだ元気とは言えないが、昨日の様子を見る限り大丈夫だろう。
今日の午前中は買い物をする。エプロンと下着だ。お金で買える幸せも有る。
先日下着を買った店に行くと、店長が出てきて対応してくれた。
先日、店員に尋ねたら、すぐ店長に代わってしまったから、今日は最初から店長なのだろう。
まずは下着から買うことにした。
「先日の物は良かった。今日は少し可愛い系で、淡い色とかリボンとかで頼む」
「畏まりました。幾つかお持ちしますのでその中からお選び下さい」
「おう、たのむ」
店長はサイズも覚えている様で、大きめの可愛い物を持ってきた。
中々趣味が良い、俺の好みの下着が多くあり、中から二つ選んだ。
「エプロンも置いてあるか?」
「ご案内いたします」
高級女性服店だし、エプロンは駄目元で聞いてみたら有るらしい。
店長はエプロンの置いてある場所まで案内してくれた。
エプロンは実用性と可愛さで選ぶ。
ピンク色でポケットとフリルの付いた可愛いエプロン。ミディアムに似合うだろうか? 想像してニヤニヤしてしまう。
「これで良い。精算してくれ」
「畏まりました。包装はどう致しますか?」
「すぐに使う、簡単でいい」
選んだ下着とエプロンを買った。
店を出て昼まで時間が有り、商店街を歩いていて化粧品店が目に入った。
化粧品店に寄り、白粉と口紅を購入する。
また商店街を歩き、お茶と日持ちしそうな食べ物を買い家に帰った。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
「ミディアム、家事を良くやってくれているからプレゼントがある」
「有難うございます」
「少し後ろを向きなさい」
「はぃ」
後ろを向いてもらいエプロンを首から掛け、腰の辺りで紐をリボン縛りにした。
「良いよ。こちらを向いて」
「……」
「うん、とても可愛い」
「……」
なんとも反応が無い。もう少し喜んでもらえると思ってたのに。
でも、まだ奥の手が残ってる。
「ミディアム、他にも有る。新しい下着だ。今日の夜はこれを身に着けなさい」
「……はぃ」
今日渡したのは可愛い下着だから喜んでくれると思ってたのに、喜んでもらえなかった。
昼食はうどんが用意されていた。汁も干物とかから出汁を取ったらしい。
お店ほどではないが、俺が作るより美味しい。
「ミディアム、美味しいよ。また頼むな」
「はぃ」
「もう一度出かけてくるが、夕方には戻る」
「はぃ」
今日もダンジョンへ向かう。ミディアムの事は気になるが、フリーの冒険者にも色々と制約はある。
冒険者として商家に雇われていない者、冒険者以外に定職の無い者は、冒険者ギルドの規定に従わなければならない。
フリーの者は週に四回以上ダンジョンに入らなければならない。同日の複数回は一回とみなされる。もしくは週に一回以上冒険者ギルドを通した依頼を受ける事。
病気や旅なども有るから特例は有る。罰則は軽いが守らなければならない。
昨日同様に治療用の魔石と、金に成りそうな魔石を集めた。
少し早めに切り上げ、四階層ボスへ寄ってみる。マエコちゃん達が居た。
「こんにちはマエコちゃんに……テイビト」
「こんにちはノーバン様」「お、おう」
なかなか名前が出てこなかった。
今日もチョコレートを一つ買い、少し話をした。
「テイビト、刀は慣れたか?」
「おう、今までの剣より使いやすい。毎日手入れもしている」
毎回マエコちゃんとばかり話すわけにはいかない。
テイビトは刀が気に入った様で、使いやすいと言っている。
「刀は良いが、本物は難しいだろうな」
「重いのか?」
「いや、値段の問題だ。家が買えるほど高いからな」
「そうか?」
何故テイビトの語尾が上がったのかは分らないが、俺は本物の刀も持っている。
但しテイビトにプレゼント出来るほど安くない。
手入れもしっかり出来ないと、直ぐに錆びてしまう。
「刀は、まだまだ高いのが幾らでもあるがな、最高の物は聖剣にも匹敵するらしい」
「聖剣に匹敵だと? 聞かせてくれ!」
なんだ刀がよほど気に入ってしまったか? 少し笑みが零れてしまう。
買えないだろうが、話くらいなら良いだろう。
「刀にも出来の良い物は名前が付くが、その中に鬼丸国綱がある。それが聖剣に匹敵するらしい」
「どこに有る?」
「噂だ。実在するかも分らんが、刃は鉄の純度が高すぎて銀色に輝き、錆びないそうだ。しかも鉄で鉄が切れると言う話だ」
「鉄なのに錆びないのか? 魔法がかかってるのか?」
いつも俺とはあまり話をしないのに、刀の話は食いつくな。
知ってる範囲でならとも思うが、俺も聞いただけの話だから迷うな。
「俺も聞いただけだが、普通の鉄は錆びてしまう。ステンレスは鉄に混ぜ物をする事で錆びない様にする。だが鉄を究極までに純度を高めると硬く輝き、錆びないらしい。それでも刃の部分だけだそうだがな」
「ありがとう。参考になった」
「だが、有るかも分らんぞ、鉄は金と違い純度を高めるのは難しいらしいから」
「お、おう」
「そもそも聖剣が伝説で、見た者は居ないと思う。比べようが無い筈だ」
「聖剣は……いや……何でもない」
どの辺りが参考に成ったのかは分らない、でもテイビトが礼を言う位だから良かったのだろう。何か言おうとしていたみたいで、有れば欲しいのだろう。
無理に探さない様に、無い可能性も示唆しておいた。
「またなテイビト。マエコちゃんもまた」
「おう」「また、お会い出来る事を楽しみにしています」
俺はダンジョンを出て奴隷商へ向かった。
奴隷の首輪の件だ、月曜の朝に頼んで今が水曜の夕方前だ、出来てるだろうか?
「こんにちは、首輪の件できた」
「ノーバン様、今しがた届いた所で御座います」
「それは良かった」
「こちらに御座います」
丁度出来上がったらしい、首輪を見せて来た、革製だ。
「革で作り中に鉄のワイヤーが入ってます。錠前部分と持ち主の認識票を付ける部分はどうしても鉄になりますが」
「十分だ、良く出来ている、買わせて貰おう」
奴隷商にお金を払い、首輪を買った。
鉄の首輪に比べて軽く、体に当たる部分は革だ。鉄の首輪より良いだろう
奴隷商を出て食材を買い、家に帰った。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
今日は食事の用意と風呂の準備以外にも、掃除もしていた様で綺麗になっていた。
いつもの様に風呂と食事をすませる。
「ミディアムお酒だ」
「はぃ」
何時もの様にブランデーにシロップを入れ、水割りにした物を飲ませる。
痛みを少しは和らげてるとは思うが効果は薄い様に思う。治療の時は、いつも苦しそうな顔をしている。
「首輪を外して治療を始めよう」
「はぃ」
首輪を外し、顔から首筋を重点にして、手の甲も少し治療をした。
「手は少しは握れるように成ったか?」
「はぃ少しは」
いや何も言うまい、正直は良い事だ。
「ミディアム目を閉じて動かないように」
「……はぃ」
目を閉じてもらい、白粉と口紅を引いていく。
鏡を用意してミディアムの前に置く。
「目を開けて良いよ」
「はぃ」
「鏡を見てみると良い」
「…………」
化粧をした顔を見させる、今までは化膿していて化粧も出来なかっただろう。
今は化膿している所は無く、顔と首筋はまだ赤いが凹凸も少なくなった。
「化粧は初めてだから下手だが、火傷跡は隠せていると思う。どうだ?」
「…………」
ミディアムは何も言わず鏡を見ていたが、声を掛けると俯いてしまう。
鏡を見る時に顔を少し離れて見られたが、とても綺麗な顔立ちをしている。
可愛いと言うより美人で、火傷さえ治れば引く手数多だろう。
「ミディアムは美人だ。火傷さえ治れば何処へでも出せるし仕事も見つかる」
「……はぃ」
まだ俯いたままで、少し震えてるようにも思える。
ミディアムの気持ちを知りたいが、何も話してくれないから分らない。
「家事を良くやってくれているな」
「はぃ」
「疲れただろうからマッサージしてやる」
「……いえ……その」
「遠慮するな。大丈夫だ」
「……はぃ」
ミディアムはやはり震えている、直接触ると震えが伝わってきた。
「肩と二の腕は終わりだ。次は背中と足をマッサージするからうつ伏せになりなさい」
「……はぃ」
肩と二の腕をマッサージしてから、うつ伏せに背中と足もマッサージした。
とても触り心地が良い。柔らかさと程よい弾力、俺の為ではなくミディアムの為にマッサージしただけだ。下心は少ししかない。
「マッサージは終わりだ。座りなさい」
「はぃ」
「今日から首輪を革製にする。ミディアムは俺の奴隷だ」
「…………」
一瞬ミディアムの体がビクリと動いた気がしたが、気のせいだろう。
鉄の首輪は片付け、革の首輪をミディアムに付けた。
「今日は終わりだ。化粧も落として良い。おやすみ」
「おやすみなさい」
革の首輪で、ミディアムの負担が少しでも軽くなると良いのだが。
しばしミディアムとの日常です。
優しさの裏に下心いっぱいです。
報酬は奴隷からと契約だから問題ないはず。
本筋に関係ないような日常ですが、後に共感を得る為に必要な日常話だと考えて投稿しました。
しばらくお付き合いください。




