第十話、ミディアムとの生活
奴隷のミディアムとの生活。夢の様な生活になるのか?
奴隷の首輪を何とかしてやりたいが、無闇に外して良い物ではない。だが、せめて鉄以外にしてやりたい。奴隷商は行きたくないが仕方ない、行くか。
奴隷の首輪の事は奴隷商が一番詳しいだろう。
俺は朝、奴隷商へと向かった。
「おはよう」
「おはよう御座いますノーバン様、何か有りましたでしょうか?」
昨日の今日だ、何か有ったと思われて当然だな。
「奴隷の首輪を金属以外の物にしたいが可能か?」
「出来なくは無いですが、特注で高くなります」
素直に奴隷商に聞いてみた。出来ないとは言わなかった。
「構わん。大至急で作ってくれ」
「畏まりました。三日ほどお時間を下さい」
「分かった。その頃取りに来る」
「承りました」
奴隷商は特に理由を聞くわけでもなく引き受けてくれた。
大体の金額も聞き奴隷商を後にする。
俺はダンジョンに向かった。しばらくは治療用の魔石を沢山使うだろう。
治療に使う魔石は深い階層でのドロップだ。一苦労である。
生活も有るから、他にも金に成りそうな魔石も集めなければならない。
ダンジョンから出る前に四階層へ寄り、ボスの熊を倒しに行ったら、マエコちゃん達が居た。
「こんにちは、ノーバン様」
「こんにちは、マエコちゃんに……その彼氏?」
「……テイビトだ。覚えとけ」
「分かってる分かってる、冗談だ。テイビトも頑張ってるみたいだな」
本当は、マエコちゃんの名前しか覚えてなかった。
でもテイビトの事も会えば分かる程度には、顔を覚えてるから問題ない。
「お、おう」
「マエコちゃん四階層ボスはどうだ?」
「ノーバン様の言われた通り魔力の残照が多いようです。先日までは体内の魔力をなんとなくしか感じられていなかったのに、だんだんと魔力を感じられるように成りました」
「それは良かった。五階層に行く日も近そうだな」
体内の魔力を感じ取れる様に成ったなら、確実に強くなってる筈だ。
「子供も多く来ますね。戦いはしないもののチョコレートには興味が有るようです」
「そうか、実は俺もチョコレートが欲しくて来たんだ……」
「私達の様子を見に来た言い訳ですか?」
マエコちゃんに、可愛く首を傾げながら聞かれてしまった。
本気でチョコレートが欲しかっただけだ。ミディアムへのお土産として。
ただ、正直に言うのも得策では無い気がする。
「マエコちゃん達の成長を見に来たついでにチョコレートが欲しくなってな。一つ譲ってくれるか?」
「構いませんよ。沢山狩りましたから」
「有難う。助かる」
マエコちゃんがチョコレートを譲ってくれた。
チョコレートを手渡す時、テイビトには聞かれない様に小声で言って来た。
「先日ノーバン様に付き合って頂き熊を倒した日、高揚し、夜寝られなかったんです。何度も熊を倒す場面を思い出して高揚して……。」
「よほど嬉しかったんだな。良かった」
「嬉しかったのもそうですが、それだけでは無くて……いえ何でも無いです」
マエコちゃんの顔が少し赤い気はするが、今日も熊を倒していて興奮しているのだろうか? よほど熊が好きなようだ。
帰りに商店街へ行き食材を買い、卵も多めに買って、割らない様に気を付けながら帰った。
自分一人なら食事処で夕飯は済ませる所だが、ミディアムは火傷を気にしている。まだ外に出さない方が良いだろう。家で作るしかない。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
期待して無かった挨拶が返ってきた。少し嬉しい。
残ってた食材からミディアムも少しは食べたと思われる。
食材を置き風呂を確認すると、風呂も沸かされていた。
「良くやってくれていた様だな」
「有難うございます」
「風呂は一緒に入るか?」
「それは命令ですか?」
冗談交じりに風呂に誘ってみた。が質問を質問で返されてしまった。
命令なら一緒に入ってくれると言う事だろうか? 火傷も有るし、まだ俺と距離が有る。もう少し先だな。
「あぁいや、また後でそのうちにな」
「はい」
ミディアムはホッとした様に、安堵の表情で少しだけ元気な返事で返してくる。
本当は今すぐにでも一緒に入りたい。人間は水に浮くのか? パイナップルは水に浮くのか? じっくり観察してみたい者だ。
先に風呂に入り、出てからミディアムにも入らせる。
もちろん魅力的な下着を用意した。
ミディアムが風呂から上がるのを待って、夕食の準備をする。
俺はパンと食器の準備と牛乳を煮沸して、他はミディアムに任せた。
「ミディアム、美味しいよ。料理が上手だから、きっと良いお嫁さんになれるぞ」
「…………」
お世辞を言って喜ばせたかったが失敗した。奴隷で火傷も有るのに嫁は無いな。
次は、もっと良い言葉えを考えてから言おう。
「ミディアム、食事が終わったら、また治療しような」
「……はぃ」
ほとんど会話の無いまま食事を終える。
食器を片付け治療の準備をした。
「ミディアム、上着を少し肌蹴させてくれるか」
「……はぃ」
上着を少し、はだけさせ首輪を外し、昨日と同じお酒を用意した。
今日は卵屋に聞いた薄皮を使う事にした。
「ミディアム、このお酒を飲みなさい」
「……はぃ、頂きます」
お酒に酔い、ミディアムの気分が少しでも高揚してくれると嬉しい。
少しお酒に酔ってくれないと会話が少なすぎる。会話以外のスキンシップでも良いが、もう少し距離を近付けたい。
「これは卵の薄皮だ。少し気持ち悪いかもしれないが我慢してくれ」
「はぃ?」
卵の薄皮を患部に張り、その上からガーゼを当てて治療を始めた。
今日は成るべく痛くない様に治療してるし、少しは痛みに慣れてくる筈だが? どうにもミディアムの顔は何か我慢してる様な苦い表情だ。
「ミディアム痛かったか?」
「……いえ、昨日ほどでは……」
昨日ほどではないが痛いと言う事だろう。観察しながら治療するしかないか?
俺はミディアムが痛がっていないか、観察しながら治療も優しく丁寧にした。
何故? 火傷したか聞き難く聞いてないが、顔から胸元までと手と範囲が広いから固体ではなく液体だろう。熱湯にしては状態が酷すぎる。だとすれば油だろう。そしたら他にも飛沫が飛んで、火傷をした可能性がある。
じっくり調べないと、決していやらしい事じゃない。じっくり触る事も忘れない。ただの触診だ。何か異常がないか確認しなくては。
「ミディアム、服を脱いでくれ」
「…………」
今日のミディアムは何も言わず、俯いたままだが、ゆっくり服を脱いだ。
昨日と同じ様に手で下着を隠している。
「ミディアム、じっくり見たいから手を退かしてくれるか?」
「……」
何も言わず俯いたままで良く見えないが、唇を噛んでいる様な? でも静かに手を退けてくれた。
火傷の診察と治療の為、布面積が小さく魅力的な下着を着させている。実に良い。ミディアムの体は実に魅力的だ。
「ミディアム、とても綺麗で魅力的だ」
「……」
ミディアムは手で顔と火傷を隠し更に俯いてしまった。
褒めても火傷が有る限り、素直に受け取ってもらえない気がしてきた。
「ミディアム体に触るが驚かないでくれ」
「……」
触って良いかとは聞かない。良い返事が期待できなかった。
じっくり舐め回す様に観察し触診もしたが、頬から胸元までと手の火傷以外は綺麗なものだった。奴隷とは言え環境は良かった様に思える。
蚤やダニや蚊に刺されて彼方此方赤くなってると思ったが綺麗なもんだ、太ももの内側とかも勿論確認させてもらった。下心は少ししかない。
触診で触っても恥ずかしがってはいたが、痛そうな反応はしていなし異常に硬いものも無かった。柔らかく良い触り心地だ。骨折や内部的な異常も無いだろう。
だが、まだ確認してない部分がある。重要だ。
「ミディアム、下着を外して触らせてくれないか?」
「……命令でしょうか?」
そうなるのか、どうしたものか? まだ若いから平気か? だが若いからこそ進行の早い病気とかも有る。精神的にまだ無理は言わない方が良さそうか?
「いや、無理にとは言わない、心の整理が付いてからでいい」
「……有難う御座います」
そのうち心を許す時が来るだろう。
「今日は終わりにしよう。服を着て良いぞ」
「はぃ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
翌朝、早めに起き顔を洗っていたらミディアムも起きて来た。
起こしてしまっただろうか? それとも主人と奴隷の関係を気にして早起きしてきたのだろうか?
「おはよう」
「おはよう御座います」
「早いな」
「……はぃ、いえ」
早起きして来たなら、せっかくだ卵の薄皮の取り方を覚えてもらおう。
「ミディアム、卵の薄皮を取るから覚えてくれ」
「はぃ」
生卵を割る前に、綺麗に洗う所から丁寧に教えた。
薄皮を剥がし取る時が一番大変だ。
「中の卵は朝食にして、薄皮は夜の治療で使うから少し乾かせる」
「はぃ」
「卵屋の人に聞いたんだ。卵の薄皮は肌を綺麗にするらしい」
「……」
卵屋の女性は肌が綺麗だったし、嘘を言ってる様には思えなかった。
続ける事が大事なんだろう。効果は有る筈だ。
「朝は毎日玉子焼きになるが、昼や夕食で何か食べたい物は有るか?」
「いえ、特には無いです」
玉子を焼き、他にも牛乳とパンで朝食とした。
相変わらず会話が無い。少し寂しい。
食事が終わり食器を片付け、出かける準備をして、昨日のチョコレートを出す。
「チョコレートをあげるから昼間、食べて良いぞ」
「有難うございます」
「魔石の開け方分るか?」
「いいえ」
「卵のように割ると中身が出せる、外皮はしばらくすると消えて無くなる」
「有難うございます」
「水の魔石も置いておく。使い方は一緒で卵の様に割れる。コップに注いで煮沸しないでそのまま飲める」
「はぃ」
チョコレートと水の魔石を渡した。甘い物を食べて少しでも元気になって欲しい。
気に入ってくれたらチョコレートを多めに取りに行こう。
ダンジョンに入り、治療に使う魔石と、お酒の魔石を大量に採った。
気に入るか分らないが、チョコレートも魔石も採って出て来た。
マエコちゃんに会えなかったのは、少々残念に思う。
帰りに食材を買いに行く、何をどれ位食べるか分らないから、少し日持ちする干物や燻製と野菜は漬物を多めにした。
パンばかりも良くないかと、お米と乾燥うどんも買って、最後に卵屋に寄り帰った。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
あぁなんか良いぃ、少し新婚気分だ。エプロンでも買ってこよう、お迎えには必須だ。
家に入ると、お風呂の準備も料理の下拵えも出来ていた。
今日は洗濯もしてくれた様だ。窓を少し開け部屋干しだけど、外に出られないからだろう。チョコレートが良かっただろうか?
完全に萎えて諦めた訳でもない様で安心した。
「チョコレートは美味しかったか?」
「はぃ、美味しかったです」
「それは良かった。今日も一つ持って帰った。また明日食べるといい」
「はぃ有難うございます」
チョコレートは人気商品だ、食べ過ぎると肌が荒れる可能性は有るが、元気になってもらう事が大切だ。
「昼間の家事と夜の治療を頑張れば、またチョコレートを採ってくる」
「はぃお願いします」
頑張ってくれると言う事だろうと受け取った。
風呂と食事を終え、今日も治療する。
「化膿していた部分は良くなって来た。次は顔を重点に治してゆく」
「はぃお願いします」
治療も今日で三日目だ。化膿していた部分が改善し、これで死ぬ事は無いだろう。
明日からは見える部分を治し、外出できる様にしてやりたい。
だが、いまだに怖がっている様な痛がっている様な? 辛そうな顔をする。
「ミディアム、服を脱いでくれるか」
「……はぃ」
昨日隅々まで確認してるし平気とは思うが、今日怪我をしてないとも限らない。毎日の確認は必要だ。目の保養では無……くも無い訳で、新しい下着が欲しいな。いや下心は少ししかない。
「今日は終わりにして寝よう」
「はぃ、おやすみなさい」
一緒の布団で寝たいと思うが先はまだ長そうだ。
今はまだ別々の部屋で別々の布団で寝る。
ミディアムとの生活は始まったばかり、まだまだ、これからです




