第1話 王子の決意
新連載です!
異世界の王子が頑張る話です!
「なあ、キビン。」
「どうされましたか?アレンス殿下。」
「…どうしても決めなきゃダメ?」
「そうですね。決まりですし。」
「…やだ。」
「は?」
「やだやだやだ!妃選定とかやだあああああ!!!」
「…はあ…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここはベリカント大陸最大の国、パルヴィラ王国の王城にある王太子の部屋。
部屋の主であるアレンス・ライ・エイボーン王太子殿下は従者であるキビンを座らせ、自身は部屋を往復しながら話をする。主人が立って従者が座っているという、この国では奇妙な光景ではあるが、それを突っ込む者はいない。
「そもそもだよ、キビン。今現在、我が国の政治は誰が取り仕切っているんだい?」
「レバーン首相ですね。全国民の選挙により選ばれた、とても優秀な方です。」
「そう!つまり王族は何もしていない!」
「何もしていないわけないでしょう。」
「つまり!いなくても良い!」
「話を聞いてください。…殿下、王族の役割はご存知ですよね?」
「…」
「殿下?」
キビンの圧に負けたアレンスはポツポツと話し出す。
「…国事儀礼及び他国の要人の歓待、海外訪問、慈善事業団体への支援。」
「それに国民の象徴としての交流ですね。政治的な実権は無いものの、我が国の象徴として、無くてはならない存在です。」
「…でも…」
「殿下、我が国は2000年以上続く歴史ある国家です。そして、王族であるエイボーン家は大陸…いえ、この世界に現存する家系の内、いえ、歴史上最も長く存続している伝統ある王族です。それを途絶えさせるわけにはいきません。」
「お、弟たちがいるだろう!」
「ええ。我が国の王子は3人。ですが、長男である殿下を含めて皆様成人年齢である20歳を迎えられておりません。ましてや、殿下はまだ18歳、第2王子のアイバン殿下は10歳、第3王子のアンドリュー殿下に至っては8歳でございます。」
キビンはキッパリと告げる…が、アレンスは何かを言いたげな表情でキビンを見る。
「では殿下、こうしましょう。」
そう言ってキビンは立ち上がり、アレンスへ近づく。
「妃選定を行わない理由を作れば良いのです。例えば…事前に妃となる方を決めていただいたり、何かしらの理由で選定が行われないようにしたり…」
「それだ!」
キビンが言い終える前に、アレンスは叫んだ。
「殿下?」
「妃選定が行われない状況を作れば良いんだ!」
「…と、言いますと。」
「現在候補になっている令嬢全てに、諦めてもらえば良いんだよ!」
「…はい?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
キビンは部屋をうろうろ歩きながら、椅子に座っているアレンスに向かって語りかける。
「殿下、妃選定のルーツはご存知ですよね?」
「もちろん!我が国が建国されて300年が経った頃、当時の王は権威を維持するために身内同士の婚姻を行い続けた。」
「そうですね。その結果どうなりました?」
「子供が産まれにくくなる、または短命になってしまった。だから、今度は他所の家から妃を選ぶことになった。」
「そうですね。ですが、それだけではその問題を解決しきれませんでした。ですので…」
「今度は、権威を維持するために多くの妃を作り、大陸東部の文化を元に、後宮制度を作った。」
「その通りです。伝統あるエイボーン家を存続させるためには、確実に子孫を作ることが必要ですからね。」
「その結果…妃の数が多くなり、後継者問題が激甚化した。」
「子孫が多すぎると、このような事態になるのですよね…そうして始まったのが許嫁制度ですね。」
「ああ。ただ…様々な派閥が権威を得るために争いが始まった。外国の王女との婚姻を繰り返せば良いとの意見があったが…」
「そう都合良く周辺国に王女が産まれることはありませんからね。」
「更に、大陸の殆どを支配してしまっている以上、周辺国の数が少ないので、言い方は悪いが手札がすぐに無くなってしまう。」
「それに、各国家間でも関係性によっては諍いが起こる可能性がありますからね。我が国が争って負けることはそうそう無いとは思いますが、争いは無いに越したことは無いですからね。」
「そういった争いを避けるために、周辺国の王族、我が国の貴族令嬢を後宮に集めて、公平な判断を経て将来の妃を決める【妃選定】が始まった…と。」
「王政から脱却した初の王太子である現国王陛下もこの方法で妃を選ばれています。私としては、現時点では非常に良いものだと思いますが…殿下は何が不満なのです?」
キビンがそう問いかけると、アレンスは少し気恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「…今はまだ言えんっ!」
「…なるほど。」
キビンはアレンスの態度に、何かを察した。
キビンは少し考えたあと、アレンスに向かってお辞儀をした。
「…わかりました。協力しましょう。」
「…!本当か!」
「ええ、少し興味が湧きました。」
「キビンがいてくれると頼もしいな!一緒に頑張ろう!」
「ええ。」
こうして、2人はパルヴィラの【妃選定】を崩壊させることを決意した。
そしてこの決意が、パルヴィラ王国の歴史に残る大騒動の引き金になることを、2人はまだ知らなかった…
~~~~~~~~~~~~~~~
「それで殿下、策はあるのですか?」
「これから考える!」
「あ、はい。」
次へ続く!
何も考えてへんのかい!考えてから言えや!




