う〜んシビア
『聞きたいのは共鳴だったか? 余も初めてのことだがな。今ハジメに名をつけられたことで感じたのは共鳴だな』
「うん。説明がまんますぎてわかんない。詳しくプリーズ」
腕を組んでドンと構えて、なんの説明にもなっていないテンコに改めて促せば、その髪をかき上げながら嬉しそうに笑う。
『人に共鳴するなんぞ思ったこともなかったが、竜族は見てくれでも鱗の色にもお前たちで言う遺伝がない。それに魔力も繋がりと言うものがないんだ。竜は卵から生まれ親は飛び方まで教えたら巣立たせる』
「そっか、厳しいな」
『魔力の使い方なんぞその身で感じねば使えんしな。使えんかったら死ぬだけだ』
カッカッカと豪快に笑うのに「う〜んシビア」と苦笑いを返せば、テンコはその手を俺に向けるとそのままゆっくりと俺の胸に手を当てた。
『共鳴なんぞするつもりは無かったんだ。でもお前から親父殿の力を感じた。そしたら年甲斐もなく懐かしく感じて気付けば共鳴しとったわ』
優しさと寂しさの入り混じった視線に言葉を返せずにいれば、その当てられた手から熱を感じる。
『共鳴とは相手の魔力と鳴り合い混じること。ハジメはヒトだからな。身体も共鳴してこんな小さく弱く脆くなったのだろう』
「人の事ズタボロに言うじゃん」
『しかしそんな弱いお前たちの生きる意味とはなんなんだ? 我ら竜族は強くなる為、エルフは探究する為、ドワーフは作る為などと言う。なのに人は聞いたことがない。弱く、脆く、器用なわけでも、著しく賢くも、そのうえ短命であるがゆえにエルフのように探究し続けることも出来ん。ずっと不思議だったんだ』
俺の言葉を聞いてるようで聞いてないようだと苦笑いを返す。
しかしされた質問は、そんな人生の結論を出させるにはまだ若輩者すぎると、なんとなく周りを見渡せばキヨラやデックス、それに今まであった人々に、……何よりアオの顔がよぎる。
「……共に、生きる為かな」
『共に?』
無意識のようにこぼれた言葉は妙にしっくりときて、改めてテンコを見て続ける。
「俺たちはさ、弱いから。一人で生きるなんて出来なくてさ。俺一人では回復魔法もないし、食事だって誰かが作ってくれた素材がなきゃまともに美味しいご飯も食べられない」
『食事なぞ生きる為に口にすればいいだろう』
当たり前のようで、俺たちには当たり前でないテンコの言い分に首を振る。
「人はさ、ご飯が美味しくないとしょんぼりするし、しかも誰かと食べなきゃ美味しくないし、寂しいし……。それこそ『美味しいね』なんて言い合って食べたら美味しくなくても美味しくなるし、誰かと『おやすみ』って言ってから眠れば安心して眠れるんだ」
『なんだそれは』
「なんだろうな」
自分でも取り止めのない事だと口にしていれば、キヨラがそっと手を握ってくれる。
「僕は、ハジメといるからこうして旅立ててるし、前を向けてる。もしハジメがいなかったら、僕はきっとこうして旅する勇気も、笑う事だって出来なかったと思う」
キヨラの言葉にテンコはいぶかし気な顔に顔を向けると、
『むしろそれは「依存」ではないか?』と聞く。
「うん、そうだな。俺たちの生きる意味は依存かもしれないし、共存なのかもしれない」
スマホさえあれば会えない相手へ電話もメッセージアプリだって繋がりがあれば安心するし、誰に向けてるのかわからない配信や呟きも、誰かに共感やいいねと言われてやっぱり繋がりを感じてホッとした。
「生きる意味なんて、誰かと繋がっていたいからかな」
『己の命すら守れないのにか』
「そだね。共に生きて……支えあう」
『なんだそれは』
その言葉に俺は笑って、
「それが大事なんだ。人は弱くて一人でなんか生きられないから、人は共に生きるんじゃないかな」
キヨラと手を繋いで今度は迷いなく答えた。
『弱いから、共にか』
「テンコは強いから一人で生きられたんだろ?」
『そうだな。弱ければ死ぬだけだ』
それ以上は続かなくて、どうしたのかと待っていればテンコは突然笑い出す。
『カッカッカ、ヒトのことは言えんな。余とて親父殿が死んだと知って、その匂いを辿ってこうしてこの森まで来たのだ。余も親父殿と共存したかったのかもしれん。……まだまだ弱いようだ』
「それは仕方ないよ。親だからな。俺も会えるなら会いたいよ」
「僕も……、僕だってそう、会いたいよ」
思わず吐露した俺たちの弱音に、テンコは両手を広げて俺たち二人を一気に抱きしめてくれる。
『以前ヒトがこうしているのを見たことがある。理由がわからずいたが、そうか。暖かいのだな』
「そうだな」
「ちょっと暑いくらいだけどね」
憎まれ口を言うキヨラだがその顔はなんだか照れ臭そうで、俺も手を伸ばしてテンコとキヨラを抱きしめる。
「俺らにとっては依存でも共存でもなくて、それって信頼とか支えとか、拠り所ってことだな」
『面白い言い回しだな。カッカッカ、親父殿ももっと生きていれば楽しかっただろうに、残念だ。しかしまあいい。その分余が楽しもう』
俺たちから離れて点を見上げてテンコが告げれば、キヨラは「うん。それでいいと思う」と、なんだか大人びた顔して笑った。





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