つまり天を統べるもの!
その日は空からポツポツと雨粒が落ちてきていた。
「ねぇ、結界の中でも雨降るんだね」
「あったりめぇだろ?屋根じゃねぇんだから」
キヨラの言葉に呆れたようにデックスが返せば、キヨラの頬はムッとしたように膨らんだ。
「てゆーか早く返してよ僕のカツラ! 一晩って言ったくせにもうかれこれ一週間は経つよ!?」
「そりゃ……あれだな。オレッチらとヒトの時間の流れの違いってやつだよなぁ村長」
「そうじゃそうじゃ」
「堂々と嘘つかないでくれる!?」
そんなギャァギャァと騒がしい中、俺はずっと机に向かっている。
「ってゆーかハジメも! いい加減竜の名前決めなよ!!」
「だって変な名前つけらんないじゃん!?」
矛先がこっちにきたと焦れば、キヨラは俺の前に入り込むと名前のリストに目を向けて、
「これにする!」
「いや、ちょっと待って。俺もそれは悪くないかと思うけどさ、ほらもっといい名前があるかも……」
「無いから! 僕がこれと言ったらこれ!」
そう言って出された最初の方になんとなく書いた[テンカ]。
「天下泰平、天を駆ける者! ピッタリじゃない!」
「確かに!!」
「決定ね!」
「いやでもちょっと、俺のこっちのも……」
自分の中の他の候補も挙げようとしてる間に、キヨラは窓を開けて「名前決まったよ〜〜〜!!」と大きな声で竜を呼んでいた。
***
そんなこんなで外。
俺の前にはワクワクとした顔でビターンビターンと尻尾を左右に揺らす竜。え、わんこかな? ただそのビターンビターンだけで殺傷能力強そうだけど。
「えっと……実はま……」
『待ちくたびれたぞハジメ! 聞けばヒトだけでなくエルフも個々に名があるそうだな! 何かを欲しいなどと思ったこともないが、そう聞くと楽しみになるものだと待ち侘びておったわ!』
キラキラと輝く瞳を見上げればまだ決定してないだなんて言えなくて、俺はキヨラを見るがその目は明らかに「早く言って」と告げている。
「えっと息子殿の名前は……」
『フム!! 良い名であろうな!! こんなにも悩んだのだ! 吟味に吟味した名でないとな!』
竜の大きな目がぎらりとこちらを向けば、プレシャーが半端ないとキヨラに助けを求めるがさっき以上にその目は「早く言え」と……。
「命名しまぁぁぁす!! 名前は テンコ れすッ!!!」
しまった、噛んだ! と、思った時には目の前では豪快な笑い声。
『カッカッカ!! [天の子]か! つまり天を統べるものか! それはいい!!』
「あ、いや」
なんとなくジトっとした目のキヨラがこちらをみてる気もしながら、訂正するには気に入ってくれたならばいいのかと思った時、彼の身はまるで白いモヤに包まれて、俺たちの周りは真っ白に変わる。
思わずキヨラを心配して駆け寄ろうとした時、俺の腕が掴まれて振り向けばそこにはギザギザとした歯。
止める間も、逃げる間もなくその口は俺の顔に向けられて、思わず硬直してしまった時、周りの霧が晴れていくのが見えた。
「……は?」
キヨラのなんだかドスの聞いた声が聞こえて、まだ食べられたわけじゃなさそうだとそっと目を開ければ、そこには全裸の青く艶めく髪の男が俺の…………
「ちょっと!! 何ッ!?」
「イッテェェェェェェ!!!」
キヨラが駆け寄る前に叫ぶ俺に、目の前の男は俺の鼻から口を離した。
『カッカッカ! ヒトの皮膚とはかように弱いものか!!』
「その笑い方……、竜の?」
鼻を抑えながら聞けばその俺よりも背の高いイケメンはニヤリと笑うと、
『竜のではない。おぬしがテンコと名付けてくれただろう?』
そう告げた。





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