親父殿も安心して天に帰れるだろうな
「トニトロスはエルフの村、結界から出たエルフがいれば片っ端から殺した魔族だ。……少しヒトやエルフと交流したいた物も出てきていたのに、今や閉鎖的な村に逆戻りをしたよ」
「ドワーフ族も以前はヒト族と、武器の開発、それに鉱石の共有とか始めてたけど、今や女神の結界のある一部の街やなんかにしか住めねぇようになった。……なによりその時同胞が……どれだけ殺されたか……!!!!」
デックスの肩に手を置くトニトロスさんも声にこそ出さないが、その視線に悔しさが滲むのがわかる。
「ハジメ、キョーラ!! そいつぁどこで見たぁ!?」
怒りに燃えたデックスの顔に思わずたじろいでしまうが、横からじっと見つめていた竜が口を開いた。
『聞いたところでおんしらでは勝てんだろう。親父殿でも逃げきれないと諦めたのだ』
「やってみなきゃわからんだろ!?」
『わかるさ。まだまだ若いドワーフよ。若さにかまけて己の実力を鑑みることもできないか』
淡々と話をされて、デックスは何か言いたげではあるものの、カエストロさんにも肩を叩かれ首を振られては、怒りの滲んだ瞳は揺れてその肩を落とした。
『賢明な判断だ。若いドワーフよ。魔族との戦力差は大きい。……そうだ。ハジメ、お前たちはどうして生きながらえたのだ?』
「兄貴が亡くなった時に、竜の羽ってアイテム落としてくれて、それでその場から逃げられたんだ」
『そうか。親父殿は死してもお前たちを救いたいと願ったか』
「うん。事実助けられた」
『何よりだ。親父殿も安心して天に帰れるだろうな』
ゆっくりと呟いて、思いを馳せているのか竜は空を見上げている。
「兄貴に聞き忘れて後悔してたんだ。竜さん。あなたの名前教えてくれないか? さっきからそっちは呼んでくれてるけど、改めまして……俺はハジメ!一番のイチって書いてハジメ! でもビックリすることに長男じゃなくて二男の……」
『名などないな』
「ナイの!?」
自己紹介の途中に止められたなんてどうでもよいほどの衝撃に、思わず聞き返せば竜は『カッカッカ』と笑って、
『必要がなくてな。親父殿は息子と呼ぶし、他のものは竜と呼ぶ。他の竜と会うこともそう無いし、もし会ったとて色で呼ぶな。親父殿なら「黒」自分ならば「蒼」と言ったところか』
「アオ……」
その名に心当たりがあって思わず呟いて終うが、俺は笑って彼を見上げる。
「それなら名前をつけようよ! 俺はあなたの名前を呼びたいんだ! そんな色でじゃなくてさ! 兄貴も……あなたの親父殿もさ、俺名前知らないまま別れたの後悔してたんだ」
『そうなのか』
「うん。だからさ、考えようよ」
笑って言えば竜は笑う。
『ならばハジメが好きにつければ良い! 我はこれからそれを名乗ろう!』
「責任重大!!」
『そうだ! 重大だぞ!!』
そう言って楽しそうに笑う竜は『エルフ、ドワーフ、暫く結界の中で世話になる』と悪びれもせずに言った。





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