ごめん。俺が話すよ。話さなきゃ
「なんだあれ!?」
遥か上空で暴れる何かは、太陽の光でよく見えずに目を凝らしていると、扉から出てきたカエストロさんはそれを見上げてため息を吐くと、何かを呟きそちらに手を向けると、その手の先には魔法陣が現れる。
「うわ! ヤベッ! カッコい!!」
「何あれ! 僕もやりたい!」
「俺も! 俺も!」
完全にただの外野で盛り上がる俺たちを気にした様子もなくカエストロさんはそこに向けてそれを放てば、空にいたソレは攻撃されると思ったのか一度離れたようにも見えたが、空には丸く何かが開いたかのようになる。
するとその体当たりしていたモノは、警戒したのか一度周りを飛ぶと、その円を通ってこちらに向かってきた。
「ねぇハジメ。……あれって……」
「…………あぁ」
屋敷の目の前に着地したそれはまごう事なく……竜だった。
***
カエストロさんと何かを話していたようだった竜の前に屋敷を出てその前に立てば、唸るような声をあげられる。
「なんだい? 知り合いかい? 随分嫌われてるみだいだね」
「……直接は知らないんだけどね。でも……知ってるんだと、思う」
空の輪は閉じられていて、きっと前に聞いたこの一帯の結界を竜に壊される前に開けて閉じたのだろうと推測しながら、ただどんな顔をしてこの彼の前に立てばいいのかと、ただゆっくりとしか進まない足を前に出す。
「……兄貴の、子かな?」
『お前が殺したのか!!?』
ビリビリと低く響く声に小さく頷けば、その口は開かれて俺の前に現れたところで、透明な壁が憚かる。
「馬鹿ハジメ!!何素直に殺られそうになってんのさ!!」
『聖女か!!?』
「そうだよ!! 悪い!?」
俺を守りつつも目の前の竜にも物怖じせずに言うキヨラに、俺は一度頭を振ってからその肩に手を乗せた。
「悪い。ちょっと頭、真っ白になっちゃってたわ」
『竜殺しめ!!!』
その言葉は俺に突き刺さり、震える唇を開き彼を見上げ、
「……ごめん。アンタの親は、確かに、俺が……殺っ……」
でもそれ以上の言葉は出なくて、ただその言葉を口にしたことで改めて自覚して、アホみたいに涙が溢れた。
「……見てわかるでしょ!! ハジメは好きでそんなことしたんじゃないよ!! ハジメがやらなきゃどっかの魔族に殺されて、ただの一つの称号になってただけなんだから!!」
『だからソイツの称号にしたのか!!!』
「人の話聞かないなぁ!!!」
そう言いながらも気圧されているのか、キヨラの頬には汗が浮かんでその身体は小さく震えているのに気がつく。
「ごめん。俺が話すよ。話さなきゃ」
キヨラが見上げてくるその顔に下手くそな笑みを浮かべれば、俺たちと竜の間に大きな木が突然生えて立ち塞がると、
「まぁまぁ、ヒトの子を殺すなんて訳ないんだからさ。まずは一旦、ゆっくり話をしてみようよ。私もなにがあったか気になるしね!」
そう言いながらカエストロさんはあっという間にその木を種に戻して笑って言ってくれた。
『親殺しと話す気はない。エルフは邪魔をするな』
「そうは言ってもさ、私は彼らが実験の約束してくれてるんだから、それ試したいんだよね」
「実験の約束はしてないかな!!?」
怖い変換されていたと思わずツッコミを入れれば、なんだか日常になったと、一つ息を吐いて改めて竜を見上げた。
「竜の兄貴は…………ごめん。本当の名前も聞かなかったけど、魔族に殺されそうになってた」
『……なんだと!? 何故山を出たんだ!? 隠居するとあの山の祠のある洞窟で暮らしていたはずなのに……!!』
この言葉は酷かもしれないけれど、そうだ、兄貴は伝えて欲しいと言っていたのだと思い出す。
「死ぬ前に息子に最後に会いにって、言ってた」
『……!!』
彼はそう聞くと、ただその広がっていた羽をゆっくりと下ろしていった。





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