あれだよね。典型的なオタクだね
「いってぇ〜……」
青空の下。目が覚めると同時に呟いていた俺のそんな嘆きに、慌てるようにキヨラが近付き、そのまま回復魔法を使ってくれる。
「ハジメ! 大丈夫!?」
「いや、寝てる間に使ってくれたら目覚めよさそうだったくらいだなぁ」
「ごめん。止められてたんだ」
先程まで痛んでいたお腹を摩りながら身体を起こせば、まだ日は高くて、そんなに時間は経っていないのだと気づく。
そしてキヨラの『止められてた』の答えを聞くよりも、カエストロさんが近くの切り株に座りじっとこちらを見ているのに目を合わせる。
「なんスか?」
「さっきのはなんだい?」
なんだいと聞かれて、思い返しても先程までの圧倒的な差に思わずジトッとした目を向け、
「なんだいもかんだいもないっスよ。明らかにレベル差がある俺にあんな躊躇いなく魔法使いますかね」
痛いんですけどと自分の腹を指差して聞けば、カエストロさんは納得のいっていない顔でやはりジッとこちらを見てくる。
「さっきのはなんだい?」
「いや、知らんし」
同じ質問されてもと、それ以上の言葉は思いつかずに返せば、カエストロさんはやはり変わらず不思議そうにこちらを見てくる。
「悪かったね。なんてゆーか、アレは君を攻撃したんじゃなくてさ、私の身を守るためみたいな感じだったんだよ」
「いやいや! あんなん一方的な暴力ッスよ」
いくら手を出しても届かない実力差に、さらにあんな魔法なんか使われてはたまったもんではないとまだ心配そうにこちらを見るキヨラの頭を撫でながらため息を吐く。
「そうはいっても元々私は君の魔法を見たかったんだけど」
「……あ゙」
それはそういう話だったのと思い出すが、いやいややはり空気を掴む手を人に使うのは怖すぎるし、カエストロさんみたいなイケメンエルフがグシャリとなった日には俺もう罪悪感とエグさでご飯食べれなくなっちゃうからと、頭を振る。
「いや、人に使うようなアレじゃないんスよ」
「ならこの種に使ってみてくれるないか」
「種?」
目の前に出されたのはチューリップくらいの球根。
それを座っていた切り株に置くと、カエストロさんは少し離れて「さぁどうぞ」とにこやかに笑われて、仕方ないと俺は手を伸ばしその手を握れば、その球根はグシャリと潰れた。
「……こーゆーのッス」
「なるほどなるほど! 興味深いね!」
カエストロさんは駆け寄ると片付け、また新たな球根を置きキラキラした目で「さぁどうぞ!」とデジャブなくらいにまたこちらに告げる。
俺はため息混じりに付き合うしかないと、またその球根に手を伸ばして手を握った瞬間。
「目覚めよ」
そのカエストロせんの呟きと共に、突然握っていた手は少し骨でもいったような音と共に弾かれるように開かれた。
「なるほどなるほど!」
「なるほどじゃねぇってば!! イッテェェェェ!!!」
涙目で告げれば、キヨラが慌てて直してくれる。ありがとう聖女さま!!!
「今、君がこの子を潰そうとした時、私がこの子を目覚めさせてね。君の潰そうとした魔力を上回ってこの子に魔力を流したものだから君の力は弾かれてその手にもダメージが行ったんだよ!! 何故なら魔力が切り離されてないからね!!」
「俺、一息で負け突きつけられて、なんかディスられてない!?」
酷くないかと続けて告げるも、「魔力の乖離が出来ないのは異世界人の特徴なのか」とか「だから繊細な魔力の誘導が出来るのか」とか、人の話を聞いてる様子はない。
「カエストロって人、あれだよね。典型的なオタクだね」
「……だな」
キヨラと2人で呆れて見てれば、「おーい! 落ち着いたなら一杯やろうぜぇ〜」と、俺が倒れてた間にでもいなくなってたデックスが、ビーズエールを籠に入れて満面の笑みで戻ってきたのを、キヨラは「エルフもドワーフもどこまでもマイペース集団だね」とあきれた様に呟いた。





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