……そんな不意打ちで言われても
「さぁどうぞって……」
ニコニコと微笑むカエストロさんだが、空気を掴む手をどんなものかも知らない相手に使うには怖いと、一瞬相談するように少し離れた場所のキヨラを見て、やはり断ろうと思えてもう一度視線を戻せば、何かが視界を塞いだ。
「……っ!!?」
言葉を出す間すらなくそのまま足を後ろから蹴られ、その視界を塞いだソレはカエストロさんの手だと理解した時には、空を仰いでいた。
「う〜ん。体格は良いとはいえ、ハジメは全部がまだまだだね」
「……そんな不意打ちで言われましても……」
「なら魔物が『攻撃先にどうぞ。遅ければ襲います』って告げてくれるのかい?」
笑っているがどこか馬鹿にしたようなその笑みに、些かカチンときてしまったのも否めないと、俺は立ち上がり、空手で習った型を取る。
「ふぅん? 面白いね。いいよ。おいでよ。私は手を出さないからさ」
口ではそう言うものの、無防備に目の前に立つ彼に隙は見えない。
「……ハジメ、何してるの? なにかしたら?」
キヨラの訝しげな声は聞こえても、こればかりは対峙して感じるものなのだと、じんわりとした汗が背中を伝う。
「さぁ、はやくおいでよ」
変わらぬ笑顔のままの言われたその合間に一気に踏み出し自分の間合いに入り右手を振り出すが、カエストロさんは焦る様子すらなく少し身体を逸らしただけでその頬を掠めもせずに躱されるのは、余裕の証拠。
「魔法はどうしたんだい?」
「そう……焦らせないで下さいよッッ!!」
言葉と共に更に踏み出し、右手左手と連続で繰り出せば、その目は細まり少しだけその余裕を取れるかと、回し蹴りを繰り出すがやはり躱された。
「面白い動きをするね。誰かに習ったのかい?」
「えぇ、師範に……ッ!」
拳と蹴りを連続で繰り出し、その度に少し殺気とも感じるその雰囲気に、自分の動きのせいというよりも、その恐怖に息が上がるのがわかる。
「なるほどなるほど。うん打撃はなかなか鋭いよ。良い師匠に習ったのだね」
返される言葉には余裕があると、当たらない拳と脚は何度も空を切る。
「そりゃもう、良い師匠たちでした……!!」
「たち?」
その顔面を目掛けて繰り出した拳をカエストロさんが左に避けた時、彼の目からは俺が消えたように見えたかもしれない。
「うぉりゃぁっ!!!足取りぃぃ!!!」
こんな格差のある相手に空手の拘りなんて持ってられるかと、一気に下へとしゃがんでそのヒラヒラしたスカートの様な服に包まれた細く長く白い足を取って、その背を地面に叩きつけようとした時、
「母なる大地よ!! 我が命に従え!!」
まるで焦ったようにカエストロさんが叫べば、先程まで茶色の土壌しか見えていなかった広場から俺たちの周りに一気に木々が生えて……そのあり得ない速度で育った木に俺の鳩尾にぶち当たられると、俺は気を失ってしまった。





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