本当に何も知らないのだね
「つまり……どゆこと?」
わかるようでわからんと質問を返せば、カエストロさんは笑顔で「弱いってことさ」とはっきりと告げてくる。
「えっと……、僕はハジメの魔法にずっと助けられててここまで来たので、弱いってことはないとおもうんですけど」
「それは相手が弱かったからじゃないかな? 強い相手なら魔法ごと破られてしまうよ」
それは……あの牛みたいなツノの魔族に、空気を掴む手を斬られた時、実際の手からも血が噴き出したのを思い出し、ついその手を見つめると、
「思い当たること、ありそうだね」
そう言われて頷く。
「本来魔法ってものは体を巡ってはいるが、外に出せば別の物と思ってくれていい。例えるならば血液をこぼして、外部に出てそれを傷付けても本人は傷付かない、それと一緒さ。では少し君の魔法を見せてくれないかな? 場所は裏の広場でいいかい?」
カエストロさんはなんだか楽しそうに立ち上がると、躊躇わずに部屋を出て行くのを慌てて追いかけていけば、デックスも横に来て「悪ぃな。あれ、とことんマイペースなんだわ」と呆れたように言っていつの間にか駆けるように歩くカエストロさんを3人で追った。
*
「さて、君の魔法見せてよ!」
「ちょ……あの、待って……」
裏の広場は思いの外遠かったと、ゼーハーと整わない息を必死でしながら涼しい顔のカエストロさんとデックスに告げる。
「てゆーか、お前さんキョーラのこと甘やかしすぎじゃね? 途中にキョーラが遅いからって背負ってんなよ」
呆れたように言われるのも、明らかに置いてかれてたキヨラをほっとくわけにもいかないと思ったのだから仕方ない。
「まぁ見たところキョーラさんも洗礼すら受けてないみたいだし、魔力の巡りが悪いから仕方ないか」
「……洗礼ってなんですの?」
「なんだよ。ヒトは異世界から飛ばされて来たやつに誰もそんなことも教えねぇのか?」
呆れたように頭を掻くデックスを俺たちが見れば、デックスは困ったようにカエストロを見上げる。
「そうか。君たちはコータと一緒か。本当に何も知らないのだね」
「あー、だから逆にエルフの結界も通り抜けたんか」
何のことかわからないと続きを待つが、カエストロさんはやはり「とりあえず魔法見せて」と楽しそうに言ってきた。
「あの、でも俺の魔法、致死率高いってゆーか……危ないですよ?」
人に……いやエルフに向けてやるのは怖いと思うが、カエストロさんは「問題ないさ」とデックスを遠退かせると「さぁどうぞ」と手を広げた。





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