マユと二人の話(マユ視点)
2016年8月17日変更
タイトルがリリーシェ視点になっていたので修正しました。
マユ視点です!
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ユウキさんの姿が見えなくなって三十分。
「そろそろ行きましょう。皆さん準備は良いですか?」
アルさんの魔法で作られた火柱も消火し終えましたので、そろそろ向かってもいい頃合いでしょう。
「準備は出来ていますが、どのようにユウキさんを追いかけるのでしょうか?」
弾んだ声に興味を混ぜてアルさんが問いかけます。
「下を見てください。どこかこの辺で細長い穴が開いていませんか?」
かがんで草を掻き分け、穴を探します。
ユウキさんが追跡したなら地面に印が残っているはずです。
「穴って言っても……。ああ、これかしら?」
「動物の足跡……にしては深いですね」
リリーシェさんが野草を貫いて地表がめくれている穴を見つけてくれました。
ユウキさんが足の裏を肉体変化させて作る印です。
初めに探すのが少し難しいですが、一度見つけてしまえば一定の間隔で点々と続く印を追いかけるだけです。
「ユウキさんの歩いた跡です。最短距離にはなりませんが……わかりやすいので私たちはこれを目印にしています」
杖で穴をつつきます。
「靴底に仕掛けを付けているんですね」
「色々やってるのね」
「こういう冒険者の技術は冒険者ギルドで定期的にやっている講習会で教えてくれますよ。お金がかかりますので受講者は非常に少ないようですが……」
杖で藪を掻き分け掻き分け、のんびりとユウキさんの足跡を追いかけます。
リリーシェさんが身体強化をせずとも悠々な速度です。
といっても彼女を気遣っているわけではなく、足跡探しにそれくらいかかるだけですが。
ときおり見失いながらも三人で探せばあっさりと足跡は見つけられました。
アルさんとリリーシェさんがいてくれて良かったです。
普段は一人で探していますので……藪の深い場所で見つけるのはちょっと大変でした。
お二人は貴族の方でも話しやすくて、わたしの持っていた貴族のイメージを変えてくれそうです。
わたしの偉い人のイメージは……税金を取りに来る代官さんとレイナ・クリストファーさんだけですので、ちょっと怖い印象がありました。
「あ、ユーキが居るわね」
ゴブリンたちも遠くに拠点を構えたものです。
足跡探しに下を向き汗で前髪が額に張り付いてきた頃、リリーシェさんが森の入口に立っているユウキさんを発見しました。
ユウキさんが入り口に居るということは掴んだ物があるのでしょう。
「こっちこっち」
左手を小さく挙げ、疲れた様子で私たちを呼びます。
「お疲れ様。ゴブリンたちについて良い知らせと悪い知らせがあるよ」
ユウキさんは身体強化を使っていないようです。
ここまで二時間弱。使い続けていたならユウキさんの魔力量では余裕がなくなってくるころです。
「ユウキさんもお疲れ様です。あ、葉っぱ付いていますよ」
ユウキさんの素敵な黒髪に付いていた葉っぱを取ります。
心なしか汚れているようにも見えます。
「ありがと。まず、ゴブリンの居住地は発見したよ。もう使われてない木こり小屋を巣にしてしているみたい。素の周囲に罠はなし。中にはかなりギュウギュウ詰めでゴブリンが住んでる……と思う。確認はできてない」
「わかりました。これは良い知らせですよね?」
アルさんが確認します。
「うん。これだけなら家ごとアルくんの火魔法で燃やしちゃえばよかったんだけど……」
森の中で火を焚く物騒な作戦もわたしがいればこそです。
家一軒の鎮火ぐらいわけありません。
「どうも中に何か居るみたいなんだよね……捕まった人か敵かもわかんない」
案内するから作戦を練ろうと言って、ユウキさんが歩き出し三人は付いていきます。
一番前にユウキさん、その横に身体強化を使用したリリーシェさん。
後ろに身体強化を使用したわたしとアルさんです。
肩で風を切るぐらいの速度を足元の不安な森の中で苦もなく出していきます。
「なるべく木の枝は踏まないで。音が鳴るから」
「落ち葉はいいの?」
「落ち葉まで気にしてたら動けないよ」
苦笑しながらもずんずん進んでいきます。
道中運悪く出会ってしまったゴブリンはリリーシェさんが出会いがしらに倒してくれて仲間に報告させませんでした。
「あそこ。何体か外で見張りしていたけど、ケガしたゴブリンが帰ってきたら中に入っちゃった」
ユウキさんが指差したその先は、少し開けた場所に建つ一軒の小屋でした。
何年も取り換えられていないだろう歯抜けた藁の屋根が印象的です。
遠巻きでも家の中からゴブリンの甲高い鳴き声が聞こえてきます。
「どう……何か聞こえてこない?」
ユウキさんは口元で人差し指を立てて静かにするよう指示します。
指示に従って耳を澄ましていると、中からかすかに笛の音のような細く、そしてこれまた高い音が聞こえてきました。
ゴブリンがキーキーやギーギ―と表現する鳴き声なら、笛の音はピーピーです。
指摘されなければ同一視してしまいそうな差異ですが、別物と思って聞き分ければたしかに違う鳴き声です。
「人間、でもないと思うんだけど。焼き払うのはどうかと思って」
「この声は……ピクシーかもしれません」
そう答えるアルさんも確信はなさそうでした。
ピクシー。ギルドで以前勉強しました。




