抜け道策謀中
と、思考が横道にそれてしまった。
何が言いたかったかと言うとCでも相当の実力者で、Bランクなんて週一冒険者が目指せる領域じゃないってこと。領主の目に留まりたいなら軍に入って機会を待つ方が早いまである。
それでも冒険者として仲間を募るんだから何か別のアプローチがあるんだろう。
「世界樹の枝を手に入れる伝手があります。……見てわかりますように僕は貴族の出身です。顔も見せない非礼の中、話を聞いてくださりありがとうございます」
そう言って鬼の仮面を外すアルくん。
「ちょっとアル!?」
リリーシェの静止も間に合わず、中から出てきたのは穏やかな目をした整った顔立ちの少年だった。茶に近い黄色の瞳にすっきりとした鼻立ち。白く日焼けのない頬からは育ちの良さがうかがえる。よく見てみれば手も擦り切れ一つない。
金髪金目で貴族なところがどことなく彼女を思い出させた。
俺の目ではまだ幼く少年らしさが抜けていないけれど、あと数年もすれば青年の凛々しさが出てきて社交場の注目を浴びると確信できる。
年は、
「マユちゃんと同い年ぐらいかな?」
「たぶんそうだと思います」
「はあ!? 反応それだけ!?」
戸惑ったり叫んだり忙しいリリーシェ。
「もっとこうないの? ほら、よく見なさい」
彼の顔を両手で掴みぐいぐい近づけてくる。
横に引っ張られて伸びたアルくんの顔は少し可哀想なことになっている。
リリーシェを見る限り彼の顔を見ただけでもわかる人はわかる有名人のようだ。
「だって……」
俺、常識ないし……。
「はい……」
マユちゃんも田舎出身で貴族とお付き合いないもん。
「はあ……ある意味大当たりね。これは……」
額に手をやり溜息を吐くリリーシェ。
アルくんは伸ばされた頬を痛そうにさすっている。
「話を進めまして。冒険者パーティーを組んでギルドからの評価を受けていれば、こちら側の伝手で世界樹の枝は採りに行く許可が出る手はずとなっています」
「じゃあ私らに声かけなくて二人でやればいいんじゃない?」
「事情がありまして――失礼を重ねますが……人を見る目を、そして将来の信頼のおける仲間を得ることも目的なのです」
まっすぐ俺を射抜くアルくんの視線は微塵も揺れておらず、強い意志を感じる。
こういう気構えというか、風格というか、そういうのを見せられるとさすが貴族というか……感心する。
「失礼な話だね。まったくもって。でも、話を続けて?」
「ありがとうございます。普段からパーティーを組んで活動していることにしていただいて、僕らのギルド貢献度を上げていただきたいのです」
「それって不正、ですよね?」
俺の服の裾を掴むマユちゃん。
「いや、不正じゃない。ルールの範囲内。一応ね。――酒場の先輩からこんな話を聞いた覚えがある」
――戦火に巻き込まれた子どもを助けた傭兵がその子を預ける当てもなく、仕方なく一緒に冒険者をするような場合。
傭兵は子どもの身分保障のために冒険者ギルドに登録した。子どもはほとんど傭兵の力になれなかったが、パーティーとして依頼を解決していたため子どものギルド貢献度は上がっていった。――
マユちゃんを安心させるために微笑む。
「つまりね、たとえ寄生でも問題ない。ギルドはパーティーを組んでいるかなんて判断しようがないし、わざわざ判断する必要はない。寄生に納得いかなければパーティーは勝手に解散されるんだから。管理する必要もない」
今日結成したパーティーが明日には物言わぬ屍になっていることも珍しくない冒険者たち。
手に入った分け前で揉めて解散するのなんて日常茶飯事。
一々彼らを管理していられないのが実情だろう。
依頼を受けるとときに書かれた情報が全てだ。
「ただ、貢献度は稼げてもランクはそうはいかない。試験があるけどどうするの?」
ギルドの課す試験をクリアしなければランクを上げることはできない。
ギルドにとって、冒険者たちが納得していれば貢献度はどうでもいいが、ランクは依頼に関わってくる。
ランクに見合わない実力の者を高く評価してしまっては依頼者に対する信用問題だ。
そこに抜け道はなく、ランク相応に厳しい試験が課される。
「ランク試験は当面は問題ありません。僕は魔法使いですし、リリーシェも訓練を積んでいますので」
「ふーん、後は報酬だね。」
これは対等な冒険者パーティー……じゃないと思う。
彼らの目的のために、不正まがいのリスクを負うんだ。余裕があるチームなら断るところ。
そして、俺たちには余裕がない。
俺とマユちゃんの二人だと、魔物と相対したときにどちらも目の前に相手に手いっぱいで周囲を見回す余裕が持てていない。
背中からバッサリされるのが怖すぎて討伐依頼はほとんど受けられていないので、常にお金に困っている。
同じ酒場を拠点にしている先輩方にはびびりだと言われているけど。
……数日置きであっても、彼らとパーティーを組めればそのときだけに実入りの良い依頼を受けることができる。
それだけでも助かるし、今回はどう考えてもこちらに利益のある話じゃない。
もらえるものもあるだろう。
日当かな、依頼毎かな。どちらにしたって水分たっぷりのもやし炒めから脱却できそうだ。
「そうですね……依頼毎に銀「待ってください!」




