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異世界の冒険者  作者: かやばさん
冒険者でがんばります
38/51

冒険者のランクについて

――――――



酒場の奥にあるギシギシと音の鳴る木の階段を上り、同じく音の出る廊下の突き当たりが俺たちが借りている部屋だ。

見た目はボロで……中身も相応にボロだけど一応防犯のための鍵がついているのと、防音の魔法がかけられているのがこの宿屋の売りだ。

古いから安く、そして最低限の防犯対策があるため十分満足している。



「ちょっと待ってください!」


戸を開けようとした時、普段穏やかなマユちゃんが珍しく大きな声を出した。


「どうしたの?」


「その、中、片付けさせてください」


顔を赤くして耳打ちする彼女に俺はなるほどと頷く。

女二人住まい(見た目上は)なもので、堂々と下着を部屋干ししているのだ。

それを男の子に見られるのは恥ずかしいと彼女は言った。

マユちゃんとアルくんは同じぐらいの年齢に思える。

同年代の、それも異性に下着を見られると考えると彼女の羞恥心はわかる。

そういうところに無頓着なのは元々男だったなごりなのかか、生来雑な性格なのか。


「あー、私のもてきとうに取り込んどいて」


マユちゃんに自分の分も取り込んでもらうように頼んで、事情を彼らに伝える。

リリーシェは納得という表情で、アルくんはおや仮面の下から見える顔がちょっと赤いような?


「わかりましたしばらく待たせてもらいますね……」


防音魔法のおかげで聞こえないけれど部屋の中ではきっと、目をぐるぐるさせたマユちゃんが急いで洗濯物をどこかへしまっていることだろう。


「お、お待たせしました……」


俯いて真っ赤になりながら戸を開ける彼女。


「どうぞ。てきとうにかけて」


俺とマユちゃんはシーツのマユちゃんのベッドに腰掛ける。

アルくんはしばらく視線を動かしていたが、てきとうな席が見つからず向かいにある俺のベッドに、すいません、と言って腰を下ろした。

リリーシェは彼が座ると彼の右側に座った――鎧姿のままで。


布団が……。

シーツがちぎれたら弁償費いくらぐらいかかるかと考えてしまう貧乏暮らしが憎い。


「……私は腹の探り合いとかわからないから、できれば単刀直入に話してほしいな。週に一度でどうやって冒険者として大成するつもり?」


お手上げですと両手を上げる。

そういうのはレイナさんや仮面のアルくんの上流階級のいかにも舌戦が得意そうな人たちが頑張る領分だ。


領主の目に止まる冒険者ともなればCランク? いや……Bランクだろう。

Cランクのベテランはこの街にはちらほら居るからそれでは足りない。


冒険者ランク――俺の基準では割とてきとうに決まっているように感じる――で重視されるのは強さと信頼性の二点。

この場合の強さは単純な戦闘力の話だけではなく、どちらかというと危険や困難を回避、乗り越えるしぶとさや判断力も含んだ強さだ。

俺はDランクのウッドクォーク単独撃破と、二ヶ月間こつこつと依頼未達成率0パーセントでやってきた実績でDランクの認定を受けている。

そしてマユちゃんは同様に依頼未達成率が0なのと、汎用性のある水魔法使いな点が見込まれてCランクの認定だ。

ちょっと悔しい気もするけどマユちゃんの魔法は実際すごい。

なによりすごいのは冒険の時にどうしても嵩張ってしまう水は最小限でいいことだ。

他にも負傷部分を洗い流し細菌感染の予防もできるし、陸の生き物は水球に閉じ込めれば呼吸はできない。足場を泥にしておけば簡易の罠にだってなる。

さらに魔法使いになれるほど魔力量が多いだけあって、全てを身体強化に回せば長時間身体能力を強化したまま活動だってできる。

万一のとき俺とマユちゃんのどちらが『しぶとく』生き残れるかと考えると彼女に軍配が上がるだろう。



冒険者のランクは魔物を基準に考えられることもできる。

魔物を基準に考える場合は、そのランクの冒険者が数人居て同じランクの魔物を相手にできる、といった塩梅だ。パーティーランクはここで使用される。俺とマユちゃんは、彼女のおかげでパーティーランクはなぜかCだ。従ってCランクの魔物までは対処できると判断してもらっているわけだ。


Fランクはギルドに登録してすぐの新人を指す。

Eランクはゴブリンやコボルトを退治できる程度で、腕に自信のある一般人もここらへん。多くの冒険者はゴブリンぐらいは一対一で勝てるためパーティランクEはほとんどいない。

Dランクは森熊を正面から倒せるぐらいが平均だ。上はミノタウロス、グリフォンを相手に出来るらしい。前世では考えられないことだが魔法のあるこっちでは割と居る。……いや、無理でしょ。

そしてDとCランクには壁があって、

Cランクはベテランクラスと扱われる。もはや村単位では太刀打ちできない領域となる。大蛇、ワイバーンなんかの大型の魔物、ラミアやリザードマンの群れのような知能ある生き物たちを相手にできるぐらいらしい。マユちゃんはそれぐらいの高評価をギルドからもらっている。魔法使いはそれぐらいすごい。

そしてまた壁がある。今度はもっと大きな壁だ。

言葉の響きではBと聞くと平均よりマシ程度に感じてしまうけれどとんでもない。

初心者講習で聞いた話によると、成功したと言われる冒険者でもCランク止まりがほとんどらしい。Cランクより上は別世界。

Bランクに分類される魔物は、ドラゴン、巨人、街に隠れるライカンスロープ、吸血鬼、シーサーペントなど。街消滅の危機がある魔物たちで、巨大であったり、高い魔力と知能を有している。この辺りの魔物が確認されると国が動く。


Aクラスは、たった一匹で国の存亡に関わるような魔物だ。

八つ首の巨大竜、海に潜む島、山を背負う亀、国食いなどの伝承レベルの存在だ。

出会ったら死ぬ、そんな規格外を放り込む危険度がAランクである。

そしてもっとも恐ろしいのは、この化け物たちはおとぎ話でも伝説でも子どもを寝かせるための方便でもなく、かつてどこかで数えるのも馬鹿らしいほどの犠牲を生みだした『事実』である点だ。


Aランクの冒険者は現在空席。当たり前だ。


と、思考が横道にそれてしまった。


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