仲間探し
2章開始です。
今回の冒頭部分は少し長めに前回の終わりを付けました。
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冒険者の街タルミア。
そこは若き夢追い人にとって憧れの地である。
ここタルミアは一旗揚げようと夢を抱いた若者たちの集まる土壌があった。
世界樹の存在、その存在がこの街に冒険者を惹き付けてやまない。
国の文献にも残らぬほど古い時代から、世界樹はこの地にそびえ立っていた。
その大樹の恩恵にあずかるため、周囲には人が集まり村となった。次に商人が利益を求めて集い、次第に名もなき開拓村は大きく繁栄していく。
現在世界樹は王家の所有する財産となっており、その調査と維持は辺境伯クリストファー氏が行っている。
未だ世界樹については謎が多く、冒険者の心を揺さぶる甘い果実となっている。
とはいえ――全ての冒険者が自由に探索できるわけではなく、辺境伯公認のパーティーかときおりでる大規模な依頼で調査に赴く程度である。
そんなファンタジーの街に居ついて早二ヶ月。
俺とマユちゃんはそこそこ名の知られたパーティーとなっていた。
タルミアで三、四軒ほど酒場か食堂に入り、名前を聞けば知っている人がいるぐらいかな。
……と言っても実力が認められたわけじゃなく、女性二人のパーティーという点で注目を集めているだけだ。
冒険者は腕っ節に自信のあるものが多いので、相対的に女性の数は少ない傾向にある。
なので、女性だけのパーティーというのは珍しい。
加えてマユちゃんは魔法使いだ。
魔法を実戦レベルで使用できる人材は限られていて、実力を抜きにしても他のパーティーがぜひとも欲しいレベルだ。
水魔法使いのマユちゃんが居るだけで、飲み水の心配はないし傷口を洗い流すこともできる。生き物の血を拭うことだってできるし、その汎用性は限りない。
加えて、俺たち二人ともそこそこの容姿をしていることもあり、パーティーの誘いはひっきりなしだった。
「いいじゃん、俺たちと行こうよー」
爽やかに髪をかき上げながら、男二人連れのイケメンが誘ってくる。
街に来た当初は『時の迷い人』だと露見しないように、パーティーの誘いは断っていたんだけれど、逼迫した状況となったため、他のパーティーと組むことに異論はない。
俺たちはまだまだ未熟なんだ。二人で何でもこなそうと考える気はすでにない。
だけど、
「ね、ね、お金ないんでしょ? うち稼ぎいいよ?」
遠巻きに見ていた酒場の客がああ今回もダメだったという表情になった。
中には俺たちがどのパーティーに入るか賭けに興じているやつらもいる。
「……興味ない」
「またまた、君、飢えたポニーテールでしょ? ほら、一緒に行こうよ」
別に男が嫌だってんじゃない。
俺だって(心は)男なんだ。どうせなら女の人と一緒に冒険したい気持ちはあるけれど、同性だって気を使わなくていいのは楽だし、組むのはやぶさかじゃない。
だけど、その下心満載の目線をなんとかしてから来てほしい。
「しつこい」
しっしと手を振り、追い払う。
相手のことを少しでも考えられるなら、『飢えたポニーテール』なんて蔑称をを使ってるんじゃないよ。
「なんて失礼な人たちでしょう」
マユちゃんが正面でぷんすかしている。
「ごめんね……私のせいで」
俺が冒険者ギルドに登録している職は拳闘士。
出来るだけ肉体変化が見られづらいようにと考えてナーナ村で拳闘士にしたけれど、どうやら拳闘士は貧乏というイメージが世間一般にはあったのだ。
魔物には毒をもっているようなものが数多くいる。
近くによることが危険な魔物だっている。
わざわざ接近戦をし、あまつさえ攻撃で魔物の肉体に体をめり込ませるなんて危険以外の何物でもない。
自分を危険に晒す戦闘スタイルをとらなければいけない理由なんて存在せず、装備を整えるお金も持っていないと見られがちだ。
そして名は体を表すというか、実際に俺たちは金欠に陥ってしまっている。
タルミアに来た当初はレイナさんに、
「ちゃんと節度ある生活しなきゃダメですよ」
と釘を刺されて、マユちゃんとは別の部屋を取っていたのだけれどすでにそんな余裕は残っていない。
俺とマユちゃんの稼ぎは一日採集して、ようやく宿一泊分になるかどうかだった。
薬の補充をすればそれだけで軽い財布は悲鳴を上げてしまう。
さらに冒険者ギルドの初心者講習にも熱心に参加している俺たちに生活の余裕は欠片もなかった。
マユちゃんは勉強熱心だから。俺はびびりだから。
そんな根なし草な生活をしてもう二カ月。
駆け出し二人でできることには限界がある。
『時の迷い人』がどう、なんてことを気にしていられない。
益のあるパーティーなら頼み込んで組ませてもらおうと決めたのだけれど……。
「いえ、ああいう人たちはわたしも苦手です……」
ぶしつけにマユちゃんの胸に視線を送るようなやつばかりで嫌になってしまう。
レイナさんほどではないが、マユちゃんもなかなか自己主張する大きさだ。
控えめな性格もあわさってこの酒場でもマユちゃんは隠れて人気がある。
二人で食事をしているとマユちゃん目当てのお客さんがちらほらやってくるほどだ。
酒場のマスターもそれを歓迎していて、俺たちにサービスがいいのがここを拠点にした際のポイントだ。
「おう、今日も絡まれてたな。いい加減あんたらも困ってんだろ? 良い相手でも見つけたらどうだい」
酒場のマスターが笑いながら皿いっぱいのもやし炒めを置く。
山盛りもやし炒めは晩御飯の定番メニューでとにかく食べた気になれるのが高評価だ。
「探してる」
「探してはいるんですけどねえ……」
二人のパーティーに求める条件が異なっていてなかなか適合しない。
俺は冒険者らしい冒険者であることと、マユちゃんに露骨にイヤらしい目を向けないことを上げていて、マユちゃんは俺を下に見ないことと、男性だけのパーティーは怖いから避けたい。計二点ずつの合計四点が、仲間探しの条件となっている。
厳しい条件じゃないと思っていたんだけど、
「難しいね」
うーんと背伸びをして、気分を変えるようにもやし炒めをかきこむ。
マユちゃんも小皿に取り分けながらちまちまと食べる。
水っ気たっぷりのそれしかないもやしが口の中に広がる。
実や葉のつく野菜は高くて手が出せないけれど、もやし――厳密には違う名前がある――ならお腹いっぱい食べても安くすむ。
肉を食わなければ、体もやせ細ってしまう……。冒険者は体が資本なのに。
「じゃあよお、俺の紹介じゃあどうだい?」
もやしを頬張る俺たちを見かねたのだろう。
マスターが溜息をつきながら、イスに腰掛ける。
「うーん、あってから?」
「マスターの薦めなら大丈夫そうです」
酒場のマスターともなれば、様々な冒険者をその目で見ている人物だ。
冒険者の仲介をしている場面を幾度か目にしている。
俺たちの要望もわかっているだろうし、その基準はクリアしているんだろう。
となると、何故今まで話を振らなかったのかだけど――
「何というか、見た目が怪しいやつなんだ。悪い奴じゃないんだが……」
やはり問題児らしい。
マスターの言葉を受け、この酒場で世話になっている冒険者を頭に思い描くが問題のありそうなのはそう多くなかった。
誰だろう。




